気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

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この回で主人公の名前が明らかになります。
戦線メンバーがキャラ崩壊しないよう頑張りたいです。


2話 名前

【保健室】

 

さて、銃を乱射してる奴らを見た俺はあの場から逃げてきたのだが今は保健室にいる。

流れ弾が左頬に当たり、血がでてたので目の前にいる金髪ツインテールの少女に手当てしてもらっている

 

「はい、終わりましたよ」

 

「あ、うん。ありがとう。えぇっと…」

 

礼を言おうとして名前を呼ぼうとしたが名前がわからない。

そりゃあ今日初めて会ったんだし聞いていないから名前がわからないのは当たり前だ

 

「……遊佐です」

 

「あ、遊佐さんって言うんだ。じゃあ、改めてありがとう遊佐さん」

 

どうやら彼女は遊佐と言う名前のようだ。

名前もわかったので、俺は改めて遊佐さんに礼を言う。

 

「いえ、気にしないで下さい。ところであなたの名前は……?」

 

そういえば名前言ってないな。相手も教えてくれたんだし、ちゃんと俺も教えないと

 

「あぁ、そういえば名前言ってなかったね。俺は岡野弘樹って言うんだ」

 

「岡野さん……ですか。では岡野さん、あなたのその傷は何の傷ですか?」

 

遊佐さんが言ってる傷とは俺がさっき怪我した左頬の事を言ってるのだろう。

手当てしてもらったとはいえ、素直に真実を話したら俺の命が危うい。

ここは上手く誤魔化さないと……。

 

「あぁ、これは葉っぱで切ってしまったんですよ! ほら、葉っぱって意外と切れるじゃないですか」

 

「嘘を付くならもっとマシな嘘をついて下さい」

 

「…………」

 

速攻でバレてしまいました。

 

「もしかして…食堂前で戦ってる戦線メンバー達の流れ弾に当たったとか…」

 

何て推理力だよ……。あの場にいなかったし見てもいないのにどうしてそんな推理ができたの!?

 

「な……! ななな何言ってるんですか遊佐さんッ!! 俺は決してこれ以上流れ弾に当たるのが怖くて逃げた訳ではな……あっ」

 

「………」

 

ハメられた……。いや、俺が勝手に自滅しただけなんだけど。

しかも遊佐さんが呆れた目で見ている。あぁ……俺の人生終わった……。

 

「……命は取りませんよ」

 

「……え?」

 

「何もかもが終わったみたいな顔をしていましたから」

 

俺、そんなに絶望しきった顔をしてたの?

 

「ホ、ホントにホント…?」

 

「ホントにホントです。約束してもいいです」

 

「…………よかったぁ…」

 

一応100%信じてる訳ではないが今は殺されないのを知り、一先ず安心する。

 

「大袈裟ですね」

 

「そりゃあ銃撃ってるとこを見たら殺されると思うって……。というか、何であいつらは銃を…」

 

俺は何であの連中が銃を持っているのかを聞こうとするのだが

 

「はい、遊佐です。………はい。…はい…」

 

遊佐さんは突然左耳についてるインカムらしき物を左手でそっと抑え、誰かと話しだした。ていうか、本物のインカムだったんだ……。

 

「…はい、わかりました。そちらへ向かいます。すみません、用ができたのでこれで失礼します」

 

「あっ、ちょっと…あでっ!」

 

遊佐さんが保健室から出たので慌てて追いかけようとするが、足がもつれて転んでしまった。何か自分でも見事に情けない転び方をしてしまったが、幸いにこの保健室は俺以外誰もいないので情けない姿を見られずに済んだ。結局情けない事に変わりはないけど……。

 

「結局何で生徒会長に銃を撃ってたのか聞けなかったな……。というか、はいはい頷いてたけど、一体何の話だったんだろう」

 

……いや、下手に質問をしたら何かされるという事もあるかもしれない。

生徒会長一人にあんな大人数で銃を乱射したくらいの連中なんだ、そんな興味本位で聞いたりしたら俺までハチの巣になりかねないかもしれん。

 

