気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

23 / 32
遅くなってしまいました! すみません!!


22話 新メンバーが入って

新たなるメンバー、竜胆零が死んだ世界戦線に入って早二日が経った。

やはりと言うべきか、ガルデモとユイに近づいたようだ。

ガルデモの方は丁度休憩時間で、入江さんはちょっと席を外してたらしく、入江さん以外のメンバーが竜胆と会い、ユイはその次の日に会ったと、中々高速なペースだ。

その時の事を入江さんを除くガルデモメンバー達とユイに聞くと、いきなり手を握ろうとしたり、頭を撫でようとしたり、口説きかかったりと、かなり迷惑だったとか。

俺からすれば初対面の人によくそんな馴れ馴れしいというか、大胆な事をするなとある意味尊敬してしまうよ。尊敬しないけど

 

「あの竜胆って奴、なぁ~にが俺の関根だ! 男と女の差別具合が異常すぎだろ!!」

 

ガヤガヤと賑やかになってる食堂で、俺の右隣にカレーを口に運びながら竜胆に文句を言いまくってる野坂と昼飯を食べている。

……いや、正確には野坂だけじゃなく、向かい側の席にもう二人いるんだけどね。

 

「まあ、確かにあの男の女の扱いの差はぶっちゃけないよね~。私も内心軽く引いたよ」

 

「え? あ、ううううううううん!! そ…そそそ……そそうだよよよねッ!!!!」

 

「そ、そんなに酷かったの? 新しく入ったその……竜胆さんって人」

 

一人は野坂の言葉を聞いて全面的に同意している関根さんと、もう一人は野坂と関根さんの会話を聞いて若干不安そうな顔をしている入江さん。

ていうか野坂、テンパりすぎだろ。

 

「そりゃあもうヤバイくらい酷いね! 詳しくは“おかのん”に聞けばわかるよ。という訳でおかのん、よろしく~」

 

「え? 俺ッ?!」

 

てっきりそのまま関根さんが入江さんに竜胆の事を話すかと思ったのだが、まさかの俺に押し付けたのだった。

あと関根さんの言った“おかのん”は俺のあだ名で、ふと思いついたから言ったらしい。やめて欲しいと言ったのだが、関根さんは全くやめる気がないようなので諦めた。

 

「えっと……岡野くん。何があったか教えてくれないかな?」

 

え? これ本当に俺が説明しないといけないの? こうなったら野坂………に回すのはやめよう…。

テンパりすぎて説明すらできないだろうし。

 

「えっと……。じゃあ、説明するよ。もうオムライス食い終わってるし」

 

俺は食い終えたオムライスのギガの皿の上にスプーンを置き、話を始める。

 

「そうだなぁ~、最初は……あっ、飯食いながら聞いてもいいからね。……それで続きだけど、最初は野坂と二人で昼飯食いに行こうとしてたんだけど――」

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【約20分前/学習棟B棟 2F 渡り廊下付近】

 

「あぁ~~あ~~……! 終わった終わったぁ~!!」

 

今日の雑用の仕事はいつもより早く終わり、俺は歩きながらうんと背伸びをしている野坂と一緒に2階の渡り廊下ら辺を歩いていた。

 

「昼になる前に終わったね」

 

「そうだなぁ~。このまま早めの昼飯にすっか? 俺寄るとこないし」

 

「俺も特に寄るとこなければやる事もないし、このまま食堂でいいんじゃん?」

 

早く終わったからといって、お互いに寄る場所もやらなきゃいけない事もないので、少し早いが食堂に行く事となったのだが……

 

「ん? ………って、げぇっ…!」

 

少し遠いが、学習棟のA棟側の渡り廊下に関根さんがいた。

いや、それだけだったら別に『げぇっ…!』など言わないのだが、それを言ってしまったのは、あの竜胆零がいたからだ。

 

「あん? どうしたよ岡野? 何見てんだ…って、あの娘、ガルデモの関根ちゃんじゃん。あとあいつは新入りの……」

 

