とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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タイトルの読みは『とあるバトルのルートディスターブ』です


とある戦闘の追跡封じ

「あなたが運び屋さんなのかな?」

「あなたは……」

 

 先日の教会の近くで『追跡封じ(ルートディスターブ)』の異名を持つ運び屋、オリアナ=トムソンを見つけた私は真正面から話しけた。

 

 背後から話しかけて攻撃されるのも面倒だからね。

 

「ああ、ごめんね?私は禁書目録(インデックス)、正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumだよ」

「……お姉さんに何の用かしら?」

 

 うん。一応話は聞いてくれるみたいだね。右手に構えた単語帳が怖いけど。

 

「安心して、必要悪の教会(ネセサリウス)としての仕事であなたに話があるわけじゃないから」

「……」

 

 オリアナが眉をわずかにひそめる。

 

 その反応は自分に何のようがあるのかを考えている感じじゃないね。私がなぜ必要悪の教会(ネセサリウス)所属だということを覚えているのかを考えている、って感じかな?

 

 禁書目録(インデックス)が十万三千冊以外の記憶を失っているのはイギリス清教のトップである『最大主教(アークビッショップ)』ローラ=スチュアートがステイルや神裂といった禁書目録(インデックス)派の部下を騙して手綱を握るために行っていたものだからね。ステイル達がローマ正教とかと仕事をしたときにばれてしまうわずかな可能性も潰しておきたかったのかな?

 

「私はあなたに助けてもらいたいんだよ」

「……助けるですって?」

必要悪の教会(ネセサリウス)所属の魔術師禁書目録(インデックス)として依頼するわけじゃなくって、私個人として依頼したい」

 

 オリアナ=トムソンは運び屋。現在はイタリア正教についているみたいだけど、報酬さえもらえれば誰のために働いてもいいって人だったはず。

 

 人のためになる行いをしてもそれがことごとく人を不幸にする結末になってしまった人でもあったね。

 

 原作9・10巻じゃ敵対してたけど、きっといい人なんだよ。歩くセクハラ、とか公式サイトに書かれてたけど。

 

「私を学園都市まで連れて行ってほしいってこと」

「……確かにお姉さんは一つの組織に忠誠を誓っているわけではないから、貴方のために汗を流してもいいのだけど。あなたにその報酬を用意できるのかしら?依頼を受けるとイギリス清教や魔術結社を敵に回すことになるお姉さんを満足させてくれるモノを」

「勿論、用意してあるよ」

 

 依頼をするのに報酬を用意していないなんて間抜けなことをする私じゃないんだよ?

 

「私の十万三千冊の魔導書を使ってあなたの魔術を強化してあげる」

「……?」

「私はあなたが何を思って魔術師になったのか私は知らないし、あなたの魔法名を知っているわけでもない。でも、魔術師になったのならあなたには魔術という力を使ってしたいことがあったはず」

「……」

「『献身的な子羊は強者の知恵を守る(dedicatus545)』。この魔法名に誓って、私はきっとあなたの力になる。だから、あなたも私を助けてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、あなたはお姉さんに電話してから今までの二日間どうやって生きてきたのかしら?まさか……」

「裏山に入って食べられる山菜を探して洗って食べたりしてたんだよ」

 

 オリアナは依頼を受けてくれることになった。

 

「その間3回くらい魔術結社に襲われたんだけど。『歩く教会』のおかげで何とかなったんだよ」

「よく逃げ切ったわね」

 

 まともじゃない会話をしながら私たちは雑踏に紛れる。

 

「ところで気づいてるのかな?」

「ええ、随分と熱い視線を注いでくるストーカーさんね」

 

 後方には『炎の魔術師』ステイル=マグヌス。そして、世界に20人といない『聖人』の一人である神裂火織。原作キャラの二人組だね。

 

 ステイルはともかく神裂は気配消しが完璧。ステイルがいなかったら神裂は見つからなかったね。

 

 まあ、ジーンズの左足の部分を根元からバッサリと切り落とし、シャツをまくった状態で縛ってへそ出し状態で、さらにその上からジージャンの右腕部分をバッサリ切り落としたものを着て、しかも帯刀しているスタイル抜群のお姉さんと、身長2メートルの黒い修道服の赤髪バーコードタトゥーの神父が気配を消したところでなんになるのかって話なんだけど。

 

 私たちも真っ白な修道服の銀髪碧眼シスターと、上は茶のキャミソール、下は十センチ感覚で縦にスリットが入ったスカート、腰に水着なんかに使うパレオを巻いている金髪スタイル抜群お姉さんの組み合わせは目だって仕方がないんだよ。

