ツイテル話 作:笹鉄砲
ウツロ、この名前を木の葉の忍びが聞けば誰もが、ああ、あのやばいの、と口を揃えるほどに常軌を逸した行動をする下忍である。
ある時は火影岩を改造し、ある時は拷問ではと思われるほどの修行をしたり、と普通の忍とは違う行動をすることが多い。
これは本人にしか分からないがこれらの行動の犯人は柱間や扉間といった変人であってウツロは無実なのだがそれを知っているのは生きている人間では一人しかいない。
そんなウツロの試合なのだから必然的に注目が集まる。
「なあ、カカシ。結局のところウツロの実力はどれほどなのだ?」
尋ねたのは眉毛の濃い先生、マイト・ガイである。
「ん~、たぶんだが下忍、いや中忍でもあいつに勝てる奴はいないんだろうな」
「え? ウツロってそんなに強いんですか?」
カカシの解答に驚いた声を上げたサクラはカカシの方に振り返る。
「強いよ、だって水分身とはいえ再不斬を倒しているし、俺もあいつに負けたし」
「なに!?」
驚くガイを無視してカカシは言った。
「とにかく、この試合をみれば分かるでしょ」
カカシが見守る中試合が始まろうとしていた。
試合会場で見つめあうウツロとザク、そして審判が立っている中でウツロが話し始めた。
「お前さん、片腕折れてるじゃないか。そんな状態じゃあまともに試合も出来ないんだから降参した方がいいと思いますよ」
「はっ、やっとお前を殺せるチャンスが来たんだ降参する訳ないだろ」
「そりゃ、残念ですね。ほっほっほっほ」
普段とは違う話し方をするウツロに違和感を覚えている者が数名いる中、ウツロは肩を竦めやれやれといったポーズを取るウツロに怒りが湧いたザクは静かに怒りを沈める。
「では両者尋常に初め!」
開始と同時に距離をとったザクと違いウツロは動かない。それを不審に思ったザクは距離を保ちながらも睨みつける。
「どうしたのです、さっさと来なさい。そんなに怖いなら片腕だけでやってあげましょうか?」
「なめやがって! 吹っ飛べ! 斬空破!」
ザクは得意技である手から空気砲を放ち、そして直撃した。観客がどうして避けなかったのか不思議に思っているなか舞いあがっていた埃が次第に落ち着いた。するとそこには無傷のウツロが立っていた。
「ふ、ふふふ、埃を巻き上げるだけの技にそんなかっこいい名前を付けるなんて掃除が好きなのですか?」
信じられないような者を見るザクにウツロはさらに笑いかける。
「やっぱりザクでは駄目ですね。せめて、ドムぐらいでないと」
「何を言ってるんだてめぇ!」
ザクは怯えながらも近距離ならどうにかできると考え一気に距離をつめ、そして再び斬空破を放った。
「この距離ならくたばっただろう」
息を切らしながら呟いたザクに聞きたくない声が再び聞こえる。
「あれでくたばると思っているなんておめでたい頭ですね」
「なっ!? う…そだろ」
やはり無傷で立っていたウツロに恐怖しながら一歩後ずさるザク。そこにウツロが話しかける。
「そう落ち込まないでください。あなたの実力は大したものですよ。そうですね、忍者ではない成人男性の戦闘力を1としたら、あなたは5ぐらいありますよ」
はたして、それが励ましの言葉のかどうなのか混乱しているザクにウツロはそれはもう楽しそうに言う。
「ですが、あなたは所詮戦闘力5のゴミです。ちなみにですが、私の戦闘力は53万ぐらいですかねぇ」
ゴミと言われ憤りを感じるもその後言われた53万という数字に驚愕を隠せないザク。普通なら信じないが自分の全力の技を無傷で耐えたことがウツロの発言に信憑性を持たせていた。
「では今度はこちらが攻撃させていただきましょう。そうですね技名は出栖美射無
そう言うとウツロは人差し指をザクに向けた。そして
「出栖美忌無!」
指から放たれた何かはザクの顔を横ギリギリを通り過ぎると後ろの忍者の像の指を粉々に破壊した。
「ほっほっほっほ、かなり加減したのですがまだ強いみたいですね」
ウツロは今度は指を少しずらし今度はザクの頭に狙いを付ける。これに恐怖したザクは降参しようと声を上げようとしたが
「こ、こう、ぐは!?」
「おいおい、こんなところでそんな興ざめなことしないでくださいよ。正直ね、私はあなた方音の忍が許せないんですよ。私の大切な仲間に手を上げたことがね」
腹を押さえてうずくまっているザクを見降ろしながらさらに呟く。
「だからよぉ、覚悟しろよ音の虫けらどもめ、俺と俺たち木の葉と戦うつもりならな!」
人が変わったように叫んだウツロはザクを持ち上げ観客席にいた音の教師に全力で投げつけた。
投げつけられた教師は予想外だったらしく高速で飛んでくるザクに反応が遅れ直撃し後ろの壁へと叩きつけられた。
それを見届けたウツロはそのまま観客席へと歩き出し、それを見ていた審判は急いで勝者の名を叫んだ。