とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある調査と犯人追跡

 第七学区の公園に入る。

 

 まだ平日昼過ぎということもあって、公園に人はほとんどいない。たまにいる人はサボりか、学校が早く終わったのかな?

 

 公園の中央まで行って、『歩く教会』の中のバックからカメラとハサミを取り出す。

 

 そのハサミでぬいぐるみの腹を切る。

 

「大当たりだね」

 

 ぬいぐるみの中から出てきたのはアルミ板。若干曲がっている所からして、アルミ缶から切り取ったのかもしれない。

 

 魔術を行使する。

 

『人探し』の魔術はいろんな種類があるけど、その大半は魔術の行使者だけしか見つけられなかったりする。原作に登場した『理派四陣』なんかがそうだね。

 

 魔術などが絡んでいる古今東西の物語や神話において、犯人を見つけるのに適しているのは二つ。『直接犯行現場を抑えること』と『告げ口』。

 

 私が行使したのは『告げ口』の魔術。この魔術は有名な童話『王様の耳はロバの耳』なんかで見られるものだね。

 

 簡単に言えば『人間以外の生物から情報を得る魔術』なんだよ。人間以外の生物、だから植物なんかからでも情報が得られるんだよ。

 

 この魔術の弱点はその行動・言動を直接その生物が感知している必要があることと、事前に準備が必要だってことだね。

 

 今回は木が大量に植えられている公園にまで来て、公園全体の木々を対象に魔術を発動させたから、公園内に犯人がいれば発見できるはずだね。

 

「おっと」

 

 私の手に持っていたアルミ板が急速に縮み始める。

 

 私は周りを見回し、誰もいないことを確認し空に向かってぬいぐるみといっしょに爆弾を投げつける。

 

 限界まで縮みその原型を失ったアルミ板は空中で爆発。

 

 爆風が『歩く教会』に直撃し私は転がり倒れた。

 

 爆音が止むと同時に辺りが静かになり、公園内から何やら声が聞こえてくる。

 

 私は倒れたまま先程の魔術を行使し、公園内にいる人の配置を理解する。

 

 公園の中の人はバラバラの動きをしていた。公園から逃げるように動く人。ここに向かってくる野次馬。

 

 そんな中一人だけおかしな動きをしている人がいた。爆発地点の近く、爆発が見えるような位置から全く動かない人。公園内の他の人間は全員何らかの動きをしているのにもかかわらずだ。

 

 私は倒れたままおかしな動きをしている人に見られないような位置でカメラを操作し、その人の方に向けて写真を撮る。

 

 そのまま、頭だけ動かして、その人の方を睨む。

 

 木陰にいたのは痩せたメガネの男。私と目があいギョッとした顔になり逃げ出す。

 

 その瞬間、私の袖から紙が飛出しその男の方に向かっていく。以前ミサカ6023号に使った『改良版速記原典(ショートハンド)』に似た効果を持つ日本神道系術式。陰陽系の術式によく用いられる紙を利用した式神だね。

 

 あれが犯人で間違いないとは思うけど、まだ確保はできない。例えその姿が私の知識と一致していても、今は現場に居合わせた一般人でしかないからね。とりあえず場所だけ把握させてもらうんだよ。

 

 私が立ち上がる。周囲に集まり始めていた野次馬の目が私を向く。まあ、服装のせいで視線を集めるのは慣れているし問題はない。

 

 その場から立ち去ろうとした瞬間、公園内によくわからない反応が出現した。公園内の誰もいなかった場所にいきなり人の反応が出現したんだよ。

 

 その反応は次の瞬間消え、今度は私の後ろに現れる。

 

 私が振り向く。

 

「へえ、誰かと思えば」

 

 そこにいた女性は右腕の腕章(・・・・・)を見せて言う。

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!」

 

 私の前に現れたのは白井黒子だった。

 

 白井黒子。操祈と同じ常盤台中学の一年生でレベル4の『空間移動(テレポート)』の能力者。今本人が言った通り、学園都市の学生主体の警察組織『風紀委員(ジャッジメント)』にも所属していたんだよ。

 

 公園内のよくわからない反応は『空間移動(テレポート)』による移動の反応だったみたいだね。

 