 

「後ろの女の人は聖人みたいだね」

「聖人、ね。あの刺激的な格好の人が?」

「そうみたいなんだよ。あなたの魔術に対聖人用の術式はあるのかな?」

「今、構築中よ」

 

 オリアナの魔術は便利だね……。原作では土御門との戦闘後逃げ回りながらも、対聖人術式を構築していたみたいだし。

 

「まずは追っ手を撒くことから始めないとね」

「追ってくる相手を撒くのはお姉さんの得意分野よ。安心してお姉さんに身を任せなさい」

「うん。頼りにしてるんだよ」

 

 さて、どうするのかな?

 

「いったん別れてからもう一度合流、はあまりよくないかも。禁書目録()の監視か保護が目的なら別れた瞬間にあなたに奇襲をかけるはず」

「もしくは、あなたを確保してから私を襲いに来るかもしれないわね。お姉さんは二人相手でもすぐに力尽きちゃうことはないと思うけど」

「でも私を確保しに来る可能性はほぼないかも。わたしの『歩く教会』を発信機替わりに追ってきているはずだから、あなたを倒してからでも私を追える」

「なるほどね。でも、『歩く教会』を破壊すれば追えなくなるんじゃない?」

「私に街中で服を脱げって言っているのかな?……とにかく、この歩く教会の防御力は絶対だからね。いざということを考えると壊さない方がいいかも」

 

 この二日間は『歩く教会』のおかげで生き残ったみたいなものだからね。図書館で襲われた時に奪った『風の短剣』で魔術が使えるように見せかけて脅したのも効果はあったみたいだけど。

 

「私に考えがあるのだけれど、乗ってみる気はない?」

「街中露出以外なら何でもいいんだよ」

「なら実行ね。私が合図したらあそこのあそこの路地に向かって全力で走ってくれる?」

「わかったんだよ」

「このページも念のため渡しておくわ」

 

 オリアナから単語帳からちぎったページを渡される。これは……。

 

 ステイルと神裂との距離は後方約30から40メートル。神裂は一瞬でこの距離を詰めることは可能だけど、歩行者の数からして少しは時間がかかるはず。ステイルは言わずもがな。

 

 対して路地までの距離までの距離はもうすぐ10メートルになる。

 

「行くわよ」

 

 私たちは走りだし、路地に飛び込む。

 

「止まらないで!」

 

そう言いつつ、狭い路地の壁を形成している建物に走りながら単語帳のページをリングから取って張っていくオリアナ。

 

 ページの一枚一枚には黄色や緑といった五大元素に対応する色で文字が書かれている。

 

 私たちが通り過ぎた直後に氷や炎コンクリートなどによって壁が作られる。

 

 これが、オリアナの魔術『速記原典(ショートハンド)』。

 

 単語帳の一枚一枚に書かれた五大元素を示す文字と五大元素を示す色、単語帳からページをちぎる際に口で咥えた時の角度、そしてページ数。その組み合わせによって無限ともいえる術式を構築する魔術。形式としては魔導書ともいえる物。

 

 ある意味で弱点ともいえるのはページ数がかかわっているため、一度使った術式と全く同じ術式を使用することはできないということと、魔導書として不完全なため一定時間で自動崩壊してしまうこと。

 

 まあ、不完全だからこそ魔導書の知識による精神汚染が発生していないんだけどね。

 

 神様から貰った能力で解析して知識に加えて、元々の十万三千冊の知識と組み合わせた結果だから間違いない。

 

 原作でこれと同じような方法で足止めしていて逃げ切れなかったのは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』がいたからだし、この状況ならこれで十分なはず。

 

「なるほど」

 

 前から声。

 

「確かに私はともかくステイルは足止めされざるを得ないでしょう」

 

 路地裏の分かれ道に神裂が立っていた。まさか、ビルを跳び越えて?

