魔術師の集団に襲われた私をなぜか助けてくれた駒場利徳はこちらを振り返りもせず魔術師たちを……睨みつけているのかな?
駒場利徳に殴られたハルバードを使う長身の男魔術師は気絶しているみたい。一体どんな威力で殴ったんだろう。
「ちょっと下がるぞ」
「あ、っはい」
バンダナの男に言われる。
駒場利徳は確かに強い。その強さは原作を読んだ時にも伝わってきたからね。
でも、魔術師の集団と正面から戦って勝てるほどじゃないはず。
やっぱり逃げた方がいいかも。
「安心しろ」
そんな私を見てかバンダナの男が言う。
「俺たちが少なくともお前だけは逃がす。あの人の……駒場のリーダーから命令だからな。それに……」
そこでバンダナの男は言葉を区切り、駒場利徳の背中を見て言う。
「俺たちのリーダーはあんな能力者たちに負けねえよ」
重大な勘違いが発覚した。
うすうす感づいてはいたんだけど、バンダナの男と駒場利徳は、あの魔術師集団を能力者集団と勘違いしているらしいね。
まあ、魔術なんて信じてないだろうし、仕方がないんだけど。
本格的に切り札の使用、もしくは逃走を視野に入れておかないと。
そこで、円盤を持った男魔術師が何かを呟くのが目に入る。
地面であるコンクリートが動きだし巨大な拳を作っていく。
その瞬間。
空から、否、周りの建物の屋上から透明な謎の液体が魔術師たちに降り注いだ。
さすがにこの奇襲には対応できなかったらしく、魔術師たちが魔術を行使するよりも早く、魔術師たちは謎の液体を被る。
やったのは屋上のスキルアウトかな?
駒場利徳は懐から何かを取出して、自らの足元まで流れてきた液体につけたみたいだけど……!?
「ぐ、があああああああああああああ!?」
魔術師たちの悲鳴が聞こえた。
見ると、魔術師が全員濡れた地面に倒れている。
「……スタンガンかな?」
「!? よくわかったな」
隣のバンダナの人が私の呟きに反応する。
まあ、今のを見たらだいたいの人がわかると思うけどね。
スキルアウトたちが落とした液体を通して改造スタンガンの電撃を浴びせたって感じだろうね。
「ありがとうなんだよ」
「……礼には及ばない……」
結果として私は助かってしまった。
今は私と駒場利徳で、近くにあった比較的きれいなベンチに座っている。
「でも、どうして助けてくれたのかな?」
どうしてかは大体わかってるけど、一応聞いてこうかな。
「……大した理由じゃない。これ以上、
まあ、大方予想通りだね。
そもそも
能力者を育成する学園都市。その中の200万人をはるかに超える人口の中で8割が能力開発を受けた学生だけど、学生の6割は能力がないも同然である無能力者なんだよ。
だから、残り2割の能力者が上位の社会ができてしまったらしいんだよ。
そんな能力者の中に無能力者を見下し能力での暴力を振るう人が出るのは当然。
そんな暴力から身を守るために武装し始めた、っていうのが
「あの人達はどうするのかな?」
「……縛り上げて
ふと離れたところを見るとスキルアウト達がバンダナの男の指示で、気絶した魔術師たちを縄やらワイヤーで縛っている。
うーん。駒場利徳の性格的には女魔術師も男魔術師も色々大丈夫だと思うけど、
「とりあえず自己紹介しないとね、私は
「……駒場利徳だ……。俺は外国人の名前には疎いのだが……外国人というのはみなそういう名前なのか?」
「私もよくわからないんだけど、少ないんじゃないかな? ちなみに正式名称は『Index-Librorum-Prohibitorum』だよ」
「……正式名称まであるとは。やはり外国は侮れん……」
うん? バンダナの男が帰ってきたみたいだね。
「ふいー」
「……終わったのか……?」
「いや、まだだけどな、あいつら『半蔵さんは休んでていいですよ』だってよ」
「今日一日、走りまわっていたからだろう……」
予想はしていたけど、バンダナの男は第七学区
「ああ、お前も本当に大丈夫か?」
「問題ないんだよ。今日は助けてくれてありがとう」
「なら、よかった」
とりあえず自己紹介。
「私の名前は
「俺は半蔵だ」
それにしても、これからどうしようかな?
