とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

29 / 38
とある離別の学園都市

「それじゃあ、脱ごうか?」

 

 薄暗い部屋で私が言った言葉で火織は顔を真っ赤にする。

 

「い、インデックス……? 何を……?」

「え? だって脱いでもらわないとできないからね」

「で、ですが、それは……せめて部屋を変えるとか」

 

 同性とはいえ、他人の目の前で()を脱ぐのは抵抗があるのか、火織はためらう。

 

「私はかなり危ない状態で、このままじゃどうなっちゃうかわからないんだよ。一刻を争う状況ってやつかな? それにもう私は脱いじゃったし。だから、ね?」

「う、うう」

 

 火織はゆっくり服を脱ぎ始める。

 

 うん。パッと見て20以上の相手にこういうのもなんだけど、顔を赤くして服に手を服にかけている姿は正直かわいい。いや、なんていうんだろうね。艶やか、とか?

 

 私の視線から逃れるように火織は脱いだ白い服(・・・)で体を隠す。

 

「ありがとうね」

「は、はい……どうぞ」

 

 私は火織が脱いだ白い服(・・・)を……縫い直した『歩く教会』を受け取った。

 

 

 私の『首輪』を破壊してすぐに常盤台中学の女子寮に戻った。

 

 私たちがやっていたのは『歩く教会』の修復。流石にあの無防備な状態のままっていうのは危険だったからね。

 

 私の『魔術や魔法の知識を見ることで解析、追加していく能力』のおかげで『歩く教会』を作る方法はわかっていたし、そもそも『歩く教会』の知識は『十万三千冊の魔導書の知識』にもともと入っていたから。

 

 問題なのは『歩く教会』の発動に必要な材料や魔術的要素だった。

 

 何せ、『歩く教会』もなんだかんだで法王級の魔術。材料をそろえるだけでも大変だ。

 

 特に『歩く教会の布地にこめられていた霊的な能力』が『幻想殺し(イマジンブレイカー)』によって消滅していたのが何より痛い。結構上等な礼装を用いていたせいで代わりを用意できないからね。

 

 そんな中、『歩く教会』の修復のために用いたのは偶像崇拝の理論。礼装『A』を用いる魔術行使のために、『A』に似た『偽物(レプリカ)』を用意することで、『A』を用いた魔術に近い魔術を行使するという理論だね。わかりやすく言うなら、テレビの録画機能を使ってとった番組は、放送時の番組よりも画質は劣化するけど、番組の内容を知り理解することはできる、みたいな感じかな。

 

 まあ、学園都市のHDDは録画しても画質が落ちないんだけど。と、いうか最近の録画機能はそんな劣化しないのかな?

 

 話を戻すと、『歩く教会』を造りだすための材料である布や刺繍は別のもので再現は可能っていうことだね。

 

 当麻に壊してもらった『歩く教会』から残った白い布は礼装としての機能は失われているけど、『歩く教会』の一部であったという事実は消えていないから、十分に材料になる。金の刺繍も学園都市で購入した材料で再現可能だった。

 

 でも、このままでは、以前の『歩く教会』の劣化にしかならない。多分、軍覇の通常の『すごいパーンチ』で壊れる程度にしかならない。

 

だから私は防御力を底上げするために、『歩く教会』の材料に一つの記号を組み込んだ。

 

 そもそも『歩く教会』っていうのは、服の刺繍や縫い方によって魔術的な意味を持たせて結界を造りだす魔術。でも、刺繍や縫い方だけじゃ法王級の防御力を得ることはできない。当然と言えば当然だよね。だって刺繍や縫い方だけで、法王級の防御力を得られるなら量産だって容易にできるし、『必要悪の教会(ネセサリウス)』は全魔術師に『歩く教会』を着せることができるってことになる。

 

 『歩く教会』の肝は布地にある。『歩く教会』に用いられた布地はロンギヌスで貫かれた聖人……つまり神の子を包んだ『トリノ聖骸布』を正確にコピーしたもの。その布地こそが『歩く教会』の法王級の防御力を生んでいると言える。神の子は十字教において頂点と言える人物だからね。それほどの聖人を包んだ布地がどれほどの魔術的な力を持つかは想像するまでもない。