 

「勝てる?」

「追っ手を撒くならともかく正面から聖人を倒せるほどじゃないわ、足止めのために魔術を使ったのはまずかったわね」

 

 まずいかも。

 

禁書目録(インデックス)を保護したいのですが、引き渡してくれませんか?」

「……」

 

 オリアナは質問に答えず単語帳のページをちぎる。

 

 神裂の手が腰の刀『七天七刀』を掴み一瞬動く、その瞬間に吹き飛ばされるオリアナ。

 

 今のは神裂の『七閃』!?魔術を使わない鉄糸攻撃のはず。

 

 地面には神裂からのびる七つの切断跡。

 

禁書目録(インデックス)を保護したいので、引き渡してください。私が魔法名を名乗る前に」

 

 これは拙いかも……。

 

「ってオリアナ!?」

 

 吹き飛ばされたオリアナは起き上がろうとしていた。先程のページの防御術式だったけど少なからずダメージは通っているはず。

 

 オリアナがページをちぎり魔術を発動する。放ったのは風の弾丸。

 

「七閃」

 

 放たれた風は七閃によってかき消される。オリアナが回避行動をとり、オリアナがいた場所に神裂の足元から続く切断跡が残る。

 

 七閃は七本の鉄糸使った斬撃攻撃だからせまい路地で七閃に対応するのは難しい。

 

「オリアナ!」

 

 私はオリアナと目を合わせる。頷くオリアナ。

 

「なにをする気か知りませんが無意味ですよ。この狭い路地で七閃を回避するのは不可能です」

 

 オリアナが単語帳からページをちぎる。

 

「七せッ!?」

 

 さっきから神裂の七閃は神裂の周囲から発生している。まあ、できれば七天七刀による斬撃であると思わせた方が都合がいいからだと思うけど。つまり攻撃の来る方向はある程度予測可能。厄介なのは斬撃の数が七回であることだけ。

 

 確かに避けることは難しいかもしれないけど、受けるのは簡単!

 

「ッ!?」

 

 神裂が思わず斬撃を止める。その瞬間に神裂に抱きつく。

 

 神裂の七天七刀を抑え、歩く教会の防御力でパワーを封じ、足元に落としたオリアナから貰ったページで魔術が発動する!

 

 発動するのは対象の影を縛り移動を封じるという術式。さっき渡してきたのはいざというときに設置させて時間を稼がせるためのはず。神裂にくっついているから私にも効果が発揮されてしまったんだけどね。それに神裂なら短時間で術式を破れるはず。

 

 でも……

 

「一瞬あれば十分よ!!」

 

 後から走ってきたオリアナが神裂に直接ページを張り付け、神裂の動きが完全に封じられる。

 

 発動したのは対聖人用の魔術。表すのは神の子を十字架に打ち付けた釘といったところかな。

 

「早く逃げるわよ」

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、三日間過ごした街を出て、他の町の宿泊施設のシャワールームにいるんだよ。

 

 神裂を一定時間行動不能にした後にオリアナがとった作戦は簡単だった。

 

 まず、あの街の中で見かけた猫やネズミと言った小動物、引っ越し業者などのトラック、現在いる街に来るために使った電車とその反対車線の電車、乗り換えた時の電車などありとあらゆるものに一度に引きちぎった単語帳のページを貼り付けていったんだよ。

 

 発動する魔術は地脈・龍脈から取り込んだテレズマを魔力のような物質に偽装して放ち続けるというもの。

 

 これは、オリアナに対しての報酬を一部先払いしたという感じかな。オリアナが同じ魔術を二度と使えない理由は、今までに使用した単語帳の総ページ数が関わっているから。

 

 なら引きちぎるページ全てに同じ文字を同じ色で書いて、全てを全く同じ角度で同タイミングでちぎりとることができれば発動可能だね。

 

 さらに地脈・龍脈から取り込んだ、惑星を循環しているエネルギーであるテレズマを引き出して用いることで、『速記原典(ショートハンド)』の弱点である自動崩壊までの時間を引き伸ばすことに成功した。さらに、魔力供給量がへったのでページからオリアナの位置を逆探知される危険性も薄くなる。

 

 今、さまざまな組織が私を日本各地で探しているのかも。

 

 ちなみに歩く教会から発せられる魔力はページの一枚で押さえてあるから、私の動いたルートを特定されない限りはほぼ見つからないはず。

 

 さてと、明日も逃げることになるだろうし、早く寝ないとね。

 

 体を拭いてパジャマ(ここに来るまでに買った)を来てシャワールームから出る。

 

「早く寝ておきなさい。速記原典(ショートハンド)もいつまでもつかわからないもの」

「うん。わかったんだよ」

「それとも、お姉さんと情熱的な時間を過ごしてみる?」

「うん。覚悟はできてるよね?」

「それは残ね……へ?」




 最近書くペースが極端に落ちてきた作者のたくヲです。

 オリアナさんと憑依禁書目録さんの逃走劇。および戦闘回。

 最後のところとか俺は何をやりたいんですかね?

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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