とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある二人と魔術国家

 私たちは火織と他の天草式のメンバーと合流していた。

 

 天草式の服装はまさに一般人そのものだ。一般人に紛れ込むっていう性質上当たり前なんだけどね。

 

 そう考えてみると私たちがどれだけ目立つ服装をしているのかが良くわかる。

 

「とりあえず、対馬を傷一つなく連れてきてくれたのには感謝するのよ」

 

 そんな天草式の中で、唯一目立つ服装をしている、『天草式十字凄教教皇代理』建宮斎字と私は向かい合う。

 

 場所は適当な建物の屋上だ。離れたところにいる天草式の魔術師たちは少しずつ魔術を行使して、戦いの準備をしているのが見て取れる。

 

「まあ、騎士達(アイツら)が来たのは私のせいだからね」

「だが、なんで女教皇様 (プリエステス)まで連れてきた?」

「かおりが心配していたから、としか言えないんだよ。かおりなら大抵の魔術師に後れを取ることもないし……」

「そういう問題じゃねえのよ」

 

 ふむ。まあ、気持ちはわからないでもないけど。

 

女教皇様 (かおり)に頼りたくない気持ちはわかるんだよ。これでもかおりの事情はある程度知っているつもりだしね。でも、あの騎士たち相手にまともにやりあえるなんて思っているわけじゃないよね」

「……」

「英国の騎士は一人でローマ正教の部隊長クラス相手にも勝てるレベルなんだよ。それが集団で攻撃してくるってなったら、まっとうな方法で勝てるとは思ってないよね?」

 

 事実、原作でもローマ正教で一部隊を率いていた部隊長がその部下二人との三人がかりでの不意打ちでやっと倒せるレベルだしね。

 

「そう、なのよな。確かに我々であの人数の騎士相手に勝てるとは思ってないのよ。だが、我々にも意地くらいはある」

 

 建宮斎字はある一点を見て言う。その視線の先には火織。

 

「お前さんの言う通りなのよな。我々は証明したいだけなのよ。女教皇様 (プリエステス)がいなくとも我々が自分たちの命くらいは守れるということを。女教皇様(プリエステス)の足を引っ張るようなことはないっていうことを」

 

 まっすぐな目で建宮斎字は語る。

 

「……そう。まあ、天草式(あなたたち)がそうしたいなら私個人としては止めたくはないんだけどね」

 

 とはいえ、ここまで来たのは火織が天草式を助けたいと思っていたからなんだよ。

 

「それでも、友達(かおり)が助けたいって言っているんだから、私が助けない理由にはならないんだよ」

「……」

「火織は天草式(あなたたち)を助けたい、天草式(あなたたち)はかおりに認められる……いや、かおりの足を引っ張らないだけの力を見せたい。なら、私にいい考えがあるんだよ」

「?」

「とりあえず、ここは私たちに協力させてくれないかな? あなたたちが自分たちの成長を見せるにしてもここである必要もないわけだし、ひとまず生き延びなければ証明も何もないんだからね」

「……確かにその通りなのよ」

 

 実際、天草式がどう考えていようと、あくまで私は火織の友達だから火織のやることを優先するんだよ。

 

「対馬からあなたたちの今後の予定について聞いたんだよ。あの騎士達から逃げ続けるつもりだって」

「一応そのつもりなのよ」

「でも、あっちはあなたたちの場所を探り当てる礼装を持っているはずなんだよ。何せ、かおりよりも早くあなたたちの居場所を探り当てたんだからね」

「それはわかっているのよ」

 

 む? 気づいていたのかな。

 

「そりゃ、今まであらゆる組織から身を隠し続けてきた我々がいきなり襲撃を受けたらおかしいと思うのよな」

「ならなんで逃げ続けるってなるのかな?」

「もちろん先延ばしにするためなのよ」

「先延ばし?」

「今の我々ではあの騎士たちには太刀打ちできないのよな。だが、一度でも遠くへ逃げられれば準備ができるのよ」

 

 確かにその通りだと思うんだよ。

 

 事実、騎士たちの魔術に天草式のような瞬間移動はないはずだしね。『縮図巡礼』が使用できる時間まであと2時間。それまで逃げられれば時間稼ぎができる。

 

「でも、いくら準備しても礼装の破壊を前提に行動しないといけないって考えると難しいんじゃないかな?」

「それに関しては問題ないのよ。隙を見て霊装を破壊するつもりだからな」

「あいつらが霊装をこっちに持ってきているとは限らないけどね。

「む……」

 

