気づいたら知らない学園にいました   作:椎名

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15話 トラップ・フェスティバル

【ギルド連絡通路 B6】

 

「開く?」

 

「もち無理だぜ」

 

今俺達がいる場所は鉄球が転がってきたところとは違い、機械的で一本通路にいる。

通路の中の明かりは赤く、藤巻は扉を開けようとしているのだがどうやら開かないみたいだ。

 

プシューーッ……!!

 

一番後ろにいた俺が最後に入ると、後ろの扉が自動的に閉まる音がした。

 

「あぁ!?しまった忘れてたよ!ここは閉じ込められるトラップだった!!」

 

後ろのドアが閉まった瞬間、大山はこの通路は閉じ込められるトラップだと説明口調で答えた。

 

「そんな大事な事忘れるなよぉ!!!」

 

音無はそんな大山の今更の説明にツッコミを入れた。まあ、確かに忘れるなよ。

 

「あさはかなり……」

 

椎名さんがお約束のあさはかなりを言った後、先ほどまで赤かった通路の明かりは白い明かりへとなる。

 

「ここからヤバイのが来るわよ!」

 

「避けろぉ!」

 

「しゃがんで!!」

 

藤巻とゆりの言葉に、皆は言うとおりに下へとしゃがみこむ。

よくわからないが俺も皆と同じく下にしゃがみ込んだ。

 

「ふっ……!」

 

椎名さんはしゃがみ込みながら何かを投げると、その投げた物から煙が巻き上がってくる。

恐らく投げた物は煙玉なのだろう。くノ一の様な格好をしているだけあって使う物も忍者のような物なんだな。

そんな下らない事をひそかに思ってると、赤いセンサーらしき物が見えてきた。

 

「当たると……どうなんの?あれ……」

 

「最高の切れ味で胴体を真っ二つにしてくれるぜ」

 

音無の問いに日向は余裕なのか、軽いノリで答えた。

もしアレなんかに当たって真っ二つにされると考えると血の気が引いちまうよマジで……。

 

「第二射来るぞぉ!」

 

日向が軽い説明をした直後、赤いセンサーが此方へと向かい、藤巻が叫ぶ。

 

「どうすればいいんだよ!?」

 

「くぐるのよ!」

 

ゆりの言うとおり、皆上げていた顔を地面に付け、回避に成功する。

 

「第三射来るぞ!」

 

「第三射何だっけ?」

 

「Xだ!」

 

藤巻が再び赤いセンサーが此方に来る事を言い出し、ゆりが第三射が何なのかを確認すると、また藤巻が答える。

赤いセンサーはXの形となり、こちらへと向かってくる。

潜るだけで避けられる第一射、二射とは違い、第三射のX字は範囲が大きい。

 

「あんなのどうしろってんだよ!」

 

特定の誰かに言っている訳ではないがそう叫ぶ音無だが

 

「それぞれ何とかして!」

 

と、ゆりが答えると「そんな無茶な!!?」音無は驚愕の声をあげる。

そんな事言ってる間にセンサーが迫って来た。

藤巻は飛び越え、ゆりはしゃがみ、椎名さんは藤巻きと同じく飛び越える。

音無と日向も飛び越え、大山は下へとしゃがみ、TKは飛び越える。残るのは一番後ろにいる俺と前にいる松下五段だ。

 

「早く開けろッ!!!」

 

松下五段が扉を開けようとしてる藤巻に言う。

一方の俺は、下の避けられる幅はかなり狭いが、無理して飛び越えるよりしゃがんだ方が避けられる可能性は高いという事で、ゆりと大山と同じ方法で決めていた。

そうと決まれば身体の体勢を低くしようとするのだが

 

「うぐをあああぁぁぁぁぅぅおおぉぉッ!!!!」

 

「……ッ!!?」

 

