それが仮面ライダー   作:ふくつのこころ

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今回は誰の目線で言っているのかわからないように伏せてあります。
特定はできそうですけどね


超人Ⅰ.5

    古くから伝わる言い伝えがある。

   あれは確か、俺がまだガキだった頃の話だ。その時に聞いたんだが、変身して人知を超えた力を得る超人は歴史の端々で現れてきたようだ。先の大戦時、人外が引き起こした戦いにおいて翻弄されて搾取される側でしかなかったひ弱な人間の前に現れたのは『風』の力を操る異形の超人であったとのことだ。その記述については後になって調べることができたんだが、その超人はどこからともなく連日のように血で血を洗う戦の真っ只中に現れて怯える人間の希望になったという。

 

「誰だ!?貴様は何者だ!」

「二天龍の戦いを邪魔した意味を分かっているのか!?」

「これから死ぬ者に名乗る名前はない。俺は人間の自由の為に戦う者だ。貴様らが与えた被害、何人もの人間が苦しんでいると思っている?」

 

   そんなやり取りがされていたらしい。

   便宜上、彼としておくが彼が最初に現れた超人であって後に神器(セイクリッドギア)と呼ばれる聖書の神が作り出したシロモノでなくて当時のいわゆる人外連中に捕らえられて改造された存在であるという。名前も、愛する者も、家族も平穏も奪われてもなお恐れを知らない戦士としてただ一人戦い続けたという。思えば、彼こそが神器のプロトタイプ能力者であるように思う。

   武器を持たず、その手を力なき人間のために差し伸べるために使ったり人間ならざる相手と戦うときも基本的に彼は武器を用いることはなかった。

 

   大切なことは誰かが笑顔で暮らせる世界であること。

 

   普段はとてもお人好しな青年であったらしいが、詳しい記述は悪魔側が完全に隠蔽してしまったので記録されていないのが残念なところだ。俺が面倒を見ている、あのガキならば心から喜んで俺に話をせがむかもしれない。あいつは自分が思っている以上に心優しく、それでいて抱え込みやすいきらいがある。まだまだ俺の背を抜かせてはいないが、いずれは俺の背を簡単に抜いていってしまうだろう。

 

   さて、話題から逸れすぎていたので戻ってみるがドライバーの使い手(本来、というよりも彼の持っていたものはドライバーとは呼ばれていなかったらしいのだが)であった彼をドライバーの継承者は統一してこう呼んでいる。

   初代超人(ファースト)、と。

    元はその特殊な逸話から何らかの術を学んでいるかあるいは流派を持たなくてはならなかったらしいが、形を変えていってもなお残っている特徴として何らかのエネルギーを元に外骨格となるものを構築して身に纏うといった行為があるというのは全てのタイプにおいて共通している。

 

   いわゆる、ホンモノのドライバーであればの話だが俺が手に入れたドライバーに至っては量産品の下位互換(デッドコピー)もいいところのシロモノ。しかし、ただ変身して恩恵を得るだけならまだしも鍛えた身体を生かせるという意味では俺とは性にあっているのかもしれない。

 

   赤い龍、白い龍に三大勢力やその他の勢力をそれまでに受けた人間の被害をやり返すようにして行われた初代超人の所業。復讐と形容する以外にないファースト(以後、このように表記)の行いは容赦のないものだったという。赤い複眼を二つ煌めかせ、日差しが昇るのと同時にドライバーを反射させて寝込みを襲いに行くほどであったのだから。龍を征し、龍を封じた後にファーストはまるで戦闘マシンのように疲弊しきったところを襲ったのだ。

 

   そんなことをやっている元人間がいいように思われるはずがなく、英雄がまともな死に方をしたのが少ないようにファーストもまた同じだった。ファーストの死因はファーストの力を向けられるのを恐れた人間による公開処刑、ロクな人生でこそなかったが満足はしていたようでドライバーを残してポックリ逝ったらしい。ドライバーには特殊な宝玉がはめられていたとのコチだが、現在は所在不明。

 

   まさか、うちのガキが持っているはずがないだろう。似たようなものを首飾りとしているが。

   だからこそ、俺はこいつの寝顔を見ながら考える。

 

「お前は英雄になってくれるなよ」

 

   血縁関係とかそういうものではない、俺とこのガキは縁も所縁もない赤の他人に過ぎない。けど、出会ってしまったのであれば、俺をそういう風に呼ぶのならば俺は願わざるをえないのだ。

  できることならば普通の人間として生まれて欲しかったが、そういうのは野暮だろう。覚悟を決めているこいつに対してあまりにも失礼だ。まだ若いから、変わるかもしれんがな。




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