「……………ハッ!?」
髪はオレンジ色のような髪をしており、模範生の服を着ながら大の字で倒れている少年がおり、目を覚ます。
「ここは…何処だ?」
大の字で倒れてる少年は倒れたまま辺りを見渡すが、自分が何故こんな見知らぬ場所にいるのか思い出そうとするのだが
「何も、思い出せない…」
この場所にいる前の記憶を思い出そうとするが、何も思い出せなく、少年は暗くなった空をただ見ているだけだった。
「目が覚めた?」
「!」
男は慌てて起き上がる。そこには、スナイパーライフルらしき物を構えてる少女がいる。
髪は紫色に近い色で、肩にかかるくらいの長さはある。
頭には黒のヘアバンドをつけており、その右側に黄緑色のリボンをつけている。
辺りには誰もいないので、恐らくさっきの声は彼女の声なのだろう。
「あんた……」
「ようこそ、死んでたまるか戦線へ」
男が彼女に何かを聞こうとしたが、彼女がその男の言葉を遮断し、男の方に顔を向けてそう言う。
【Side―???】
再び前の方へ向き、スナイパーライフルらしき物を構え直している。
一体何をしているのだろう……。黙って見ていても何もわからないので何をしているのか聞こうとするが
「唐突だけど、あなた入隊してくれないかしら?」
「は? 入隊?」
本当に唐突だった。入隊って何の事だよ?
銃を持ってるし、サバイバルゲームの勧誘か何かか?
「ここにいるってことは、あなた、死んだのよ」
「ハァ…?」
いきなり何を言ってるんだコイツは……?
「あの、よくわからな……」
「ここは死んだ後の世界。何もしなければ消されるわよ」
また俺の言葉を遮りやがった……。
とりあえず、今のところは話を合わせておくか。
「消される…? 誰に?」
「そりゃ神様でしょうね」
「…じゃあ入隊ってのは何?」
「死んでたまるか戦線によ。まあ、部隊名はよく変わるわ。最初は死んだ世界戦線、でも死んだ世界戦線って、死んだ事を認めてる事になるんじゃね? ……という事により破棄。以降変遷を続けてるわ。今は死んでたまるか戦線。その前は生きた心地がしない戦線。まあ完全ネタだったから一日で変わったけど」
何か途中、どうでもいい事を話し出したな……。んな事言われてもハッキリ言ってどうでもいいんだが。
「ええと…それって本物の銃?」
「ハァ……ここに来た奴はみんな同じ反応をするのよね。順応性を高めなさい、あるがままを受け止めるの」
同じ反応って……そんな一目で本物だ、ってわかる奴なんてほとんどいないだろう。
「受け止めて…どうすればいいんだよ?」
「戦うのよ」
「何と……」
「あれよ」
銃を構えてる少女が指をクイクイとやる。自分の目で見ろって事なのか……。
「あれが死んでたまるか戦線の敵、天使よ」
俺は少し身体を起き上がらせて彼女が見ている方を見るとグラウンドがあり、そのグラウンドにポツンと一人の少女がいた。
髪は白い髪……というより銀髪の方が正しいかもな。今スナイパーライフルを構えてる少女とは違い、グラウンドにいる彼女は長髪だった。
「やっぱ死んでたまるか戦線はとっとと早く変えたいわ、あなた考えておいて」
おいおい……どう見たって普通の女の子じゃないか。何言ってんだコイツ……? 天使とか言いながら人に銃を向けてるし。あそこにいる娘に聞いた方がいいかもしれないな……。
「あのさ…向こう言っていいかな?」
俺がそう言うと、彼女は勢いよくこちらへと振り向く。
「ハァ!!? 何で!? 訳わかんないわ!!? どうしたらそんな思考に至るの!? あんたバッカじゃないの!? いっぺん死んだら!!? …………これは死ねない世界でよく使われるジョークなんだけど、どう? 笑えるかしら?」
彼女はこちらに迫っては暴言の嵐を叩き込み、俺は彼女の気迫に押されて起き上がらせた身体が再び地面に倒れる。
「ジョ、ジョークの感想はいいとして…少なくとも銃を女の子に向けてる奴よりはまともな話ができそうだからさ」
俺の言葉を聞き、自分より戦線の敵の方がまともな話ができると言われたからか、彼女は納得いかない顔をして立ち上がる。
「あたしはあなたの味方よ。銃を向けるなと言うなら向けないわ! あたしを信用しなさい」
彼女は真っ直ぐな目で俺の事を見ており、その瞳は偽りのない目をしている気がした。
果たして彼女の事を信用してもいいのだろ……
「お~~い、ゆりっぺぇぇぇ~~!!!」
男の声がする、青い髪が特徴的でノリが軽そうな喋り方でこちらへと来た。しかも銃を担いでおり、更に話を続ける。
「新人勧誘の手筈はどうなってんだ? 人手の足りねぇ今が、どんなに汚い手を使ってでも……………あれ?」
……前言撤回、やっぱ信用できねぇわ。
「俺向こう行くわ」
「ぬわあぁぁぁーー!! 勧誘に失敗したあぁぁ!!」
訳がわからない…何なんだ? あいつら……。
とにかくあの娘にここが何処なのか聞いてみよう。あと、あの変な奴らから狙われてるって事も言わなきゃな。
――――――――――――
【Side―岡野弘樹】
俺が戦線に入って約一ヶ月が経った。
雑用の仕事も一通り慣れてきて、戦線のメンバー達とも初めの頃よりは大分仲良くなってきたと思っている。記憶の方は一ヶ月も経ったのに未だ一つも思い出せないままだが……。
(……まあ、焦らずに行こう。焦らずに……)
一ヶ月も経ったのに何ひとつ記憶が戻っていない事に不安を感じているが、それが表に出たら皆に心配されてしまうし、迷惑をかけてしまうかもしれないので心の中で自分に焦らずに、と言い聞かせる。
「えっと、『神も仏も天使もな………」
俺は今校長室の前におり、合言葉を言って校長室のドアを開けようとするのだが
「勝手にやってろって言ってんだよッッ!!!!!」
「ッ!!?」
校長室から聞いた事のない男の声が聞こえ、さっきまで静かだったのにいきなり叫び声が聞こえたので身体がビクンと跳ね、驚いた。
(な……何だ何だ……? 何か知らない人の声が聞こえたけど入って大丈夫なのか…?)
