今世紀エヴァンゲリオン   作:イクス±

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いやぁ毎度のことながらお待たせしました!

どーも!最近までLASの意味を間違えて覚えていたアホでございます。

話数を重ねるごとに文字数が増え、そしてそれに比例するように執筆時間が伸びていく傾向にありますね。
最終的にどこまで伸びるんでしょうね笑えません!

まぁその他にも四月からの新生活で忙しかったとか、サタスぺのシナリオ作成で忙しかったとか、ロボボプラネット100%クリアで忙しかったとか事情は様々あるのですがそれはまぁ置いといて!


今回はオバm、じゃないアスカが到☆来!

内容が内容なだけにものすっごい難産だった今回の話、例によって例のごとく色々とアレですが・・・

ゆっくり読んで行ってね!


第拾参話「えっ?LASってレイ、アスカ、シンジの事じゃないの!?」

「なんなんだろうね・・・この使徒戦にあるまじきグダり具合は」

 

 

広い海のど真ん中。

その海上に立つエヴァンゲリオン二号機のエントリープラグの中にいる僕は溜息を吐く様にそう呟き、言ってからヤバイと思って口を押えた。

 

 

「相手が海中にいるんだからしょうがないでしょ!?っていうかアンタは余計なこと言わずにちゃんと集中しなさいよね!!」

 

「へーい」

 

 

案の定同じく二号機に搭乗しているアスカに超至近距離で怒鳴られ、ただでさえ降下気味だったテンションがさらに下向きになった僕はやる気のない返事で答える。

それを聞いて機嫌を悪くしたアスカは前を向くのもやめて僕に文句たれ始めたので、それを軽く聞き流しながらアスカの代わりに前を注視していた。

 

すると次の瞬間、前方向の水面に大きな影が現れたのを見た僕はあっ、と声を上げる。

僕の様子を見て瞬時に意識を前方へと切り替えたアスカに続く様に、僕は前を指さし叫んだ。

 

 

「エリック!上だ!!」

 

「前でしょ!?」

 

 

適当な事言ってんじゃないわよ!!と叫びながら使徒を殴り飛ばすアスカを眺めつつ、僕はどうしてこうなったと今までの事を思い出すのだった。

 

 

 

 

 

・・・時は遡って少し前・・・

 

 

 

 

 

「おー!海や海や!!」

 

「ウェミダー!」

 

 

今NERVから飛んだオスプレイ(仮)に乗って海を全力疾走している僕達は第三東京市立第壱中学校に通うごく一般的な男の子。

強いて違うところをあげるとすれば、僕はエヴァ初号機のパイロットってとこかナ・・・

 

JAの発表会が終わって間もなく。

今週の日曜日にエヴァ弐号機とそのパイロットを迎えに行くと、レイと一緒に朝食を食べている時にミサトさんから伝えられた僕は驚きでむせ返ってしまった。

 

_人人人人人人人_

> 突然の来訪 <・・・と騒ぐほどでも無い、かな?

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

でも行き成り「前も言ったと思うけど」みたいな感じで言われたのだから、僕の驚きもおかしいものでは無い筈だ。

決して僕のスニークミッションもどきにその情報が全く引っ掛からなかったのが悔しいわけじゃない。

何事かと僕を見つめる二つの視線の前で僕は深呼吸をして落ち着きを取り戻し、平静を装ってミサトさんを問いただした。

 

すると案の定、ミサトさんは言ったつもりになって実際には僕に伝えるのを忘れていたのだった。

 

溜息を吐く僕に平謝りするミサトさん。

するとミサトさんはご機嫌取りのつもりなのか、こんな提案をしてきたのだ。

「今回はそこまで堅苦しいとこでもないからお友達連れて来ていいわよ!」と。

 

そんなわけで翌日、学校で二人に「行かないか」と誘うと二人はホイホイと付いて来ちゃったのだ。

 

 

「おお!なんか見えて来よったで!?」

 

「空母が5に戦艦4か!大艦隊じゃないか!!」

 

「うわぁ、一回の出撃でどれだけ資材溶かすのか考えたくもないね・・・」

 

「艦これ脳乙」

 

 

そんな感じで僕達が機内でわいわい騒いでるうちに、オスプレイ(仮)は船の上へ着陸。

僕達は風がびゅんびゅん吹き荒れる甲板に降り立った。

 

 

「今日は・・・風が騒がしいな・・・」

 

「でもこの風・・・少し泣いています・・・」

 

「どうやら風が町に良くないものを運んできてしまったようやな・・・」

 

「何してるのよ、って風つよっ!?」

 

 

打ち合わせをしていたかのように一斉にネタに走った僕等を呆れるように見ていたミサトさんは、風に帽子を攫われかけ慌てて押さえつける。

その様子を見たトウジは安心したように肩を竦めた。

 

 

「いやー、ギリギリで思い直してよかったわぁ・・・」

 

「ん?何が?」

 

「あんな?最初はお気にの帽子でも被ってキメたろかとか考えてたんやけど、一緒に来る人はミサトさんだけ言うたやんか、だから途中でやめたんや」

 

「あーなるほど・・・うん、多分風で飛ばされてただろうね」

 

「せやろ?危機一髪やでホンマ」

 

 

僕らの格好は見事にいつもの格好(僕とケンスケは制服でトウジはジャージ)だもんね。

しっかしなんやかんやでトウジも順応するの早いよなぁ。

ミサトさんの扱いがもうマイナス方向に傾いてるし。

 

 

「・・・ってケンスケどこ行った」

 

「すぐそこで飛行機眺めとるで?」

 

 

トウジが指さした先には戦闘機を興味深そうに眺めるケンスケが確かにいたので僕らは近寄って声を掛ける。

すると僕らに気づいたケンスケはとても晴れ晴れとした顔で話し始めた。

 

 

「いやぁ、知識では知ってても実際で見ることは出来ないと諦めてた代物を、こうやって実際に見ることができるなんてなぁ・・・持つべきものは友達だぜ!」

 

「さっきも思ったんやけど、なんでそんな詳しいんや?」

 

「ガルパンの予習で戦車調べた時、そっち系にハマっちゃってな」

 

「さすケン(さすがケンスケ)」

 

「いやそれはおかしいやろ」

 

 

そんなこんなで無駄知識を披露し始めたケンスケの話を聞いていると「こんなとこでなにしてんのよ」と真後ろから声を掛けられたので、僕とトウジは180°向きを変えて振り返る。

するとそこには呆れた表情をしたミサトさんとこちらを勝気な表情で見ている美少女がいた。

 

ふむ、流れからして彼女がセカンドか。

 

 

「まぁいっか・・・えーと紹介するわね、この子がエヴァンゲリオン弐号機専属パイロットの惣流・アスカ・ラングレーよ」

 

 

へー。といった感じにミサトさんの説明を綺麗に横並びになって聞いていた僕等は次の瞬間、目を見開いて彼女を凝視することとなった。

なんと、説明が終わると同時に強い風が吹いてラングレーさんのスカートが思いっきり捲れ上がり、魅惑のデルタ地帯が完全に露わとなったのだ。

 

パンチラなどではない、パンモロである。

 

完全に目が釘付けになり固まった我等男三人衆。

その中で一番早く動き出したのはやはりというかなんというか、ケンスケであった。

 

忍者の印結びのように素早い動きで手を動かし何かを淡々と表していくケンスケ。

その無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きの真意を捉えるのは素人には至難の業なのだろうが、この僕に限ってはそれはない。

僕ことシンジは、その動きに込められていた意味を完璧に読み取ったのだ。

 

僕でなきゃ見逃しちゃうね!

