毎度のことながらお待たせしました!!
今回の話は・・・まぁ、日常回みたいなもんですネ。
諸事象によりちょっと短めとなっていますが、ゆっくり読んで行ってね!
「あぁ^~生き返るわぁ~」
浅間山近辺の温泉宿にて、想像していたよりも広い男湯の露天風呂に一人で浸かっている僕は、思わずそんな言葉を口にした。
ミサトさんがよく言っている、いつもは軽く聞き流していた「風呂は命の洗濯」という言葉も、今ならAランク級の名言に見えてくるね。
そんなことを夜空を見上げながらボーっと考えていると、男湯と女湯を隔てる敷居の向こうから僕を呼ぶ声がした。
「シンジ、シンジってば!」
「・・・どうしたのさ」
声のする位置からして敷居のすぐ近くまで来ているらしいアスカに合わせるように、僕も敷居に近づくように移動しながら返事をする。
すると、「備え付けのシャンプーが気に食わないから僕の持ってきたシャンプーを寄越せ!」みたいな事を言われた。
気に食わないってなんだよ・・・と、言葉に出しそうになるが僕自身似たような理由でシャンプーを持ってきたのを思い出し、素直に桶に入れてお湯に浮かべていたシャンプーを手繰り寄せ女湯に投げ込んだ。
「・・・よしっ、サンキューシンジ!」
「後で僕も使うから返してねー」
うまくキャッチしたらしいアスカが、ザバザバと音を立てて敷居の側から離れていくのを見送った・・・聞き送った?僕はこちらに背中を向けているであろうアスカにそんな言葉を投げかけてから、先ほど浸かっていた位置にノロノロと戻っていく。
元の位置に戻り肩まで浸かり一息吐いた僕は、唐突に今日あったことの回想を始めた。
特に理由は無い。ああ、理由なんて全く無い。
敷居の向こうから聞こえてくる黄色い・・・いや、ピンク色の会話から気を逸らすためだとかそんなことは、決してないのだ―――
・・・
シンジが温泉に浸かりながら現実逃避をしている日と同日の午前中、エヴァパイロットである三人のチルドレンは濡れた髪を空気に晒しながらプール施設の入り口から姿を現した。
「貸し切りにして泳ぐプールは最高ね~」
「いくら掛かるか知らないけど大丈夫なの?」
「大丈夫よ、こっちに来てからあんまり使ってないからこの程度じゃ痛くも痒くも無いわ!」
「それもそっか、レイも楽しかった?」
「・・・えぇ、ありがとうアスカ」
いつ使徒が来るかわからない状況ではとてもじゃないがこの街を離れられない三人は、学校の修学旅行に行けなかった。
その腹いせにアスカは金に物を言わせて貸し切りにしたプールに二人を誘って、思う存分泳いだのだった。
・・・まぁ、正確には二人は、なのだが。
レイのお礼を笑顔で快く受け取ったアスカは次の瞬間には意地の悪い顔をして「それよりも・・・」と続け、シンジを見る。
それを見てシンジは露骨に顔を顰め、諦めたように肩を落とす。
「まさか泳げなかったなんてビックリだわ!無敵のシンジ様にこぉ~んな弱点があったなんて!!」
「僕にだって・・・できないことぐらいある・・・」
プールで泳げないことを自ら自白してから定期的に煽り続けるアスカに、露骨に落ち込んだ様子でネタを添えて返答するシンジ。
どうやら全く堪えてはいないようだと、密かに心配していたレイは安心して小さくため息を吐く。
アスカ自身もそんなことはわかっていたが、数少ないシンジで遊べるチャンスなのでアスカは煽ることをやめない。
「どうりでおかしいと思ったのよねぇ、アタシ達に比べて修学旅行に行けないことにダメージ受けて無かったんだもの」
「まぁ沖縄に行くってのに泳げなかったんじゃそれもしょうがないわよねぇ!」
「よかったじゃない行けなくて!委員長達にバレなくてよかったわね!!」
これ以上ないほどに生き生きとした様子のアスカ。
そんなアスカに対してシンジは歯ぎしりをしながら低い声で告げる。
「・・・今度ぷよぷよやるときは覚えてろよ」
「いや、画面外で連鎖組んでくるやつにどうやって勝てってのよ」
「わたしもやりたいわ」
「レイもとんでもない連鎖仕組んでくるから無理なんだけど」
