気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

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三人称視点を書いてみました。中々難しい……。


23話 校長室で

「最近入った新入り、結構問題ばかり起こしまくってるらしいな」

 

関根絡みの事で竜胆に突っかかれた日から八日―――つまり、竜胆が死んだ世界戦線に入ってから十日が経った。

現在、作戦本部――及び校長室にはゆりを除き、いつものメンバーがたむろっており、そんな中ソファーに座ってる藤巻が、ここのところ様々な騒ぎを起こしている新入り(竜胆零)の話題を出してきた。

 

「あの竜胆という奴の事か?」

 

そんな藤巻の唐突な話題を一番先に食いついたのはゆり以外の命令は効かない問題児の野田だった。

 

「あぁ。他のメンバーも言ってたが、アイツ片っ端からいろんな女に話しかけては頭やら手やらベタベタと触りまくってるみたいだってよ?」

 

「それに、少しでも彼の機嫌を損ねたり注意などをすると、すぐに暴行に出るみたいですね。他にもまだ問題を起こしているみたいですが」

 

藤巻が竜胆の起こした問題を説明すると、予備の眼鏡らしき眼鏡を丁寧に拭いてる高松が他にも起こした問題の説明を追加した。

 

「ううむ……。かなりの問題児だな」

 

松下五段は二人の説明を聞き、頭を抱えて悩んでる仕草を見せた後、ハァ、と呆れながら溜め息をつく。

悩んでる仕草こそはしていないが、竜胆の事を聞いて呆れているメンバーは多数だった。

 

「昨日ひさ子から聞いたぜ岡野? お前、この前竜胆に絡まれたんだってな」

 

「え? ……あぁ~。関根さんの事?」

 

「That's light! 2u,year! year year!」

 

岡野は前に関根との件で竜胆に突っかかれた事を思い出し、それを確認するかのように答えると、余り広いとも言えない部屋の中でダンスをしているTKが妙なステップをしながら岡野に近づいて英語で答え、その後は突然指を鳴らしながら何かの歌を歌い始める。

 

「あ、その話は僕も聞いたよ。昨日松下五段が柔道の練習しに行ってたから数合わせで麻雀に参加したからね」

 

大山は何故その話を知っているのかを、自分から説明口調で答えてくれた。

 

「お前もつくづく災難だよなぁ~。その件だけじゃなくても会っただけで絡まれたり他の娘と話してただけでも絡まれんだもんな」

 

日向の言うとおり。関根の件から四日の間、岡野は雑用関連の事で女性戦線メンバーと話していた時に、それを見た竜胆に殴られたり、偶然会った時は暴力こそ起こさなかったが、「クズ」や「ゴミ」など、多数の暴言を吐きまくられたりと、彼と関わると基本ロクな事が起こらない様だ。

岡野だけではなく、他の男性戦線メンバーにも同じ被害があるようだが、回数的には岡野が一番被害回数が多い。

 

「おかげで女の子と話せる機会がグッと減ったよ。話すにしてもわざわざ周りを警戒しないといけない始末だしね……」

 

雑用の時にまで女の子と話す時にまで竜胆がいないかを警戒しないといけないのは仕事に支障が出てしまうからかなり困る。

しかも女の子と話していなくても、その竜胆本人と会えば何もしていないのに絡まれる始末だ。

 

(他のメンバーにも突っかかる時もあるらしいけど、何で俺にはあんなしつこく突っかかってくるんだ? 前に突っかかれた時は転生者云々とか言ってたし…。ていうか転生者って何の事だ? ここは死後の世界なんだから転生も何もないのにな……)

 

竜胆の謎の発言の事を考えていると、扉の方からギィ、と開く音が聞こえ、音がした扉の方を振り向くと、そこにはゆりの姿があった。

 

「あっ、おはようゆりっぺ」

 

「………おはよう、大山くん…」

 

「今日は来るのが遅かったなぁ」

 

「えぇ……ちょっとね…」

 

「……?」

 

