もうこの作品の合言葉が士織ちゃん可愛いで良い筈!
士織「訳がわかりませんよ!?」
なお、この作品の士織ちゃんは士道より頭が良いです。
――久しぶり。
頭の中に、どこかで聞いた声が響く。
――やっと、やっと会えたね、×××。
懐かしいような気がする。そして、声は懐かしむようで、慈しむようだ。
――嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。
待つって、何を? あなたは、誰?
――もう、絶対離さない。もう、絶対間違わない。だから、
そこで声は聞こえなくなった。
「んっ・・・・ひゃっ!」
私は目を開けるとすぐに叫んでしまった。だって、見知らぬ女性が指で瞼を開けて、小さなペンライト?で光を当てていたからだ。
「・・・・ん? 目覚めたね」
眠たそうな顔をした目の下に隈がある女性がぼうっとした声で言った。
「だ、誰ですか?」
女性が距離を開けるとその姿をよく見れた。髪は無造作に纏められ、服は軍服だった。ポケットからは傷だらけの熊のぬいぐるみが顔を覗かせてる。
「・・・・ここで解析官をしている、村雨令音だ。あいにく医務官が席を外していてね・・・・まぁ安心してくれ。免許こそ持っていないが簡単な看護くらいならできる」
「えっと、ここは?」
私はそう言って周りを見渡す。簡素なパイプベッドの上に寝かされ白いカーテンで仕切りを作っていたが、配管や配線が剥き出しになってる天井が気になった。
「・・・・あぁ、《フラクシナス》の医務室だ。気絶していたので勝手に運ばせてもらったよ」
「《フラクシナス》? 気絶って・・・・あっ」
私は琴里を探しに行って、謎の少女と鳶一さんの戦闘に巻き込まれたんだ。
「あ、あの、聞きたいことがあるんですけど・・・・」
村雨さんは無音で私に背を向けた。って、あれ?
「あの~・・・・」
「私は説明下手でね。君に会わせたい人がいるから、その人から聞くと良い」
「その前に・・・・」
村雨さんはそう言うと、何も聞かずに出口の方に歩くがすぐに足をもつれさせて、壁にぶつかった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あぁ、問題ない。最近寝不足でね」
私はすぐに村雨さんに駆け寄ると何事もなかったように壁にもたれ掛かって、言った。寝不足って、どのくらい寝ていないのだろう?と気になった。
「三十年は寝てないな」
「三十年!?」
私は大声を出してしまった。三十年寝ていないって、どんなにしたらそんな年数になるんだろう?と言うより三十年も寝なくて大丈夫なのかと、思った。
「と言うよりも、最後に睡眠をとった日を思い出せなくてね」
「そっちの方が大変じゃないですか!」
最後に寝た時を覚えてないなんて、本当に大丈夫何だろうか?と思っていたら村雨さんがラムネを食べるように大量の薬を飲んだ。
「何飲んだんですか?」
「全部睡眠導入剤だ」
「多い! 寝る以前に二度と目が覚めませんよ!?」
「今一つ効かなくてね」
「どんな体質ですか!?」
正直、村雨さんが人間か疑ってしまう。と言うより人外と言っても納得してしまう。失礼とは思うけど、そんなことを思ってしまう。
「とりあえず、案内するから付いてきてくれ」
「は、はい」
私は前を行く村雨さんの後を歩きながらあたりを見た。まるで映画で見る潜水艦のみたい。けど、琴里のことが心配で落ち着かなかった。
「・・・・ここだ」
いつの間にか横に小さな電子パネルの付いた扉の前にいた。いつの間に着いたんだろう?と思ってると電子パネルから音が鳴り、扉がスライドした。
「さ、入りたまえ」
「・・・・何、これ・・・・」
村雨さんが入った後に続くと、扉の向こうは船の艦橋みたいだった。全体的に薄暗く、モニタの光が明るく感じた。
「・・・・連れてきたよ」
「ご苦労様です」
目の前の艦長席の横に立っている男性が軽く礼をした。会わせたい人とはこの人なのだろうか?
