とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある根性と空気少女

 寝場所を確保してから数日。私は学園都市の中を歩いて探索していた。

 

 あの少女二人の襲撃の直後、食蜂操祈には色々しておいたんだよ。まあ終わった後やけにおとなしいのが気になるけど、まだ私にとって害があるような行動はとってないみたいだし、問題ないかも。

 

 色々の内容は言わない……とりあえず、女王なんて呼ばれてるとは思えないほど可愛かったかも。

 

 まあ、それは置いていて。

 

 

 ふと思ったけど私っていくつなんだろうね?

 

 原作だと中学生ぐらいに見える、みたいなことが書いてあったけど……。それに、一方通行に対して偉そうに見たまんまの年齢っていっちゃったし……。

 

 何故、私がこんなことを考えているのかというと、操祈から「このままだと不便だろうし、私があなたの学園都市のIDを発行させてきてあげるけどぉ?」とか、言われたからなんだよ。

 

 となると、やっぱり私の年齢を教えるしかないわけで……実際の年齢がわからないとちょっと困るかも。

 

 私の前世での年は16だったから、16って言ってもいいんだけど……やっぱり今の身体の方の年齢を言った方がいいのかな?

 

 わからないことは考えても無駄かも。そんなことよりもお腹すいた。

 

 うん?

 

「俺たちとちょっとお茶しない?」

「ちょっといい店知ってるんだよ」 

「こ、この私を婚后光子と知っての狼藉ですの!?」

「いや、知らねえけど。とにかく行こうぜ」

「え、い、いや!」

 

 結構まともな格好の高校生っぽい男三人に囲まれた、どこかわからない学校の制服を着た黒いロングヘアでおでこを出した女の子がいた。

 

 学園都市の治安はどうなってるのかな……。こんなとこに通っている学生さんたちが私は心配なんだよ。

 

 ナンパするのは勝手だけど相手のことを考えてないんじゃ誘拐と変わらないのに。

 

 とりあえず、ここはあの作戦しかなさそうだね。

 

 私はナンパ集団に向け駆けだし、あの原作キャラの言葉を放つ。

 

「ごっめーん。待った~?」

「へ?」

「何だ?このコスプレシスターは」

 

 うん、結構恥ずかしいけど、ここは演技を続けないとね。

 

「ごめんなさい。お兄さんたち、この子を見ていてくれたんですね。この子、ちょっと世間知らずなところがあるんでいつもバスに乗り損ねたり、学生寮を間違えたり、待ち合わせ場所が公園の南って言ったのに南西っていうかなり間違い辛い場所で待っていたりするんで心配だったんですよー。本当にご親切にありがとうございます。それでは、私はこの子のことでのっぴきならない事情があって行かなくてはならない場所があるので失礼します」

 

 女の子の手を引いて歩き出そうとする。

 

「ちょっと待ちな」

「よく見ると君もかわいい顔してるじゃん。どう?一緒にお茶でも」

「すみません。私たち用事があるので」

「いいじゃん、いいじゃん、そんなこと。用事なんてあとで済ませればいいだろ?」

 

 流石にしつこいんじゃないかな?

 

「あんまりしつこいと誰も相手にしてくれなくなるんだよ?」

「な!?」

「こっちは丁寧に断ってるんだから、こんな子供からは目をそらしてもっと大人な雰囲気の女の人を狙った方がいいと思うんだよ。このロリコン」

 

 女の子の手を引っ張って逃げようとする私。

 

「この女! こっちが下手に出てればいい気になりやがって!」

 

 跳びかかってきた男の鳩尾に向け肘を撃ちこむ。

 

 いきなり跳びかかってくるのはどうなのかな? それに、ちょっと本音を言っただけでこんなに怒るなんて。

 

 別に、私もナンパという行動そのものをとがめるつもりもないけど、私に迷惑をかけるのはやめてほしいかも。それに、相手が嫌がっているのに無理やり連れて行こうとするのはルール違反なんだよ? 何のルールかは私もわからないけど。

 

 男の人達がひるんだすきをついて、今度こそ私は女の子の手を掴んで逃げた。

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……」

「……はあ……あなた……私を婚后の娘である……婚后光子と知っての……狼藉ですの?」

 

 ということで、男の人達から離れたところにある路地まで逃げてきたわけなんだけど……疲れた。『歩く教会』がいくら教皇クラスの防御力を持っているって言っても、スタミナまで増えるわけじゃないんだよ?

