デート・ア・ライブ 士織パラレル   作:一光

10 / 11
かなり間が空いてしまいすいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!←スライディング土下座

久々の士織パラレルなのにグダグダになってしまった・・・・


ハーミット

十香side

 

 

「・・・・///」

 

 

今、私とシオーは学校へ向かって歩いているのだが、シオーがさっきから顔を真っ赤にして喋ってくれない。

 

 

「シオー、さっきから顔が赤いが、体調でも悪いのか?」

「いや、そうじゃなくて・・・・えっと///」

 

 

シオーは顔を俯かせると、そっと左手を私に近付けた。

 

 

「手、繋いで行かない?///」

 

 

シオーが恥ずかしそうに見上げるようにして言ってきた。それに対して私は笑って答えた。

 

 

「勿論、良いぞ!」

 

 

私はシオーの手を握った。暖かく、柔らかく、優しい、大好きなシオーの手。私はシオーの顔を見ると、まだ顔が赤かった。

 

 

「早く行こう、シオー!」

「うん!///」

 

 

私達はそのまま、学校へ歩みを進める。

 

 

十香sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士織side

 

 

十香と手を繋ぎながら私達は教室に入った。今朝の事は未だに恥ずかしい。だって寝惚けて十香の部屋で寝てしまったから。後は、こうやって同年代の子と手を繋いだ事もなかったから、それも恥ずかしかった。けど、手を繋いでいると十香を近くに感じて安心できる。

 

 

「おはよう! 士織ちゃん、十香ちゃん!」

 

 

殿町君が、何やら満面の笑みを浮かべて挨拶をしてきた。私は少しビックリして、半歩下がってしまった。

 

 

「お、おはよう。殿町君」

「うむ、おはよう」

「二人とも、手繋いで登校なんて、仲良いね」

 

 

私は殿町君に言われると、十香の顔を見た。十香も私の方を見たので、笑顔を作ると十香も笑顔を見せてくれた。

 

 

「ところで、士織ちゃんと十香ちゃんは、メイドと巫女とナース。どれがいい?」

 

 

殿町君が真剣な表情で言うと、十香は首をかしげ、私は苦笑いした。

 

 

「えっと、メイドさんとか、良いと思うけど・・・・」

「そっか、士織ちゃんはメイドか・・・・」

 

 

何だか、殿町君が少し落胆したように呟いた。一体何の事だろう?

 

 

「俺、ナースも良いと思うんだよなぁ」

「「???」」

 

 

私と十香は殿町君の呟きを聞くと、首をかしげた。本当に何の話だろう?

 

 

「まぁ、士織ちゃんならメイド似合うと思うけど!」

「!?///」

 

 

殿町君にそう言われて恥ずかしさと驚きで目を見開いた。

 

 

「なぁ、シオー。メイドとは何だ?」

「えっとね、メイドさんって言うのは、用はお世話をする人の事・・・・かな?」

 

 

私が曖昧に答えると十香は納得したように頷いた。

 

 

「成る程。つまりシオーは誰かの世話をしたいのか?」

 

 

十香が言うと、私は首を横に振った。

 

 

「そうじゃなくて、ただメイド服が可愛いなって思うだけだから」

「そうなのか?」

「うん、そうだよ」

 

 

そんなやり取りの後、私達はそれぞれ席に座った。そう言えば、殿町君がブツブツ何か言ってたような。

 

 

「五河士織・・・・」

「ど、どうしたんですか? 鳶一さん」

 

 

私の左側の席に座っている鳶一さんに声をかけられた。何だろう、嫌な予感が・・・・

 

 

「何故、夜刀神十香と手を繋いでいたの?」

「何故って、特に理由はないですよ」

「そう・・・・」

 

 

嫌な予感がしてたから意外にも、特に何もなかった。もっと何か言われるかと警戒したけど、平気なようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて昼休み。

 

 

「シオー! 昼餉だ!」

 

 

そんな十香の元気な声と共に左右から机がガシャーンと付けられる。右からは十香、左からは鳶一さんだった。

 

 

「・・・・むっ、何だ貴様。邪魔をするな」

「それはこっちの台詞」

 

 

私を間に挟んで睨み合う二人。流石にこのままではお弁当を食べられない。

 

 

「み、みんなで食べません?」

 

 

私がそう言うと二人とも、渋々と言った感じで鞄から弁当箱を出した。私も鞄から弁当箱を出すと、三人同じタイミングで弁当箱の蓋を開けた。

 

