トライドロンの車内は快適だった。駒王町に滞在するにあたり、幾つかの荷物を詰め込んでアンと雄之介は搭乗してジョーさんのサポートとともに走り出したのだった。超高速走行機能を使用することにより、アザゼルが捏造した書類を持って二人は来日した。
「久々に来たねえ、ここ。朱乃ちゃんは元気かなあ?」
「大丈夫でしょう。バラキエルさんのノロケ話を覚えてないの?ユーくん」
『フム、二人にはいるのかい?この町に知り合いが。私にははじめてでね、この町に来るのは。それもあって見るものが新鮮だ』
ジョーさんは二人に尋ねる。
「まあね。アザゼル先生の同僚の家族がいるんだよ、この町に」
『把握したよ。しかし、人間なのかね?そのバラキエルの家族というのは。堕天使勢力の幹部の家族が人間というのはまずくないかね?』
「それについては一悶着あったんだけどね……」
『?どうかしたのかね、アン』
「なんでもないよ、ジョーさん」
東の国の地方都市、生み出されてからというものの、欧米には行く機会があってもアジア方面にはなかったのでアザゼルの手によってトライドロンと雄之介のスマートフォンを行き来できるようにしてもらい、胸ポケットから真新しい風景を見渡す。
煮え切らない様子のアンにジョーさんは尋ねるが、アンは首を振って否定した。液晶画面で感情表現を豊かに表すジョーさんだが、まだまだ人間について理解するには難しい。
カジュアルな服装で大人っぽさを醸し出している相棒だが、微笑みを浮かべながらも寄り添っている相棒を大切にしている少女の心が悟れないのでは、まだまだ
ーー急がなくても良い、ゆっくりで構わないから目的につけるようにしたまえよ。
ジョーさんは若き仮面ライダーに期待することとした。
「あ、アレじゃない?ユーくん」
「本当だ」
ジョーさんの記録によると、駒王の管理を任されているグレモリーが使いを送るらしい。
人間が暮らしている人間界において悪魔が管理下に置く、というのも変な表現だが。
グレモリーが送ってきたのは彼らの知人で堕天使と人間のハーフの少女ではなく、銀髪メイドであった。
「ようこそ、いらっしゃいました。アン・ユーリ様、南雄之介様。いえ、ーー超人ジョーカー」
「朱乃ちゃんじゃ、ない……?」
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「どういうことだ!?そうすれば、ユーを犠牲にすることになるぞ!?」
『だから、そうするしかないんだよ。リアスのところにいる赤龍帝はまだまだ未熟だ、コカビエルの足止めができたら上々なんだよ』
「だからって、ユーの
書斎にてホログラムに映る赤毛の優男、サーゼクスに対してアザゼルは怒鳴っていた。
サーゼクスは自らの申し出に対し、アザゼルがここまで吠えるとは思わなくて面食らっているようにも見える。
三大勢力の現状は停戦である。しかし、それを気に入らない堕天使側のコカビエルが戦争を起こそうとしている。
魔王の
サーゼクスがそこまで言うのは間違いなく、雄之介を超人たらしめているドライバーとメモリではなくて戦果によるものであろう。神器を持つでなく、ソウキチから渡されたドライバーと己の鍛錬だけで様々な怪物を打ち倒してきた。
三代勢力を絶滅に追いやった種、ドラゴンとタイマン。
ギリシャにてケンタウロスと超人ジョーカーとしての唯一の能力である、身体能力を用いての弓術戦にて勝利。
主だったものをあげるとこれだけだが、本人が思う以上にストイックな雄之介はこれだけでは満足していないのだから三大勢力が見過ごさないはずがない。
北欧神話勢に至ってはオーディンが戦乙女をあてがうと言って
「……決めるのはアイツだが、俺もアイツの養父としてキッチリしてやんなきゃならねえ」
ーー良い目をしているガキだ。
ヴァーリ共々、自分が拾った養子はどうして生まれる時代を間違えたと思わせるほどの逸材なのだろうか。
「だがな、これだけは聞いておく。ーーサーゼクス・『グレモリー』。お前は自分の息子を戦場に送れるか?」
『………』
「のんびりして、頼りなさげ。しかし、アレでも俺の息子なんだよ。お前は自分の子を進んで戦場に送らねえだろ?俺もそうだ、特にユーのやつはな」
『ーーとにかく、被験体四号に伝えてくれ』
ブツン、と通信が切れる。
アザゼルの部屋の外で何かが走り去るのが聞こえた。
「馬鹿が動くだろうが……」
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「待っていろ、ユー。俺がお前に代わり、コカビエルを倒してやる。なぜなら、俺はお前の家族だ」
走るヴァーリ、しかし、普段と違いがあるするならば表情は怒りで満ちているところだろうか。
目指すは駒王だ。
今回のサブタイ、超人はしばらく続きます