 

「いや……別に、私は全力でおせっかいを焼いただけなんだよ。迷惑だったらあやまるんだよ」

「いえ、助かりましたわ。……私は婚后光子ですわ。あなたは?」

 

 と、言うわけで、婚后光子さんとエンカウントしたんだよ。

 

 原作開始1年前からトンデモ発射場ガールだったのかは解らないけど、ナンパされていた場面から察するに原作時より能力レベルは低いみたいだね。

 

 ただ世間知らずレベルが高いだけかもしれないけど。

 

「私の名前は禁書目録(インデックス)っていうんだよ。まあ、この名前について聞きたいこともあるかもしれないけど、ここではいったん引っ込めてね」

 

 逃げ切ったと思ったらまだいるってどういう……。ただ、一人減っているんだよね。さっき鳩尾に肘を打ちこんだ人が。

 

 それでも二人。そしてその手に持っている鉄パイプはどこからとってきたのかな?

 

「この、コスプレシスター!よくもあいつをやってくれたな!」

「お前らはもう許さん!」

「へ?私も!?」

 

 ああ、知り合いだって言っちゃったしね。

 

 ここはどうしようかな? あの、百戦錬磨なのかどうか不明な魔術師たちの魔術を全て無効化する『歩く教会』がある以上負けるとは思えないけど、婚后光子を人質に取られたら大変だよね。

 

 二つある切り札は温存しておきたいけど、最悪の場合は使うしかないかも。

 

「俺たちにおとなしく付き合うってなら考えてやってもいいぜ?」

「それは嫌なんだよ」

「……」

「とりあえず、みつこは後ろに下がってて……!?」

「おい! そこのお前ら!」

 

 男二人の後方に仁王立ちしているあの人はまさか!?

 

「嫌がる女の子二人に武器もって迫るとは、お前ら!根性が足りてねえぞ!!」

 

 白い学ランに、日の丸から赤い太線が外に放たれているようなどこかで問題視されそうなデザインのTシャツ。白い鉢巻。そして根性というセリフ。

 

「……なんだ?おまえ?」

「オレは超能力(レベルファイブ)削板軍覇(そぎいたぐんは)だ!!」

 

 そう、世界最大の原石と呼ばれる天然物の能力者、削板軍覇。原作でも正体不明の能力を使ってその滅茶苦茶さを読者に見せつけた男だね。

 

超能力(レベルファイブ)!?」

「まあ、そんなことはどうでもいい! おれが言いたいのは、白昼堂々そんなことをやってるような奴には、オレが本当の根性ってやつを叩き込んでやるってことだけだ! この根性無し共!!」

「なんだと!? そういうお前はどうなんだ!」

 

 突っ込むところそこ?

 

「何を言ってる? オレが超能力(レベルファイブ)であるということはいたってどうでもいいが、俺が根性無しだってのは聞き捨てならない話だ。なら、俺の根性とお前らの根性どっちが強いのか試してみるか!?」

「上等だ!!」

 

 二人の男が削板軍覇に向かっていく。そして鉄パイプで頭をと腕を殴る。

 

「ッ!?」

 

 後ろの婚后光子がひるむ。当然だよね。普通なら頭を殴られただけでも致命傷だから。

 

「な!?」

「なんでこいつ倒れないんだ!?」

 

 とはいえ、どんな能力かもわからない超能力(レベルファイブ)削板軍覇は倒れてないね。

 

 その姿に驚き後ろに下がる二人の男。

 

「そんなもん決まってるだろう!? オレの根性がお前らの根性を上回っているからだ!!」

「な、なんだと!?」

「そんな根性無しのお前らにはオレの必殺技で本当の根性ってのを叩き込んでやる!」

 

 あれ? さっきから空気がおかしくない? いままでこんな感じだったっけ?