前にいる松下五段は太っている体型の所為か、避ける事ができず、赤いセンサーに切り刻まれながら悲鳴を上げる。

大量の血が飛び散り、その血は俺の顔や制服などにも掛かった。

目の前でセンサーによって身体が刻まれる松下五段を見た俺は一気に気分が悪くなり、吐きそうになるのだが、センサーは俺の都合を考えていないかの如く迫ってくる。

吐き気を我慢しながら俺はどうにかしゃがみ込む。

センサーが若干背中に当たったが、制服に掠っただけで特に損傷はなく、回避に成功できたみたいだ。

 

「開いたぞぉ!!」

 

藤巻が開けたのか、閉じていた機械的な扉は開いており、皆は一斉に通路から出る。

俺も早くこの場所から出ようと進もうとするのだが、俺の前にはバラバラに引き裂かれた松下五段の姿があった。

血も大量に広がっており、切り刻まれたところから内臓などが飛び散っており、それを見ると再び気分が悪くなり、胃から何かが込みあがって来るような感じがし、吐き気も襲ってきた。

いつまでもここにいるとまたセンサーが来るかもしれないので、ワンテンポ遅れたが俺も早く通路から出る。

 

「うぅおおぉぶぇぇぇ………!!!」

 

通路から出たと同時に俺はその場に倒れこんでは思い切り吐き出し、吐瀉物(どしゃぶつ)が大量に出てきた。

先ほど松下五段がバラバラになっていた死体を見たばかりからか、あの光景が浮かぶ上がり、吐き気が収まる事がなかった。

 

「今度の犠牲は松下くんかぁ……。あの体じゃ仕方ないわねぇ…」

 

「少しはダイエットしろってもんだ」

 

「ゲホッ…!ゲホッ…!ゲホッ……!うぶえぇぇぇ……ッ!!」

 

ゆりと藤巻が松下五段が犠牲になった事を言ってる間、俺はまた嘔吐をしそうになりそうだったが、どうにか我慢をしようとするが、頭から離れないあの光景ばかり思い出してしまい、再び吐き出してしまう。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【ギルド連絡通路 B8】

 

時間が掛かってしまったが、音無や椎名さん達が俺の心配をしてくれ、背中を擦ってくれたおかげで吐き気はどうにか収まり、再び先へと進んでいく俺たち死んだ世界戦線一行だが

 

――パラパラパラ……

 

上から小石が落ちてくるので上に何かあるのかを確かめようとすると

 

「おいィ!!? て、天井から何か迫ってきてるぞぉぉぉぉ!!!!??」

 

「トラップが発動してるわ!」

 

「しまった忘れてたよ! ここは天井が落ちてくるトラップだったぁぁぁ!!!」

 

「だからそんな大事な事忘れるなよぉぉぉぉおお!!!」

 

再びこの部屋がどんなトラップなのかを説明する大山と、遅すぎる説明にツッコム音無。

 

「もう駄目だぁぁ!! 下敷きにされておしまいだあぁぁぁ!!!」

 

俺はしゃがみ、頭を抱えてながら弱音を吐いて諦めるのだが

 

「……あれ? 生きてる……!?」

 

いつまで経っても天井が襲って来なく、恐る恐る顔を上げてみると、そこには落ちてきた天井を一人で支えてるTKの姿があった。

 

「「「「「「「TKッ!!!!」」」」」」」

 

「Hurry up! 今なら間に合う! Oh…飛んでいって抱きしめてやれぇぇ……ッ!!」

 

「ありがとう」

 

「じゃあな」

 

「達者でな」

 

ゆり、藤巻、日向は心がこもってない返答をして出口へと進む。

コイツら間違いなく鬼だろ………!!

 

「ひいぃぃ……」

 

「………Sorry」

 

「TK、本当にありがとう!!」

 

俺は天井を支えてるTKにお礼を言、脱出する。その瞬間、天井が鈍い音をして落ちる。

 

「TKまでもが、犠牲に……!」

 

「したんだろ、お前らが」

 

「いやだから、大丈夫だって。平気平気」

 

「うっ………!!?」

 

TKが死んだのだとわかると、再び松下五段の死体を思い出してしまい、またもや吐き気が襲ってくるので俺は口元を押さえ込む。

 

「お、岡野くん大丈夫……?顔色悪いよ…?」

 

「だ……大丈夫……。ちょっと嫌な事を思い出しただけ……」

 