野坂は思い出そうと、必死に頭を捻らしているが全く思い出せる気配がしない。

まあ、まだ入ったばかりだから覚えてないのも無理はないのかな? 俺はあんな出会い方をしたから嫌でも覚えてるけど……。

 

「竜胆だよ。竜胆零」

 

「あ~~!! そうそう! 竜胆ね、竜胆。…つか、あの何で新入りが関根ちゃんと一緒にいるん――」

 

「……あっ! おかのん!!」

 

喋っている途中の野坂の言葉を遮ったのは、少し遠いところにいる関根さんだった。

どうやら俺らの存在に気づいたみたいで“おかのん”と叫んだみたいだけど……おかのんってもしかして俺の事なの…? しかも助けを求めてるかのように手をブンブン振ってるし。

 

「ん? おかのん? 一体だ………テメェはっ!!」

 

竜胆は関根さんの向いてる方を見て俺を見ると、先ほどまで優しげな顔から鬼の様に形相した顔へと変貌し、俺達の方へと近づいてきた。

 

「俺関根に手を出してるって事は、入江にまで手を出してるなテメェ…? 片っ端から色んな女に手を出すたぁいい度胸してんじゃねぇかぁ…。おまけに関根に変な呼び名を言わせやがって…ッ!!」

 

「ファ!? ちょ……ちょっと待ってって! 俺ただ関根さんに呼ばれただけなんだけど!? それに何か誤解をしてるって!」

 

「喋んじゃねぇボケッ!! テメェみたいなクズは俺が今ここでぶっ殺してやらぁ!!!」

 

俺はどうにか竜胆の勝手な誤解を解こうとするのだが、話を聞く様子はなく、一方的に俺の事をクズと決め付けて来た竜胆は声を荒げながら腕をパキパキと鳴らし、こちらへと近づいてくる。

 

「お、おい。落ち着けって新入り!」

 

流石に竜胆の行動を見て危険だと思った野坂は、竜胆の目の前に飛び出し、両手を前に出して竜胆にストップを掛ける。だが

 

「モブキャラは黙っとけッ!!!」

 

「うおッ!?」

 

当の竜胆はそんなのにお構いなく、自分の目の前に現れた野坂を力づくでどかし、そのまま俺に近づき、俺の制服の胸ぐらを荒々しく左腕で掴みかかり、それと同時に余った右腕の拳を上に振り上げ、その拳は俺の顔面目掛けて殴りかかろうとしたが――

 

「ス、ストップ!! ストップストーーーーップッ!!!」

 

「!!」

 

関根さんが大きな声でストップのコールをかけ、それを聞いた竜胆は殴ろうとしてた腕を下に降ろし、胸ぐらをつかんでた腕の力も緩んだ。

掴まれた胸ぐらの力が弱まった事に気づいた俺はすぐに竜胆から4~5歩程離れた。

 

「お、岡野! 無事か!?」

 

「ど、どうにか……」

 

何回か軽く咳き込みはしたが、思ってたよりは苦しく掴まれていなかったため、呼吸はすぐに整う事ができた。

 

「どうしたんだよ関根? いきなりストップだなんて言って…」

 

わざと惚(とぼ)けているのか、それとも本当に止められた意味が分からないのか、竜胆はキョトンとした表情をしながら関根を見つめている。

 

「どうしたも何も、いきなり戦線のメンバーを殴ろうとしたから止めたんだよ!」

 

「関根、もう既にアイツに騙されてるのか…。可哀想に……!!」

 

「ちょ、ちょい待ち! 俺は騙してなんかい――!」

 

「テメェは黙ってろボケナスッ!!!」

 

え、えぇ~……。何この理不尽…。俺別に誰の事も騙していないのに…。

 

「何の事で騙してるのかは知らないけど、おかのんが誰かを騙そうとする勇気なんてある訳ないじゃん!!」

 

いや、関根さん。もう少し言い方と言うものがあると思うんですけど……。

後おかのんって呼ぶのやめてください。

 

「そう思っても関根はコイツに騙されている事に変わりはないんだ! わかってくれ!」

 

いやいやいや、だから何の事で騙してるんだよ。

 