 

「おぉ・・・・」

 

 

十香から嬉しそうに弁当箱の中を見た。十香の弁当箱の中はハンバーグやウィンナー、ポテトサラダ等、洋風に仕上げた。因みに私のは焼き魚やきんぴらごぼう、玉子焼き等の和風だ。

 

 

「とても、美味しそうだ!」

「そう、かな?」

「うむ! 流石はシオーの手作りだ!」

 

 

十香が自分の弁当箱の中を笑顔で見ながら私に言う。けど、もう片側にいる人のことを忘れていた。

 

 

「手作りとは、どういうこと?」

 

 

はっとした時には遅かった。隣にいる鳶一さんがジーっと私の方を見る。私は思わず、視線をそらした。

 

 

「ええっと、その・・・・」

 

 

ど、どうしよう・・・・どう言えばいいのか、戸惑う。

 

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――

 

 

悩んでいると街中に警報が鳴り、ざわついていた教室が静まり返った。そして、鳶一さんは少し迷ったような表情をしたけど、すぐに席を立って教室を出ていった。鳶一さんはきっと、精霊をASTとして殺しに行った筈。そんなことを思うと、止められない自分が嫌になる。

 

 

「・・・・皆、警報だ。すぐ地下シェルターに避難してくれ」

 

 

令音さんが声をかけ、廊下の方に指を向けると皆は次々と廊下に出ていった。

 

 

「シオー、皆どこへ行くのだ?」

 

 

十香がそんな様子を見て首をかしげた。そうだった、十香は空間震を経験するのは初めてだからシェルターのことを知らないんだ。

 

 

「後で教えるから、今は行こう」

「う、うむ・・・・」

 

 

十香はまだ手のつけてない弁当箱を名残惜しそうに見ながら立ち上がり、一緒に廊下に出た。

 

 

「・・・・シイ。君はこっちだ」

 

 

私は、令音さんに肩を掴まれた。きっと、《フラクシナス》のことだと思う。

 

 

「《フラクシナス》、ですよね・・・・」

「・・・・あぁ、《フラクシナス》だ」

 

 

私と令音さんは他の人に聞かれないように小声で話した。やっぱり思った通り、《フラクシナス》だった。

 

 

「・・・・君は精霊を助ける決断をしてくれたが、改めて精霊とその現状を見てほしい」

「は、はい・・・・」

 

 

いつも通りの、眠たげな眼のまま小さく頷き、クラスメートの皆が列に並ぶの見てから、昇降口の方へ顔を向けた。

 

 

「・・・・さぁ、急ごう。空間震まで、もう間もない」

「あの、令音さん。十香は・・・・どうするんですか?」

 

 

私が十香の方を見ると、十香は列に並んでるクラスメート達に驚いていた。

 

 

「・・・・十香には、皆と一緒に避難してもらう」

「えっ? そうなんですか?」

「・・・・あぁ。値からを封印された十香は人間とそう変わらない。それに・・・・」

「ASTとの戦闘、ですか?」

「あぁ、自分の時のことを思い出されても困ってしまう。《ラタトスク》としては、出来るだけ十香のストレスを蓄積させたくないんだ」

 

 

そう言われると、確かに十香にASTとの戦いのことは思い出してほしくない。それなら、皆と避難してもらった方がいいと思う。

 

 

「ほ、ほら! 五河さんに夜刀神さん、それに村雨先生まで! そ、そこで立ち止まらないでくださーい! 早くしないと危険が危ないですよ!」

 

 

廊下の奥から甲高い声が聞こえ、その方を見ると岡峰先生が焦った様子で言っていた。危険が危ないって、支離滅裂ですよ。

 

 

「・・・・捕まっても面倒だ。行こうか」

 

 

令音さんはそう言うと昇降口の方へ向かった。私は十香の手を取った。

 

 

「十香、先生と一緒にシェルターに避難してて」

「シオーは、シオーはどうするのだ?」

「私は・・・・やらなきゃいけないことがあるから。大丈夫だよ、心配しないで。岡峰先生、十香をお願いします」

 

 

私は十香の手を岡峰先生に預けて、私は令音さんの後を追って校舎を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あぁ、来たわね二人とも。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」

 

 

私と令音さんが《フラクシナス》の艦橋に着くと、琴里からそう言われ、令音さんは小さく頷いて白衣の裾を翻して、艦橋下段にあるコンソールの前に座った。

 

