出来たら見に行きたいなぁ……
アザゼル先生のいる神の子を見張るものにいることによって、アザゼル先生に追加装備作ってもらえるのが良いよね。
原作からしてそうでなくても協力はしてくれると思うけど、持ち物的に下についてるほうがなんやかんや作ってくれそう。
面倒見いいおぢさんだもの
Yの日常/カラッポの心
「雄之介くん、雄之介くん……」
南雄之介は“夢”から覚めた。
首筋に04と刻まれたナンバーが見え、金髪を耳にかけながら雄之介を起こそうとする少女の首筋にも同様のマークがある。
「アレ?朝?」
「朝だよ、雄之介くん」
何か怖いような、それでいて希望のあるような不思議な気分だ。
彼女と共に研究施設を生き残り、こんにちに至る。
二つ下と言えど、雄之介にとっては兄妹の様な存在であることは間違いない。
記憶が幾分か抜け落ちていても、そればかりははっきりしている。
それが南雄之介のアンに対する感情であった。
身寄りのなかった自分達を拾ってくれたアザゼルの下に入っていた。
なんでも、雄之介の『ジョーカー』の力が『スカル』から変化したことが興味深いことと単純にアザゼル曰く見過ごせなかったらしい。
「おはよう、アンちゃん」
「おはよう、ユーくん」
雄之介が身を起こすと、アンは部屋のカーテンを開ける。
シンプルな水色のカーテンに黒いデスク、それに帽子掛けには沢山の種類のソフト帽が掛けられていて中にはソウキチから受け継いだ白いソフト帽もある。
今日のアンは動きやすさを重視した服装で白と水色を基調とした服装は見ている者に爽やかさを与える。
「今日は一段と涼しそうだね」
「あ、気づいた?今日は少し暑くなると聞いたから涼しい服装にしてみたの」
欠伸をしながら雄之介は起き上がり、アンは即座に後ろを向く。
起きてからすぐに着替える雄之介の癖は知っていたので判断は正しかったようだ。
ズボンを履き替え、シャツに袖を通して上着を羽織って今日のワインレッドのソフト帽を被る。
此処、
アンと同世代のヴァーリ・ルシファーは戦闘狂でお世辞にも服装に気を遣っているようには見えないし、彼の仲間までは深く知らないので押して量るだけに留まる。
「さて、行こうか!」
「うん!」
ロストドライバーと『ジョーカー』メモリを懐になおし、玉に紐を通して吊り下げたペンダントを下げてアンと共に食堂に向かう。
毎朝、アンと食堂に向かうときにちらりと横顔を見るといつも笑顔でいるのが雄之介には不思議だった。
なにか良いことがあったのか、と尋ねると「なんでもないよ」と返されるばかりだ。
だけど、そうして笑顔でいてくれるのが嬉しかった雄之介は笑ってくれるならば良いとだけ思う。
「よう、ユー、アン」
「やあ、ヴァーリ」
「おはよう、ヴァーリ」
ほっこりしている雄之介の肩に手を置いたのは銀髪の少年、ヴァーリ・ルシファーだった。
アザゼルが言うにはソウキチから雄之介が受け継いだメモリは地球の記憶と呼ばれるものを内包した、いわゆる“ガイアメモリ”というらしい。
地球の記憶といえばヴァーリの神器を聞くまでは大層なものだなぁとのんびり思っていたが、アンの神器やヴァーリの能力を聞いたときは肩を落とした。
多種多様で属性付与のできる剣を作り出せるアン、力の半減を操ることができるヴァーリと来て雄之介自身は身体能力強化と言う非常にシンプルなもののみ。
戦闘狂なヴァーリにとっては徒手空拳を極めんとする雄之介は興味深かった。
「良かったら、また組み手をしてくれないか?もちろん、ユーはあのジョーカーの姿でな」
「朝ごはん食べてから考えさせてもらっていいかな?寝起きだと頭が回らなくて。ふぁ~~」