 

 つまり、私はこの『トリノ聖骸布』の再現を行ったわけだね。

 

 方法はわかりやすい。生まれつき神の子に似た身体的・魔術的特徴を持つ『聖人』である火織に縫い終わった『歩く教会(仮)』を着てもらえばよかった。

 

 ……完璧に再現するのであれば一度火織を仮死状態か死亡状態にして、その遺体を『歩く教会』にする前の布地で包む必要があるけど、流石に友達を殺すなんてことはしたくないし、する気もないんだよ。

 

 結果として以前ほどではないとはいえ、かなり近い『歩く教会』ができたんだよ。

 

 

「ありがとう。かおり」

「……え、ええ。……インデックス?」

「どうしたのかな?」

「き、着替えてきてもいいですか?」

 

 冷静に考えると火織は今下着姿。夏場に入りかけの今部屋を閉め切るためにクーラーをつけているわけだし、流石に寒いよね。

 

「ああ、ごめんね。寒かったでしょ?」

「い、いえ。そんなことは……」

 

 まあ、恥ずかしいのか顔真っ赤だし、寒さを感じているのかどうか……。っていうか普段の服もそこまで温かくはないよね?

 

「いいよ。着替えてきて。ついでにシャワーでも浴びてあったまるといいかも」

 

 火織が部屋のシャワールームに逃げるように入っていく。

 

 うーん。まあ、せっかくこんな状態になったから楽しむのもありかと思ったけど……、まあ、命には代えられない。

 

 私は修復した『歩く教会』を着る。

 

 これで安全かな。以前ほどの防御力ではないとはいえ誤差程度だし。

 

 

 その時、机に置いていたケータイが音を発した。

 

 画面には見覚えのない表示。

 

「……もしもし」

 

 ゆっくりと耳に当て通話を始める。

 

『随分とこの街を引っ掻き回してくれたな。禁書目録』

 

 電話特有の雑音が混じらない、まるで直接会話しているような音質で聞こえてきた声はよくわからないとしか言えないものだった。

 

 電話の向こうの人間がどのような人間なのか全く想像できない。男なのか女なのかすら想像できないような声。

 

 その声で逆に電話の向こうにいる人間を特定できた。

 

「仕方ないんだよ。私にだって人権はあるからね。それにあなたが考えていることに対して、私の行動が何も問題なかったから、私に手を出さなかったんだよね?」

『確かに、君の行動の結果として私のプランは短縮できた。一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)のつながりが弱いのが気になるところではあるがな』

 

 嫌な予感がする。

 

「それで、今まで一度も私に干渉してこなかったあなたが何の用かな?」

 

 私は強引に話の流れを変える。

 

『君がここから出ていくつもりなのは知っているがね。私としては君にはここに留まっていてほしいのだよ』

「……それはどういう」

『君にはまだ利用価値がある。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を魔術と引き合わせるのは予定通りだった。だが、まだ足りないのだよ。あの右手の力はさらに洗練させねばならない』

「その協力をしろとでも?」

『おおよそ間違ってはいない。私はこういう言葉はあまり好まないのだが、こちらには君に対する人質を多数所持している』

 

 ……まあ、どうせそんなところだろうと思ってたけど。

 

「本気で言ってるのかな?」

『本気だとも』

「そんな人質なんてとらなくても、私はここに帰ってくるつもりなんだよ。それに、私はあなたに敵対するつもりもあんまり(・・・・)ないし」

 

 学園都市でやらないといけないことはたくさんあるからね。

 

「むしろ人質とかやめた方がいいと思うんだよ。学園都市を最初から造りなおすのは避けたいでしょ?」

 

 実際、学園都市を吹っ飛ばすくらいは、今この場で回転しつつ『聖ジョージの聖域』を発動するだけでいいからね。やるつもりはないけど。

 

「私はできることならあなたと友好的な関係でいたいんだよ。なにせ、一年もこの街に居候させてもらったわけだし、あなたにも恩があると言えばあるわけだからね。私の友達に危害を加えない限りあなたの邪魔はしないし、あなたを止めもしないつもり」

『君の目的はなんだ? まさか自分の目的も話さずに説得できるとは思ってはいるまい』

 