 

「・・・・さて。士織、準備はいいかしら?」

 

 

琴里にそう問われ、答える前にサイレンの音が鳴り響いた。

 

 

「非常に強い霊波反応を確認! 来ます!」

 

 

艦橋の下段から男性クルーの声が聞こえた。霊波? それに、何が来るんだろうか?と首をかしげる。

 

 

「オーケイ。メインモニタを、出現予測地点の映像に切り替えてちょうだい」

 

 

琴里が指示を出すと、モニタにいくつもの店が建ち並ぶ街の大通りが映し出された。けど、人の姿はなかった。その映像の中心が、ぐわんと歪んだ。映像を映していた画面ではなく、空間が歪んでいた。

 

 

「な、何・・・・?」

「そう言えば、士織は初めて見るわね」

 

 

琴里が言うのと同時に空間の歪みがさらに大きくなり、画面に小さな光が出来たと思ったら、爆音と共に、画面が真っ白になった。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

映像でも思わず腕で顔を覆ってしまった。目を開けると、街がすり鉢状に削り取られていた。

 

 

「もしかして、これ・・・・」

「えぇ、精霊がこちらの世界に現界する際の空間の歪み。空間震よ」

 

 

思わず、両手で口を覆った。実際に起きる瞬間を始めて見た。人が生活をしている空間が一瞬で全て壊れるのを見るとやっぱり怖いと感じる。

 

 

「ま、でも今回の爆発は小規模ね」

「そのようですね」

 

 

琴里と神無月さんの会話を聞いて何を言っているのかと思ったけど、今の規模は数十メートル程。琴里達にしては、軽微なのだろう。

 

 

「僥倖・・・・と言いたいところですが、〈ハーミット〉ならばこんなものでしょう」

「まぁ、そうね。精霊の中でも気性の大人しいタイプだし」

 

 

〈ハーミット〉って何だろう? 精霊の名前なのかな?

 

 

「ねぇ、琴里。〈ハーミット〉って、何?」

「今現れた精霊のコードネームよ。ちょっと待ってて・・・・画面拡大できる?」

 

 

琴里が指示を出すとすぐに、映像がズームし、クレーターの中心に寄ると、画面が暗くなり雨が降り始めた。

 

 

「・・・・雨?」

 

 

私はその変化に首をかしげるが、小さな女の子が見えると目を見開いた。兎の耳のような飾りのついたフードのコートを着ている。そして、左手にはコミカルな兎のパペットをつけていた。見間違いでなければ、昨日会った女の子だった。

 

 

「どうしたの? 士織」

「あの子、昨日会った・・・・」

「何ですって?」

 

 

私は昨日の記憶を探り、それを琴里に伝えると琴里は艦橋下のクルーの人達を見た。

 

 

「昨日の一六○○時から一七○○時までの霊波数値を私の端末に送って。大至急!」

 

 

指示を受けたクルーの人達が琴里の端末にデータを送ったのか、琴里は端末を見ると苛立たしげに頭を掻いた。

 

 

「・・・・主だった数値の乱れは認められないわね。十香の時のケースと同じね・・・・士織、何で昨日のうちに言わなかったの?」

「会ったときは、精霊だと思わなくって・・・・ごめん・・・・」

 

 

私は琴里に言われると、俯いた。そうすると、今度は違うサイレンが艦橋に響いた。

 

 

「こ、今度は何?!」

「精霊が出現したら動くのは私達だけじゃないわよ」

 

 

そう言われると、私は琴里の方を向いた。

 

 

「AST・・・・」

「そっ・・・・」

 

 

視線を画面に戻すと白煙が、〈ハーミット〉に向かい爆発した後、ピョンと〈ハーミット〉は左手のパペットを掲げるような格好のままASTの人達の間を抜けるように身を捻り、宙を舞う。

 

 

「あ、危ない!」

 

 

画面越しに叫ぶけど、無慈悲にミサイルや弾丸が〈ハーミット〉に吸い込まれるように命中していく。

 

 

「何で・・・・何であんな女の子に・・・・」

 

 

私は見てられずに目を反らして、唇を噛み締める。

 

 

「・・・・今さら何言ってるのよ、士織」

 

 

琴里が半眼を作りながら私に言ってきた。

 

 

