それが仮面ライダー   作:ふくつのこころ

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あけましておめでとうございます
今年はどこまで書けるかわかりませんが、雄之介の新フォーム疲労が出来たらいいなあと思います。今年も宜しくお願いしますね


超人Ⅳ

「ごめんね、朱乃ちゃん。無茶言って」

「ううん、大丈夫よ。他ならぬ二人の頼みなら尚更よ」

 

 トライドロンで姫島神社へと向かった雄之介とアン。姫島神社へと着くと、その敷地内にある駐車場にトライドロンを停めてから居住空間のほうに向かうと朱乃が待っていた。居住空間のほうの建物は典型的な日本家屋で暫く会うことのなかった朱乃は美しく成長しており、二人と違って学生であるということもあってきっと人気なんだろうなぁとアンは朱乃を見つめていた。雄之介の方は客間のほうに二人分の荷物を運びに行っており、バラキエルの妻である朱璃は盆に湯飲みを載せて運んできた。中には熱い茶が入っていて、このニホンの飲み物らしく、アンはまだ慣れないものの好みの味だった。

バラキエルは神の子を見張る者(グリゴリ)の仕事のこともあり、あまり家に帰れていないとのことだが夫婦仲や親娘仲は良好な模様。娘や妻がサディストなこともあってマゾヒストなバラキエルは非常に幸せである様子。それも一つの愛の形なのかと納得できる反面、雄之介もああいうのが好きなのかなと想いを馳せた。

 

 朱乃としてはアンの想いが成就を願ってはいるが、相手はあの雄之介だ。普段はのんびりとしていて飄々としたようにのらりくらりとかわしていく様はちょっぴり苦手だ。学校でこそ“おねえさま”として有名で母譲りの綺麗な黒髪の長髪をポニーテールに纏めているが、久々の幼馴染との再会に普段の気取っている自分を見せるのは申し訳ないと思ったのもあるし、雄之介が下手に勘繰ることがある。アンと雄之介の育ての親である養父(アザゼル)と父親のバラキエルとの間に繋がりがあるのもあって、ここにいないヴァーリもいれば幼馴染四人が揃う。離れた地できっと戦っているんだろうなぁ、と自分と同じハーフの銀髪の少年を思い浮かべると苦笑いが止まらない。

 

「しかし、アンちゃんも綺麗になったわ。ユーくんとはどうなの?」

「はい、ユーくんは相変わらずです、朱璃さん。今日は車できたんですけど、あの車はアザゼル先生が作ったものなんです。ユーくんったら喜んじゃって……」

「本当にユーにいさまとアンちゃんは仲良いわね。羨ましいわ」

「そ、そんなことないよっ!……ただ、もうちょっと気づいてほしいなって」

 

 卓袱台に座り、朱璃はアンに近況を尋ねる。

 朱璃の目から見てアンが雄之介に『お熱』なのは見ていて明らかだった。特殊な出自のアンは自身の娘である朱乃と同じくらい大切に思っており、雄之介のことも息子同然に思っている。『ユーくん』と呼び始めたのはアザゼルがバラキエルらに雄之介を顔合わせさせた際からずっと朱璃がしている愛称だ。まだまだ雄之介も朱璃からすれば子供といっていいほどで、アンとは別の意味で雄之介にとっては敵わない存在に朱乃ともどもなっている。

―――いい子なんだけどねぇ、どうして鈍いのやら

 特に朱璃目線では雄之介には文句はない。高身長、身体能力も高い、それでいてやるときはズバッと決めるが普段はのんびりしているところ。アンが頬を染めながら頬に手を当てている様は可愛らしく、嗜虐欲とは別の何かが湧き上がってくる気がした。雄之介に気づいてあげてほしいと思う気持ちもあるが、アンと同じ場所でアザゼルが『拾った』雄之介も誰かの背中を追いかけているようで帽子を被っているのも憧れの人の影響だそうだ。この町、駒王町に何度か遊びに来た際に麦藁帽子をプレゼントしたところ喜んでいたのは記憶に新しい。

 

「アンちゃん、朱乃ちゃん、朱璃さん。荷物運び終わりました」

「お疲れ様、ユーくん。お茶でも飲む?」

「いただきます!」

「(なんだろう、なんだろう。笑顔を見ているだけなのに、どうして気になるんだろう。嫉妬してるのかな?)」

 