一瞬で真顔になってツッコミを入れるあたり、やはりアスカも本気で怒らせようとしているわけでは無かったのだった。
漫才を繰り広げながらNERVへの道をゆっくり歩くシンジ達。
そんな三人の髪が完全に乾いてきたところで、突然それぞれの携帯端末の着信音が同時に鳴り響く。
シンジ達は素早く顔を見合わせると、緩んでいた空気をすぐに引き締め端末を操作して情報を得つつ、NERVへと急いだのであった。
・・・
「―――今回の作戦は以上よ、理解できた?」
そのリツコさんの言葉に、作戦会議室でリツコさん達に対面する形で作戦内容を聞いた僕等は、視線で全員理解してることを確認してから頷く。
使徒の幼体を見つけたから後学のために捕まえる。
実にわかりやすい作戦内容だ。
もっとも、前回の作戦の方が何倍もシンプルでわかりやすいし、その使徒の幼体がいるのが火山の火口内、しかも溶岩の中らしいので側はわかりやすくても作戦の中身はかなり複雑になっているようだ。
結論:くっそめんどくさい。
となりのアスカも同じ考えに至ったのか渋い顔をする中、レイが涼しい顔でリツコさんに質問する。
「・・・作戦中に羽化した場合は?」
「即残滅よ、いつものように倒して貰って構わないわ」
簡単に言ってくれる。
作戦中に羽化、ということは十中八九戦闘は溶岩の中で行うことになるだろう。
とてもじゃないが「いつものように」は無理だ。
そう考えていると、それが顔に出てしまっていたのかミサトさんが気を使って「だいじょーぶだいじょーぶ!よほど運が悪くない限りそんな状況にはならないわ!」と言ってくれた。
言って、くれやがった。
「作戦中に羽化した場合の詳しい対応を考えましょう!!」
「「賛成」」
僕の突然の提案にも動揺すること無く賛同してくれる横二人。
どうやら、君達にフラグの危険さをケンスケと共に熱く語ったのは正解だったみたいだね・・・!
「・・・今のあたしの言葉聞いてた?」
「聞いたからこそです(迫真)」
「無駄なことに時間を費やすわけにはいかないわ」
「きっと無駄じゃないですし、すでに作戦案は何個か考えたので時間はあまり取らないと思います」
「・・・へぇ、いいわ言ってみて頂戴」
僕は寒気のする笑みを浮かべて続きを保すリツコさんに答えるように、話してるうちに考えた作戦の説明を始めた。
「いつの間に考えたんだコイツ・・・」みたいな三つの視線をスルーしながら。
・・・
あの後僕がいくつか作戦を説明した結果、一番低予算で済む作戦の準備を進めることとなった。
急すぎる上にほぼ無駄に終わるであろうそれに多大な予算を割くわけにはいかない、だそうだ。
まぁ準備して貰えるだけありがたいし、後は僕等がうまくやるだけだからそこは問題は無かったのだが、別の問題が発生した。
レイが一緒に行けなくなったのである。
会議も終わりに近づき、作戦の場所は浅間山らしいし終わった後は温泉に入ろうか!なんて話をしている時にリツコさんが突然言い放ったのだ。
レイは今回の作戦で不要だから本部で待機だ、と。
もちろん僕とアスカは猛抗議した。
零号機も出撃した方が成功する確率上がるだとか、温泉に入りに行くくらいいいじゃないだとか、『借り』をここで返して貰ってもいいんですよだとかなんとか様々な理由を並べて説得しようとしたが、その日は零号機で行う実験があるのだと予定表を見せられ失敗に終わった。
こんな大事な作戦を実行するって時に実験だなんて不自然極まりないが、さすがに実験をやめろとは言えないので黙るしか無かった。
そして僕等は気にしてないと言って気丈に振舞うレイに見送られ、浅間山にやって来た、のだが・・・
「「なんでレイがいるの!?」」
浅間山の作戦基地でテンションの下がった僕等を迎えたのは、なんと微笑んでこちらに手を振るレイだった。
すぐさま詰め寄って事情を聴いたところ、予定されていた実験が突然中止になって混乱していると突然国連軍の人に呼び止められ、案内されるがままにジェット機に乗せられここまで運ばれたのだという。
まるで意味が分からんぞ!
