気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

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新たなキャラクター、竜胆零視点です。


20話 竜胆零

「………ん?」

 

目が覚めると、俺は仰向けの大の字に倒れていた。

大の字に倒れている身体を起こし、辺りを見渡すと、俺が今いる場所はグラウンドで、他を見渡すと沢山ある校舎、テニスコートや体育館が見える。

 

「……という事は、ここは死後の世界か」

 

きちんとアイツに殺された記憶もあるし、あの糞ジジイに頼んどいたから間違いないはずだ。

しかしあの野郎……。俺のハーレム計画を邪魔した挙げ句、俺の女達を横取りしやがってぇ……!!

くそッ!!! 俺が不甲斐ないばかりに彼女達はアイツの魔の手によって……!

 

……だが、済んだ事を気にしても仕方ないな。

もうあの頃には戻れない、今度はこの世界でハーレムを作ってやるぜ!!

………っと、その前にちっと腹減ったな。誰かに食堂まで案内して貰うかな。え~と、可愛い娘は……あのセミロングの茶髪の娘でいいか。

 

「ねぇ、ちょっといいかい?」

 

「ん? どうしたの?」

 

「食堂ってさ、何処にあるのかな?」

 

あまり警戒をされないように、俺は優しい笑顔を作り、柔らかな声で女の子に食堂の場所を聞く。

すると彼女は俺の超爽やかスマイルを見たからか、顔を赤らめ、食堂まで案内をしてくれると言ってくれた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【学園大食堂 内部】

 

やっぱ野郎に聞くよりかわい娘ちゃんに道聞いた方がいいってもんだな!

NPCにもあんな可愛い娘がいるなんてマジいいなこの世界! しかも歳をとらないとか最高すぎるだろ!!

さ~てさて、まずは腹ごしらえ……って

 

「ヤバ……、金ないんだっけ」

 

確か事務室に行けば奨学金が貰えたはずだけど、だこの学園の事は把握仕切れてないし、今から探すのは面倒だな。

しょうがない、ちょっとそこら辺のNPCの野郎に金を貸してもらうかな。流石に女子に貸してもらうなんて事はしたかぁねぇし。

丁度こちらへ向かってきてる一人のNPCの野郎が来たので俺はそいつに声を掛けた。

 

「なあなあ、ちょっとこっちに来てくんないか?」

 

「ん? 何か用?」

 

NPCはきちんと反応し、そのまま上手く人目のつかない場所までへと誘導をさせていく。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「よし、これでいくらか買えるな~」

 

この俺がせっかく金貸してと丁寧に言ったのに断るなんてバカな奴だぜ。

断らなければ痛い目に遭わずに済んだものをよ。

俺は早速NPCがくれた金を麻婆豆腐の食券を買うのに使い、フードコートでおばちゃんに麻婆豆腐を頼み、数分も経たないうちに麻婆豆腐が来た。

それを受け取った俺は何処かいい感じの席がないか探していると、ある人物を見かけた。

 

「お?あれって……」

 

あの輝くように綺麗な金髪にツインテール。そして他の奴らとは違う制服を着てる娘といえば……遊佐しかいない!

後ろ姿だがありゃ遊佐に間違いない、早速行こう! 善は急げってなぁ~。

 

 

「やあ」

 

「……あなたは?」

 

「ちょっと、隣いいかな?」

 

本当なら興奮してそのまま遊佐に話しかけたいが、そこは我慢をして怪しまれないよう、優しげな声で遊佐に話しかけた。

 

「……………構いませんよ」

 

少し間があったが同席を認めてくれたようだ。

俺は笑顔でありがとう、と礼を言って遊佐の左隣の席に座る。

 

………くぅぅ~~~ッ!! 生で見るとめちゃくちゃ可愛いなぁ~!!!!

こんなに可愛い娘がいつか俺にデレデレしたり、恥ずかしがりながら下の名前で呼んだり、あんなことやこんなことができたり………

 

「グフフフフ………!!」

 

ヤバイ、最高だ…! 最高すぎる……!! しかも遊佐だけじゃなく、他の戦線メンバーとも……!