……ゆりの様子がおかしい。

朝だから少しダルイ気分とかならわかるのだが、ゆりの表情から出てるあの顔はその部類とは違う。

ダルイというより、疲れているという表情がピッタリだ。

他のメンバーよりいち早くそう思った音無は、ゆりに声を掛ける。

 

「だ、大丈夫かゆり? 何かあったのか?」

 

「……ここに来る間に竜胆くんと話をしていたわ」

 

「あぁ………」

 

ゆりの言葉を聞いた岡野は、八日前にあった出来事をすぐさま思い出した。

話の内容こそは全く知らないが、竜胆が戦線の敵である天使に一方的と言って良いほど話していたあの光景を――

 

「しかも自分の事をベラベラベラベラと話しまくってはあたしの事を何度も可愛い可愛いと言うし手を握ろうとしたり笑いながら頭を撫でようとしてきたり無視しようとしてもずっと後ろからついてきたり急にナルシストぶったりして気持ち悪さがハイパー・メガ・カノン級すぎるんじゃゴラアアアァァァァァ!!!!!」

 

最初は声のトーンが低かったが、やがてその出来事を思い出してきたのか、どんどん声のトーンが上がっていき、最後には怒りを爆発させる。

 

「ちょ……! ゆり、一旦落ち――」

 

「じゃあかしいわぁぁぁぁ!!!」

 

「ふぶぉおおッ!!!?」

 

怒りが有頂天となったゆりを落ち着かせようとする岡野だが、肝心のゆりは最後まで話を聞かず、何故か日向を思い切り殴り飛ばし、殴られた日向は綺麗に窓の方へ吹き飛び、そのまま窓を突き破って下へと落ちていく。

 

「何で俺が殴られなきゃいけ―――!!」

 

落ちながら日向は何もしていないのに何故自分が殴られなくてはいけないのかを言おうとしたが、すぐに地面に激突したのか、言葉がすぐに止まった。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……!!」

 

「ゆ、ゆり!! 苛立つのはわからなくもないけど、何も日向を殴り飛ばさなくても良かったろ!? しかも落ちてったし!!!」

 

「あん? いいのよいいのよ。彼はまだ戦線ができてない頃からよく高いとこから落と……自分から落ちてたんだから」

 

「なんてバイオレンス!!?」

 

「……なぁ、日向の奴あのままでいいのか?」

 

ゆりと岡野が途中から漫才らしき会話をしてると、音無が話を割り込み、落ちて行った日向をどうするかを尋ねるが――

 

「放置でいいわよ、どうせ自力でここまで来るから」

 

「そ、そうか……」

 

ゆりはコンマ一秒の間もない程、素早く答えたのだった。

 

「ところであんた達、本部に入る前にドア越しから何か話してたみたいだけど、何の話なの?」

 

「竜胆くんの事を話してたんだよ」

 

「うえ……っ、せっかく撒いてきたのにまた竜胆くん関連って……」

 

ゆりの質問に大山が答え、再び竜胆関連の事を聞いたゆりは気分悪いような素振りを見せる。

 

「ゆりっぺをここまで苦しませるとは……!! あの男……ッ、今から叩き潰してくれるぅッ!!!!」

 

「ちょ、ちょっとちょっとちょっと!! 野田、ストップ!! 松下五段、肉うどんの食券あげるから抑えるの手伝って!」

 

「任せろぉ!!」

 

「ぬがああぁぁぁ!! 離せ貴様らああぁぁぁ!!!」

 

ゆりの犬とも信者とも言ってもいいくらいゆりに心酔してる野田は、この話を聞いて当然黙っている訳はなく、すぐに竜胆のところへ向かおうとするが、岡野と松下五段に見事止められてしまい、ただジタバタと暴れる。

 

「なあ、ゆり。このまま竜胆を何もしないまま放置するものマズイんじゃないか? 他の女性メンバー達にも竜胆の事でいろいろと問題があるんだし、一度ガツンと叱った方がいいんじゃないか?」

 