「それで? その『風紀委員(ジャッジメント)』が何の用かな?」

「今起こった爆発について話を伺いたいんですの」

 

 ふむ……私としては今すぐさっきの男を追いかけて問い詰めたいところだけど、この状況で白井黒子から逃げると後々面倒なことになりそうだね。何より『空間移動(テレポート)』で追いかけてくるであろう白井黒子から逃げられるとは思えないし。

 

 さっきの男には場所を特定するために、魔術を付けたわけだし、その動きを知ることはできるからね。

 

「まあ、私でよければ協力するんだよ」

 

 

 

 

 

 

「つまり、コンビニで購入したぬいぐるみがいきなり縮んだので、驚いて投げたら爆発したってことでいいんですのね?」

「だいたいそうだね」

 

『コンビニで購入』のあたりは白井黒子が勝手に解釈しただけで、実際は『コンビニで手に入れた』って言ったんだけど、おおよそ間違いないし訂正しなくてもいいかな?

 

「それで、これからどうするのかな?」

警備員(アンチスキル)が来るまでここに留まっていてもらいますわ」

「うーん。まあ仕方がないんだよ」

 

 白井黒子の顔を見るとどうやら私が犯人じゃないのかと疑っているようにも見えなくもないね。

 

「ところであなたは随分と早くここにたどり着いたみたいだけどどうしてかな? 『警備員(アンチスキル)』ならともかく学生主体の『風紀委員(ジャッジメント)』がこんな時間にここにいるのはちょっと不思議なんだよ」

「今日は特別授業が早く終わっただけですわ」

 

 時期的にはテストとかかな?

 

 そこで、私の電話が鳴る。

 

「ん。ちょっと失礼するんだよ」

 

 私は電話を開いて画面を確認する。

 

 画面には『JAPANESE NINJA』の文字。

 

「もしもしはんぞう。久しぶりだね。どうしたのかな?」

『ああ久しぶり。爆発の音を聞きつけて来てみたら、お前が風紀委員(ジャッジメント)と話し込んでるから電話をかけてみたんだが……』

 

 私が周囲を見回すと野次馬の中に半蔵と浜面仕上の姿があった。

『何があった?』

「んー。簡単に言うと、また面倒事に巻き込まれたんだよ」

『だろうな。手を貸そうか?』

 

 手を貸すっていうのがどういう意味かよくわからないけど、別の意味で協力を仰ぎたい場面ではあるんだよ。

 

「そうだね……。じゃあ、一つ頼まれてくれないかな?」

 

 とはいえ、後ろに白井黒子もいるし、早めに話は終えたいんだよ。

 

『おう、どうせ暇だからな』

「一人の男を追跡してほしいんだよ。場所はこの公園から南に200メートルくらいのファミレス前を東に直進中。痩せていてメガネをかけている。服は白のワイシャツで丸型のイヤフォンをしているんだよ」

「ああ、大体わかった」

「……本当に? 自分で言っておいてなんだけど、一発で覚えられたのかな?」

「一応、途中からだが録音してる。問題はねえよ」

 

 視界の中の半蔵と仕上はすでに野次馬達の中から出て行っている。

 

「なら、いいんだよ。一つだけ言いたいのはあくまで追跡してほしいだけで、絶対に手は出さないでほしいってことだね。あくまで見張りだけにとどめて、そいつが何か落としたらそれに誰も近づかせずにとにかく逃げること。事情は後で説明するんだよ」

「了解だ。とにかくそこに向かう」

「あとでこっちから連絡するんだよ」

 

 電話を切る。

 

「突然電話しちゃって申しわけなかったんだよ。とりあえず話でもして待とうか?」

 

 

 

 

 

 あの後すぐ『警備員(アンチスキル)』が到着し、思っていたよりも早く解放されることになった。

 

 どうやら、学園都市での私の立場は『学園都市外部の心理学者』で特に宗教関連に強いみたいな立場らしいんだよ。

 

 正直、学園都市での立場を気にしたことはなかったから、意外な収穫と言えるね。

 