「「いやいやいや、だから何の事で騙してる(んだよ)の!?」」

 

あ、野坂と関根さんも俺と同じ事思ってたのか。しかもハモった。

 

「あぁっ?! テメェ!! 何関根とハモってんだよ!!!」

 

たまたま関根さんとハモっただけなのに怒鳴られる野坂。別に狙った訳でもないのにハモった事を怒るとかどんだけだよ。

 

「ハ、ハァ!? たまたまハモっただけなのに何キレてんだよ!?」

 

「うっせぇ! 耳障りだから喋るんじゃねぇ!!! ハッ倒――!」

 

「あなた達、何を騒いでいるの?」

 

「「「「!?」」」」

 

ある一人の声が聞こえ、俺達4人は一斉にその声のした方を振り向く。

普通の女性よりもやや小柄の体格をしており、腰まで伸びている白にも銀にも見える髪。俺の黒い瞳とは違い、何時までも綺麗に輝いている様に見える金色の瞳。

その人物は天使こと、立華奏さんの姿があったのだった。

 

「か……かな……ゴホン! …何で君がこんなところにいるんだ?」

 

相手が女子になると、途端に柔らかな表情になり、声も俺と野坂に話していた時とは違い、優しさを感じる声へと変わった。

………ん? 今竜胆の奴、立華さんの下の名前を言おうとしてなかったか?

他の戦線メンバーは基本的に立華さんの名前を知らないのに何で竜胆は調べて………って、立華さん程の可愛い娘の名前くらいコイツが知っててもおかしくはないか…。

 

「あなた達が授業中に廊下で騒いでるからそれの注意をしに」

 

「あ~……そうか。まだ授業終わってなかったのか。ごめんね? あっ、まだ名前を名乗ってなかったね。俺は竜胆零っていうんだ、よろしく。ところで君の――」

 

「な、なぁ…岡野。今の内に逃げないか…?」

 

竜胆が立華さ…天使と話している間に野坂は俺に近づき、小さな声で俺に話しかけ、今から逃げる提案を持ちかけた。

 

「そ、そうだよぉ…。今天使はあの竜胆って人と話してるみたいだし、逃げるなら今の内だよ?」

 

続けて近くにいる関根さんも小声で話しかけてくる。

確かに今天使は竜胆と話してる……と言うより、竜胆が途中から一方的に話しているので、俺達の方を見ていない。

前回のオペレーションで腹を刺された件もあるし、いつまでもいると気まずくなるかもしれないので関根さんの言うとおり、逃げるなら今しかないのかもしれない。

竜胆がベラベラと天使と話している間に、俺と野坂と関根さんはその場からこっそりと逃げ出す事に成功し、少々遠回りになったが、食堂までたどり着くことができたのだった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

「そんな事があったんだ……」

 

「そうそう。もう大変だったんだから~~」

 

俺が入江さんに説明をし終わらせると、関根さんはまるで自分が説明したかのように大変だったのだと言って会話に加わってくる。

 

「いくらイケメンでもさ、いきなり女の子の頭を撫でようとしたり手を繋ごうとしたりはね~……。あんな行動を見てたら下心丸出しですよ~って言ってるようなもんだよ」

 

「何ともまあ、変な奴が入ってきたもんだよね……」

 

「うぅ~…。皆の話を聞いてたらその人と会うのが怖くなってきたかも……」

 

まあ~…、皆の話を聞いたらそう思っちゃうよね~。

でも、そんな奴でも、竜胆もゆりみたいな壮絶な過去を送ってたのだろうか…。

もしその生前の過去が原因であんな性格になったとしたら、何か少し同情をしてしまうかもしれない…。

 

「と……とととこころで、せせ…関根ちゃんは何で竜胆とい…いい一緒にいたたたたの……?」

 

俺が竜胆の事を考えている間に、野坂がテンパりながら関根さんに何故竜胆と一緒にいたのかを質問をした。

……言われてみれば、何で関根さんは竜胆と一緒にいたんだろう。

 

「え? あ~、その事か。今日バンドの練習が午前中だけあって早めに終わったんだけどさ、私だけちょっと用事があったから皆より帰るのが遅かったんだ。それでその用事が終わって適当にぶらついてたらアイツと会ったって訳」

 

「そそそそそ……そそうなんだ」

 

もう何か野坂の奴、テンパりながら普通に喋るようになったな。ある意味慣れたのか…?