「初めまして。私はここの副司令、神無月恭平と申します。以後お見知り置きを」
「は、初めまして・・・・五河士織、です」
目の前の男性、神無月さんに私は軽く頭を下げた。けど、副司令なら司令は誰なのだろうか?と疑問に思っていると、
「司令、村雨解析官が戻りました」
神無月さんが背を向けている艦長席に声をかけると、艦長席はゆっくりと回転した。
「――歓迎するわ。ようこそ、『ラタトスク』へ」
艦長席に座っていたのは、赤い髪を黒いリボンで二つに括り、真紅の軍服を肩に掛けた少女。ずっと私が心配していた人だった。
「琴、里?」
私の大切な妹、五河琴里だった。
「何? 妹の顔を忘れたの、士織」
「琴里!!」
「わっ!?」
私は思わず琴里を抱き締めた。ずっと、ずっと心配していた。
「琴里! 琴里!!」
「ちょ、ちょっと! 一回離れなさいよ、士織!」
「良かった! 良かった!!」
「士織?」
気付けば、目からは涙が流れていた。けど、琴里をしっかりと抱き締めていた。
「本当に、本当に心配したんだから!」
「えぇ、心配掛けたわ」
「良かった! 琴里! 琴里!」
「ごめんなさい。おねーちゃん」
「うぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は気付いたときには大声で泣いていた。
士織 sideout
琴里 side
私はまだ胸で泣いている姉、士織の頭を撫でていた。昔、私が泣いてた時にこうしてもらったのを、今でも覚えてる。
「うぅ、あぁぁぁぁぁ・・・・」
はぁ、士織がここまで泣いてるとは、相当不安だったのね。昔から、同じね、不安になって安心すると大泣きするのは。
(まずは、泣き止ませないと話が進まないわね)
ここからが大変なのよね。
琴里 sideout
士織 side
数分後、泣き止んだ私はすごく恥ずかしかった。琴里の姿を見て安心したら、大泣きをして本当に恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「さて、泣き止んだところで説明するけど良いかしら?」
「わ、わかった」
琴里の言葉に私が頷くと、目の前のスクリーンに私が出会った黒髪の少女が写し出された。
「この子って・・・・」
「精霊って呼ばれてる怪物よ」
「怪物って・・・・」
スクリーンに写し出された少女を私は改めて見る。私には、この少女が怪物には思えなかった。どこか、悲しい様子の子が。
「彼女は本来はこの世界には存在しないモノで、この世界に出てくるだけで、意思と関係なく、辺り一帯を吹き飛ばしちゃうの」
私の様子を知ってか知らずか、琴里が説明を続けた。両手でドーン! と爆発を表現する。
「もしかて、それって・・・・」
考えたくないが、私が彼女と出会った状況に琴里の説明だと、
「理解が早くて助かるわ。空間震は精霊がこの世界に現れるときの余波よ」
「――――」
言葉が出なかった。空間震が、世界や人類を蝕む理不尽な現象が、精霊が現れるときに起きる現象と言われて唖然とした。
「もしかして、ユーラシア大空災も・・・・」
「そ。規模によるけど、小さくて数メートル程度、大きければ大陸に大穴が開くくらい」
最初の空間震も、精霊がこの世界に現れた際に起きたものだと言うことになる。
「運が良いわね士織。今回の爆発規模がもっと大きかったら一緒に吹っ飛んでたかも知れないんだから」
そう言われると、今になって自分がどんなに危険な行動をしていたのか、思い知らされた。
「警報中に何で外に出てたの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
「ご、ごめん。でも、これ見たら・・・・」
私はポケットから携帯を取り出し、位置情報を表示させると、アイコンはファミレスの前で停止していた。
「それね・・・・」
琴里は懐から携帯を取り出した。私はてっきりファミレスに忘れてるかと思ってたけど、
「警報中に外に出てた理由はそれね。士織の性格からすると、そうなるわよね。位置情報は盲点ね、後で対策打たないと」
ファミレスの前でないのに位置情報はファミレスで止まっている。もしかして、
「ここって、ファミレスの上?」
「あら、物分かりが良いじゃない」
「地下は、電波が繋がりそうがないから、そうしたら上かなって・・・・」
「そう。この『フラクシナス』は空中艦よ」
「まるで、映画みたいだね・・・・」
私は思わず苦笑いした。まさか空中艦にいるとは、もう苦笑いするしかなかった。
「ここは、天宮市上空一万五千メートルね。位置的には待ち合わせのファミレス辺りね」
まさか、こんなのが遥か上空にあると、誰が思うだろうか
「次の説明ね。こっちがAST。陸自の精霊専門部隊よ」
そう言うとスクリーンに武装した一団が写し出される。
「専門って?」
「簡単よ。精霊が現れたら、それを処理するの」
「処理・・・・?」
「要は殺すってこと」
「っ!?」
私はその答えを聞いて思わず、体が震えた。
「まぁ、普通に考えれば死んでくれるのが一番でしょ」
「そんなの、違う。何で・・・・」
「何で、ですって?」
私は、気付かないうちに手を強く握っていた。
「おかしなことなんてないでしょ。現れるだけで空間震を起こす最凶最悪の猛毒よ?」
「何で本人の意思と関係ないのに」
「空間震は本人の意思と関係ないのが有力な見方よ。その後のASTとドンパチした破壊痕も空災被害に数えられるけどね」