「いこ、早くしないと限定定食がなくなるよ?」
「それは困る」
限定定食と聞いて目の色が変わるのが雄之介である。
食えれば良いと思っているヴァーリが戦闘や力に対して拘りを見せるなら、雄之介は戦いよりも日々のものに充実感を見出していた。
組み手や修行は嫌いじゃないが、戦うことはあまり得意じゃない。
抜け落ちた記憶がそれに関連するものであったにしろ、進んで思い出したいものじゃなかった。
アザゼルは雄之介が必要とするならば記憶を取り戻す為の機器の一つや二つと意気込むが、今の
アザゼルの仕事を手伝えば世界を見て回ることができるし、新しい発見や見知らぬ土地での出会いもある。
そういうのに満足しているから記憶を取り戻すことにこだわらなかった。
足早に雄之介が鼻唄交じりに食堂に向かっていくと、どこか陰のある表情で背中を見つめるアンにヴァーリは気づいた。
「……どうした?」
「なんでもない」
ノイズ混じりに浮かぶ光景。
『……い、……ない!アン……るのは、…………だ!……ュ!』
あのときも雄之介は助けてくれた。
今はめっきり話さなくなった雄之介の『夢』、現状に満足しているのだろうか?
アザゼルの庇護にあれば安全だし、アンの目の届く範囲であるならば雄之介をアンが助けに行くことができる。
本人は戦うことを好まないが、誰かが理不尽な目に遭っていたら我が身を厭わずに飛び込む。
それはあの“地獄”に居たときから変わらず、いかなるときも笑顔を忘れなかった。
「ヴァーリ?アン?」
人混みならぬ堕天使混みに紛れながら、雄之介が手を大きく振っている。
結局、この後に限定定食を雄之介が摂ることは出来なかった。
JOKER
「……おい、ヴァーリ。どうしてユーのヤツは魂が抜けた顔をしてるんだ?」
「さぁ?ああ、そういえば、限定定食が食べれなかったからとか」
「今日は誰が遅れたんだよ?メシのときのユーは早いだろ?いっつもフルスロットルじゃねーか、こないだなんかバラキエルの嫁さんが作ってきたクッキーを嗅ぎつけてきたくらいだし」
魂が抜け、ふわふわと雄之介の頭上に浮かんでいるのがアンには見えているのか必死に押し込もうとしていた。
具体的には、「また食べに行こう?」だとか「今度は遅れないようにするから」と対話を試みており、その様子はいつものことながら呆れ半分である。
しかし、バカップルに見えないこともないので未だ独り身のアザゼルは爆発しねえかなと呟いた。
此処はアザゼルの自室。
様々な研究についてまとめたファイルや堕天使の中でヒーローやその類のものが好きなアザゼルがかき集めてきたフィギュアもある。
雄之介やアンが知らないようなヒーローから日本生まれならば誰もが知っている、銀色の宇宙人のヒーローまで。
「ほら、今度、ユーくんの好きなの作ってあげるからね?」
「さすがアンちゃん!」
「……あっ、復活した」
「どうだよ、ヴァーリ。自分が認めた男のあの様子」
「ありなんじゃないか?」
好物を作ってくれる、と聞いて飛び起きない雄之介ではない。
アザゼルに拾われたとき、もっと遡ればずっと一緒にいたかもしれない相手。
家族と言うものが分からないヴァーリであっても、アンと雄之介の関係は眩しいと思った。
皮肉を込めて言ったはずなのに平然と返されては意味がない。
色恋にまだ興味がないらしい、養子の銀髪の青年に頭を抱えながらも復活した『あの男』の愛弟子の頭をボードで叩き、真剣な面持ちとなる。
「談笑もいいが、これから、お前らに仕事を話す。用意はいいか?ユー、アン、ヴァーリ」
「「「はい!(おう!)」」」
感想・意見などございましたらどこが悪かったのか含めて宜しくお願いします