近くにいた何処か不機嫌そうなリツコさんに事情を問いただすと、「冬月副司令にお礼を言って置きなさい」とだけ告げて行ってしまった。
冬月先生が手配してくれた、っていう解釈でいいのかな?
「・・・今度持ってくお弁当、腕によりをかけて作らなきゃね」
「私も手伝うわ」
「応援してるわよー」
アスカは手伝わないのか、とは言わない。
彼女が朝に弱いのは僕とレイも承知の上だからだ。
だから二人で意味有り気な視線を送るだけに止めてやろう。
どこ吹く風でスマホを弄るアスカには全く効果が無いようだけど。
そんな風に話をしながら時間を潰していると、突然アスカがスマホの電源を切ってバッグにしまいつつこちらに背を向ける。
「・・・作戦開始までもうちょっと、そろそろ移動しなきゃ」
「あ、もうそんな時間なんだ」
「お兄ちゃん、アスカ、がんばってね」
レイの声援に答えながらその場を後にして、僕とアスカはエヴァが運び込まれている場所へと向かう。
浅間山に来る前にプラグスーツに着替え、そのまま過ごしていた僕等はこのままエヴァに乗り込めば準備完了、あとは作戦開始までエントリープラグ内で待機しているだけなので、気を引き締め直しながら歩く僕だったがそこで隣を歩くアスカの様子がおかしい事に気づく。
そしてその原因となり得る事柄を思い出した僕は、苦笑しながらアスカに話しかける。
「やっぱり、嫌?」
「・・・当たり前じゃない」
アスカは自身のプラグスーツの右手首に存在するスイッチを睨みながら、ため息を吐くように答える。
ここに来る前に見せて貰った、というか成り行きで見ることになったのだが、今回溶岩に潜る役目を担ったアスカが今着ているプラグスーツは耐熱仕様が施されている特別製で、そのスイッチを押せばたちまちスーツが耐熱モードへと移行する仕様になっている。
そしてその、耐熱モードの見た目がものすごく『丸い』。
本当に、『丸い』としか言い表せないような、そんな見た目なのだ。
「もうちょっとこう、いい感じにスリムな見た目にならないのかしら・・・!」
「所詮現代の技術なわけだし、用意できただけマシって考えるしか無いよ」
なんというか、SF度が足りなかった!って感じの見た目だよね。
「それにアタシの弐号機まであんなことになっちゃって・・・」
「僕はアレはアレでいい思うけどなぁ、霊子甲冑みたいでさ」
アスカの相棒である弐号機も耐熱仕様になっていて、いつもの装甲の上から宇宙服を着たような見た目になっていた。
彼女はプラグスーツと同じくらいショックを受けていたけど、僕はそんな感じのロボットにはサクラ大戦で慣れてたので「ほーう」という反応しかできなかった。
「やっぱシンジじゃダメね・・・レイ、レイに慰めてもらいたい・・・」
「兄に勝る妹など・・・」
「いるでしょ」
「いるね」
普通にいるよね。
そんな感じの会話をしながら、僕等はゆっくり移動するのだった。
・・・
シンジとアスカがそれぞれのエヴァに乗り込んだ数分後に開始された捕獲作戦は、使徒をキャッチャーで捕獲するまでは原作と全く同じように特に大きなトラブルは無く進んだ。
しかし原作と違うところも存在しており、予定を超えた無理な沈降で弐号機がプログナイフを紛失する、という事態が起こらなかったのである。
そもそも持っていかなかったのだから、当たり前の事ではあるのだが。
浮上中の弐号機が持つキャッチャーの中でピクリともしない使徒の姿を見ても、NERV職員達はモニターから目を離さない。
作戦開始前にシンジ自身から説明された羽化した場合に行う作戦を思い出しながら、誰よりも使徒を注視する子供たち三人を見て「負けていられない」と気を引き締め直す職員達の士気はいつもよりも高いほどだった。
使徒は捕獲したも同然なのにも関わらず、異様な緊張感を醸し出す周囲にミサトが圧倒され、恐る恐るあまり気を張り過ぎないようにと声を駆けようとしたところで、穴が開きそうなほどにモニターを注視していた職員、日向マコトが声を張り上げた。
「使徒が動き始めましたッ!!!」
普段の彼からは想像もつかないような声量で告げられた報告を聞き、アスカは目視でキャッチャー内の使徒に変化が現れたのを確認しつつシンジの作戦通りに動き始める。
この作戦に置いて彼女に任せられた行動はたったの一つだけ。
