気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

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投稿が遅れて本当にすみません!!


9話 新人とガルデモファン

【学習棟A棟 2F 階段】

 

「あぁ~、今日も終わった終わったぁ~……」

 

雑用の仕事も最初の時と比べると大変になっていき、物の持ち運びとか何やらいろいろな事をやるようになっていった。力仕事とかもやったのでもう腕も足も……というか身体全部ヘロヘロだ。

そんなヘロヘロな身体で何処に向かってるのかというと、屋上だ。あそこは人が来ないから静かだし中々良い風も入ってくるので休むにはうってつけの場所だ。

 

「ングッ……ングッ……プウゥ~~…。疲れた後の水は最高ですなぁ~」

 

keyコーヒーを買おうと思ったのだが、疲れているときはやはり水が良いだろうと考え、ミネラルウォーターを買って一気に半分以上飲んだ。やはり喉が渇いてるときは水が一番だな、うん。

 

「あっ、岡野さん」

 

次の階段を昇ろうとするのだが、後ろから声をかけられたので振り向くと、ピンク色の長髪が特徴的のユイがいた。

ギターを持ってるみたいだけど今からストリートライブをしに……はいかないだろうな、時間的に。だとしたら練習でもするのかな。

 

「あ、ユイか。雑用の仕事が終わったばかりなのにギターを持って何処に行くの?」

 

「練習だよ練習。ユイにゃんは天才とはいえ、努力は惜しまないのだ!」

 

「さ~て、屋上が俺を待っているみたいだし、さっさと行こ~っと」

 

「ちょ!無視するなクラアァァァァ!!! ……ていうか、ホントに待って!待ってってばぁぁ~!!」

 

階段を2段3段と昇るとユイが俺の右手を掴んでくる。

掴むだけならいいのだが、何故なのか引っ張ってくる……って危ねぇよガチで!!?

 

「いやいやいや!! 引っ張るなよ!? 危ないって!! マジで危ねぇって!!! 屋上に行かないからとりあえず引っ張るのやめて下さい!!!」

 

「ホント?じゃあ、はい」

 

屋上には行かないと言うと今まで俺の手を引っ張ってたユイはパッと離してくれ、どうにか階段から転倒するという悲劇から回避する事ができた。

 

「ホンッットに危なかったぁぁ~……。死ぬかと思ったわ…」

「アッハハハハハ! 何言ってるの~! 私達もう死んでるじゃ~ん。」

 

ユイは俺の言った事がギャグだと思ったのか、笑いながら背中をバンバンと叩く。

いや…確かに死なないけど、自分で言ってて悲しくないか……?あと地味に痛いんですけど。

 

「……それで、俺に何か用があるの?」

 

気を取り直し、自分に何か用があるのかを尋ねる。

あんだけ待ってと言って特に用はないなんて言ったら絶対に怒る自信はあるな。

 

「用があるとかじゃないけど、ちょっと付き合って欲しいんだ」

「付き合うって……練習するのに何で俺が付き合わなきゃいけないんだ?」

「そりゃあ私の歌を聴いてもらうためだよ。どうせこの後暇でしょ? だったらいいじゃん! 早く行こう行こう!」

 

どうやらユイの頭の中では俺がユイの音楽を聴く事が決定事項になっているらしく、ユイは何処かへと歩き出す。まあ……確かに暇と言えば暇だし、屋上に行けないのはちょっと残念だけどたまにはいいか、と思いユイの後ろに付いていった。

……てか、何処で練習をするんだろう…。

 

 

――――――――――――

 

【学習棟B棟 空き教室】

 

「さて……じゃあ岡野さんはそこら辺にある椅子にでも座っててよ。その間に色々と準備をするから」

 

学習棟A棟からB棟まで移動をし、この空き教室に入る。ユイが言うには誰も使っていないので使わせて貰ってるとか。

使わせて貰ってるって事は誰かに許可でも貰ってるのか?と聞いてみるが、ユイは『ユイにゃんが地道にストリートライブを積んできた結果なのです!』と答えになってない答えしか言わなかった。

とりあえずユイは何やら準備をしているようなので、ユイの言われた通りにそこら辺にある椅子を取って床に置いて座る。

 

