とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

33 / 38
とある知識と幻想殺し

 7月半ば。とはいえ、まだ朝が早いせいか、夏特有のうだるような暑さはない。

 

 

 イギリス清教と学園都市。この二つの組織との細かい取引を行うのには骨が折れたんだよ。

 

 いろいろと面倒な取り決めをしていくのもそうだけど、イギリス清教と学園都市の仲介のための役を実質的にさせられることになってしまった。共通の敵みたいな感じかな? おかげで、原作より学園都市とイギリス清教のつながりが早くなってしまったんだよ。

 

 その甲斐もあってイギリスからは、海中移動要塞『セルキー=アクアリウム』を譲り受けた。

 

 どうやら私たちに大きめの施設、というか活動拠点を与えることで、私たちの行動をある程度制限するつもりらしいね。あからさまに発信機としての魔術がついていたり、外部に対して攻撃するための機能がほとんど外されていたりと、要塞としての本来の戦闘力を発揮できなくなっている。

 

 とはいえ、拠点として使用できる施設と、移動手段を両方確保できるのはありがたい。防御魔術は後付けでどうとでもなるからね。

 

 個人に移動要塞を譲り渡すのは大丈夫なんだろうかとも思ったけど、くれるというなら貰っておいた。

 

 一応、装備を外した騎士を十数名を乗せて運行させて安全性を確認させてもらったし、隅から隅まで私が確認したから、問題はないはず。

 

 聖ジョージ大聖堂に乗り込んだ時のどさくさに紛れてステイルが天草式の探知魔術霊装を破壊してくれたから天草式の安全も確保できたしね。

 

 

 イギリスの周囲に大量に設置してきた切り札は回収できなかったから、『必要悪の教会(ネセサリウス)』に回収されていると思うけど、あれは私からのプレゼントとでもしておこうかな。もともとそんなに高価な霊装は使っていないからね。霊装は全部1000円以下。一番高いのがステイルのルーンの印刷代っていうレベルだし。

 

 『セルキー=アクアリウム』はステイルのためにアレイスターと交渉して学園都市製のコピー機を手に入れてきたりして魔改造が進んでいる。自分用の部屋も確保できたし、私としては満足なんだよ。

 

 まあ、

 

「あそこで生活するとは言ってないけどね」

「いきなりどうしたんだい?」

「いや、なんでもないよ。ステイル」

 

 今、私は学園都市にいる。

 

 学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーとの交渉の末に決まったのは、学園都市に来たら上条当麻(幻想殺し)と行動するというもの。と言っても、この条件は比較的緩く、一週間に一度くらいでも良いということになっている。

 

 あくまで、アレイスター的には上条当麻を魔術と関わる機会を持たせたいだけなんだろうね。

 

 学園都市に来ている理由は特にはない。

 

 あえて言うならアレイスターとの契約のために当麻に会いに来たって所かな?

 

 当麻の学生寮の前まで来たわけだけど。

 

「うーい、インデックスー」

「ん? ああ、まいか」

 

 声に振り返ると土御門舞夏と土御門元春がいた。

 

 舞夏は学園都市内を動き回っている円柱の清掃ロボットを正座で乗り回し近づいてくる。

 

 舞夏を見るのはいつも常盤台中学の女子寮だったから、清掃ロボットに乗っているのはある意味新鮮かもしれない。

 

「いきなり常盤台からいなくなったからびっくりしたぞー。他の子に聞いてもそんな子は知らないって言うしなー」

 

 どうやら、操祈が私に関する記憶を消しておいてくれたらしい。たぶん、舞夏は操祈が記憶消去をしたタイミングに偶然常盤台中学の女子寮にいなかったんだろうね。

 

「ああ、申しわけないんだよ。少し学園都市の外に用事ができて外に出なくちゃいけなくって」

「そうだったのかー? まあ、深くは聞かないけどなー。そっちの神父さんはお兄さん?」

 

 舞夏はステイルのほうを見て言う。

 

「いや、この人はイギリスにいた時の友達で、この学園都市の見学に来たんだよ」

 

 私はステイルとアイコンタクトを取る。

 