「……とりあえず今日は寮に帰ろう。明日もテストがあるんだけど……サボっちまえ」

 

俺は少しヤケクソ気味にテストをサボろうと思い切って決め、寮へと足を向ける。

いざとなれば風邪引いてましたといえばいいだろう。しっかし、今日は嫌な一日だったよ……。

 

(腹、減ったなぁ……)

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【次の日 学園大食堂内部】

 

まだ昼になっていないのだが、今俺は食堂におり、オムライスを食べながらのんびりと食事をしている。

 

「うん。やはり静かなとこで食べると落ち着くなぁ~」

 

ちなみに今は授業中……というよりテスト中なのだが、昨日の宣言通り俺はテストをサボった。

別に俺がサボったところで注意してくれる生徒なんていないだろうし、親しい友人だって一人もいない。というより俺にはこの学園に友達はいない。

気づいたら知らない学園にいたのにそんな悠長に友達作りなんてできる気がしないし、何よりもこの学園に来る前の記憶がない。

記憶喪失なのかもしれないと思い、前に何回か病院に行こうとしたのだが何故か学園から出られなかった。わけがわからないよ。

今日はテストサボったから先生に聞く訳にはいかないし…。

 

どうでもいい事だが、朝起きたら怪我してた左頬が完治していた。

酷い怪我じゃないとはいえ、こんなに早く治らないよな?

 

「……この学園にいる事しか記憶がないんだもんなぁ…。親の顔がわからなければ親の名前さえも思い出せない。わかるとしたら自分の名前と右利きじゃなくて左利きだというちょっとした違いくらいだよ」

 

誰もいない食堂で一人寂しく溜め息をつくと足音が聞こえてくる。この食堂は俺しかいないから足音がよく聞こえる。足音がする方へと顔を向けると

 

「生徒会長……」

 

食堂に来たのはこの学園の生徒会長、立華奏(たちばな かなで)だ。

金色の瞳に白く長い髪。少々小柄の美少女だ。

前に誰かが『天使ちゃんマジ天使』とか言ったり『天使ちゃんペロペロ』と言ってた奴がいたな。

確かに可愛いがもうそれは病気レベルを越えていると思う……。何で天使なのかは謎だけど。

親しい人は誰一人いない俺でも最低でも生徒会長と副会長の名前は覚えている。

しかし、何故会長がここに来たのだろう。

というより、無事だったのが少し嬉しかった

 

「何をしているの?」

 

「見ての通り、食事をしてるけど……。生徒会長こそどうしたの?休み時間とはいえ、今はテスト中だろ?」

 

「先生が隣の組の生徒が一人無断欠席してると話してくれたから見回りをしてたの。それと休み時間の食事は校則違反よ」

 

「え?」

 

いちいち校則なんて覚えていないので全く知らなかった。生徒手帳にも書いてあると言っているので胸元のポケットにある生徒手帳を開き、確認すると本当に書いてあった。

 

「生徒会長、ここにいましたか」

 

続いて生徒会副会長の直井文人がこちらへとやってきた。

黒い髪に帽子を被っており、制服もしっかりと着ている。

まあ、ほとんどの人はきちんと制服を着てるけどね。

 

「…ん?あなた、ここで何をしているのです。休み時間での…」

 

「その事はもう言ったわ」

 

恐らく副会長は校則違反と言おうとしたんだろうが、言い切る前に生徒会長がその事はもう言ったと言い、副会長の言葉を遮る。

 

「……そうですか。では、ここは僕にお任せ下さい」

 

「わかったわ、お願いね」

 

そう言うと、生徒会長は食堂から去っていった。そろそろ休み時間が終わりそうだから自分の教室に戻ったのだろう。

 

「さあ、付いて来て下さい」

 

「……はい」

 

一応飯は食い終わったので副会長に付いていく。

一体何処に向かうんだろうな…。

 

 

 

 

 

 

【反省室】

 

「今日一日ここで反省して下さい」

 

背中を押され、俺は初めて見る部屋へと入れられる。ベッドとトイレしかなく、まるで牢屋みたいなところだ。すると扉が閉まる。

 