また大覇星祭の喧噪の中に飛び込む、っていうのは得策じゃないよね。何人魔術師が入ってきたかわからない以上、いつも危険が付きまとうから。
やっぱり知り合いにくっついてるのが一番よさそうかも。
「にしてもだ。女一人でこんな路地にいると危ないぞ。たまたま俺たちみたいなスキルアウトだったからよかったものの、他のスキルアウトだったらどうなってたかわからねえし」
「……そうだ。先程のような能力者が暴れていることもある」
「うん。ありがとう、気をつけるね」
そこで、違和感。視界の端の縛られて転がされている男魔術師から。
「!!」
さっきまでコンクリートでゴーレムの腕を作りだしていた、ゴーレム使いの男魔術師の手には、小さな円盤状の何かが握られている。
私は前に一歩踏み出し前に立っていた駒場利徳を横に突き飛ばす。何の警戒もしていなかったからか、『歩く教会』の防御力が攻撃力に補正をかけてくれたのかはわからないけど、駒場利徳が後退する。
その瞬間、私の視界がかすみ、気が付くと地面が目の前にあった。
身体に痛みはないあたりは敵の攻撃……まあ、十中八九ゴーレムパンチで吹き飛ばされたんだろうね。その結果こうしてうつぶせに這いつくばっているってことになるかも。
「インデックス!?」
半蔵が呼ぶ声が聞こえる。
顔をあげてみると、ゴーレム使いの男魔術師の方に向きながらわずかにこっちを見ている半蔵と、拳を握り今にも走り出そうとする駒場利徳が見える。
奥に見えるゴーレム使いの男魔術師が持っている小さな円盤は、自分の服の中にでも仕込んでおいたものかな。縛られたままで器用に魔術を使ってゴーレムの腕を作ってるし。……ゴーレムの腕自体はさっきより小さいけど。
他のスキルアウトたちはゴーレム使いの男魔術師の周りに倒れている。こっちにむかって不意打ち攻撃をした直後に作った腕で薙ぎ払われたんだろうね。よくわからないけどギリギリ問題ないはず。頭を打ってるかもしれないから安心はできないけど。
さて、意識があるのはゴーレム使いの男魔術師一人だし、問題はないね。
起き上がりながら魔術師に向かって走り出す。
「
特典のおかげで解析が終わっていた『
駒場利徳と半蔵の間をすり抜け、いきなりのことに驚いている魔術師との距離を一気につめる。
「
走る勢いを利用して男魔術師の横をすり抜けざまに、右腕を相手の首元に叩き込む。
威力が足りないかなと思ったけど、男魔術師は後ろに倒れる。その後頭部の落ちる先に、私の『歩く教会』で守られている右足を差し出す。
流石にコンクリートで後頭部打ったら死んじゃうかもしれないからね。今更な気もするけど。それに『歩く教会』のおかげで差し出した右足にもダメージはないし。
でも、そのせいで、男魔術師はまだ意識があるみたいだけど。
そこに、いつの間にか接近していた駒場利徳が、仰向けにに倒れた男魔術師に右拳を叩き込み気絶させた。
「おい! お前ら大丈夫か!」
半蔵は周りで倒れているスキルアウトたちに駆け寄っていく。
これは逃げた方がいいかも。微妙に能力者っぽいことしちゃったし。
そうと決まれば速く逃げようかな。善は急げって言うし。
「待て」
……まあわかっていたんだよ。倒れたスキルアウトの方に向かった半蔵はともかく、駒場利徳に呼び止められるのは。
そもそも、私って善じゃないもんね。
「どうしたのかな?」
「今の力は……? インデックス、お前は……」
「余計な詮索はしない方がいいんだよ」
私は自分の命の危機には全力で人に助けを求めるけど、そうじゃない時はあまり巻き込みたくないしね。
「この力の正体について知っちゃったらもう普通には戻れない。一つだけ言えるのは私の力は学園都市の能力開発によるものじゃないし、自然発生した能力者である原石でもないっていうことだね」
「だが……」
「それとも」
駒場利徳の言葉を遮って、私は原作で
「この力について知って、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
駒場利徳に行ったことはちょっと意地悪だったかも。初対面で名前しか知らない相手にあんなことを言われても困るだけだろうし。
あの後、私は常盤台中学の女子寮に戻ってきていた。ここならセキュリティも万全だからね。
それにしても、この有様じゃ迂闊に外に出れないね。一日目でこれなら二日目以降はどうなることやら、って感じなんだよ。
出かけるときには大通りを通らないといけないね。人ごみは嫌いなんだけど仕方がない、か。
まあ、今日はこのまま
ここは部屋においてあるテレビでも見て過ごしたほうがよさそうかも。ちょっと前に気を利かせたのか、操祈がテレビを入れてくれたわけだし。
本人いわく、「私が買ったついでよぉ」とのことだったけど。
さて、今やってる番組は……あ、
原作のインデックスが好きなアニメだったけど、面白いのかな?
ちょうど巨大化した敵にカナミンが必殺技をあててるシーンだけど、って!?
か、解析完了? 神様特典の『魔術や魔法の知識を見ることで解析、追加していく能力』ってこんなものにも通じるの?
たくヲです。
最後に解析した超機動少女カナミンの魔術ですが、『とある魔術の禁書目録』の世界の魔術とは余りに法則が違いすぎるので、この世界の魔術師に教えても使えません。
これからも、『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。