 その声は私に興味を示しているようにも、興味を示していないようにも聞こえた。

 

「目的、ね」

 

 私は首をひねる。

 

 そう言えば人に自分の目的を話すのは初めてかもしれない。

 

「目的なんて言うほど、大きな野望とかはないんだよ。そもそも今回の一件の『記憶を失わないようにする』のは()の本来の目的の副産物みたいなものだしね」

 

 それは禁書目録(インデックス)としての目的であって()としての目的ではなかった。

 

 まあ、その目的を達成するために必要な過程が同じだったから助かったけどね。

 

「私は他の魔術師みたいに魔術を使って何か成し遂げたいことなんてなかった。だって、私の目的は『魔術師になること』そのものだったんだから」

 

 私は転生する時にこの目的のために、あの二つの特典を望んだのだ。

 

「まあ、とはいっても今はせっかくできた友達を守るっていう新しい目的ができちゃったわけだけどね」

『随分と饒舌だな』

「こんなこと『人』に話すのは初めてだし饒舌にもなるんだよ」

 

 さて、話を戻そうかな。

 

「それで? 私の目的は話したんだよ」

「仕方あるまい。私としても今の時点で魔神を相手にするのは得策ではない」

「そうしてくれるとありがたいかな」

 

 おっと、あのことについても聞いておかないとね。

 

「ところで、一つ学園都市の組織を潰したいんだけどいいかな?」

「ふむ。場合によるとしか言えないが」

「三沢塾」

 

 学園都市内の進学予備校にして科学を崇拝する新興宗教。そして何より、姫神秋沙という少女を監禁することになる組織。

 

「確かにあれは我々としては破壊されても問題はない物だが」

「ああ、なにも今すぐとは言わないんだよ。それに、今説明しても仕方がないことだし」

 

 まだ、事件は起こっていないはず。原作で姫神秋沙が誘拐されたのは当麻とステイルが乗り込む8月の一か月前らしいし。まだ6月だからね。

 

 助けられる相手は助けておきたい。

 

「いいだろう。君は私からすれば協力者に当たる。その程度なら許可する」

「うん。ありがとうね」

 

 そろそろ火織も出てくるだろうし電話を切ろうかな。

 

「それじゃ。次は電話じゃなくて直接会えるのを楽しみにしてるんだよ。『学園都市統括理事長』アレイスター・クロウリー」

 

 

 

 

 

「改めて。一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)、そしてミサカ6023号。久しぶりだね」

「久しぶりー! ってミサカはミサカは少しテンションを上げて叫んでみたり!」

「オイ、ガキ。店の中ぐらい静かにしろ」

「ひさしぶりです、とミサカは上位個体に倣ってテンションを上げます」

「棒読みじゃねェか」

 

 しばらく会ってないうちに一方通行が突っ込みキャラになってる……。

 

 私は今ハンバーガーショップに来ている。この街に来て一番最初に食事したハンバーガーショップだ。

 

 火織とステイルには少し離れた場所で待機してもらっている。とりあえず、さっき二人とも唐突に入ってきてハンバーガーを買って出て行ったから問題はないはずだね。

 

「これはとりあえず私のおごりなんだよ」

「全部一番安いハンバーガーのくせに何言ってやがる」

「いつか、あなたに奢ってもらった時も一番安いハンバーガーだったからね。おごりに変わりはないし」

「あの時とは量が違うだろォが」

 

 私たちのテーブルには12個のハンバーガー。とりあえず一人3個は食べれるんだよ。

 

「ミサカ6023号は無事退院できたようでよかったんだよ。おめでとう」

「ありがとうございます、とミサカは空返事とともに早速ハンバーガーに手を伸ばします」

「あ、ずるいずるい、ってミサカはミサカは負けじとハンバーガーに手を伸ばしてみる」

 

 とりあえずは無事って所かな。

 

 アレイスターが不穏なことを言っていたから、警戒して最初に会いに来たんだけど無事でよかったかも。

 

「で、話ってのは?」

「おっと、そうだったね」

 

 そもそも、私は一方通行に報告とあいさつに来たのだった。

 

「ちょっと、この街を出ないといけなくなったんだよ」

 