『プログナイフの代わりに装備していた予備の耐熱パイプをキャッチャーに軽く巻き付ける』
これだけだった。
もし原作通りに進んでいたのなら使徒、サンダルフォンの羽化に一番最初に気づいたのはアスカとなり、そんな小細工を行う時間など在りはしなかった。
が、大人の意地というものを示して見せたマコトの働きにより、何倍も早く使徒の動きに気づけたことによってパイプを巻き付ける時間は十二分に取れた。
普段とあまりにも違う環境の中でも素早く、それでていて丁寧に己の役割を終えたアスカはキャッチャーの角を軽く蹴飛ばし、ある程度の距離が開いたことを確認してから「OK!」と無線に向けて告げる。
それを聞いた真面目モードへの再移行を済ませたミサトは素早くマイクを切り替えて初号機へと繋ぎ、シンジに合図を送った。
そして火口の淵に立ち、左腕に溶岩の中から伸びた予備パイプをグルグルに巻き付けた状態の初号機の中で、今か今かとその時を待っていたシンジは待望の合図をミサトより受け取ると、彼は空いていた右手で左腕から伸びる予備パイプを引っ掴み思いっきり力を込めて引っ張り上げるイメージをした。
その完璧なイメージに応えるように初号機は力を入れやすいよう中腰になり、全力を振り絞って予備パイプを引き上げた。
化け物染みた、というか化け物そのものな馬鹿力で引っ張られたキャッチャーはものすごいスピードで溶岩の中を移動するとあっと言う間に地上へと顔を出し、勢いをそのままに空中へと飛び出した。
全力で引っ張り上げたために崩れてしまった体勢を立て直しつつ、使徒の行方を目で追うシンジ。
そして負担をかけ過ぎてしまったのか空中分解してしまったキャッチャーと、体に予備パイプを絡ませながらも完全に姿を現した使徒を頭上に確認したシンジはくるりと初号機の体の向きを回転させると、背負い投げをするようにして今度は予備パイプを下向きに引っ張る。
すると解け掛けていた予備パイプは使徒の体に強く食い込みなおし、摩擦の力で完全に捕らえるとそのでかい図体を地上に急降下させた。
地上に真っ逆さまに転落した使徒はその勢いのままに地面に叩きつけられる・・・ことは無く、地面スレスレに展開されたA.T.フィールドに受け止められた。
受け止められた、と言ってもそれは地面よりも全然硬かったのでそれだけで羽化したばかりのエイのような姿をした使徒は大ダメージを受けてしまい、仰向けの状態でピクピクと痙攣している。
そんな使徒のすぐ側まで近寄ったシンジはプログナイフを構えた状態で見下しながら、静かに呟いた。
「・・・さぁ、使徒解体ショーの始まりや」
こうしてNERVは、使徒の生体サンプルを手に入れることは叶わなかったものの、綺麗に下ろされた魚型の使徒のサンプルを手に入れることは成功したのだった。
・・・
「―――うん、うまくいってよかったな」
温泉の中で湯空を見上げながら今日の作戦について一通り思い返した僕は、小さなため息を吐きながらそう呟いた。
変に意地張って溶岩から出さないように戦闘して苦戦するよりも、さっさと引きずり出して地上戦に持ち込み素早く倒した方が安全じゃね?という考えから生まれた低コスト作戦である、通称『僕に釣られてみる?作戦』。
NERVの皆に僕の考えてることを説明するのは今回が初めてだったからね・・・本当にうまくいってよかった。
今までの使徒戦で一番緊張した気がするな・・・と呟いた僕を労う様に近寄って来た温泉ペンギンのペンペンを撫でながら、僕は温泉に肩まで浸かり直す。
するとリラックスしたことで、壁の向こうの会話が再び耳に入って来た。
「ん・・・気持ちいい」
「遅いわよレイ、アンタ体洗うのに時間かけ過ぎじゃない?」
「そうよー?こーゆー時はね、後に入る人の事なんか考えずにドーンと入ればいいのよドーンと!」
「・・・」
「・・・」
えぇ・・・(困惑)
「・・・」
「・・・アンタ、最低ね」
「・・・え?子供ってこういうの喜ぶんじゃないの?」
公共の場で保護者が言う台詞じゃ無いと思うんですけど(名推理)
ミサトさんの言葉を聞いて呆れ返った僕はゆっくり立ち上がると、その変な空気をぶち壊すように「先に上がるから一旦シャンプーを返せ」と声をかけるのだった。
べ、別にミサトさんに助け舟を出したわけじゃ無いんだからね!