いける! この世界には俺の邪魔をするあの憎たらしいクソ奴はいない!!

この死後の世界でハーレムを築き上げてやるッッ!!!

…っと、麻婆豆腐が冷めちまうな。さっさと食わねぇと。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

一方、竜胆が自分の世界に入ってる間、隣にいる遊佐はというと

 

(いきなり変な笑いをしてはガッツポーズをしたりと……あの様子から見ると、私達と同じ人間の可能性が高いでしょうが、頭のネジが何本か飛んでるみたいですね。断ればよかった……と言いたいのですが、今思っても仕方のない事ですね)

 

「これだから男は……」

 

ボソリと、自分にしか聞こえない程の、やや感情の篭ったドス掛かった声で呟き、横目で竜胆を汚物を見るような瞳で見ている遊佐だが、当の竜胆はその事に気づく事は全くなかった。

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

……うん、確かに辛いがガチで麻婆豆腐が好きな俺に死角はない。

これなら天使とのフラグも楽勝だな! 悪いな音無、天使ちゃんは俺が貰っといてやるよ。

 

そして、俺が麻婆豆腐を食い終えたと同時に先に食べてた遊佐も食べ終えたみたいだ。

よし、ナイスタイミングだ。

 

「なぁ遊佐、頼みがあるんだ」

 

「……何故私の名を?」

 

ヤベッ、つい名前を言っちまった! 何とか誤魔化さないと…!

 

「なぁに、可愛い娘の名はちゃんと調べて覚えてるんだ、俺」

 

俺はニコッと微笑みながらそう言うと遊佐は

 

「……そう…ですか」

 

と、納得をしてくれたみたいだ。どうやら上手く誤魔化せたようだな、危ねぇ危ねぇ~…。

 

「それで、頼みとは…」

 

「あぁ、そうだった、悪い悪い。…んでさ、この学校案内してくんないかな? 俺、まだこの学校の中を把握してなくてな、結構困ってんだ。いいかな?」

 

そう、俺は遊佐に学校を案内して貰い、二人きりになるのでその間に仲良くなってオトす作戦だ。

まだこの学園の中を把握してないのは事実だしな、嘘はついてないもんね~。

 

「……お断りします」

 

何ッッ!!? ここは普通OKするはずなのに……!

いや、落ち着け俺…。こういう時は何度も頼めば相手も折れるはず。遊佐はただ恥ずかしがってるだけに違いない!!

 

「そう言わずに頼むよ。俺まだ校内を把握し切ってないんだよ~」

 

「お断りします」

 

「頼むって~」

 

「お断りします」

 

ちっ……、中々ガードが固いな。

なら、俺の超美形の顔を近づかせて遊佐を虜にしてやる。

 

「なぁ……、いいだろう? 遊佐……。安心しろって、お前は俺が守ってやるからさ…」

 

俺は色気のあるイケメンボイスで頼み込みながらどんどん遊佐の方へと近づき、顔もどんどん近づかせていく。

………うっひょおぉぉぉぉぉ!!!! やっべぇ!! 遊佐超可愛いすぎるッッ!!!

女の子特有の甘ったるい香りに、柔らかそうな唇。一本一本艶やかで、思わず手で触りたくなるような綺麗な金色の髪。もう最高としか言いようがねぇ可愛さだ!!

 

「おいテメェ、ウチの戦線メンバーにナンパするたぁいい度胸だなぁ」

 

「……あぁ? 何だテメェ?」

 

俺と遊佐の会話の邪魔をしてきたドスを持ってるヤーサンみてぇな野郎が現れ、喧嘩を売ってんのか、俺の事を睨み付ける。

遊佐と二人きりの会話を邪魔された俺はクズ野郎の事を睨み返し、言葉を続ける。

 

「俺は遊佐と二人で話をしてんだよ。関係のねぇクズ奴はどっか行ってろッ!!」

 

「んだとッ!!?」

 

「ふ、藤巻くん! 落ち着いてって!!」

 

「食堂でそんなモン抜こうとするなって!!!」

 