 

「ところで、用事って、ガルデモ関連の?」

 

竜胆とは恐らく偶然あったものだと分かったが、関根さんが会話の途中で言ってた“用事”という単語が気になり、今度は俺が質問をしてみた。

 

「ぬっふっふっふ……よくぞぉ聞いてくれた! 流石はおかのん。そう! それはガルデモ関連の用事であ~る!」

 

「……どんな用事なの?」

 

「その用事は私にしかできなく、私じゃないとできない用事なんだよ!」

 

「――と言ってるけど、関根さんの言ってる事ってホントなの? 入江さん」

 

このまま関根さんに聞いても面倒な引き伸ばしが続きそうだったので、同じガルデモメンバー且つ、関根さんと親しい入江さんに聞いてみた。

関根さんが『みゆきちに聞くとかハンソク~~!!』と言っているが、そこは無視しよう。無視無視。

 

「えっと……うん。しおりんの言ってる事は本当だよ。そこまで大掛かりな事じゃないけど」

 

「な…なな、何をやってるの?」

 

「活動日誌だよ」

 

「活動日誌?」

 

何で活動日誌を関根さんが書くんだ?

イメージ的には入江さんがそういうのをやってそうな感じなんだけど。

 

「しおりんって演奏時に突然アドリブで弾き始めたりする時があったり、いろんなイタズラをするからその罰として書かされてるんだよ」

 

あ~、納得。

 

「み~ゆ~き~ち~~…? ベラベラと喋るこのお口がいけないんか~? そんな軽い口などこうしてくれるわぁーー!!」

 

入江さんがアッサリと本当の事を話してしまった事に不満だったのか、関根さんは、入江さんの背後に回り、マシュマロのように柔らかそうなほっぺの肌を掴み、グイッっと引っ張った。

 

「ふぇは~~い! ひおひ~ん、いふぁいはらははひへぇ~~(痛~~い! しおり~ん、痛いから離してぇ~~)」

 

「へへ~~ん。あの後の会心の壮絶嘘内容を邪魔した報いを受けよ~~!」

 

一体どんなとんでも内容を言おうとしたんだろう。それはそれで気になる。

 

「おいおい、岡野」

 

野坂が軽く俺の足を数回蹴り、小声で俺を呼んできた。

 

「おんっまえは最っっっっっ高の親友だッ!!! あのガルデモメンバーの入江ちゃんと関根ちゃんと会えた挙句、更にあの二人の絡みをこんな間近に見れるとかマジヤッベェェんだけど!!!! ありがとう……ありがとう……! 感謝……!! 圧倒的感謝……!!」

 

野坂は小声ながらも感情の篭った声で俺に何度もありがとうと言い、更には感謝までされてしまい、両手で握手された。あと何か半泣きになってた。

 

「え、あ、う、うん……。よ、よかったね…」

 

俺はこんな時、どんな反応をすればいいのか分からないので、とりあえず笑えばいいと思い、笑ったのだが、恐らく苦笑いをしてたと思う。

 

関根さんとほっぺが赤くなった入江さんと食堂で別れたあと、野坂は大声で叫びながら何処かへと走り出し、その翌日には入江さんと関根さんのファンクラブに入会したらしい。

ユイのファンクラブはどうなったのかというと、一応まだ入っているとか。

そんなんだったら遊佐さんのファンクラブにいた時も入ったままで良かったじゃん……。




以上、22話でした。

えっと…ひとつ言いたい事があります。

一ヶ月も更新が止まってしまって申し訳ありません!!

言い訳にしか聞こえませんが、ここのところパソコンなどに触れる暇がなく、中々内容も進まなく、ネタまでもが思い浮かばなかった結果、こんなに遅くなってしまいました。本当に申し訳ありませんでした!

それではまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。