 

 

「パンツ丸見え?」

 

「「YEAAAAAAAAH!!」」ピシガシグッグッ

 

スパァン!スパァン!「フラン」スパァン!!

 

 

相変わらず息の合った僕等のコンビネーションを称え合っていると、案の定ラングレーさんの平手打ちが飛んできたので甘んじてそれを受け入れた。

やることやれたから満足だ。なんなら次回が1クール目最終話でもいいよ!

 

トウジ→僕→ケンスケの順番で平手打ちを喰らわせ満足そうにするラングレーさん。

そんなラングレーさんに顔を腫らしたまま食って掛かろうとするトウジを、不満を感じてない僕等二人で押さえつけた。

「そんなもんこっちも見せたらぁ!」って誰得だよホント・・・あ、委員長得か。

 

 

「見物料よ!・・・で?噂のサードチルドレンはどれ?」

 

「この子よ」

 

 

ミサトさんが僕の事がサードだと示すとラングレーさんはぐいっと顔を近づけ見つめてきたので、負けじとその品定めする視線に真正面からぶつかっていった。

そしてしばらくすると「冴えないわね」と言ってラングレーさんは顔を離していった。

 

しかし冴えない・・・冴えないとな?

 

 

「・・・冴えないって初めて言われたかもしれない」

 

 

自分で言うのもなんだけど、たとえ初対面の人でも警戒はしても遠慮はしない性質だからなぁ。

パッと見は冴えない顔なのはわかってるし、まともに話す前の評価を下されればこんなもんか、と一人でうんうんと頷いて納得しているとケンスケがニヤニヤと笑ってこちらを見ている事に気づいた。

 

 

「シンジの初めてが奪われたと聞いて」

 

「なっ!?へ、変な言い方するんじゃないわよ!!」

 

 

ケンスケの物言いに顔を真っ赤にして怒鳴るラングレーさん。

そんな可愛い反応をするラングレーさんをトウジは腕を組み難しい顔をして見つめていた。

 

 

「シンジが冴えないとか・・・コイツ頭沸いてんとちゃうか?」

 

「ふんっ!」ドゴォ

 

「うごげッ!?」

 

 

そう呟くように言ったトウジの顔面には次の瞬間、それを漏らさずに聞いていたラングレーさんのグーパンが突き刺さる。

間抜けな声を上げて倒れるトウジを拳を振りぬいた体勢で見下ろしながら、ラングレーさんは頭に怒りマークを浮かべ(幻覚)ていた。

 

 

「歯を食いしばりなさい!!」

 

「そ、それ殴ってから言うもんちゃうやろ・・・」

 

 

甲板の上で倒れ伏しながらもツッコミを欠かさないトウジに僕とケンスケはさすがだと拍手を送る。

そんな僕等のやり取りの一部始終を見ていたミサトさんはお腹を抱えて大笑いしていたのだった。

 

 

しばらくして僕等はミサトさんに連れられて如何にも頭の固そうな船長さんの所へ連れていかれたり、その艦長さんと話をしている時に加持さんとかいう謎の人物が登場したりしたけど特にピックアップするような内容でもないのでスルーする。

まぁそもそも僕等は僕等で話をしててまともに話を聞いちゃいないんだけどね。

 

 

「なんかラングレーさん見てるとニセコイの千棘思い出すんだよね」

 

「あ、なんかわかるわ」

 

「誰よソレ?」

 

 

みたいな感じでずっと話をしていたから、大人達の話なんて加持さんがミサトさんの元カレっぽいことしか覚えてないよ。(これまた興味が無いので華麗にスルー)

 

しばらくすると大人達の会話も終わって加持さんと一緒にアスカ(話してる途中でラングレーは呼ばれ慣れてないからアスカでいいと言われた)は離脱。

それから少し経ってミサトさんの加持さんに対する愚痴を聞きながらエスカレーターに乗っていると、もう少しで登りきるという所で再びアスカが姿を現した。

アスカは僕達が何かを言う前に「シンジ、付いて来なさい」と言って歩き出し、それを断る理由も特に思い浮かばなかったので歩いていく彼女の後ろに僕は黙って続きその場を去った。

立ち去る時後ろから「また碇してるぜシンジのやつ」とか「ホンマにアイツは碇ってばかりやな!」とか聞こえたが、アスカがドンドン進んで行ってしまうので追及するのは後回しにしたけど・・・

 

いつの間に僕の苗字は動詞の様に扱われるようになったんだ?

絶対に碌な意味じゃないぞ「碇」

 

一体何スケが考えたんだ・・・?と少しふざけた考え事をしながら何処か不機嫌そうに歩くアスカの背中を黙って追いかける僕。

やがてたどり着いた場所にあったのは、液体に浸かるように俯せになった赤いエヴァンゲリオンだった。

 

ここでまさかの主人公カラー来るか・・・と戦慄する僕を見てニヤッと笑ったアスカは、軽い身のこなしでエヴァの上に飛び乗るとぴょんぴょんと一番高い所まで登って行ってしまった。あぁ^~。

 

 

「どう?これが弐号機よ!」

 

「まさか赤いとは思わなかったなぁ・・・」

 

「違うのは色だけじゃないわ、アンタ達のプロトタイプやテストタイプとは違って弐号機は世界初の実戦用のエヴァなのよ!」

 

「つまりその性能は初号機や零号機を三倍くらい上回る、と」

 

「えっ!?さ、さすがにそこまでじゃないと思うわよ・・・?」

 

「なに?機体が赤ければその性能は三倍になるのではないのか!?」

 

「どこの世界の常識よ!!」

 

 

得意げな顔を一転させてうがーっと怒鳴るアスカ。

しかし、どこの世界と聞かれたら答えてやるのが世の情け。

アスカが日本のサブカルチャーに疎いことが先の会話で分かっていたので、機動戦士について一から熱く詳しく語ってやろうと口を開きかけたその時、大きく鈍い音が辺りに響くと同時に足場が大きく揺れ始めた。