「離せぇぇぇぇ!! コイツぜってぇぶっ飛ばすッッ!!」

 

「ぶっ飛ばすならそんなモン抜くなっての!!」

 

俺の言葉に、えーーと………誰だっけ?野郎の名前なんて覚えてねぇや。しかもモブだからどうでもいっか。

話を戻すが俺の言葉にドスを持ってるヤーサンみたいな男がドスを引き抜いて俺に襲いかかろうとしたのだが、音無と茶髪の奴がかませ犬みたいな奴を抑えており、かませ犬はジタバタと暴れている。馬鹿丸出しだな。

 

「ハッ、単細胞が。………でさ遊佐、ここの案内をしてくんないかな?」

 

こんなゴミ共をいつまでも相手してられん、早く遊佐を攻略しないとな。

俺はすぐさま遊佐の方へと振り返り、先ほどの話を続ける。

 

「お断りしますと何度も申しているのですが……」

 

「そんな恥ずかしがる事ないって!! 確かに周りが気になるのはわかるけどさ、いざとなったら俺が守ってやるよ!」

 

俺は爽やかな笑みをし、遊佐の綺麗な髪を撫でようとするのだが、恥ずかしいのか、遊佐は数歩後ろに下がって俺のナデナデを回避したようだ。

遊佐は恥ずかしがり屋だなぁ~。

 

「私はこの後やらないといけない用事があるので校内の案内は他を当たって下さい」

 

何!? そうだったのか! だからあの時断ってたのか……。

くそっ! 俺とした事が………! ならば遊佐の仕事を手伝おう!

 

「じゃあ! その用事を手伝ってやるぜ!!」

 

「もう間に合ってますので結構です」

 

「遊佐……。そんなに見栄張らなくたっていいんだぜ? いや、そういう遊佐も可愛いけどさっ♪」

 

わざわざそんな嘘を付かなくても俺は快く手伝うのに……おっと、つい可愛いなんて言っちまった。まあ、事実だからいいか。

 

「嘘ではありません。彼がそうなのですから」

 

遊佐はそう言うと、誰かの方を向く。俺は遊佐が向いてる方を見てみると、目元のとこまで普通に掛かっていない黒髪に黒い瞳。特に顔も良い訳でも悪くも無いと、ガチでそこら辺にいそうなモブ野郎と目が合った。

コ、コイツが……だとぉぉ…ッ?! しかもこんな奴、本編にいなかったぞ!!?

という事は、コイツも俺と同じ………いや待て。あの野郎は俺以外の奴は来ないと行ってたんだ……。

……だとしたら! コイツは遊佐の事を狙ってる腐れモブキャラって事かッ!!

モブの分際でふざけた事をぉぉ………ッ!!!

 

「………だってさ、日向。わざわざ遊佐さんの仕事を手伝うなんて熱心なんだな…」

 

「いや、どう見ても俺じゃなくてお前だろ」

 

わざとしらばっくれて俺は別にやましい事なんか考えてませんアピールかぁ?

甘ぇんだよッ!! んな三流芝居をしたって俺には嘘だってわかってんだっつうの!!!

 

「テメェェェェ!! 遊佐に何をするつもりだッッ!!!」

 

「ちょ、ちょっと待って下さいって!! 俺何も知りませんよ!!? それに何もしませんから!!」

 

「口ではどうとでも言えるだろうが!! ……こうなったら実力でテメェを叩き潰して遊佐を救う!!! 遊佐を賭けての決闘だァァァッ!!!!!」

 

こうして、俺は遊佐をモブ男の魔の手から救うために、決闘を申し込んだ。

 

俺の遊佐に手を出そうとした事、後悔するんだなぁ、クソモブ野郎ッ!!!!!!




以上、20話でした。

今回は、竜胆が岡野達と会うまでに何をしていたのかという感じの話です。

竜胆のキャラ紹介を活動報告でやろうかと思ったんですが、あまり見る人がいなさそうですし、岡野と一緒にキャラ紹介の話を、次か、その次の話で書こうと思っています。

それではまた次回

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