「十香の時に学習しなかったの? ASTにとっては精霊がどんな姿形をしているかだなんて関係ないの。あるのは世界を守る使命感と、人類にとって危険である存在を排斥しようという、生物として至極まっとうな生存本能だけ」

「そんなの・・・・そんなの・・・・ッ!」

 

 

視線を画面に向けると、煙の中から〈ハーミット〉が空に躍る。そして、反撃せずに逃げ回っていた。

 

 

「さっきから・・・・反撃、しない?」

「えぇ。いつものことよ。〈ハーミット〉は精霊の中でも極めて大人しいタイプだし」

「だったら!!」

「ASTに情けを求めても無駄よ。彼女が精霊なら」

 

 

琴里にそう言われ、下を向くと手を強く握った。そして、顔を上げて画面に写る〈ハーミット〉を見る。

 

 

「琴里、私はあの子を助けたい。だから、手を貸して!」

 

 

 

それを聞いた琴里は、どこか嬉しそうにキャンディの棒をピンと立てた。

 

 

「勿論、手を貸すわよ。総員、第一級攻略準備!」

『はッ!』

 

 

琴里の指示により、クルーの人達が一斉にコンソールを操作し出した。

 

 

「さぁ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~・・・・」

『いつまで緊張してるのよ。良い? ファーストコンタクトは慎重にしなさいよ』

「緊張じゃなくて・・・・何でいきなり私の胸を揉んだの?」

『・・・・さて、始めてちょうだい』

「話をそらさないでよ・・・・」

 

 

《フラクシナス》から地上へ送られ、今は大型デパートの前にいた。地上へ送られる前に琴里に胸を揉まれ、未だに顔が赤い気がする。

 

 

『精霊は建物内よ。気を付けなさい』

「・・・・うん、わかった」

 

 

私はしばらくデパートの中を歩いて回る。服の売り場を見て、私は足を止めた。

 

 

『どうしたの? 士織』

「大したことじゃないけど、十香や琴里と服、買いに行きたいなぁ~って」

『そうね。無事に〈ハーミット〉を封印出来たら、一緒に行きましょう』

「うん!」

『・・・・士織。〈ハーミット〉の反応がフロア内に入ったわ』

 

 

インカムから聞こえた琴里の言葉に鳥肌が立ったのを感じた。どこかにいると言う緊張感から手が汗ばんできた。

 

 

『・・・・君も、よしのんをいじめにきたのかなぁ・・・・?』

「ひゃぁ!?」

 

 

頭上から急に声が響き、それに驚いた私は思いっきり尻餅をついた。ちょっと痛い・・・・上を見れば〈ハーミット〉が重力に逆らうように逆さに浮いていた。

 

 

『駄目だよー。よしのんが優しいからってあんまりおイタしちゃ・・・・って、んん?』

 

 

〈ハーミット〉が逆さになっている身体を空中でぐるんっ、と戻すと床に降り立った。

 

 

『おぉ、誰かと思ったらナイスボディなおねーさんじゃない』

 

 

私はそれに返そうと言葉を出そうとするけどインカムから琴里の待ちなさい、と言う声が聞こえ、言葉を飲み込んだ。

 

 

『良い? ちゃんと言ってちょうだい』

 

 

しばらくして、琴里からの指令を聞くと言うのは凄く恥ずかしいけど、意を決して・・・・!!

 

 

『それにしても、今日は水色なんだー。前のピンクもよかったけど、こっちも良いねー』

「・・・・?」

 

 

どういう意味かわからなかったけど、視線を下ろすと気付かなかったけど、足を大きく開いていた。つまり・・・・

 

 

「~~~~~~~~!!!!!!!!!!!///」

 

 

私は声にならない悲鳴をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ・・・・もう、お嫁に行けない・・・・」

『まぁまぁ、大丈夫だって! 見たのはよしのんしかいないから!』

 

 

あの後、琴里や『ハーミット』に慰められ、パペットの手で私の頭を撫でていた。ただ、琴里はインカム越しだったけど鼻息が荒かった気がする。

 

 

「うん・・・・ありがとう。えっと、よしのん、で良いよね・・・・?」

『ん? あぁっ、よしのんともあろう者が、自己紹介を忘れるなんて! よしのんはよしのんの名前だよ。可愛いっしょ? 可愛いっしょ?』

「う、うん・・・・可愛いよ」

 

 

十香の時と違って名前がはっきりしてるって事は、精霊によって色々と違うんだ。

 

 

