けど後悔はしてない!
「おねーちゃーん! 朝だよー!!」
私の朝は可愛い妹の声と、お腹から来る重さから始まった。だけど、眠くて布団を被り直した。
「あー!! 起きてよ、おねーちゃん!!」
長く赤い髪を白いリボンで二つに括り、丸っこい瞳の妹、五河琴里が私、五河士織をゆさるが逆に眠気が増して・・・・
「早くしないとおねーちゃんの胸を揉んじゃうぞ♪」
「っ!?」
私は琴里のその言葉を聞くと、咄嗟に上半身を起こして両手で胸を隠す。
「あっ! おねーちゃん、おはよー!!」
「おはよう、琴里。起きたから、お姉ちゃんの上から、退いてくれないかな?」
正直、さっきから嫌な予感がするから琴里に退いてもらおうと思ったんだけど、失敗したかも・・・・
「んー、その前におねーちゃんにはお仕置きだー!」
「えっ!? ちょ、琴里・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
「酷い目に遭った・・・・」
あの後、何とか琴里を止められたけど、正直危なかった。起こしてくれるのはありがたいけど、胸を揉まれるのは流石に勘弁してほしい。
「今日から、学校か・・・・」
私は朝食を作りながら、呟いた。四月十日、学校が始まる日。私にはある意味であんまり嬉しくない。正直、まだ・・・・
『・・・・今日未明、天宮市近郊の・・・・』
「ん?」
私の思考はテレビから聞こえたニュースで中断させられ、テレビを見てみると瓦礫の山と化した街が映っていた。
「また、空間震か・・・・」
空間震。文字通り、空間の地震と言える広域震動現象。発生原因不明、時期も不定期で被害も不確定。一番被害が大きいので、三十年前のユーラシア大空災。当時のソ連、中国、モンゴルを含む一帯が消失し、死傷者は一億五千万人と言う最大最悪の災害。
「一時は全然起こらなくなったのに、何で増え始めたんだろう?」
「どうしてだろうねー」
日本でもユーラシア大空災の六ヶ月後には東京都南部から神奈川県北部が空間震で消失した南関東大空災が起きた。その前にも世界中で小さい規模ながら空間震は確認されていた。
(大丈夫なのかな? 最近多いけど)
私は味噌汁を味見しながらそんなことを思った。五年程前、再開発された私達の住んでる地域の天宮市の一角での空間震を皮切りに原因不明の現象が、日本で確認されてる。まぁ、二十五年間で三十年前より地下シェルターも爆発的に普及し、兆候も事前に観測できるようになった。
(けど、自衛隊の復興部隊は謎だな~。うん、味噌汁はOK、と)
自衛隊の災害復興部隊の仕事ぶりはまさに魔法だった。一晩にしてビルを復元したときは手品を見てる気分だった。けど、街の復元が早くても空間震の驚異は薄れない。
「去年くらいから、ここら辺一帯妙に空間震が多いよね?」
「・・・・・・んー、そーだねー。ちょっと予定より早いかなー」
「予定って、何が?」
「んー、あんでもあーい」
私は言葉の内容よりくぐもったの気になってカウンターテーブルを迂回してソファにもたれかかった琴里に近づくと、琴里は私から顔を背けた。
「ねぇ、琴里。まさかと思うけどチュッパチャプス、食べることないよね?」
「ギクッ」
・・・・朝食前にお菓子を食べるなんて、私にも考えがあるよ、琴里。
「そっか、琴里はお姉ちゃんのご飯よりチャプスが良いんだね?」
「お、おねーちゃん?」
琴里は何かを察したのか、冷や汗をかいてる。だけど、これで終わらせるわけがない。
「なら、琴里の分はいらないよね? お姉ちゃんのご飯よりお菓子だもんね」
「おねーちゃん、それって・・・・」
「これから琴里のご飯は作らなくていいよね? だって朝食前に食べてたらね~」
「そ、そんなことないよ! 私はおねーちゃんのご飯大好きだよ!!」
「なら、言うことは?」
「ごめんなさい!!」
琴里も謝ったし、許してはあげよう。何より、私は琴里に救われたんだし。そう思いながら琴里の頭を撫でた。
「お、おねーちゃん?」
「ちゃんとご飯食べてね」
「うん!」
そう言った後、朝食をテーブルに並べて琴里と向かい合うように座り、
「「いただきます」」
私達は朝食を食べると、私は琴里を見て思い出すように言った。
「確か、今日は中学校も始業式だよね。お昼、希望があるなら聞くよ」
それを聞いた琴里は満面の笑みを作り、それを見た私は微笑みながら答えを待ってると・・・・
「デラックスキッズプレート!!」
「ごめんね。私にはファミレスのメニューは作れないよ」
それを聞いた琴里はえー、と不満そうな声を出す。いくらなんでもファミレスのメニューは作れない。
「それなら、今日は外で食べよう」
「本当かー!」
「本当だよ。学校が終わったらいつものファミレスに待ち合わせね」
「絶対だぞ! 絶対約束だぞ! 地震が起きても火事が起きても空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!」
「テロリストに占拠されたら食べれないよ」
「絶対だぞー!」
「ふふ、絶対約束ね」
私は琴里の様子を見ながら笑顔で答えた。二人とも始業式だし、それに毎日台所に立つのだけど、少し贅沢はして良い筈。ただファミレスが贅沢になるかわからないけど。
「なら、早く食べて学校に行こうね」
「うん!」
そう言いながら私達はご飯を口に運ぶ。窓から空を見れば何か良いことがありそうな青空だった。
さて、第1話はいかがでしょうか?
兎に角、士織ちゃんを主人公にしたかった。その為に士道は犠牲になったのだ。
感想、ご指摘待っています。