「お、おい!? 何だよここ!! 校則違反しただけでこれかよ!!! 俺は犯罪者じゃないんだぞ!!?」

 

俺は慌てて閉められた分厚い扉を何度も叩くが、返事は帰ってこないく、ただ分厚い扉を叩く音が辺りに響くだけだった。

 

「くそっ、校則違反でこれかよ……!」

 

とりあえずベッドへと座る。今日はサボる気満々だったから爆睡したんだよなぁ。

おかげで全く寝る気が起きない。どう暇を潰そうか考え…外が騒がしいな、俺みたいに誰か校則違反をしたとか……

 

「この部屋に入れ」

 

「キャア!」

 

少女は副会長に押されて転ぶ。……副会長、女にも容赦ないッスね…。

てか、ホントに誰か校則違反をした人がいたとは…。

 

「今日はこの部屋で一日中反省するがいい」

 

そう言い残し、分厚い扉は鈍い音をだして閉まる

 

「あたしとした事がしくじったわ…。まさかNPCに捕まるなんて…」

 

NPC? この人は一体何を言ってるんだ?

おまけにこの制服とこの少女、前にも言ったかもしれないが女の人と男達が集まって何かしようとしてた時にいたあの少女だ。

髪の色は紫……に近い色をしており、髪は肩までかかっておりヘアバンドを付けている。少し前に、男達に命令をしてたのを見た事あるから、あのグループのリーダーなのか?多分。

 

「こんなに厳重だと脱出は無理かもしれない…って、あなた誰!?」

 

気づくの遅いですね。てっきりわざと無視してるんじゃないかと思いましたよ

 

「校則違反をしただけでここに閉じ込められてしまった生徒です」

 

「そ、そう……」

 

せっかくだし、自分から自己紹介でもするかな。

このまま何も話さないのもアレだし

 

「あ、俺岡野弘樹」

 

「え?」

 

「俺の名前だよ、君は?」

 

「……ゆりよ。仲村ゆり」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【Side―仲村ゆり】

 

あたし達、死んでたまるか戦線は昨日に引き続き、今日も我らが戦線の敵天使を貶めるためにテストを妨害する作戦をしていた。メンバーをほぼフルで参加させたためか、生徒会に包囲され、みんな捕まってしまった。

野田くんはテスト中ブツブツ言ってたり今にも騒ぎそうでヒヤヒヤしたのだが、昨日は問題なかったからこれはイケるかもと思ったのに……。考えが甘かったわ…。

早くここから脱出したいところだが

 

「こんなに厳重だと脱出は無理かもしれない…って、あなた誰!?」

 

辺りを見渡すとベッドに一人の男が座っていた。

黒い髪黒い瞳、伸びすぎでも短すぎでもない髪の長さ。特に変な顔をしている訳でも無く、カッコイイ顔をしている訳でもない。良くも悪くも普通の顔立ちをしている。

……けど、あの制服はNPCなのかしら?

 

「校則違反をしただけでここに閉じ込められてしまった生徒です」

 

「そ、そう……」

 

考えてみればNPCは基本校則違反はしないのだけれどこの人は校則違反をしたみたいだ。じゃあ彼はNPCじゃなくて人間?

 

「あ、俺岡野弘樹」

 

「え?」

 

突然彼は名前を言い出し、あたしはいきなりすぎたので一瞬何を言ってるのかがわからなく、少し間抜けな声を出してしまった。

 

「俺の名前だよ、君は?」

 

どうやら彼の名前岡野弘樹と言うらしい。

岡野という人物はあたしに名前を聞いてきたので

 

「……ゆりよ。仲村ゆり」

 

あたしも自分の名を名乗る。

恐らく彼はあたし達と同じ人間の可能性が高い。ならば彼も死んでたまるか戦線に勧誘をさせないといけないわね……。




戦線のリーダーであるゆりと出会ったところで終わりです。
まだ本編突入してないので音無もいません。主人公以外のオリキャラも一人や二人は出そうする予定です。

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