口元を押さえてる俺を心配する大山だが、俺は全然大丈夫じゃないのに大丈夫と無理に強がった発言をする。

 

「犠牲を無駄にしないようにね。行くわよ」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【ギルド連絡通路 B9】

 

「何も……ないみたいだな。……早く行こう!!」

 

これ以上何か起こる前に俺は皆より先へ進んでいく。

 

「ちょっと岡野くん!あまり先に行っちゃ………!」

 

「どうした?」

 

ゆりがいきなり立ち止まるので、それに疑問を思った日向は問いかけた

 

「何か……ハッ!」

 

その瞬間、ゆり達がいた場所の床が崩れる。

俺のいた場所も崩れたが、幸いにも崩れていない場所がすぐ近くにあったので俺はその場所へと移動をする。

 

「しまったぁ!忘れてたよここはぁぁぁぁ…………」

 

「だ、だから!忘れるなよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

大山は言い切る前に底が見えない下へと落ちていき、音無はもう下へと落ちていった大山にツッコミをいれる。

 

「み……皆!!大丈夫か!!?」

 

どうにか俺は一人だけ落ちずに済んだが、皆は人間タワーみたいになってぶら下がっているみたいだ。

椎名さんがロープみたいので藤巻の腹部分を縛って押さえ、藤巻より下にいるみんなはそれぞれ自分の上にいるメンバーの足を掴み、落ちずに済んでいる状態だ。

 

「ぐうぅ…!重すぎて…持たないッ……!!」

 

下から覗くと一番下にぶら下がっているのは音無でその次が日向、ゆり、藤巻、椎名さんの順だ。

男二人ぶら下がっているので女のゆりにとってはかなり辛いはずだ。

 

「俺も音無も落ちるか!?」

 

「ちょっと待て!勝手に決めるなぁ!!!」

 

日向は苦しんでるゆりの声を聞いて自分と音無も落ちる提案をするが、音無は当たり前だがそれを拒否する。

 

「ここで一気に戦力を失うのは得策ではない!」

 

「わかってるわよ!早く登んなさいよ!」

 

「音無、いけるか!?」

 

「やるしかないだろ?ふんッ……!」

 

「ああぁぁッ!!」

 

「ゆりッ!大丈夫か!?」

 

ゆりの悲鳴を聞いた俺は声を掛ける

 

「大丈夫じゃないわよ………って、何してんのよ!休んでないで早くしなさいよ!!」

 

「何処掴めばいいんだよぉ!!」

 

「何処でもいいわよ!好きにしなさいよ!」

 

その後、少し時間経ったら音無が登って来たので、俺はすぐさま音無の手を掴み、引っ張りあげる。

 

「すまねぇ、助かった」

 

「このぐらいお安い御よ――」

 

「きゃあぁぁ!!!そんなとこ持てる訳ないでっしょぉぉぉ!!」

 

「うわぁッ!うわあぁぁはあぁぁぁ馬鹿あぁぁぁぁ………!!!!」

 

何処かいけないところを触ってしまったのか、恐らく日向はゆりに蹴飛ばされて落ちたのだろうと俺は推測をする。

その後、登ってきたゆり、藤巻、椎名さんの順に手を伸ばし、引き上げた

 

「え、えぇと…日向の奴――」

 

「尊い犠牲となったわ」

 

「……そう」

 

音無が日向の事を言おうとしたが聞く前にゆりは答え、音無はそれ以上聞かなかった。

お前が蹴飛ばしたんだろうに……。実際口にしたら何されるかわからないので黙っておく。

 

「ふぅ……。ついに五人になっちゃったわね……」

 

心なしか、何処か暗い表情をしているゆり。一体どうしたんだろう……?

声を掛けるべきか、掛けないべきか少し悩んでいると、藤巻が俺と音無に対して話しかけてくる。

 

「へっ、よくもまあ、新入りのテメェと陽動班の岡野が生き残ってるもんだな」

 

「……まぁな」

 

「ホントなら最初のとこで死んでたけど椎名さんが助けてくれたおかげで何とかね……」

 

「次はテメェらの番だぜ……」

 

何だろう。こういうの、フラグって言うんだっけ?