「叱って大人しくなるんだったら苦労はしないわよ。叱ったところで『はっはっはっ、そうやって怒って照れ隠しをするゆりも可愛いな~』って言われる始末だし……」

 

音無の言った提案は既に実行していたらしいが、竜胆には全く効果がなく、ゆりは頭を抱え深い深い溜め息をついた。

 

「り、竜胆くんって凄いポジティブな人なんだね~…」

 

「いえ、最早ポジティブを超えてバカですね」

 

「あぁ、バカだな」

 

「Crazy boy!」

 

大山のフォロー(?)の言葉に高松、藤巻、TKは“ポジティブ”を否定し、“バカ”と断言をした。

 

「あ~もうはいはい、もう竜胆くんの話は終わりにしないさい! さっさとオペレーションの話に変えるわよ!」

 

ゆりは手をパンパン、と鳴るくらい強く叩いて無理やり話を終わらせ、校長の椅子に座る。

 

「オペレーション? 今日やるなんて聞いてないけど……」

 

「今やるって決めたんだから当たり前でしょ? う~ん、何しようかしら~…」

 

「そ……そんな適当な決め方でいいの…?」

 

「失礼ね、別に適当に考えてなんかないわよ? ……よし、じゃあ明日は適当にトルネードでもやりましょうか。食券のストックを確保したいし」

 

(言った傍から適当って言ってるよこの人……)

 

ゆりはそう言うと、すぐさま他のメンバーにも明日にオペレーショントルネードを決行する事を言い、それぞれ配置するポジションを伝えた後、すぐに解散となった。

 

「あ、岡野くん。頼みたい事があるんだけど」

 

ガヤガヤ喋りながら皆が校長室から出て行く中、岡野だけがゆりに呼び止められ、岡野はゆりの方へと振り返った。

 

「ん? 何?」

 

「明日のトルネードの事だけど、その事をガルデモの皆に伝えといてくれない?」

 

「……あぁ~、今日岩沢さんここにいなかったもんね。いいよ、わかった」

 

「お願いね」

 

あいよ~、と軽い感じの返事をして校長室から退出しようとする岡野だが、ふと思いついた事があり、足を止めて再びゆりの方へと振り返る。

 

「……あっ、そういえば竜胆もトルネードやる事知らないんじゃなかったっけ? 知らせなくていいの?」

 

「あっ、そうね……。ついでに竜胆くんもお願いね」

 

「ゑ!? いや、それは嫌―――」

 

「んじゃ、よろしく~♪」

 

「あッ!! ちょ――」

 

ゆりは最後まで話を聞かずに満面の笑みを浮かべ、岡野の肩をポンッ、と優しく叩き、手をひらひらと振りながら校長室から出て行くが、苦虫を潰したような表情をしており、その場に硬直してしまってる岡野はそれに気づく事はなかった。

 

「うへぇ~……マジかよ…。あいつと一番会いたくないのに何で会わないといけないんだよ……」

 

ゆりが出て行った今、自分以外誰もいない校長室で岡野は大きな溜め息をした。

 

「……でも、竜胆の奴もゆりみたいに悲惨な人生を送ったのかもな…。その所為であんな性格になったという可能性もあるだろうし……」

 

生前の頃に性格が変わってしまう程の辛い人生を送った、と考えてしまうと、あまり悪い事ばかりを言うのに抵抗が生まれてしまう。

 

「まあ~……、だからと言って誰かに迷惑を掛けてもいいって訳じゃないんだけどね。……仕方ない。先にガルデモの皆に明日の事を伝えるかな」

 

竜胆の事は後回しにし、ガルデモメンバー達に明日の事を伝えようと決めた岡野は校長室を退出し、いつも練習している空き教室へと足を運んだ。




以上、23話でした。

ただ竜胆の事を話してるだけの意味不明な回となってしまった……。

どうにかところどころに、にじファンにはなかった新しい話を入れようとしてますが、いかんせん中々話のネタが思い浮かびません(汗)
今回の話は一体何をしたかったのか? という回でしたね…。

それではまた次回。

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