警備員(アンチスキル)』と『風紀委員(ジャッジメント)』は今回の『虚空爆破(グラビトン)事件』という事件を引き起こしているのは『量子変速(シンクロトロン)』という能力をもつ能力者だと断定している。それは私の知識によると爆発の前に重力子の反応が発生するためらしい。

 

 私はその立ち位置的に能力者ではないため、今回の事件には巻き込まれただけだと判断されたようだね。

 

「それでどうだった?」

「いや特に不審な動きはなかった」

「ごみのポイ捨てとかは?」

「いや、特に気は付かなかったけど」

 

 私は半蔵と浜面の二人とどこかの学校の学生寮の前で合流していた。

 

 二人曰くその男はこの学生寮の中に入っていったらしい。私が付けた日本神道系紙魔術もこの学生寮を刺してるし間違いない。

 

「……それで、そろそろアイツがなんなのか教えてくれてもいいんじゃねえか?」

「私もよく知らないんだよ」

「よく知らねえのに追いかけさせたのか?」

 

 仕上の言い分ももっともなんだよ。

 

「それにもちゃんと理由があるんだよ。順序立てて話すね。とりあえずこれは憶測だけど、あの男は学園都市を騒がせている連続爆破事件の犯人かもしれないんだよ」

「はあ!?」

「とはいえ、まだ決定的な証拠がないから確保するわけにはいかないけどね。私があっけなく解放されたところからして、能力による爆破。そして、そのことは『警備員(アンチスキル)』と『風紀委員(ジャッジメント)』は掴んでいるみたいだね。体感だとレベル3か4って所かな」

 

 一応知識方面についてはばれていないはずなのでそのあたりは伏せて話していくんだよ。

 

「体感って。インデックス、お前そんなものくらって大丈夫だったのか?」

「まあ、一応問題はなかったんだよ。ちょっと投げるのが遅かったらまずかったかもしれないけど」

 

 証拠の撮影的な意味で。

 

「だが、そこまでわかっていて『警備員(アンチスキル)』や『風紀委員(ジャッジメント)』の奴らはあの野郎を捕まえねえんだ?」

「たぶん理由があるんだよ。例えばあの男の登録されている能力のレベルに対して、爆破の破壊力が大きすぎるとか」

「能力に対してレベルが高い……? まさか」

 

 ふむ。流石にもう知っているかな?

 

「知っているの? はんぞう?」

「ああ。一ヶ月くらい前からちらほらといた奴らなんだがな。スキルアウトを率いている能力者のことは?」

「利徳から聞いているんだよ」

「なら話は早え。どうやら一つの組織じゃないらしくてな、今は似たような組織が学園都市に乱立している状態になってやがるんだが……」

 

 ふむ。どうやらアニメの方にいたアスファルトを粘土みたいに操る女の人が率いていたスキルアウトみたいなのがいくつもできていると。

 

「ああ、一ヶ月前にお前が来たっていう日から駒場のリーダーや横須賀や黒妻が動いてそいつらの組織をいくつか取り込んだんだ。そいつらは、ある音楽を聞いたら能力が使えるようになったんだと」

「音楽データ名は?」

「『幻想御手(レベルアッパー)』」

 

 なるほど。名前まで掴んでいたんだね。

 

「あの男はそれを使用している可能性が高い、ってことだね」

「ずっとイヤフォンで音楽を聴いていたのは『幻想御手(レベルアッパー)』を聞いていたってことか」

「そうなるね」

 

 ある程度話は通って来たね。

 

「一旦、話しを戻すんだよ。私の目の前で爆発したのはウサギのぬいぐるみの中に入っていたアルミ板だったんだよ。だから、あの男は少なくとも物を爆発させているだけで何もないところで爆発を起こしているわけではない。それで私はあの男が新しい爆弾を仕掛けるようなことがないようにあなたたちに見張ってもらったんだよ。私があそこから脱出して追いかけるわけにもいかなかったしね」

「大体わかったけどよ。これからどうするんだ? まさかこのまま殴りこむなんてことはねえんだろ?」

「今は泳がせておくんだよ。攻撃するにしたって正当防衛の名目がないとこっちが逮捕されるし、捕まえてもらうにしたって決定的な証拠が必要だからね」


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