「んだとォッ!!?」
知らない男の声に続き、次は藤巻の声が聞こえてくる。
「何なんだよお前らは! 俺を巻き込むなよッ!!! 俺はとっとと消えるんだッ!!」
消える……?消えるって事は、もしかしてこの世界に来たばかりの人なのかな?
と、とりあえず中に入るか……。別に戦っている訳じゃないみたいだし…。
「えっと……『神も仏も天使もなし』」
次はキチンと合言葉を言い、俺は校長室のドアを開けて中へと入る。
「その説明はしたわ………って、あら岡野くん。おはよう」
「あ、おはようゆり……」
皆クラスSSSの制服を着ている中、一人ボロボロになった模範生の制服を着ているオレンジ髪の男がいる。恐らく彼が消えると言った人なのだろう。
「抗いもせず消される事を望むと?」
オレンジ髪の男と目があったが、高松がオレンジ髪の男に話をかけているのでオレンジ髪の男は高松の方に向いた。
「ああ!!」
「抗いもせずミジンコになると……」
「ああ!!! ……あっ? ミジンコ!?」
高松のミジンコという言葉に反応をするオレンジ髪の男。ていうか何でミジンコ……?
「ハッ!魂が人間だけに宿るモンとでも思ったのかよテメェ!」
「あさはかなり……」
「次はフジツボかも知れん、ヤドカリかも知れん、フナムシであるかも知れん」
「ハ……、そんなまさか……!」
オレンジ髪の男は藤巻と松下五段の言っている事が信じられない表情をしている。
何で浜辺にいるモンばっかに集中してるんだろう……。
「何故浜辺に集中してるのかと突っ込む余裕もなさそうな顔ですね。ちなみに意味なんてありません」
あ、意味ないんだ。
「ほぅらぁ、ここからとっとと出て行けよ。天使の言いなりにでもなって無事成仏するんだろう? フジツボになって人間に食われでもすんだな、幸せな来世じゃねぇかぁ」
「ちょ……ちょっと藤巻! そんな追い出すような事いうなよ! この人だってまだ此処に来たばっかりなんだからさ」
「岡野くんの言うとおりよ、可哀想に。この戦線の本部にいる間は安全なんだから、彼もそれを知って逃げ込んで来たんでしょ」
「いや……知らないし……。入ろうとした途端吹っ飛ばされたし…」
まあ、合言葉がなきゃこの部屋に入れないもんな。俺も知らなくて一回吹き飛ばされたからな。あれは痛かった……。
「ていうか、来世があったとして人間じゃないかもしれないなんて、冗談だろ?」
「冗談でない」
「だって……、そんなの確かめられないじゃないか! 誰か見てきたのかよ!」
オレンジ髪の男の問いに松下五段が答えるが、彼はまたもや信じられないという表情をしている。
「そりゃあ確かめられないわよ。でも仏教では人に生まれ変わるとは限らないと考えられてるわ」
「そんな………フジツボだなんて…」
松下五段の次にゆりが答え、オレンジ髪の男はやや絶望しきった顔をしている。何処までフジツボを引っ張るんだよこの人……。
「いや……そんな絶対にフジツボに生まれ変わるって訳じゃないんだから……。それに仏教でそう考えられてるとしてもそれが絶対と言う訳でもないからそこまで心配しなくてもいいんじゃない?」
「……まあ、そんな事は置いといて。よく聞きなさい、ここから大事よ」
その後ゆりは俺の時に言った事と同じ事を言った。
自分達がかつて生きていた世界は人の死は無差別に訪れるもので、抗いようもなかった。
でもこの世界は天使にさえ抵抗すれば存在し続けられ、抗えるのだと。
オレンジ色の髪の男はゆりの話を聞いて、『お前らは何をしたんだ?』と聞いてきて、ゆりは天使を消し去り、この世界を手に入れる事と答えると、男の方はいきなり世界を手に入れるという言葉を聞いたからか、少々混乱をしているみたいだ。
まあ、いきなりこの世界を手に入れるなんて聞いたら『え?』って思うもんな。
「まだ来て間もないから混乱するのも無理ないわ。順応性を高めなさい、そしてあるがままを受け止めなさい」
「そして……戦うのか? 天使と……」
「そうよ、共にね……」
ゆりがオレンジ髪の男に手を差し出す。
彼は悩みながらもゆりの手を掴もうとしたのだが……