僕は咄嗟に姿勢を低くして揺れに耐えながら顔を上げ、足場が不安定な場所にいたアスカの安否を確認する。

すると狭い足場にも拘らず微塵も体勢を崩さずにその場に堂々と佇むアスカが目に入った。

 

大した奴だ・・・やはり天才か。

 

先の会話でエリートであるらしいこともわかっていたのでそんな賞賛の言葉を頭の片隅で考えながら、今もなお続いている揺れの原因について考察する。

まぁ多分使徒が来たんだろうと適当に当たりを付けながら僕はアスカに問いかける。

 

 

「これは!?」

 

「水中衝撃波・・・しかも近いわ、外行くわよ!」

 

「了解!」

 

 

答えると同時に走り出した僕にアスカはすぐに追いつき、ほぼ同時に甲板の手すりにたどり着く。

身を乗り出して戦艦が沢山浮かぶ海を睨むと、巨大な水しぶきを上げて移動しながら戦艦を破壊する何かの存在を確認することができた。

 

うん、知 っ て た。

 

 

「やっぱ使徒かぁ・・・」

 

「アレが?本物の!?」

 

「・・・さて、どうしようか?」

 

 

アスカの性格を大体把握済みの僕には、次に彼女が何をするのか手に取るようにわかる。

僕の問いを聞いたアスカは、少し考える素振りを見せた後に弐号機を見てニタリと笑って走り出し、思い出したかのように僕の方を向いて「付いて来なさい!」と言った。

 

弐号機に乗るんですね、わかります。

 

少し走った後に非常用・・・かどうかはわからないけどとにかくそれっぽい階段を見つけるとアスカは「ここで待ってなさい!」と言って荷物を抱え降りて行った。

そしてしばらくして聞こえてきたゴソゴソという音でアスカがプラグスーツに着替えていることを確信した僕は、背負っていたリュックから自分のプラグスーツを取り出してカカッと着替えた。

 

まぁ、前日ミサトさんからもしもの時のためにエヴァの電源ソケットを荷物としてオスプレイ(仮)に積んでいくことを聞かされた時点で察してたからね。

もちろんアスカだけ乗って僕は置いてかれる可能性もあったけど、もともと何かと理由をつけて連れて行ってもらうつもりだったのだ。

 

スピードワゴンさんじゃないけど、傍観者でいるのは嫌なんだよ!

 

大方置いてかれるだろうと考えていただけに、アスカの方から「付いて来い」と言って一緒に乗せようとしてくれたのはうれしい誤算だったと言える。

 

やがて、男であるが故にアスカより遅く着替え始めたのにも拘らず先に着替え終わって待っていた僕の元へ同じく着替えたアスカが姿を現した。

僕は自分のプラグスーツを持って来ていたことに対して用意していた言い訳を口にしようとするが、僕を見たアスカは軽く目を見開いた後に気に入らないといった風に顔を歪め「ほらさっさと行くわよ!」と言って走り出してしまった。

 

うーんやっぱり過度な先読みは逆効果だったか・・・気をつけなきゃ。

 

そう反省しながら後を追う僕だったが、あからさまな不機嫌オーラを発しながら前を走るアスカを見てふと疑問に思った。

少し前まで仲良く話をしていた仲だというのに、一つ気に入らない行動をしてしまったぐらいでそこまで機嫌が悪くなるものなのかと不思議に思ったのだ。

そこで少し今までのアスカの様子を思い出してみると、エスカレーターで合流した時から何処か雰囲気がおかしかったように感じた。

 

・・・離脱してた時にアスカが不機嫌になる何かがあったと考えるのが自然だよね。

 

そこまで考えたところで弐号機があった場所にたどり着いたのに気付いた僕は、思考を中断して軽く見回す。

すると僕より早く弐号機にたどり着いたアスカが手慣れた様子でエントリープラグを操作しているのが見えた。

僕がアスカの元へ駆け寄るのとエントリープラグの扉が開くのはほぼ同時で、軽く息を整える僕を見向きもせずにアスカはエントリープラグに乗り込んでしまった。

 

 

「何ボサッとしてんのよ!早く来なさい!」

 

「サーセン!」

 

 

アスカに急かされながら彼女の座る椅子の背もたれに掴まるようににして乗り込む。

扉が閉まりエントリープラグがエヴァに挿入されるのを大きな揺れで感じ取った所で、アスカが日本語ではない言葉で言語入力を始めた。

所々聞いたことがあるような発音が混ざって聞こえたことで、これはドイツ語だと判断したところで慌てて止めに入る。

聞き流しかけたけど、ドイツ語なんてわからない僕が居ては言語入力でエラーは免れないからね。

 

 

「なによ!」

 

「僕、日本語以外はオンドゥル語とかFB語ぐらいしかわからないんだ」

 

 

ごめんウソ、やっぱFB語もわかんないや。

 

アスカはバッとこちらを向き、怒ったような呆れたような表情をして僕を見る。

自分で言うのもなんだけど、僕は多国語をしゃべれるような人には到底見えないと思っている。

そんなあからさまに感情を前に出してしまうくらいに意外だったとは考えられないのだけど・・・

 

 

「アンタドイツ語わかんないの!?」

 

「恥ずかしいことにバームクーヘンぐらいしか・・・」

 

「ったくしょうがないわね!日本語に設定しなおしてあげるから感謝しなさいよ!!」

 

「かたじけない・・・」

 

 

意識して申し訳なさそうな表情を作りながら少し下を向き、さらに肩を落としながら謝る僕を見たアスカはフイと前を向いて言語入力に関しての操作を始めた。

数秒で変更し終わり、気を取り直して設定をやり直すアスカは先ほどよりも何処か機嫌が良い様だった。

その様子を見て僕は小さく溜息を吐き、そして苦笑する。

 

一先ずご機嫌取り成功・・・かな。

人に当たって凹ませるだけで簡単に溜飲を下げる辺り、まだまだ子供だけどね。

 

数日前の自分を棚に上げてそう考える僕のことなど気にせずにアスカは操作を進める。

そして数秒後、エヴァ弐号機とのシンクロを始めたアスカを見て、彼女の邪魔をしない程度にエヴァへと意識を集中させる。

しかし、エヴァからは何の反応も返って来なかった。

 

まぁ予想済みなんだけどね・・・というか返ってきた方が困るよ。

 

初号機と弐号機では『中の人』が違う、というのは少し考えればわかることだ。

おそらく弐号機の『中の人』はアスカの親族なんだろう、これも当然と言えるだろう。

詰まる所僕は完全にアウェイな状況に晒されているのであって、「アスカと一緒に戦う!」なんて冗談でも言えない状態に置かれているというわけだ。

 

つまり何が言いたいのかというと、僕はシンクロすることを・・・強いられているんだッ!