 

「すごいパーンチ!」

「「ぐああッ!?」」

 

 削板軍覇が拳を振り抜いた瞬間、拳が届いていないはずの男二人が後ろに吹き飛ぶ。

 

 これが削板軍覇の必殺技? である『すごいパーンチ』。やっぱりパッと見じゃ、わけがわからないんだよ。

 

 気絶した男二人を

 

「そこの二人、大丈夫か?」

「ありがとう。大丈夫なんだよ」

「あ、ありがとうございました」

「そうか、ならよかった」

 

 そう言って去ろうとする削板軍覇。

 

「ちょ、ちょっとお待ちになって!」

「?」

「少しお礼を」

「オレはこいつらに根性を叩き込んでやっただけなんだけどな……」

 

 なんか私、空気になってなる気がするんだよ。

 

「ですが助けてもらったのも事実ですし、お礼をしなければ、私の、婚后の名に傷がつきますわ」

「……あんな怖い目にあった女の子が男の人にお礼するって言ってるんだから、それを断るのは男としてどうなのかな?」

「!?」

「そっか。女の子二人が談笑している中に混じる根性はないってことかな?」

「!!?」

 

 人を空気化させた罰なんだよ。

 

 

 

 

 

 

「改めてインデックスさん、削板さん、このたびはありがとうございました」

「まあ、私は何もしてないんだけどね」

「さっきも言ったがオレは根性を叩き込んだだけなんだけどな」

 

 そんなこんなで、私と削板軍覇はなぜかちょっと高そうでおしゃれなレストランで婚后光子からお礼を言われていた。

 

「このことについては『婚后』の名にふさわしいお礼をさせてもらいますわ」

「ああ、別にそういうのはいいんだよ」

「へ?」

「私としてはここで、食事をおごってもらえればそれだけで十分だからね」

「……まあ、オレもそれでいいか。本来ならお礼される前に帰るつもりだったんだが」

 

 婚后光子は茫然としている。なんでだろうね? そんなに世間知らずだったのかな。

 

「お礼なんて、そんな大層なことじゃなくていいんだよ」

「なら仕方ありませんわね。なら好きな料理をたのんでいいですわ」

 

 いいのかな? そんなこと言っちゃって。

 

 精神こそ私が憑依しているけど、身体は原作主人公の家のエンゲル係数を跳ね上げたインデックスなんだよ?

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 呼び鈴を鳴らし、すぐに店員さんが駆けつける。

 

「ご注文は?」

「これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと……」

「おい」

「これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これと、これください」

「おい」

 

 どうしたのかな?

 

「さすがに頼みすぎじゃねえのか? ここにいる三人でも食いきれそうにないぞ?」

「いや、これ私一人分」

「!?」

「あれ? それとも学園都市の超能力(レベルファイブ)のぐんははこの程度(・・・・)を食べきる根性もないのかな」

「!?……だが、そんなに頼んだら金額的に問題がねえか?」

「私は別に大丈夫ですわよ」

 

 黙っちゃったね。やっぱり、からかいすぎたかな?

 

「……店員さん」

「は、はい」

「さっきここのシスターが言ったのと同じ物全部!」

「は、はい。かしこまりました!ご注文を繰り返します」

 

 注文した品物の名前を早口で唱え、早歩きで帰っていく店員さん。

 

 あの店員さん暗記力すごいね、一度も間違えてない。

 

 やっぱ学園都市の人間はみんなすごい人たちなのかな? 常盤台中学の女子寮の寮監さんとか。

 

 

 そして、私と軍覇による根性の大食い対決が始まったんだよ。




 たくヲです。

 愛と根性のヲトコ削板軍覇と、途中空気になった禁書目録と、空気の力で物を飛ばす能力を持ち後半なぜか空気になった婚后光子の回。

 原作一年前なので婚后光子は中学一年生でまだ常盤台中学の生徒ではありません。

 根性の大食い対決の決着は次回!

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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