『それにしてもおねーさんスタイルいいよね~。羨ましいよ』

「そう、かな? 私はよしのんも可愛くて羨ましいよ」

『そう? そうなら嬉しいね~!』

 

 

私が言い淀んでいるとインカムから琴里の声が響いた。

 

 

『間を空けないで。とにかく、精霊に逃げられないようにして』

「ど、どうすれば良いの・・・・?」

『折角の大型デパートよ。時間があったらデートしよう、で良いのよ』

 

 

私はそれを聞くとよしのんと目線を合わせるようにしゃがんだ。

 

 

「ねぇ、時間があったら、私とデ、デートしよう///」

 

 

言ったは良いけど、やっぱり恥ずかしい・・・・///

 

 

『ほっほ~! おねーさんって以外に大胆に誘ってくれるじゃーないの。よしのんは全然良いよ~』

「よ、良かった~」

『まぁ、良いんじゃないの』

 

 

・・・・取り合えずインカムの向こうから不機嫌な琴里の声と飴を噛み砕く音が聞こえたけど、気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よしのんとデパートの中を歩き回りながら話をすると、よしのんの笑いの沸点が低いのか些細なことでよく笑っていた。

 

 

『・・・・へぇ、存外良い感じねぇ』

 

 

ガリッと飴を噛み砕く音と共に琴里がそう言う。琴里、お姉ちゃん、何かした?

 

 

『そもそも人懐っこいのかしらね。好感度も上々だから、このままキスしても拒まれないわよ』

「・・・・それにしては、言葉に刺があるような・・・・」

『・・・・・・・・何でもないわ・・・・・・・・』

 

 

長い間の後に飴を噛み砕く音と神無月さんの恍惚とした声も聞こえた気がするけど・・・・もう、気にしないことにしよう。

 

 

『・・・・おぉ?』

「・・・・っ!」

 

 

よしのんが声をあげると私はそちらに意識を戻した。

 

 

『すっごーい! 何かねありゃー!』

 

 

よしのんが興奮気味に向かっていくそれは玩具売場の一角に組まれたお子様用のジャングルジムだった。カラフルな強化プラスチックの城を両足と右手で器用に登り、頂点に到着した。

 

 

『わーはは?どーよ士織ちゃん! よしのんカッコいいでしょ!』

「そ、そんなところ立ってたら危ないよ!」

 

 

本人は楽しそうにしてるが、見ているこっちはそれどころじゃなかった。小さなジャングルジムでも一番上から落ちたら怪我をするかもしれない。

 

 

『んもうっ、カッコいいかどうかって聞いてるのにぃ・・・・っと、わ、わわ・・・・っ!?』

「っ!? 危ない!」

 

 

よしのんがパペットの手を振るうとバランスを崩して足を踏み外した。落ちるよしのんの下になるように受け止めるとそのまま床に倒れた。

 

 

「・・・・いひゃい・・・・」

 

 

仰向けのまま声を発すると前歯が痛く、違和感を感じた。目の前には人形のように整った顔と青い髪。そして、唇には柔らかい感触があった。

 

 

『・・・・そう言うのもありね・・・・』

 

 

インカム越しからは琴里の驚いたような、何かたくらんでるような声が聞こえた。無言のままよしのんが体を起こすと、ようやく唇が離れたけど・・・・何とも言えない違和感を感じた。十香を封印した時と違う、ただそれだけはわかった。そして、インカムからサイレンが聞こえてきた。

 

 

「えっ・・・・」

 

 

サイレンが鳴ると言うことは今のよしのんは不機嫌になっている? 流石に事故とは言ってもキスは不味かったのかもしれないっ!

 

 

『あったたたぁー・・・・士織ちゃん、ごめんね~。不注意だったよ~』

 

 

よしのんを見ると全く怒った様子ではなかった。なら、このサイレンは?