 

一見無謀だと感じるかもしれないけど、僕はそうでもないと思っている。

なんたって僕はトウジとケンスケっていう先駆者を知ってるからね!できない道理は無い、はず。

母さんを説得して二人を受け入れてもらった様に、僕も弐号機のエヴァさんを説得して受け入れてもらうのだ。

アスカじゃないとエヴァさんとの対話なんてできないのかもしれないが僕はシンクロするのに慣れている。

同じ感覚でやれば、きっと声ぐらいは届かせることはできるだろう。

 

僕は頭の中で作戦を再確認しながらシンクロに意識を集中させているアスカの様子を見守る。

同時にシンクロを図るなんてことはしない。

だって(おそらくだけど)弐号機のエヴァさんはアスカのことを大切に思ってるんだよ?

そんな彼女のシンクロの邪魔してみろ、それこそ説得どころじゃなくなるよ!

 

そして数秒後、アスカがシンクロを終え力を抜いたのを確認すると僕は一気に意識をエヴァへと集中させた。

初号機の感覚で大体母さんと対話ができるくらいの場所まで意識を沈めても、当然のことながら反応は何も返って来ない。

しかし僕は構わずに、たとえ注意が向けられていなくとも相手に伝わるように頭の中で絶叫した。

 

 

『(ドーモエヴァ=サン!!碇シンジです!!!)』

 

 

どんな時でも最初はアイサツ、古事記にもそう書いてある。

 

すると何者かが驚いたような反応を僅かに感じることができた。

どうやらエヴァさんにとって今のアイサツは完全に不意打ちだったらしい。

しかし僕は構わずに言葉を続ける。

 

 

『(アスカさんの、友達です!!)』

 

 

なのはさん式で僕等が友達なのは確定的に明らか、名前も呼び合ってるし間違いではないはずだ。

少なくともレイの時よりは自然だよね。

 

その僕の声を聞いてさらに驚いたような反応が返ってきたのを感じて、そんなにアスカに友達ができたのが変なのかと笑いそうになったけど必死で堪えた。

こんなこと考えてるのバレたら確実にアウトだからね。

 

自己紹介を終えた僕は、一気に本題へと入ることにした。

 

 

『(僕に友達を、アスカを守ることに協力させてはもらえませんか!?)』

 

 

その僕の言葉に帰ってきたのは沈黙だった。

一瞬焦るが拒絶されないだけマシだと、畳み掛けるように訴えかける。

 

 

『(どうか!お願いします!!)』

 

 

僕の声に返ってくるものはやはり何も無かった。

さすがにこれ以上叫ぶのは失礼だと思うので、もう僕にできることは何もない。

この沈黙はエヴァさんが悩んでいるからであることを、そしてその答えが良い返事であることを僕は祈って待つしかできなかった。

 

そして、ジョジョの時間停止中並に長く感じた数秒を得て沈黙は破られる。

なんと弐号機との間に僅かではあるが繋がりを感じることができたのだ。

初号機とは比べ物にならないくらい浅いものだけど、僕は今確かに弐号機とシンクロしている!

 

 

『(ありがとうございます!)』

 

 

そう伝えるとさっきよりも存在を近く感じるエヴァさんから明るい感情が伝わってくる。

僕はもう一度お礼を言ってから意識を内側から外側へと向けると、アスカが弐号機を起動させているのが確認できた。

この僅かなシンクロで何ができるのか確認するために、僕は弐号機の視界の端に一瞬だけA.T.フィールドを発生させる。

ほんの一瞬だけだったので肉眼ではキチンと確認できなかったけど、感覚で無事に発生させることができたのを確信することは出来た。

A.T.フィールドを張る以外は出来そうに無いと判断し、どうやってアスカをサポートしていこうかと考えようとしたところで、僕はアスカの様子がおかしいことに気づく。

そして、僕が一つの可能性を思いつくのとアスカが振り返るのはほぼ同時だった。

 

 

「シンジ!アンタ弐号機とシンクロできたの!?」

 

「っ!!」

 

 

その可能性は一瞬にして確信に変わった。

アスカは僕が瞬間的に展開したA.T.フィールドを正確に認識したうえに、それを僕が展開したものだという答えを僕に匹敵するかそれ以上の思考スピードで導き出して見せたのだ。

これが、ネタ抜きのマジな天才ってやつなのか・・・?

 

負けたよアスカ、お前がナンバーワンだ・・・!

 

 

「・・・なに悟ったような顔してんのよ」

 

「え?あ、ごめん」

 

「というか、さっさとアタシの質問に答えなさいよねっ!なんでアンタなんかがアタシの弐号機とシンクロできんのよ!!」

 

 

今までに見たことが無いくらいご立腹なアスカ。

これは下手な言い訳をしたらダメなやつだな・・・しょうがない。

 

 

「弐号機のエヴァさんに頼みこんでシンクロしてもらったんだ」

 

「・・・アンタバカァ?」

 

 

ホントの事言ってるのにバカとはひどいじゃないかアスカ!

まぁ、当然の反応だし僕もわかってやってるけどね?

ここで適当な嘘を言って誤魔化すのもいいけど、そうしてしまうと後々面倒なことになる。

だから本当の事を言ってしまうことにした。もちろん大事なことは伏せるけど。

 

ここでの会話はもちろん記録として残ってしまうのだろうが、それに関しても問題は無い。

実は元々僕の異常なシンクロ率に関しては疑われている節があったんだ。

故にいつまでも理由をひた隠しにしていても疑われるより、痛くない程度にカミングアウトして信用を得たほうがいいと考えていたわけで・・・

このアスカの問いかけは、自然に秘密を話すことができるいい機会だと言えるわけだ。

 

そういう事情で僕はアスカに感謝をしながら、嬉々としてエヴァに心があることを説明していく。

最初は胡散臭そうに聞いているアスカだったが、「これでシンクロ率が上がったんだ!」と一転して真剣に話を聞いてくれた。なんで?

 

そしてじゃあ実際に試してみようということで、アスカがエヴァさんに話しかけてみる事になった。

 

 

「・・・えっと、アンタみたいに頼みこんだ方がいいのかしら?」

 

「アスカは普通に話せばいいと思うよ?僕じゃないんだし」

 

 

さりげなくヨイショしながら説明する僕の言葉を聞いたアスカは目を閉じて集中し始め、数秒後驚きで目を見開いた。

 

もうシンクロしたのか!はやい!これで勝つる!