「……ステイル=マグヌスだ」

「おー。えーと、I am……」

「ちなみに日本語は通じるんだよ」

 

 なんだそうなのかー? と舞夏は日本語であいさつをし直す。外国人にとりあえず英語で話しかける日本人の典型例みたいな感じになっている。

 

「ちなみにまいかのお兄さんとは会ったことがあるはずだけど」

「ぶッ!?」

 

 土御門元春が噴き出す。

 

 舞夏はびっくりしたように言う。

 

「ただ勉強ができないだけの兄貴だと思ってたけど、実はイギリスに知り合いがいたのかー!?」

「い、いやいや、ちょッと待つんだにゃー!」

 

 土御門元春が私の肩を掴み舞夏から離れ内緒話モードに移行する。

 

「おい禁書目録。魔術(こっち)のことは妹に言ってくれるな」

「ん? いや、元々言うつもりはないんだよ。それにステイルとあなたがあったことがあるのは本当のことだし」

「だからと言って、妹に教える必要は」

「私は彼女に嘘はついていないし、つくつもりもない。隠し事はするけどね。その上で魔術(こっち)の世界に関わらせるつもりもないんだよ」

「……」

 

 土御門元春は黙り込む。

 

「それに、いきなり私と二人で会話しだしたから、舞夏が怪しんでいるんだよ」

「!?」

 

 慌てて、内緒話を止めて舞夏のところに戻る。ついでにステイルも微妙に睨んでいた。

 

「……インデックスとも知り合いだったのかー?」

「前に私の友達と喧嘩してたからに割り込んだことがあるんだよ」

「ふーん」

 

 私の言葉に舞夏は特別な反応はしなかった。

 

「で? お二人は何をしに来たんだぜい? まさか、二人でデートとか言うんじゃないよにゃー」

「ぶっ!?」

「んー。そうとも言えるしそうでないともいえる微妙な所だね。まあ、少なくともデートでくるようなスポットではないかも」

 

 デートで全く関係のない学校の男子寮に行くっていうのは、あんまり後の展開を想像したくないシチュエーションかも。

 

「とうまに会いに来たんだよ」

 

 私の言葉を聞いた土御門元春は一瞬黙った。

 

「……そうか。残念だがカミやんは入院中だ」

「へ?」

 

 初耳なんだよ。

 

「俺は昨日見舞いに行ったんだが、寝てたんで話はできなかったにゃー。また明日にでも行くつもりだぜい」

「今日は行かないの?」

「今日は舞夏が止まりに来たんだぜい? カミやんの見舞いに行ってる場合じゃねーぜよ」

 

 ふむ。確かにそれは大切だね。

 

「教えてくれてありがとうなんだよ」  

 

 

 

 

 上条当麻は短期間で入退院を繰り返すことで知られているけど、私がここに来てから入院したのは初めてなんだよ。

 

 原作以前の時間軸で入院したことがあるのかは私は知らない。少なくとも私の知識にはない。だからそこまで気にしてはいなかったけど、実際に入院したという事実を聞くと不安になるんだよ。

 

「心配はいらないだろう。上条当麻の打たれ強さは僕と闘った時点で分かっていることだ」

 

 それを察したのかステイルが言う。

 

「……そうだね。ありがとう、ステイル」

 

 ひとまず、当麻のお見舞いをするために病院に入り、受付で上条当麻の病室を教えてもらった。

 

 受付のお姉さんは突然やって来た全身真っ白シスターと赤髪不良神父のコンビに病室を教えようとしなかったけど、カエルのお医者さんに確認を取ってもらうことでどうにか病室を教えてもらうことができたんだよ。

 

 宗教のかけらもない学園都市に明らかにおかしな格好の宗教家二人が来た時点で怪しむのは当然のことだし気にしていない。

 

 上条当麻の病室までやってくる。それは以前私が手術をしたときに、私の魔力を封印するために使った部屋だった。

 

 扉を開ける。

 

「お見舞いに来たんだよ」

「?」

 

 頭に包帯を巻いた当麻がこっちを見る。

 

 そして、困惑したように言った。

 

「……あなたたち、病室を間違えてませんか?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。