「よっしゃあぁ! 準備ができたぜぃ! 目ん玉の穴をほじくり回してよぉ~く聴けやぁぁ!!!」

 

 

~♪~♪~♪~♪~♪~……

 

 

小柄で可愛らしい見た目には似合わない言葉を使い、ギターを弾き始め、歌を歌い始めた。てかそれをいうなら耳の穴だろ。

 

「背後にはシャッターの壁―――」

 

…お、今ユイが歌ってる歌のタイトルは覚えてないけど聴いた事はあるな。

と言っても、所々だけで全部は聴いた事はないんだけどね。

やっぱドラムやベースとかがないからちょっと物足りなさを感じるなぁ…。

そんな事を考えながら音楽を聴いていると、どうやら歌い終わったみたいだ。

 

「ふふ~~ん、どうだった? 中々上手かったでしょ?」

「そう~…だね、上手かったと思うよ。」

 

ユイは自信満々に自分の歌の感想を聞いてきたので俺は素直に上手かったと答えた。歌はあまり歌わな………生前の俺は歌ってたのかね?そもそも……。それさえわからないや。

まあ、素人の俺からすれば十分に上手いと思うし、本人には言わないけどユイの歌声は結構好きだな。

 

「ヌッフッフ! 才能の塊のユイにゃんならこのくらい朝飯前朝飯前!」

「じゃあ俺はこれで失礼しまーす。お疲れ様でしたー」

「ちょいちょいちょいちょいちょい!! ユイにゃんって言ったのは謝るから行かないで下さいよ~~!!! まだまだ歌うんだからぁ!」

「え? まだ歌うの…?」

 

教室のドアを開けて帰ろうとしたがユイは後ろから俺のブレザーを掴み、まだ歌うと言う。

 

「もっちろん!可愛い女の子の歌声を聴けるんだからありがたく思いなよぉ~?」

 

自分で可愛いと言いますか、自分で。

……いや、可愛い人でも自分の事を可愛いという人はいるか。現に俺の目の前にいるし。

 

仕方ない、ここは素直に最後まで付き合うか。同じ雑用同士なんだし、これからの事も考えたら仲良くなった方がいいだろうな。

 

「はいはい、そうだな~。可愛い女の子の歌を聴ける俺は幸せだよ~。次は何の曲をやるんだ?」

「…な~んか釈然としないなぁ……。まぁいいや、次は『Alchemy』!!」

 

俺の態度に不満を持っていたが、あっさりとまぁいいや、で済ませ、『Alchemy』という曲名を言ってギターを弾き始め、歌い出す。

 

(……あっ、最初に歌った曲の名前を聞くの忘れてた…)

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

あれからユイは何曲も歌い続け、気が付くと18時前になっていた。

腹も減った事なので、今はユイと二人で食堂にいる。

ユイが頼んだのはカレーで、俺が頼んだオムライスより早く来たので先に席に座って食べている。

 

「はいよ、オムライスのギガお待ち」

 

おばちゃんがオムライスのギガを出してくれ、俺はおばちゃんに礼を言ってユイがいる席へと向かってった。

 

「よっす、待たせたな。」

「ん~、随分と遅かった………ってええぇぇッッ!!!?」

 

ユイは目を丸くしながら驚き、俺が持ってるオムライスを見ていた。

あれ?ユイもオムライスのギガを見たことないのか?意外と知らない人多いんだなぁ…。

 

「こ…こんな山みたいなオムライス食えるの……?」

「もちろん。オムライスならいくらでも腹に入るさ! それじゃあ、いっただきま~す!」

 

俺は少々上機嫌にいただきますと言い、オムライスを口に運ぶ。

 

「くぅ~~~ッ!!!! こうやってオムライスを食べるのが最ッ高だな! 正に至福のときって奴だね、うん。」

 

「…そんな幸せに食べて大丈夫なの?ご飯の時でも幸せな気持ちになったら消えちゃうらしいよ?」

「あぁ~、日向も同じ事言ってたな…。飯食ってるだけで消えるって本当なのか?」

「う~ん……。ユイも噂でしか聞いてないから何とも言えないけどホントじゃないかな?授業を受けるだけでも消えちゃうくらいなんだし」

「……そういうもんなのかな?」

 

ユイは噂でしか聞いた事がないらしいが、食事をしただけで消えてしまうという話は信じてるみたいだ。

本当だとしたら、戦線に入る前は授業を受けており、飯は幸せな気持ちで食べてるのに何で俺は消えないんだろう……。

 

もしかしてゆり達が嘘をついてるとか…?