 

 

「―――すごく温かい、アンタの言ってたことはホントだったのね」

 

「僕はこの技術を、『アクセルシンクロ』と呼んでいるんだ」

 

 

アスカが今までしていたシンクロが普通なのなら、僕のシンクロはその先を行っていたわけだから別におかしくは無いはず!

次にシンクロするときは絶対に「アクセルシンクロォォォオオ!!」と叫ぼうと心に決めながら誇らしげにそう告げた僕を見て、アスカは急に悄らしくなり顔を伏せてしまった。

 

 

「・・・よかったの?アタシにこんな事教えちゃって」

 

「かz、仲間だからな!」

 

「仲間・・・そうね」

 

 

打算アリアリな親切だからして、そう申し訳なさそうな表情を見せられると非常に良心が疼いてしまう。

家族と言いかけながらも明るい調子で励ます様にそう言うと、呟くように何かを言った後にアスカは勢いよく顔を上げ、先ほどまでの悄らしさを忘れさせるような勝気な笑顔を見せた。

 

 

「よし!じゃあシンジにはお礼に、このアタシの華麗な戦いを特等席で見せてあげるわ!」

 

「・・・あぁそういや居たんだっけ、使徒」

 

「正直アタシも忘れそうになってたわ」

 

 

一応外で戦艦がドンパチやってる音は聞こえてくるんだけど、集中すると周りの音なんて本当に聞こえなくなるからね。

まだまだ外が煩いことに安堵しながらも、僕とアスカはVS使徒のための作戦会議を始めた。

 

 

「シンジもA.T.フィールドを張れるのよね?」

 

「うん、できる。でも他は何もできないから後は全部アスカに丸投げになっちゃうだろうね」

 

「そんなの望むところよ!・・・で、アンタに頼みたい事があるんだけど」

 

「よっしゃ任せろ!」

 

「まだ何にも言ってないわよ!!」

 

 

つい勢いで言ってしまった僕の言葉にそれを上回る勢いでツッコミを返してくるアスカ。

なんというか、ハリセンとか似合いそうだねアスカ!(彼女は柚子ではない)

・・・と、バカやってる場合じゃないか。

 

 

「僕にできる事なら喜んでやらせてもらうよ!何をすればいいのさ?」

 

「シンジには足場を作ってほしいのよ」

 

「・・・なるほど、そういうことね」

 

 

エヴァが水陸両用だって話は聞いたことも無いし、相手に合わせて戦ってやる道理も無い。

僕がA.T.フィールドで弐号機の動きに合わせて足場を作れば、リスクも少なく戦えるというわけか。

断る理由は無いね。

 

 

「戦艦なんかよりずっと安定した足場になると思うんだけど、どうかしら?」

 

「うん、任された!」

 

「よし!じゃあさっそく行くわよ!エヴァンゲリオン弐号機、起動!!」

 

 

覆っていた布を退かして立ち上がった弐号機の視界から見える海に浮かぶ戦艦は、さっき見た時と比べてかなり減っているように見えた。

 

 

「・・・少しゆっくりし過ぎたかしら?」

 

 

思わずと言った調子で呟いたアスカの言葉に同意しようとした次の瞬間、無線が起動して向こうからごちゃごちゃと声が聞こえてきた。

ミサトさんの声や艦長さんの声、そしてその部下っぽい人の声などが色々混じって聞こえることから向こうで揉めているらしいことが分かった。

 

 

「出撃許可が~とか言ってるね」

 

「どーせ許可なんて下りないわよ、勝手にやっちゃいましょ!」

 

 

そう行って海に飛び出そうとしたアスカの行動は、無線から聞こえてきた「許可が下りたわよ!」というミサトさんの言葉に中断されることとなった。

こちらが疑問に思っているのを読んだかのように入ったケンスケのフォローによると、どうやら多くの戦艦が沈められたのが大分堪えていたらしく、やむを得ずと言った感じに許可を出してくれたそうだ。

「電源ソケットを甲板に用意しておくからなんとかこっちまで来て!」というミサトさんの言葉を聞いて、今度こそ弐号機は船上から海面へと飛び出した。

僕はすかさず着地地点にA.T.フィールドを展開し、弐号機はそれを蹴って前へと跳躍する。

 

 

「シンジ次!」

 

「了解!」

 

 

そして再び展開したA.T.フィールドを蹴ってさらに前へ進む弐号機。

それを三回ほど繰り返すと、ミサトさん達のいる空母の真横へとたどり着くことができた。

弐号機はA.T.フィールドの上から甲板へと手を伸ばし、ソケットを引っ張ってくると背中にしっかりと装着した。

一先ずこれで電源の心配は無くなったと一息ついたところで、僕達はほぼ同時に真後ろから巨大な何かが波を掛き分けて近づいてきていることに気づいた。

 

 

「来たッ!」

 

「っ!!」

 

 

凄まじい反応速度で振り返った弐号機の視界で、すぐそこまで近づいて来ている使徒の巨大な影を捕えた。

真後ろに空母がある以上、下手な対応をしたら皆を巻き込んでしまう。

僕がそんな不安を抱いている中、アスカは自信満々の表情で使徒を睨んでいた。

 

 

「大丈夫?」

 

「当然!」

 

 

やがて使徒はその巨体を海面から覗かせ、飛び上がって弐号機に襲い掛かってくる。

弐号機はA.T.フィールドの上で思いっきり体を捻り、飛び掛って来た魚のような姿をした使徒の鼻っ面を横から思いっきり蹴りつけた。

つま先が使徒の顔?に突き刺さり、そのまま勢いを殺される事無く振りぬかれた蹴りによって横へ大きく逸れながら吹き飛んだ使徒の巨体は、戦艦からそれなりに離れた海面へと倒れこむように着水した。

使徒の巨体によって発生した津波で眼下で空母がぐわんぐわん揺れているのが見えるが、弐号機はA.T.フィールドの上にいるので全く影響は無かった。

 

 

「すごいよアスカ!」

 

「当ったり前よ!・・・まぁ、アクセルシンクロのおかげでいつもより調子が良いのもあるわね」

 

『ぶっ!!』

 

 

あ、無線の向こうでケンスケが噴出した。

幸いアスカは気にしちゃいないようだけど気をつけなきゃ。

いや何をどう気を付けるかなんてわからないけどさ。

 

とにかく今は使徒に集中だ。

 

 

「アスカ!ここに居ると皆を巻き込んじゃうから離れよう」

 

「アタシ達を狙ってるようだからそうした方が良さそうね」

 

 