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【ギルド連絡通路 B13】

 

「……………」

 

返事がない、ただの屍のようだ。

藤巻が目を空けながらプカプカと水の上で浮かんでいる。

 

「水攻めね……」

 

「コイツ、カナヅチだったのか…」

 

「俺も泳ぎは得意じゃないけど、このくらいなら……」

 

「プハァ……!」

 

水の中から出口を探していた椎名さんが帰ってくる。

 

「出口はこっちだ、こい」

 

出口という言葉を聞いた俺達は潜水し、先に潜った椎名さんの後へと続き、出口へ向かっていく。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

【ギルド連絡通路 B15】

 

「………プハァ!!ハァ…ハァ……ハァ……!ゲホッ…!ゲホッゲホッ!!」

 

や、やっと出れた……。結構道が長かったから意識を失いかけたぞ……。

どうやら最後に水中からあがったのは俺みたいだ。

 

「岡野くん、ほら」

 

「あ……ありがとう…」

 

俺はゆりの手を掴み、対岸へと上がる。

音無もゆりも結構辛かったみたいだ。結構息が荒くなってる。

あんだけ長く水中にいればそうなるわな……。

 

「ゆり、こっちだ!」

 

「椎名さん?」

 

ゆりが椎名さんのいる方に向く。椎名さんのいるところに階段があるみたいなので、俺が次に進む道なのだろう。

 

「……行きましょう」

 

俺たちは椎名さんのいる場所へと向かおうとすると、子犬のぬいぐるみが入ってるダンボールが川の上にぷかぷかと浮かんでおり、流れている。

 

「ん? 何であんなもんが?」

 

「あれは……!」

 

ゆりは子犬のぬいぐるみを見て何か察したらしいが、後ろから大きな叫び声が聞こえてくる。

 

「あああぁぁぁぁ!!子犬が流されているうぅぅぅぅぅ!!!!」

 

その叫び声の正体は、階段のところにいた椎名さんであり、そんな彼女は川に流されている子犬のぬいぐるみに目掛けて走り出し、川の中へと飛びこんだ。

 

「えええぇぇぇぇ!!?」

 

「椎名さん駄目ぇぇぇ!!!!」

 

「椎名さぁぁぁぁん!!! それぬいぐるみぃぃぃぃ!!!!」

 

ゆりと俺は叫ぶが、時既に遅し。

椎名さんは川から勢いよく現れ、ダンボールにいた子犬を手にしたのだったが――

 

「!」

 

手にしたのは子犬ではなく、子犬の“ぬいぐるみ”だった事に気づくとそのぬいぐるみを抱き

 

「不覚! ぬいぐるみだったああぁぁぁぁぁぁ……………」

 

と叫びながら、椎名さんは滝の下へと落ちていった。

 

「くっ…! 椎名さんまでもがトラップの犠牲に……ッ!」

 

「あれも天使用のトラップかよッ!? ……つか、一目で気づけよ」

 

あっ、そういえば音無は椎名さんが可愛い物好きだって事知らないんだっけ。

 

「えっと……椎名さんは可愛い物の部類が弱点なんだよ…」

 

「へぇ~…。意外と可愛いとこあんだな……」

 

俺は椎名さんの意外な弱点を音無に教える。

それを聞いた音無は若干呆れながらも、彼女にも女の子らしいところがあるのを知り感心もしたみたいだ。

 

――こうして、残るは戦線のリーダーのゆりに新しく戦線に入った音無に、陽動部隊の雑用である俺の三人になったのだった。




以上、15話でした。

松下五段のバラバラ死体を目の前で見てしまった岡野。
ちなみに大山も本編通り、松下五段の死体を見て吐いています。
目の前でバラバラになったor血が自分の方へ沢山飛び散った岡野の方が精神的ダメージは大きいんですけど(笑)

現実世界でならもっと精神ダメージは大きいんでしょうが、そこまでリアルに上手く書けないのは申し訳ありません……。

それではまた次回で

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