僕も聞いてたアピールをして止めを刺しただけなんだからね!!(鬼畜の所業)
・・・
カツ、カツ、カツ、カツと誰もいない廊下に私の靴音だけが響き渡る。
自分の私室に向かう途中の私は、歩きながら前を向いていた視線を落とし左腕に抱えているまだ温もりを感じる弁当を見て、何度目かわからない笑みを浮かべた。
シンジ君達から弁当を貰う様になったのはいつからだっただろうか。
確か、葛城一尉の家にお呼ばれをして彼らの手料理をご馳走になった次の日からだったはずだ。
シンジ君の手料理が美味しい、と葛城一尉が他の職員に自慢している場面にちょうど居合わせ、元教師として子供の作る手料理に興味が沸いた私は彼女に話しかけ、「なら、食べに来ませんか?」と言う言葉に誘われるがままにシンジ君達が住む家にお邪魔した。
そして私が来ることを事前に連絡を受けていたらしいシンジ君達は、とても素晴らしい手料理の数々で私を温かく迎えてくれた。
それが嬉しかったのもあるし、気を使ってレイがお酌をしてくれたワインで酒が入ったのもあってか、ついつい帰り際に「冬月先生と呼んではくれないか」と言ってしまった。
すると子供達は理由も聞かずにそれを快く了承し、次の日から私の事を冬月先生と呼んでくれるようになり、「毎日でも食べたいくらいだ」と料理を褒めたからかお弁当まで作ってくれるようになった。
それだけでも十二分に幸せだというのに、今日はレイが自分が作ったおかずについて説明しながら昨日の礼と共にお弁当を渡してくれたのだ。
昨日、廊下で寂しそうに歩いているレイの後ろ姿を見かけた私は、いつも見ているシンジ君達と一緒にいる時の楽しそうな様子との落差に胸が苦しくなり急ぎ足で葛城一尉に事情を問いただすと、すぐに国際連合軍に連絡を取って小型ジェット機を手配しレイを乗せて浅間山へ行くように指示をした。
連合軍に私個人の借りを作ることになってしまったが、浅間山温泉での子供達の楽しそうな様子を同行したスタッフ達から聞いて私は満足した。
だというのに、子供達は私が手配したことを何処からか聞きつけたのか、態々お礼をしに来てくれたのだ。
アスカ君にまで感謝の言葉を述べられ、心がとても満たされた私は子供達の行く末をこれからも見守って生きたいものだと改めて考えることができた。
・・・おっと、もうここまで来ていたか。
思い返しているうちに私室のすぐ近くまで来ていた私は、一度立ち止まってチラリとお弁当を見ると気を引き締めて再び歩き出す。
さて、ここからはしっかりと仕事に取り組むとしよう。
大人として、教師として子供達に情けない姿を見せないようにな。
なに、昼に最高の楽しみが待っているとなれば、いくらでも頑張れるというものだ。
そう考えて廊下を歩く私を迎えたのは、もはや見飽きた無機質なドア・・・ではなく、厳格な表情をしてこちらを見るリツコ君だった。
・・・一瞬、私が抱えているお弁当を見て眉を顰めたのは気のせい、では無いのだろうな。
「おはようございます副司令」
「・・・おはようリツコ君、何か用かな?」
単刀直入な私の問いにリツコ君はピクリとも表情を動かさないままに視線を私に合わせると、嘘は許さないといった様子で問い返してきた。
「昨日の零号機の実験を中止したのは、副司令でしょうか?」
・・・あぁ、そのことか。
わかりきったことを態々聞き返さないでほしいものだ。
「ああ、そうだが?」
「・・・」
私の正直な物言いにリツコ君は目を閉じて沈黙すると、「理由は何でしょうか?」と少し間を開けてから尋ねて来たので私は平然とその理由を説明する。