そう言ってしばらく周りを眺めたアスカは「見つけた!」と呟くと同時に弐号機を跳躍させ、戦艦や空母が周りに存在しない海上に降り立った。

直後、移動した僕等を追うようにやってきた使徒が先ほどと同じように飛び掛って来るが、先に察知して身を低くして待ち構えていた弐号機のアッパーで完全に勢いを殺され、背中から海面に倒れ沈んでいった。

 

 

「図体がでかいだけで大したこと無いわね!」

 

「・・・アスカ、大丈夫?疲れてない?」

 

「な、なによ急に」

 

 

確かにちょっと急すぎたね、反省。

アスカは「図体がでかいだけで大したこと無い」と言ったけど、今回に関しては「図体がでかいから厄介」なんだよなぁ。

 

 

「コアが見当たらないんだ」

 

「コア?コアって・・・使徒の弱点の?」

 

「うん、それが見当たらない」

 

 

コアが見当たらないのは前回の使徒も同じだけど、違う点が有り過ぎる。

前回は地上戦だったうえに様々な作戦を立てる時間も有ったし、サポートしてくれるNERVの人たちも大勢いたし強力な武器も用意されていて、さらにはエヴァは二体在った。

つまり今回は、前回有利だった点を全て潰された状態で同じ状況に放り込まれたようなものだと言っても決して過言じゃない。

 

 

「アンタ使徒を何体も倒したんでしょ?コアの場所とかわかったりしないの!?」

 

「今までのコアは例外無く全て使徒の中心に存在してたから、多分今回もそうだと思うんだけどね」

 

「・・・中心って、何処よ?」

 

「何処なんだろう・・・」

 

 

前回の使徒みたいなわかりやすい姿をしてくれてたらよかったのに!

飛び掛ってくるときに使徒の全体を確認できたけど、あの魚のような図体の何処か中心なんだ!?

 

 

「そのまんま使徒の中心を狙う・・・のもダメね、手段が無いわ」

 

「ナイフしかないからね・・・」

 

 

唯一の装備であるプログレッシブナイフじゃ、どう足掻いても使徒の中心部まで刃を届かせることは出来ない。

他に何か作戦を考えようにも無線の向こうには使徒に関してはド素人の船長さん、ツッコミのトウジと色々頼りになるケンスケ、人格者だけど戦いに関しては頼りないミサトさんしか居ない。

ケンスケが居ることはシンジ的にポイント高いんだけど、わがままを言わせてもらえるならリツコさんが居てほしかった!

 

一体どうすればこの状況を打破できるんだ・・・?

このまま突破口を見つけられずにズルズル戦闘が長引けば、それだけアスカに負担を掛けてしまうことになる。

こうなったらもっとシンクロ率を上げて―――

 

 

「そんなことしなくたってアタシに任せとけばいいのよ」

 

「でもそれじゃアスカに・・・ん?」

 

 

・・・僕、声に出してなかったはずなんだけど。

不思議そうに首をかしげているであろう僕を見ながら、アスカは不敵に笑った。

 

 

「シンジは考え込むのが露骨過ぎるのよ、状況によっちゃ何を考えてるか予想できるくらいにはね」

 

「うぐっ」

 

 

痛いところを突かれた僕は、つい呻き声を上げてしまう。

軽く何かを考える程度では問題ないけど、一度深く思考し始めてしまうと周りの事を忘れて考え込んでしまうのは僕も自覚している自分の悪い癖だったからだ。

相手が何かを考えてることがわかれば前の会話や周りの状況から考えてることは予測できるできるだろう。

実際に今それをアスカにやられたわけだし。

一応うまく誤魔化してるつもりではいるんだけど、ケンスケやリツコさんのような色々と鋭い人物を欺くことはできない程度の技量ってことだね。

 

そんなまるでダメージを受けたかのような僕の様子を見てアスカは自信に満ちた笑みを浮かべると、大げさな動作で胸に片手を当てると力強く言った。

 

 

「アンタは黙ってアタシに任せとけばいいの!アタシに丸投げするとか言ったのはウソだったのかしら?」

 

「だってそれは・・・」

 

「あーハイハイ心配してくれてアリガトウ!・・・全く、日本人がメンドクサイってのはホントね!ミサトとは大違いだわ」

 

 

無線から『あたしだって日本人よ!』と声が聞こえた気がしたが、アスカは全く気にする様子が無いので僕も気のせいだろうと無視する。

 

 

「とにかく、アンタはひたすら下を気にしてればいいの!作戦なんて後回しよ!!」

 

「だけど・・・」

 

「アタシがイイって言ってるんだからイイの!それ以上言ったらぶっ飛ばすわよ!?」

 

 

何処までも強引なアスカの言葉。

その態度も乱暴そのものだったが、僕の事を気遣ってくれているだろう事はなんとなくわかった。

アスカは不器用だなぁと思ってつい笑ってしまい、それを見たアスカは少しムスッとした表情をしたがそれを指摘し合う事はお互いにしなかった。

そして数秒後、仕切りなおす様に僕は先の事をアスカに尋ねる。

 

 

「で、アスカはどうするつもりなのさ?」

 

「とりあえずぶっ飛ばし続けて、後はなるようになれって感じね」

 

「やっぱりか」

 

「何よ、文句あるの?」

 

「・・・あ!ほら使徒が来たよアスカ、早く構えて構えて!」

 

「・・・バカシンジィ!!」

 

 

そんな感じで笑いながら会話する僕等の片手間で再び殴り飛ばされる使徒。

倒れこむように海中へ姿を消した使徒を注視していた僕だったが、やっぱりコアは見つからなかった。

 

そしてアスカの言った通り、その後も使徒が飛び掛って来てぶっ飛ばすという行為を何セットも繰り返して―――

 

 

 

 

・・・現在に戻る・・・

 

 

 

 

―――今に至るわけだけど。

 

 

「ああもう!いつまでやってればいいのよ!?」

 

「本当にね」

 

 

癇癪を起したようなアスカの言葉に思わず同意する。

最初のころは色々な色々な吹き飛ばし方をして使徒の様子を窺っていたアスカだったが、途中から面倒になったのか蹴り上げるだけになっていた。

 

 

「でもまぁ、さっき見たら使徒の顔?の辺りはボッコボコになってたし、一応ダメージは与えられてると思うよ?」

 

「倒せなきゃ意味無いのよ!!」

 

 

ごもっともで。

 

そんなイライラしているアスカから目を逸らす様に海を見ると、使徒がまた向かってきているのが見えたので言葉に出す。

 

 

「アスカ、また来たよ」

 

「ほんっっとにしつこい奴ね!!嫌われるわよ!!!」

 

「女の子に?・・・使徒って性別あるのかな」

 

「知るか!!!!」

 

 

アスカのセリフに付いている「!」が某漫画並に増えているのを体で感じる中、使徒はドンドン近づいてくる。

そしてその使徒を迎え撃つために構える弐号機は、何処か先ほどより力が込められているように思えた。

 