「早まるな!! ゆりっぺああああぁぁはああぁぁぁぁ!!!!!」
勢いよく扉を開けてハルバートを振り回しながら入ろうとしたのだが、合言葉を言ってなかったのか、巨大ハンマーのトラップに吹き飛ばされて窓を突き破り、外まで吹っ飛ぶ。
「アホだ……」
「自分の仕掛けた罠にハマってやがる……」
「俺もああなってたのか……」
「見ていなくても誰かが死ぬのは慣れないもんだな……」
日向は手を顔に当てながら呆れており、藤巻も同様呆れており、オレンジ髪の男は自分もああなってたのか、と言って窓から吹き飛ばされた野田を見ている。
俺は見たくないので反対の方を向いているが、見ていなくても誰かが死ぬというのは慣れない。生き返るんだけどさ……。
「ここに無事に入るには合言葉が必要なのよ。対天使用の作戦本部って訳。
ここ以外に安全に話し合える場所などないわ」
「………少し、時間をくれないか?」
「ここ以外でならどうぞ?」
「うっ……!」
あっ、オレンジ髪の人も俺と同じ事を言われてる。
しばらく彼は考え込むのだが、やがて覚悟を決めたのか
「……オーケーだ!!」
「「「「おおぉ~」」」」
彼のOKの言葉を聞いて他のメンバー達は何やら歓迎ムードになった。
「合言葉は?」
「神も仏も天使もなし」
ゆりはそう合言葉を教え、オレンジ髪の男と握手を交わした。
その後ゆりは自分、日向、松下五段、大山、TK、高松、藤巻、野田、椎名さん、岩沢さんの順に仲間を紹介していく。
「そして彼は岡野くん。少し前に戦線に入ったばかりで陽動部隊の雑用をしているわ」
最後にゆりは俺の紹介をし、俺はオレンジ髪の男によろしく、と言ってゆりと同じく握手を交わした。
「あと、ここにいないだけで、戦線のメンバーはあと何十人も校内に潜伏してるわ」
「ねえ、そういえばこの人の名前って聞いたの?」
「あぁ~、そういえば聞いてなかったわ。あなた名前は?」
誰も彼の名前を言ってないので俺は彼の名前を言えなかったので、聞いたのかどうかを確かめるためにゆりに聞いてみたが、どうやら聞いていなかったらしく、今名前を尋ねた。
「え?あ、えっと……お…音……音無……」
「下は?」
「思い出せねぇ……」
どうやら苗字は音無というらしく、下の名前は思い出せてないみたいだ。この人も俺と同じ記憶喪失の人なのか。
あ、でも俺は自分のフルネームはちゃんと覚えてたな。
「お前も記憶がないパターンか。安心しろ、時期戻るさ!」
「『お前も』? 俺以外にも記憶喪失がいるのか?」
日向は励ますかのように音無の肩をポンと叩くが、音無は自分以外にも記憶喪失の人がいるのかが気になったようだ。
「えぇ、今紹介した岡野くんがそうだわ」
「そう……なのか」
「……まあ、俺の事はともかく、制服は渡さなくていいのか?」
「あ、そうね。忘れてたわ」
「そういえば、何で俺はお前たちと制服が違うんだ?」
「あんたが違うんじゃないわ。あたし達が違うのよ。それは模範生の格好。これがあたし達、クラスSSS(スリーエス)の格好って訳!」
こうして、戦線に新たなメンバー、音無が加わる事となった。
彼も俺と同じ記憶喪失者なので、もしかしたらアイツも俺と同じで記憶を取り戻す時間を稼ぐためにこの戦線に入ったのかもしれない。違うっていう可能性もあるけど……。
ちなみに何で制服がボロボロなのかを聞くと、どうやら野田にボコボコにやられたらしく、何故ワイシャツを着ていないのかを聞くと、天使に刺し殺されてワイシャツが血だらけになったからだと………。
更に何で刺されたのかを聞くと、死なない事を証明しろと言ったら心臓一突きされたらしい。
(……いくら死なない事を証明しろって言われたからって刺すかぁ? 普通……)
刺さなくたってもっと別のやり方があったと思うんだけどなぁ…。
ついにAngel Beats!本編の主人公、音無の登場です。
今回は本編とほぼ変わらない話になってしまったのであまり面白みがないと思われます。
……いや、あまりじゃなくて普通に面白くないですよね、すいません…。