 可能性としては薄いけど、天草式を探し出した霊装そのものはイギリスにある可能性もある。世界中に向けて放てる魔術もあるんだし、対魔術に特化したイギリスなら、イギリスから日本を対象に探索する魔術を持っていてもおかしくはない。

 

「ひとまず、整理しようか。天草式(あなたたち)の勝利条件は魔術用の霊装の破壊。相手の勝利条件はあなたたちを捕縛すること。あの騎士たちはかおりに対しての人質として天草式(あなたたち)を使おうとしているからね」

 

 今まで誰も見つけられなかった天草式を探し出したほどの霊装なら、替えがあるようなものだとも思えないし壊してしまえば二度と追跡できないはず。

 

 個人が魔術を用いて探索している可能性は天草式を探り当てた以上、限りなく低い。協力な魔術であればあるほど強力な礼装によるバックアップが必要になるからね。

 

 実際、ステイルや火織は特別強力な霊装を使わなくても強力な魔術を振るえるという意味で天才なんだよね。

 

 私の場合は魔術を使用する際に他の魔術を利用することで魔術を行使することが多い。例としては『歩く教会』という霊装を利用して『聖ジョージの聖域』を放ったり、『聖ジョージの聖域』を利用して『ジークフリート』の術式を発動したりって所だね。

 

 どちらにしても、この精度で人を探せる魔術は個人の手には余るってことだね。

 

「まずは、騎士達を返り討ちにすることからかな? あの騎士たちを行動不能にするまでは安心して行動もできないわけだし」

「一応、戦闘の準備はしているが、我々が正面から戦って勝てるかどうかは運しだいって所なのよ」

「ふむ」

 

 実際はあの騎士達程度なら火織一人でも勝ててしまう。

 

「ここでの最適な方法は……」

 

 しかし、ここで火織が全員を倒してしまうとイギリスからの増援を警戒しなくてはならない。イギリス国外でも火織よりも強い可能性がある騎士団長(ナイトリーダー)が投入されてしまうとマズイ。

 

 それに、騎士たちを攻撃して人数を削りすぎると、イギリスに天草式を探り当てた礼装があった場合、防御を固められて攻め込みづらくなってしまう可能性もある。

 

 あくまで私たちの勝利条件は魔術霊装の破壊。騎士団を全滅させることじゃない。

 

 どこにあるのかわからない魔術霊装を見つけて破壊するためには……。

 

「……これしかない、かな」

 

 

 

 

 

 石造りの建物の中、私とステイルは歩いていた。

 

 私とステイルの手には通信用の護符。マジックとメモ用紙で造った簡易霊装があった。

 

「久しぶりに来たけど、ここは変わらないな」

「私は初めてくるんだよ」

「……」

 

 私の言葉にステイルは黙り込む。

 

 口では適当な会話をしつつ、魔術で外には聞こえない会話を行う。

 

『とりあえず、ステイルには案内をお願いするんだよ』

『……わかってるよ。こっちだ』

 

 ここまで来るのは流石に骨が折れたんだよ。

 

 『天草式』の魔術、『木船』の術式を使って作った小さな船に食料を詰め込んで、イギリスの騎士派も用いている海流操作魔術を使ってここまで来たんだよ。

 

 とはいえ、世界一の魔術国家に魔術を用いて海から密入国めいた侵入をするのは厳しいものがあったと言える。

 

 何せ、私の『歩く教会』は魔力を振りまく発信機。私の居場所はほぼ割れているはず。ここに着く前に誘導用のルーンを木船に乗せてばらまいておいたし、ここに入る時は『木船』の潜水機能を使って水中から入ったんだけど、その程度で侵入されるような国家じゃないよね。

 

『誘い込まれたってことかな?』

『だろうね。見知った顔もうろうろしているようだし』

 

 ここまで歩くまでに明らかに魔術師であろう人を何人も見た。

 

 おそらくいつでも戦えるように警戒態勢を取っているんだろうね。

 

 実際、その判断は正しい。不確定要素の多い海上で戦うよりも自分たちのテリトリーで戦う方が有利になるはずだ。

 

 それで勝てるとは限らないけどね。

 

『準備はいい?』

『ああ。問題はないよ』

 

 私としてもたった二人で国家相手に戦えるとは思ってない。

 

 だから、最大限準備はしてきた。そのせいで少しここへの到着は遅れてしまったけどね。

 

『ついたよ』

『ここが……』

 

 思っていたほどではないけど、それでも巨大な聖堂。

 

『聖ジョージ大聖堂、イギリス清教の本拠地だね』




 たくヲです。

 繋ぎ回。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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