・・・あぁ、ついにキレたのか。

 

 

「いい加減にぃ!!しろぉっっっ!!!」

 

 

今までとは比べ物にならないほどに力が込められた下からの蹴りは、完全に相手の勢いを殺し使徒の巨体を空中に留めたままひっくり返し、目の前に現れた使徒の腹部?に弐号機は先ほどの蹴りに負けず劣らずの威力を持っているであろうパンチを叩き込んだ。

思わず息を飲んでしまうほど綺麗に決まったコンボに思わず顔を顰めてしまった僕の前で、使徒は「うげぇっ!」といった感じで口を開けながら無様に吹き飛んで行く。

口とか有ったんだ・・・とぼーっと考えていると突然アスカがすごい勢いで振り向き、鬼気迫る表情で捲し立て始めた。

 

 

「シンジ!今の見た!?」

 

「く、口のこと?」

 

「その中よ!アイツの口の奥に赤い何かが見えたの!!」

 

 

赤い何か?それって・・・

 

 

「コアだ!」

 

「そうよね、コアよね!ついに見つけたわ!!」

 

 

超嬉しそうにガッツポーズをするアスカを視界の端に収めながら僕は一人考えに耽る。

口の中の弱点、という特徴になんとなく既視感を覚えたからだ。

そしてその答えはすぐに出た。

魚のような形状に攻撃方法、口内に弱点という特徴含め全てがゲーム『モンスターハンター』のとあるモンスターを彷彿とさせたのだ。

 

潜口竜、ハプルボッカだ。

 

そしてハプルボッカの詳細を軽く思い出す過程で、使徒に大きなダメージを与えられるかもしれない一つの作戦を思いついた。

僕はその作戦が実行可能か一人では判断できそうになかったので、無線の向こうのケンスケに相談を持ちかけることにした。

 

 

「ケンスケ、今の聞いてた?」

 

『コアの話か?ここにいるみんな聞いてたぜ』

 

「あの使徒、ハプルボッカにそっくりだよね」

 

『・・・言われて見ればそうだけど、それが?』

 

「爆弾無いかな?」

 

『あ~、そういうことか!』

 

 

無駄な言葉を限界まで省いた僕とケンスケの会話。

周りの人達にはよくわからないだろうけど、僕はケンスケに言いたいことを全て伝えることができたという確信があった。

 

ハプルボッカは様々なモンスターが登場する『モンハン』の中でも、群を抜いて変わった特徴を持つ存在で、色々な特徴があるのだがその中でも特に際立った特徴(個人的感想)なのが、「突進してくるのを利用して爆弾を食べさせると大きく怯む」という点である。

早い話が、僕はこの使徒に同じことができるのではないかと考えたのだ。

 

僕はわけがわからないよ的な表情をして首を捻っているアスカを視界の端に収めながら、無線から聞こえてくる会話に耳を傾け集中する。

 

 

『艦長、魚雷を安全装置の解除をしないままで発射する事ってできます?』

 

『できなくはないが・・・』

 

『んじゃもちろん遠隔操作での解除も?』

 

『できるが、それがどうしたんだね?』

 

『サンキューです艦長!てなわけで爆弾は確保できたぜ!これでいいかシンジ?』

 

「うん、ありがとう!」

 

「・・・なるほど、それを使徒に食べさせるのね?」

 

 

そつなく場を整えてくれたケンスケとの会話を終え、いざ作戦の内容を説明をしようとしたところで発せられたアスカの言葉に僕は一瞬固まったが、すぐに苦笑に変えて「さすがだね」と称えた。

どうやらアスカは横から聞いた情報だけで大体の内容を把握したらしい。

アスカは当然だと言わんばかりのドヤ顔で先の質問の答えを早く言えと僕を促すので、しっかりと頷きながら言葉で暫定する。

 

 

「Exactly(そのとおりでございます)」

 

「よぉし!じゃあサッサとやっつけるわよ!」

 

『準備は任せろーバリバリー』

 

 

反射的に「やめて!」と反応しそうになったが、変に場を混乱させかねないので自重する。

ケンスケもそこら辺のことはわかっていたのかこちらの返事など全く気にせずに、船長さん達と魚雷の準備を進め始めたようだ。

 

 

「じゃ、掴み易い場所に移動しましょう」

 

「そだね」

 

 

僕らも僕らで作戦遂行のために動き始めようするが、次の瞬間に無線から聞こえてきた怒鳴り声にその行動は遮られてしまった。

 

 

『ちょ、ちょっと何するつもりなのよアンタ達!?』

 

『そやそや!ワイ等にもわかるように説明せんかい!!』

 

「「(めんどくせぇ・・・)」」

 

 

こっちの顔が見えてないのをいい事に、露骨に嫌な顔をする僕とアスカ。

アイコンタクトで素早く会話し、説明しなきゃしつこく聞いてくるに違いないと結論を出した僕らは片手間で海上を移動しながら簡潔に作戦を説明する。

そして説明を終えるころには、指定された戦艦の魚雷発射口の直線状に二号機は到着していた。

本当は質問タイムも設けたかったのだがいつ襲ってくるかわからない使徒の存在がある以上、一分一秒でも惜しいこの状況ではそんな暇はなかったようだ。

 

 

『では、発射するぞ!いいな!?』

 

「アスカ!」

 

「オッケーよ!!」

 

 

地味に会話するのは初めてだった艦長さんの声にアスカが返事をした数秒後、ドン!という音と共に戦艦から魚雷が発射される。

海面スレスレを水飛沫を巻き上げながら近づいてくるソレを必死に目で追う中、突如として無線から声が聞こえてきた。

 

 

『・・・って、使徒の口に魚雷を突っ込むってどうやるつもりなのよ!?』

 

 

今それ聞きますかミサトさん!?

そんなツッコミを頭の中で叫びながら僕は完全に向かってくる魚雷から目を逸らしてしまった。

しかしアスカはそんな中でも驚異的な集中力で魚雷から一ミリたりとも目を逸らさずに弐号機を構えさせていた。

 

 

「そんなのどうでもいいでしょ!閉じてたら無理やりこじ開けてでも食べさせるまでよ!!」

 

 

さらには集中した状態のまましっかりと返事を返すこの余裕っぷり。

「貴様!エヴァの操縦をやり込んでいるなッ!?」と問えば「答える必要は無いわ・・・」と返してくれるだろうと確信してしまうほどの気迫を誇るアスカ。

僕はそんなアスカの後ろ姿を見守ることしかできないのだが、そこに不安を感じることは微塵も無かった。

 

そして数秒の時を経てV兄様のように働かn、もとい動かなかったアスカがついに動いたと僕の頭が認識した時には知らぬ間に海水に浸かっていた弐号機の右腕が海面から姿を現し、そこにはいくつかの魚雷がしっかりと握られていた。

 

 

「取ったッ!!」

 

 

思わずといった風に上がったアスカの嬉しそうな声。

それを聞いた僕は、まずは作戦の第一段階はこれでクリアだと軽くため息を吐く。

そしていつの間にか緊張で硬くなっていた体から力を抜きつつ意識を前から少し外した辺りで、僕は水飛沫の上がる音が止んでいないことに気づいた。

 

 

なんでまだ水飛沫の音が?