「そんなの、ASTって人の勝手じゃん!」
「そうかもしれないわね。けど、大喜びで破壊活動を始めるかもしれない」
「しない、あの子は絶対に」
琴里は不思議そうに私を見た。
「その根拠は?」
「きっと、私と似たような、顔をしてたから」
きっと、根拠にはならない。それでも、心からそう思った。
「どっちにしても精霊が空間震を起こすんだから、可哀想って理由だけで危険生物を放置しておけないわ。今は小規模でも、いつユーラシア級の大空災が起きるかわからないのよ?」
「なら、殺す以外にないの?」
「へぇ~。数分しか接点がないのに。しかも、殺され掛けた相手なのに、随分と精霊の肩を持つのね」
「私は、ただ他に方法がないの?って思って・・・・」
琴里は私の言葉を聞くとふぅ、と息を吐いた。
「なら、どんな方法があるの?」
琴里に聞かれて、私は黙ってしまった。出てくるだけで被害を出す精霊。確かに、殺さなければいけない。私の言ってるのはただのわがままだ。けど、あの悲しそうな顔を見て、声を聞いた。
「わからない。けど、ちゃんと話したい」
確かに、あの時の死の恐怖は今も残っている。けど、そんなのは理由にならない。世界に拒絶された彼女は、私と同じだ。だから、私は手を伸ばしたい。
「良いわ。手伝ってあげる」
「えっ?」
琴里から言われたことに思わず唖然とした。
「私たち『ラタトスク機関』の総力を以て、士織のサポートをしてあげる」
「私の、サポート?」
私は意味がわからず、首をかしげた。
「精霊の対処法は二つあるわ」
「一つは、武力での殲滅、だよね?」
「そっ。もう一つは精霊と、対話する方法。私たちは『ラタトスク』。対話によって精霊を殺さずに空間震を解決するために結成された組織よ」
精霊と対話で問題を解決しようとする組織。どうして、琴里がそんな組織に所属してるのか気になるけど、
「どうして、そんな組織が私をサポートするの?」
「まぁ、どっちかって言うと『ラタトスク』は士織のために作られた組織だから」
もう、開いた口が塞がらない。私のため? もう、意味がわからない。
「正しくは、士織を交渉役に据えて、精霊問題を解決する組織ね。どっちにしろ、士織がいなかったら始まらない組織よ」
「もしかして、ここの人達はその為に?」
「そうよ。そう言ってるじゃない」
「何で私なの?」
琴里はチュッパチャプスを口の中で転がし、得意気な顔をした。
「士織が特別だからよ」
「訳がわからないよ、琴里」
本当に訳がわからない。琴里は不適に笑い続けた。
「理由はそのうち解るわ。私たちが、全人員、全技術を以て士織をサポートしてあげる。それとも、一人で用意もなく精霊とASTの間に立つの? 今度こそ、死ぬわよ」
それは理解している。非力な私が、何もなしに精霊とASTの間に立てるわけがない。
「対話は、何をすればいいの?」
「簡単な話よ」
得意気な表情を作り、私を見る。一体、どんなことを・・・・
「精霊に、恋をさせるの」
・・・・えっ? 恋?
「・・・・つまり、どう言うこと?」
「精霊とデートして恋をさせるの」
「あの子、女の子だよね?」
「男には見えないわよ」
「私も女の子だよ」
「同性愛って言葉があるから平気よ」
・・・・今はこの事は考えないようにしよう。と言うより考えたらキリがない。
「それで空間震が解決するの?」
「武力以外で解決するなら、精霊を説得させて世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなにも素晴らしいってわかれば、暴れたりしないでしょ」
「確かに、そうだね」
「よく言うでしょ。恋をすると世界が美しく見えるって。と言う訳でデートして、精霊をデレさせなさい」
「ええっと・・・・」
私は琴里の言葉を聞いて、少し悩んだ。やり方はあれかもしれないが、それ以外ないのも事実。なら、手段は選べないのかも知れない。
「と、取り合えず、頑張ってみる」
「あら、予想してたのと違う答えが帰ってきたわね」
「全部は、納得できてないけど。私一人じゃ、何も出来ないから」
「よろしい。今までのデータから最短で一週間後に精霊が現界するわ。明日から早速訓練よ」
「訓練?」
よくわからないけど、明日からが大変そうだ。
次回から特訓だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!! 琴里の理不尽なペナルティを期待している自分がいる!
琴里「そうね、ミスをする度に一枚服を脱いでいくので良いかしら」
ありがとうございます!
士織「絶対やめて!!」
気まぐれNGシーン
士織が琴里に抱き着くとき
士織「琴里!」←抱き締める形
琴里「むっふ!?」←顔に胸を押し付けられる
士織「良かった! 琴里! 琴里!!」
琴里(我が・・・・生涯に・・・・一片の悔い・・・・なし・・・・ガクッ)←幸せそうな顔で気絶
フラクシナスクルー『し、司令ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!』
令音「幸せそうに気絶したね。琴里」
↑これをした理由? これしか思い付かなかったんだ!!
琴里「ペナルティは超ミニスカメイドか、それともきわどいナース服か。悩むわねぇ」
琴里が悪役顔をしている(゜゜;)
琴里「士織の身長とスリーサイズは次回の後書きに発表するわ」
士織「!?」
マジで発表します。次回をお楽しみに
士織「!Σ( ̄□ ̄;)」