 

 

『士織、緊急事態よ・・・・最強最悪の』

 

 

琴里の言葉を聞いた後、ざっと踏みしめるおとが聞こえ後ろを振り返った。

 

 

「と、十香・・・・」

 

 

私は目を見開いた。シェルターに避難させた筈の十香がびしょ濡れで肩で息をしながら立っていた。

 

 

「・・・・シオー。今、何をしていた?」

「そ、それは・・・・」

 

 

私は十香の問いに何も言えずに俯いてしまった。

 

 

「・・・・あ、あれだけ心配させておいて・・・・」

「十、香・・・・?」

「女とイチャコラしてるとは何事かぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

十香が叫び、足を打ち付けると床が凹み放射状に亀裂が入った。

 

 

「きゃ!?」

 

 

突然のことに私は短く悲鳴をあげた。普通なら床は凹まないけど、もしかしたら・・・・

 

 

「琴里、もしかして十香・・・・」

『もしかして、じゃなくて十香の精神状態が不安定で力が逆流してるわ。状態が悪化する前に機嫌を直さないと』

 

 

そう言っている間に十香は私とよしのんの元に来て私にキツい視線を向けながらよしのんを指差した。

 

 

「・・・・シオー。お前の大事な用とは、この娘と会うことだったのか?」

「そ、それは・・・・」

 

 

こんな時、十香に何て言えば良いんだろう。これ以上、十香を傷付けたくはない。けど、よしのんも傷付けたくはない。私は、どうしたら良いんだろう・・・・?

 

 

『へぇ~・・・・そぉー言うことねぇ・・・・』

 

 

私が言葉に迷っていると、キョトンとしていたよしのんが甲高い声を出した。

 

 

『おねーさん? え~と・・・・』

「・・・・十香だ」

 

 

十香は不機嫌な様子でよしのんに返した。

 

 

『きっと士織ちゃん、君に飽きちゃったみたいなんだよねぇ』

「なっ・・・・」

「え・・・・?」

 

 

よしのんの言葉に十香は息を詰まらせ、私は唖然とした。

 

 

『話を聞いてると、十香ちゃんとの約束すっぽかしてよしのんのとこに来たなら・・・・士織ちゃんが十香ちゃんに飽きて、捨てちゃったってとこでしょう?』

 

 

捨て・・・・た? 私が、十香を? お母さんが、私を捨てたみたいに? 私が捨てた・・・・

 

 

「ーーー! ーーー!」

 

 

頭の中が真っ白になってもう、何だかわからない。私は、私がされたことを十香に? 私は、私はそんなつもりは、ないのに・・・・!!

 

 

「・・・・っ 〈凍結傀儡(ザドキエル)〉・・・・っ!」

「冷たい・・・・っ!?」

 

 

冷たさに意識を引っ張られ、目の前を見ると三メートルほどのウサギのような人形とその背に張り付くようにいるよしのんだった。

 

 

「何、あれ・・・・」

『このタイミングの天使の顕現!? 士織、早く逃げなさい!』

「天使? ねぇ、何なの琴里!!」

『前に現れてるのよ! 簡単に言えば十香の〈鏖殺公(サンダルフォン)〉よ!」

 

 

あっと言った琴里の声が遠くで聞こえるように感じた。十香の〈鏖殺公(サンダルフォン)〉は封印出来た時には消えていた。つまり・・・・

 

 

「封印・・・・出来てない・・・・」

 

 

嫌な汗が背中に流れる。私は精霊の霊力を封印出来るからここにいる・・・・なら、出来てないなら、私は・・・・

 

 

「っ!?」

 

 

窓ガラスを叩き割る音が聞こえ私はギロリと十香の方に顔を向ける人形を見た。

 

 

「十香ぁ!!」

 

 

私は十香を咄嗟に押し倒すと十香の体の合った位置を何かが通り抜ける。

 

 

「っ!?」

「!? シオー!!」

 

 

背中の痛みを感じながら十香の声が聞こえた。そのままよしのんの天使は俊敏な動きで十香の居た位置をすり抜け窓から外に飛び出ていった。

 

 

「助かった・・・・のかな・・・・?」

『それより士織、平気?』

「いいから早く離さんか!!」

 

 

琴里に答える前に押し倒して十香に押し飛ばされた。

 

 

「と、十香・・・・」

「・・・・っ! 触るな!」

「いた・・・・っ」

 

 

私が十香に伸ばした手は十香自身によって払われた。息が詰まりそうになる、恐る恐る十香を見ると十香は顔を背けていた。それを見て、よしのんが言った私が十香を捨てたと言われた事があの時の事を嫌でも思い出させる。

 

 

(私が、十香を捨てたの? 私は・・・・私は・・・・)

 

 

私は、デパートの出口に向かう十香の後ろ姿を見てるしか出来なかった。




今回と次回で士織ちゃん、メンタル的に少し追い詰められる感じになります。

そして、士織ちゃんのトラウマも明らかに・・・・では、次回をお楽しみにしててください!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。