「昨日の予定を確認したら、前日までは無かったはずの実験が予定に組み込まれでいたのでね」
「何の実験だと職員に聞いたら、誰も何の実験か知らないというじゃないか」
「だから私は何かの間違いで予定に組み込まれてしまったのだと判断して、すぐに消させたのだが・・・」
「何か、まずかったかな?」
「・・・っ、いいえ」
悪びれない様子で理由を語り問いかける私にリツコ君は思わずといった様子で顔を歪めるが、すぐに表情を取り繕って返答する。
全く、彼女のレイに対する執着にも困ったものだな。
私はそれを見て小さくため息を吐くと、「他に何か用が無いようなら失礼するよ」と言って彼女の横を素通りしドアを開く。
そして私室へ入り、あと一歩進めばセンサーの範囲から出てドアが閉まるというところで背中に声が掛かり立ち止まった。
「あなたは・・・」
「・・・」
「冬月副司令は、誰の味方ですか?」
おかしな問いを受けた私は、ゆっくりと振り向くと険しい表情をしたリツコ君の顔を見て笑って答えた。
「もちろん、私は生徒の味方だとも」
そう答えた私は前に向き直って歩き出し、ドアの閉まる音を聞きながら作業机の上に弁当を優しく置き、備え付けの椅子にゆっくりと腰を下ろした。
私は優秀な生徒だったユイ君にもう一度会いたいと願い、同じく生徒だった碇の計画に賛同し今ここにいる。
故に先ほどの問いに対して一切迷うことなく、一片の嘘を混ぜることも無く答えることができた。
だが、その答えを聞いたうえで、もし。
『今と昔、どちらの生徒の味方をするのか』
と、問われたとするならば。
きっと私は即答できず、ひたすら悩むだろう。
悩んで、悩んで、悩み続け・・・そして―――
「私は・・・どちらを選ぶのだろうな」
―――答えはまだ、でなかった。
はい、というわけで日常回(戦闘回)でした!
まぁ内容薄いですよね、すみません。
でも覚醒回でも無い話でこれ以上盛り上げるのは私の技量では無理ですので許してくださいなんでも島村卯月頑張ります!
あ、そうそう、んで短くなってしまった理由なんですけどね?
簡単に説明すると、本当はもっと長くなる予定だったのを二つに分割して投稿することに急遽変更したからなんです。
つまりは、今回投稿したのは二つのうち一つだった、というわけですね。
詳しい事説明させていただきますと、原作のアニメを見た感じ、今回みたいな感じの内容が薄い話が続きそうだなーと書く前からなんとなくわかってたので、じゃあアニメ二話分纏めて投下しよう!という感じで最初は進めてたんですよ。
でも、めっちゃ書き直すわ課題多すぎるわPCの勉強めんどくさ過ぎるわドラクエ11面白すぎるわFGO夏イベ大爆死するわで全然作業が進まない状況が続いてしまい、どう考えてもこのままじゃ8月以内に投稿無理だな、ということになったのでパ〇コのごとく話を二つにぽっきり折って先に一話投稿した、というわけなんですね。
まぁ、だからと言って次回もうっすい話になる、ということにはならないように一応何度も書き直しつつがんばってるので楽しみに待ってくれたら幸いです。
あとドラクエ11はマジで面白いからみんなも、買おう!(唐突な宣伝はファンの特権)
それでは第十伍話を読んでいただき、ありがとうございました!
半分こにしたから次回の投稿はめっちゃ早いとか、そういうことは多分無いと思うのでいつもと同じように気長に待っていただけるとありがたいです!!
あと、感想とかくれたらそれはとっても嬉しいなって・・・
ではッ!