「十香、お願い、話を聞いて・・・・」
私は、十香の部屋の扉をノックした。けど中から反応はない。頭の中でよしのんの言った捨てたと言う言葉が何度も頭の中に思い浮かぶ。
「十香・・・・」
それを振り払うように扉をノックしたらドスンっと家が震えた。
「・・・・ふん、どうせ私の事などどうでも良いのだろ・・・・あいつの言ったように、どうせ私の事など捨てたのだろ・・・・」
「えっ・・・・」
捨てた・・・・私は十香を捨てた? 精霊も封印出来なかった・・・・なら、私は・・・・要らないの?
ーーーーーお母さんーーーーー
士織sideout
十香side
「うぁ・・・・あぁ・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「っ!?」
部屋の外からシオーの叫び声が聞こえ、気付いたら私は部屋の外に出ていた。そこで見たのは頭を抱えながら叫んでいるシオーだった。
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!! ごめんなさい! ごめんなさい! 良い子にするから! 捨てないで! 捨てないで、お母さん!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「シオー!?」
私はシオーの様子を見て、目を見開いた。今まで、こんなシオーを見たことがなかった。泣き叫びながら捨てないでと繰り返すシオーを見て、私はどうしたら良いのかわからなかった。
「おねーちゃん!!」
私がどうしたら良いのか悩んでいると、大慌てで琴里が未だに泣き叫んでいるシオーを抱き締めていた。
「落ち着いて! 誰もおねーちゃんを捨てない! 絶対に捨てないから!!」
「うぅ・・・・あぁ・・・・」
琴里の言葉を聞いて、シオーは落ち着いたのかそのまま寝てしまった。
「シオーは、一体どうしたのだ?」
「・・・・それを説明する前に、士織を部屋に運ぶの手伝ってちょうだい。それから話すわ」
私は頷くと、シオーを背負ってシオーの部屋に向かう。その時のシオーは、私の服を握っていた。
十香sideout
琴里side
士織を部屋で寝かせ、私と十香、そして令音の三人でリビングにいる。令音には士織の怪我を見てもらうのと、令音曰く、琴里が感情的になった時のストッパーとの事でいる。
「・・・・」
十香は俯いて黙ったまま椅子に座っていた。私も久々で驚いたのだから、はじめての十香が驚くのも無理ないか。けど、黙ったままじゃ進まないし、私から話し出すしかないか。
「何故、シオーは・・・・あんな風になったのだ?」
「そうね、どこから話せば良いかしら・・・・」
話そうと思っていると十香が俯いたまま聞いてくる。さて、どこから話せば良いか少し迷う。
「元々、士織は実の母親に捨てられて家に引き取られたのよ」
「・・・・!」
十香が顔を上げると目を見開いていた。まぁ、この話は十香にはしてなかったから仕方ないわね。
「はじめの時は酷かったわ。ずっと部屋に籠ってね、本当に誰も信じられないって感じだったわね」
本当にはじめの時は酷かった。部屋に籠ってまともに食事も食べなかったし、いつも怯えたような表情で私達を見ていたわね。
「一回、士織が風邪と栄養失調で倒れてね。あの時は焦ったわ、扉を開けたら士織がぐったりとして倒れてるからみんな大慌てよ」
その時も私はおねーちゃんの様子を見ようと扉を開けたらぐったりとして、触ったら熱もあるから焦ったわね。
「士織を病院に運んだ後、目を覚ましたらみんなで説教したら泣き出してね」
『ごめんなさい・・・・ヒッグ・・・・ずっと・・・・エッグ・・・・捨てられたく、なくて・・・・ごめんなさい! うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!』
あの時かしら、私達に心を開いてくれたのは。
「それ以降は、部屋から出て私達とも接するようになっていったわ」
「そう、だったのか・・・・」
「けど、また大変なことが起きるわけよ。これが・・・・」
まぁ、あの時はまだ精神的にはまだ不安定だったのもあったわね。
「たまたま、買い物に行く前に士織が寝ちゃってね。起こすのも可哀想だからって、士織だけ残して買い物に行ったのよ」
「それが、どうかしたのか?」
「帰ってくる前に士織が起きて、家の中を探しても誰いなくて大泣き。後は大体想像つくでしょ」
「そこから落ち着かせるのに苦労した、と言うことか?」
隣で黙って聞いていた令音が聞くと、私はそれに対して頷いた。それ以降は私はおねーちゃんと一緒に居るようにした。
「簡単に言えば、士織は捨てられることを怖がってるのよ。捨てられると思ったり、そんなことを言われたらあぁなるって訳」
「そう、か・・・・」
十香は俯いたまま、席を立った。
「十香?」
「すまぬ、一人にしてくれ・・・・」
十香はそのまま、リビングを出ていった。階段を上がる音がしてるから二階の自分の部屋だと思うけど。
「琴里、君はどうする?」
「どうするも何も、まずはハーミットが封印出来なかった原因を探らないと」
「・・・・それよりもしたいことが、あるんじゃないか?」
令音にはバレバレって訳ね。全く心配性ね、私は。
「そうね、そっちの方の解析は頼むわ。後、令音」
「なんだい?」
「ありがとう・・・・」
「・・・・どういたしまして」
私はリビングを出て、二階に向かう。自分の部屋で寝間着に着替え、おねーちゃんの部屋に入るとベッドには寝間着に着替えさせたおねーちゃんが寝ていた。
「駄目ね、私。おねーちゃんの事、傷付けちゃった」
おねーちゃんの顔には涙の跡がまだ残っていた。背中の傷は大したことはなかったけど、体より心の方がよっぽど傷付いていた。
「おねーちゃん・・・・」
私がおねーちゃんのベッドに潜り込めば、おねーちゃんは私を抱き締めてきた。私もおねーちゃんを抱き締める。少しでも、おねーちゃんが安心してられるように・・・・
琴里sideout
十香side
私は、シオーを傷付けてしまった。シオーの事を何も知らずに、私は・・・・
「シオー・・・・」
気付けば、目からは涙が流れていた。私が手を弾いたとき、シオーは泣きそうな顔だった。きっと、あの時からシオーは捨てられると言う不安があったのかもしれない。
「私は・・・・」
謝りたい。シオーに、ごめんなさいと謝りたい。けど、今は顔を会わせずらい。私はどうしたら良いのだろう?
士織ちゃん、マジで精神的に追い詰められてる・・・・
とまぁ今回は士織ちゃんの精神的な弱さがわかる回でした。
次回からは士織ちゃんにフォローは入れます。次回以降、士織ちゃんヒロインの場面が多くなると思います。
次回をお楽しみに!