それが仮面ライダー   作:ふくつのこころ

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同胞が決定した瞬間である


超兵被験体四号

『超兵計画とは、聖剣計画を進める傍ら行われた超人を生み出す計画である。聖剣計画の最高責任者はバルパー・ガリレイだが、こちらは×××である。エクスカリバーの使い手を生み出す片割れの計画に比べ、こちらの計画は通称を超人と呼べる存在を生むのが目的である』

『ーー中でも、被験体四号は××××の適合者としての素質は十分にある。宝玉を所有してやってきたのも含めーー』

 

 

    アンは言葉を失った。

    雄之介は思った以上に壮絶な実験の被害者であるらしい。必ずや亡くなった同胞の敵討ちを果たす為、というのを掲げて生きている。

   毎日はかけがえのないもので捨てるつもりはないが、復讐と天秤をかけた時にどちらを取るかと言われれば答えに迷う。

 

   大切そうに雄之介が持っているペンダントのことだろうか?宝玉とやらについて触れられている。このファイルがアザゼルの本棚にあるのが何故かは不明だが、雄之介の過去と関連はありそうだ。

    それがきっかけで出会ったというのを惜しむ自分が嫌だけれど。

 

「アンちゃん?」

「ひゃっ!?……ユーくん!?」

 

   睡魔に襲われているのだろう、眠たそうな声で雄之介はアンに声をかけてきた。ゆったりとした寝間着は雄之介ののんびりした性格をどことなく表していてカラーもあってユルく見える。

   暗い中でも目が利くのは、やはり実験の結果だろうか。眠るときはさすがに帽子は被らないようで元来の癖っ毛がより強調されている様子。

 

「何を調べていたのかは聞かないけど、風邪引くよ」

「すぐ戻るよ。そんなに重要……でもないし」

 

    雄之介に上着をかけてもらい、触れたいもののさっと隠したアザゼルのファイルを見られてはならない。

    暗所であってもヴァーリとの夜間行脚の訓練を行ったのもあり、雄之介の視界は冴えている。

    そんな彼がアンが隠しているものについて触れないのは眠気から来ているのだろう、目がとろんとしている。

 

「ほらほら、ユーくんも戻ろ?」

「本は直さなくて…?」

「いいからいいから。ユーくんに蜂蜜入りホットミルク作ってあげるね」

 

   適当に本を奥へ奥へと押し込むと、笑顔を浮かべてアンは雄之介の背中を押した。

   眠る前に一杯、と言って酒を呑むアザゼルのことも悪く言えないかもしれない。

 

「うーん、それならお願いしようかな」

 

   目を擦りながらも嬉しそうな雄之介を見ていると。

 

 

      

 

 

                                 ***

 

 

 

 

「……参ったな、見られちまってたか」

 

   翌朝、アザゼルは部屋着代わりの浴衣姿で書斎の本棚の奥に押し込まれた、ファイルを発見した。

   強者と戦うこと、己の研鑽にしか興味を持たないヴァーリ。

   そも、やるなと言われればしない雄之介。

   アザゼルのプライベートの書斎ということで入室しないであろう同胞。

   となると、他に入室するとしたらアンくらいである。

   秘蔵本(エロ本)と同じ要領で置いておけば察してくれるだろうと思ったのが見通しが甘かったらしい。

    トライドロンのデータを専用のファイルに記載しようと思い、書斎に入ってついでにと『超兵計画』のファイルを覗こうと思った時にいつも収納していたスペースになかったのが始まりだ。

 

「近々、サーゼクスの妹の元に送らなきゃならんが、ユーのやつがストッパーになればいいが……」

 

   紅い魔王に頼まれた、その妹と共同戦線を張るということ。

   教会サイドも来るとのことで堕天使勢力であるアザゼルに頼んだのは何故か、と尋ねたところ、アンや雄之介は堕天使ではないからとのことだ。

 

   別にアザゼルは二人を私設部隊と思ったことはないし、トライドロンにしろ武装を与えたつもりでもない。

   自動車免許を取得した養子への贈り物のつもりだったのだから。

   ヴァーリにしろ、アンや雄之介にしろ、大切な『こども』であるのは間違いないが、独り身にして既に息子や娘がいるのは悪い気分ではない。

   だからこそ余計に息子がいるのにもかかわらず、彼らの意思を考えていない魔王を歯がゆく思う。

 

「焼きが回っちまったのかね。らしくもない」

 

   身体を『弄られて』いなければ、普通の人間である雄之介は種族の都合上、アザゼルやヴァーリより早く死ぬ。

   老いた姿で、皺くちゃになって。

   そのときなんと言葉をかけるかわからない。

   そもそも、笑っていられるだろうか?

 

「ヴァーリ以上に世話を焼かせるのは、お前の弟子のようだぜ?」

 

    窓から見える景色を一望、今は亡き養子の人生の師にして友人の人間をアザゼルは思い出した。

 

 

 

 

                            ***

 

 

 

   そこは、とある研究所跡。

   カジュアルな服装の青年がやってくると、赤いクロスを敷いたテーブルの上に腰を下ろしている温和そうな表情の赤いコートを着た青年は諸手を広げる。

 

「やあ、ヴェルメリオ。久しぶりに会えて嬉しいよ」

「お前は全く変わらないようで安心したよ。ま、色男ぶりでなら、俺が優っているけどな?」

『もう少し、キングらしい自覚を持て。……今更、何を言ってもしょうがないと思うが』

 

   カジュアルな服装の青年が気障な言動をすると、その傍らを飛ぶコウモリのような生き物が溜め息をつく。

   カジュアルな服装の青年の名はヴェルメリオ()

   赤いコートを着た青年の大切な『友達』の一人だ。

 

   久方ぶりに彼らが集結したのは、行方不明の被験体である仲間を探すためと三大勢力に反旗をひるがえすため。

   同じ目標を掲げる禍の団(カオス・ブリゲード)が手を組まないか、と言ってきたが身内以外を信用しない彼らはその誘いを突っぱねた。

 

「そのコウモリは誰だ?ヴェルメリオ」

「ああ、そういえば、ハートは知らなかったか。こいつはキバットバットⅡ世。俺の一族の王位の証と言えばカッコいいが、ほとんど小姑さ」

『それは振る舞いを改善しよう、とする様子が見られないからだ。ハート、と言ったな?キングが世話になっている』

「友達だからな、当然のことだ。俺はハート、こいつの友達だ。ーーそろそろ、はじめようか?もう一人の親友を迎えに行かなくては」

 

   冷たい口調のキバットバットⅡ世に対し、友達の友達は友達だと言わんばかりにハートは喜んでいる。

   少し面食らったキバット、ヴェルメリオとの初邂逅では愛想が悪いと言われて口論になったというのに。

 

魔法陣から新たに現れた『友達』を見ると、ハートは再び諸手を広げて顔いっぱいに微笑む。

 

「……おや?また来たようだ。すまない、お前を忘れるわけにはいかなかったな。では、改めて。おかえり、久しぶりに会えて嬉しいよ。この集いは今は亡き俺たちの友達への手向けとなるだろう。

一緒に迎えに行こうじゃないか、

 

 

 

 

 

 

 

ーーー俺たちの中で最強の『四号(友達)』を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『幼馴染』登場でよりカオスになる予感
来週からはゴーストがはじまるのか。
BBTでブラッドが増えて仮面ライダーできるようになったし、身内卓でライダーキャンペーンやりたいなあ

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