いやいや、待て。だったら何で嘘をつく必要がある? ってなるな。

やっぱ本当に飯食っただけで消えちまうもんなのかな…?

だとしたら、消える条件をクリアしてるにも関わらず何で俺は消えずにこの世界に留まってるんだろう……。

 

「おりょ?岡野さん、手が止まってるよ?いくらでも腹に入るとか言いながら実はもう腹いっぱいというアホなオチにでもなっちゃったの~?」

 

ユイの声が聞こえ、俺はその声を聞いてハッ、と我に返る。

どうやら考え事をしていて手が止まっていたみたいだ。

 

「…ちょっと考え事をしてただけでまだ腹いっぱいになってないよ」

 

止まってた手を動かし、再びオムライスを食べ始める。ユイは既に食い終わってるみたいなので、少しペースを上げ、数分後には綺麗に食い終えた。

 

「うわぁ~……。あんな山のようなオムライスを本当に全部食っちゃうなんて…」

 

気のせいか、ユイは若干目を引きつらせているように見える。

まあいいか、それよりさっさと皿を返却口のとこへ片付けに――

 

「あっ、片付けるならこれも一緒におねが~い♪」

 

――行こうとしたが、ユイが自分の分の皿を俺に差し出す。

コイツ………食い終わったのに何で片付けないんだと思ったけどそういう事かッ……!

ここで断ったらユイの事だ。何かいちゃもんつけるか、周りに味方とかを付ける可能性だってある。

言動はアレだけど可愛らしい容姿をしてるし、ファンだっているだろうからな。

 

「……わかったよ。」

 

そういう訳で俺はユイの食べたカレーの皿を受け取る。

 

「さっすが岡野さ~ん♪ やっさし~~い! ありがとうございますぅ~♪」

 

普通の人なら可愛いと思ってしまう満面の笑みをした表情と、とても可愛らしい声をしながら俺に礼を言う。どの口が言うか…、どの口が……!!

 

「ど、どういたしましてぇ………ッ!」

 

俺は怒りを抑え、右目ら辺をヒクヒクさせながら礼を言い返す。

クソッ! ユイッ!! 謀ったなァ!! ユイッ!!!

 

(……心の中でアホな事を言ってないでさっさと片付けに行こ…)

 

すぐさま食器を片付け、ユイのいる席へと戻ると…

 

「うむ、ご苦労。流石ユイにゃんの下僕。いい働きっぷりですな!」

「さ~て、ユイにゃんって人のギターを壊しに行こうかな~」

「わあぁぁぁぁぁ!!! 嘘です! 全て嘘です!! 調子に乗りましたごめんなさぁぁい!! そんなマジな目にならないでくださああぁぁぁぁぁい!!!」

 

謝るんだったら最初から人を馬鹿にするような事を言わなきゃいいのに…。

コイツもしかしてマゾか?それともただアホなだけか? いや、確実に後者の方だな。

 

そんなこんなで後からは何か面白い事がなかったのかを話したり、ユイが一方的にガルデモの話をしてきたりなどをしてると大分時間が経ち、お互いに明日の雑用の仕事に備えて早めに帰る事になり、俺とユイは食堂で別れた。

 

今のところはまだ天使と戦ってはいないみたいだけど、近いうちに戦うんだろうな…。

今日みたいな日常がずっと続ければいいのに……。




えぇ~……、一週間以上投稿できなくて誠に申し訳ございませんでした。

今回はユイ回のような感じの話です。特に面白みのない話です、はい。
一週間以上経ってやっと投稿したと思ったらこんな低レベルな話で申し訳ありません……。

でも、一応岡野とユイは同じ陽動部隊の雑用同士ですからそれなりに仲良くなる話は作った方がいいかなぁと思い、今回のような変な話を作りました。

こんなアホな作者ですがこれからもどうぞよろしくお願いします。

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