 グレイフィアの目の前とはいえ、抱き寄せられたのはとても嬉しかったし他人に雄之介と居ることを見せ付けていたと振り返ってみると自分でも恥ずかしくなってきた。カジュアルシャツを腕捲りして様になっているとはいえ、疲れた様子で朱乃の誘いに乗って座る雄之介の額の汗を手ぬぐいで拭う朱乃。部屋着用の着物を着ており、様になっているからこそ悔しい。ふと、朱乃がこちらをしてやったりと言わんばかりに笑っているので気になった。あとで雄之介に抱きしめられたことを言ってやろう、とあくまでその場ではしないアンだった。

 

「ユーくん、何食べる?疲れたでしょう?何でも言ってみなさいな」

「じゃあ、わらび餅で!」

「ええ、持って来るわ。待っててね。ふふっ、まるでユーくんは朱乃と兄弟みたいね?」

「黒髪だしね、僕も」

「ユーにいさまと兄弟?面白そうね。ねえ、今からでもウチの子になりません?いいかしら?かあさま?」

「ユーくんがウチの子ね……、アザゼルさんに相談して引き取ろうかしら?南雄之介から苗字だけ変えて、姫島雄之介……。いい響きね」

「そ、それならっ!雄之介・ユーリで!」

 

 朱璃はそんなアンを見て、からかいながら立ち上がった。朱乃は雄之介のほうに寄っていって互いの黒髪を比べる。元々が同じ日本人、容姿が日本人離れした美しさがバラキエルの堕天使の血を引くこともあって年不相応な艶やかさが滲み出ている。朱璃が悪戯っぽく台所のほうで言っており、「ユーにいさまはどうしたい?」と朱乃は腕を絡ませて上目遣いに雄之介を見上げている。これで彼女はあくまでも悪戯だと言い通すものだから、幼馴染としては複雑な心境のアンである。大好きな愛しの青年を取られるのが嫌だったので載せられて口にしてしまうものの、名前と苗字を繋げて『ユーユー』と言うのは変だ。だけど、そんなアンを見てニヤニヤしている姫島親子、そして事態を理解できずにいる雄之介は茶を冷まして飲んでいる。本当にマイペースな青年だ、でもなければ戦闘狂(バトルジャンキー)のヴァーリ・ルシファーと仲良くは出来まい。適当に戦闘をするのをいなし、そして戦闘に負ければ次は必ず勝つと努力をする青年だ。

 

だから雄之介を好きになった。

今回のことだって自分の過去を精算できれば、それでいいと思っている節がアンにはある。けれど、それを南雄之介は決して許しはしないだろう。彼の持っている帽子の中には尊敬していたという人物が残したとされる、ソフト帽がある。それを見ているときの目にマイペースさはなく、なにかに取り憑かれているようにも見えた。大切なのだ、彼にとってはその思い出も帽子も。一流の男にこそ帽子は相応しい、と言っていたのを思い出した。この建物の中では脱いではいるものの、普段は帽子をあまり脱ぐことがないのは朱璃に注意されたからだ。朱璃を慕っているのもあって、雄之介にその気になられるのをアンは危惧している。

 

 そんな幼馴染や母親同然の人の思いとは裏腹に雄之介は朱乃の頭を撫でていた。これでも年下の少女、それに一人っ子だ。ヴァーリやアンと言い、兄弟がいる者は雄之介のまわりには少ない。雄之介はまだあずかり知らないところだが、この少女は既に先ほど突き放した銀髪メイドの主人であるサーゼクスの妹の眷族となっている。しかし、それを知るにはまた後ほど。突然撫でられて、「ちょ、ちょっとにいさま!?」と慌てふためいている朱乃はとても愛らしい。成長して美しくなろうとも、やはり妹同然の少女は自分にとっては変わらないようだ。そんな調子だからアンがいつ他の女性に取られやしないかと慌てふためく原因となっているのだが。

 

「よく分からないけれど、僕は僕だ。南雄之介だよ。そうだろ、アンちゃん?」

「……そうだね、ユーくんはユーくんだよ」

 

 そういう雄之介を見てアンは安心してしまう。アンの意見を否定するでもなく、朱乃達の意見を肯定したのでもない。自分は自分、我が道を行かんとする姿勢は超人ジョーカーのバトルスタイルにも繋がっているのだろう。

 アンが呆れるでもなく、肯定した様子を見て姫島親子は第三者から見ても量想いだということがひしひしと伝わり、からかったのが気まずかった。

 




傍から見て互いにゾッコンなご様子。
色んなネタが雄之介に込まれていますが、原典みたいに笑顔の似合う素敵な大人になって欲しいです

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