          音は、後ろから?

                 しかも結構近―――

 

 

「アスカッ!後ろだッッ!!!」

 

使徒が後ろまで来ていると理解した瞬間に、僕は前を向いたまま叫んだ。

その僕の声を聴いたアスカが後ろを振り返るのと大きく口を開けた使徒が海面から飛び出すのは、ほぼ同時だった。

 

みんな揃って魚雷の動きに集中していたせいで、完全に真後ろから迫ってきていたせいで、水飛沫の音が魚雷と重なっていたせいで・・・

 

今の状況に陥った原因はいくら考えても状況は変わらない。

このピンチを如何にかできるのはこの場において、操縦機を強く握りながら襲い掛かってくる使徒を睨んでいるアスカと彼女が操る弐号機しか存在しないのだ。

 

 

僕やアスカが振り返るのに一瞬遅れて振り返る弐号機。

二号機の機体に噛り付こうと体を捻りながら突っ込んでくる使徒の姿を捉えたメインカメラには、振り返りながらA.T.フィールドの上で大きく踏み込んだ二号機の足が写り込んでいた。

咄嗟の事にも関わらず、使徒の目の前で綺麗な投球フォームを作り出した弐号機は踏み込むと同時に振り上げていた右腕で、魚雷を使徒の口の中めがけて思いっきり叩き込んだ。

 

突然口の中に物凄い勢いで異物を投げ込まれた使徒は思わず口を閉じてしまい、空中で大きく体勢を崩しその勢いは大きく殺されることとなった。

しかしそれでも向かってくる使徒を出迎えたのは、魚雷を投げた体勢からさらに一歩踏み込み振り上げられた弐号機の左足だった。

一連の動作の勢いがそのまま乗った強烈な蹴りを顎?に相当する部分に叩き込まれた使徒は、ひっくり返りながら吹き飛ばされ少し向こうの海面に背中から着水。

そして着水した瞬間、その衝撃で吹き飛んでいる間に安全装置が解除された魚雷が作動し大爆発を引き起こした。

 

籠った爆発音が辺りに響き渡り、その振動で発生した津波をアスカは自身のA.T.フィールドで防ぐ。

荒ぶる津波を無視して使徒の真横まで移動した僕らが見たものは、口とか顔がはじけ飛びボロボロの姿で海面に浮かぶ使徒の姿だった。

 

 

『使徒は?使徒はどうなったの!?』

 

「倒しました!!」

 

「いま確認中よ」

 

 

意地でもフラグを立てたくないがためについ大きくなってしまった僕の声をスルーしたアスカは、A.T.フィールドの端に立ってゲシゲシと使徒の体を蹴りつける。

そして動く様子がないことを確認してから使徒の残骸をA.T.フィールド上に引っ張り上げ、口だったものを引きちぎり無残な姿になったコアを発見したところで二人そろって大きなため息を吐いた。

 

 

「長く厳しい戦いだったね・・・」

 

「使徒と戦うってこんなにキツイものなのね・・・正直嘗めてたわ」

 

「いや今回のは異常だから、ほんとに」

 

 

そんな気の抜けた僕らの会話を聞いて使徒を倒したことを悟ったのか、無線の向こうはお祭り騒ぎになっていた。

無線を通じて掛けられる労いの言葉に疲れた様子も隠さず適当に答えていたアスカは、ふと思い出したように僕の方を見て笑顔を浮かべると両手を上げながら「アレやりましょ!」と突然言ってきた。

両手の角度からアスカのやりたいことは理解した僕は、アスカにできるのかと一抹の不安を覚えながらも言われるがままにアレをすることにする。

 

 

「「YEAAAAAAAAH!!」」ピシガシグッグッ

 

 

勢いに任せて最後までやってしまったが、アスカのソレは完璧だった。

一回見ただけで覚えたアスカに今更ながら戦慄を覚えた僕だったが、「実は一回やってみたかったのよね~」と無邪気に笑うアスカを見てどうでもよくなってしまった。

 

 

「アンタもナイスサポートだったわよ、シンジ!」

 

「君の活躍に比べたら霞んじゃうくらいのだけどね、アスカ」

 

 

使徒の残骸を引きずりながら海面を歩く弐号機の中で、僕とアスカは笑いながらお互いを称えあう。

さすがに謙虚過ぎだと笑うアスカの表情からは、搭乗前の荒涼とした態度などもう完全に消え去っていた。

 




(原作より)被害が増えたよ!やったねたえちゃん!

戦艦は犠牲になったのだ・・・シンジとアスカの関係改善、その犠牲にな・・・

これも全部加地って奴の仕業なんだ!
(エレベーターでの合流前にアスカのシンジに対する敵対心を煽ったのは加地さん)

アレ、でも使徒を倒すときに沈めなかった分一応まだマシなんでしょうか?


・・・まぁとにかくです!
今回の話を書き上げるのは本当にキツかったです。 
何がキツイって本編でシンジくんが言っていたとおり、前回と違って状況が不利すぎるんですよこの戦い。
上で上げた内容もそうですが、何より「シンジくんが思うように動かせない」というのがツラかった!!
シンジ裏方に回すのがここまで大変だとは思いませんでした・・・
初号機だったら多分お馴染みの変態軌道で海なんてスイスイ泳いでるでしょうし。

「A.T.フィールドは一人一枚」なんてアニメ版設定の裏をかく形でどうにかシンジくんも戦闘に参加させましたが、それもなんか少し無理やりな気もしますし。

もう二度とシンジくんが暴れまわれない使徒戦なんか書かねぇ・・・

え?イロウル?
んなもんカットだゴルァ!!

・・・はぁ、なんか愚痴っぽい後書きになってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました。
今更ですが後書きは飛ばして読んでくれてもオッケーですのでよろすく。

さーて次回はなんだ!?
・・・ホントなんだ?どうしよう。


ま、まぁとにかくできるだけ早く投稿しますのでお楽しみに!

あ、それと感想お待ちしております!
暇な方もそうでない方も是非に!できるだけお返しいたしますので!
(できるだけって言葉、素敵ですよね)

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