 一方通行が眉をひそめる。

 

「オイオイ、どォしたってんだ?」

「まあ、いろいろあってね。一番大きい理由は友達の仲間を助けに行くことなんだよ」

「オマエ、俺の時といい変なことに首つっこまねェと気が済まねェのかァ?」

 

 随分な言い様だね。

 

「彼女もある種の命の恩人だからね。……ああ、安心して。もちろん出て行くのは一時的な物でまた戻ってくるつもりから」

「……チッ。そォかよ」

 

 一方通行はハンバーガーに手を伸ばし食べ始める。

 

「私はあなたたちのことを放り出すつもりはないからね。こんな状況にあなたたちを連れてきたのは私だし、責任くらいはとるよ。なにより友達だしね」

 

 私もハンバーガーに手を伸ばす。

 

「あんまりそういうことは言ってほしくないかな、ってミサカはミサカは正直な気持ちを言ってみる」

「え?」

 

 いきなりの打ち止めの言葉に聞き返す。

 

「あなたは友達って言ったけど、友達だって思っているならもっと遠慮しないものだと思う、ってミサカはミサカは言ってみる。恩とか責任とか友達相手に言うことでもないんじゃないのかな、ってミサカはミサカはここ数か月で得た知識をフル活用してみる」

「うーん」

 

 まさか、打ち止めにこんなことを言われるとは思ってなかった。

 

「確かにその通りかもしれないね」

「ふふん、ってミサカはミサカは人生の先輩を納得させたことを胸を張って誇ってみたり」

「とは言っても、これが私だからそう簡単に変えられないのも事実なんだよ」

「?」

「急に変わるのは難しいって話なんだよ」

 

 色々な意味で私が言える台詞ではないかもしれないけどね。

 

 とはいえ、これは一つの課題かもしれない。言われてみれば、いままで友達にしては他人行儀すぎたような気がするし。

 

「難しいんだね、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」

「じゃあそろそろ行こうかな」

「もう行くのですか、とミサカはハンバーガーから目を離さずに問いかけます」

「うん、予定も山積みだからね」

 

 具体的には出て行くための準備なんだけどね。

 

「一方通行」

「あァ?」

妹達(シスターズ)打ち止め(ラストオーダー)を守ってあげてね」

 

 一方通行は私の目を見る。私も一方通行の目を見返す。

 

「……言われるまでもねェな」

「うん、任せたんだよ」

 

 私は席を立つ。

 

「それじゃまた今度ね」

 

 

 

 

 

 

「というわけで、今までありがとうね」

「随分と突然なのねぇ」

「今までの私の行動もだいぶ突然だった気もするけどね」

 

 朝6時。『学舎の園』の門の前で私は操祈と話していた。

 

 私が肩から掛けたバッグの中にはいろんな荷物が入っている。

 

 私は頭を下げる。

 

「!? ど、どうしたのよぉ!?」

「本当にありがとう」

 

 操祈はある意味、私にとって一番ありがたかった存在と言えるからね。

 

「あなたのおかげで野宿生活を避けられたわけだし、食事もできたんだよ」

「……」

「それに夜」

「ブッ!? う、うるさいわよぉ!?」

 

 鋭いね。

 

「おかげで学園都市での生活が充実したものになったからね」

「はあ……。あなたの相手していると調子狂うわねぇ」

 

 ため息を吐く。操祈はバックの中からリモコンを取出し私に向ける。

 

「やっぱり私とあなたの関係はこれくらいの方がいいわねぇ」

「うん。そうかもしれないね」

 

 操祈がリモコンのボタンを押す。

 

 バタッ、と倒れる音が後ろから聞こえる。振り向くと30メートルくらい後ろの電柱の側で黒づくめの男が倒れている。

 

 再び見ると操祈は新しいリモコンを取り出し、そのリモコンについている画面をじっと見つめていた。

 

「……大体理解したわぁ」

「み、みさき! それは」

 

 流石にこんな明らかな下っ端が『魔神』に関して完全な知識を持ってるとは思っていないけど、それにしたって操祈レベルに魔術について知られるのはまずい。

 

「あらあらぁ? やっと、動揺してくれたわねぇ」

「そんなことよりもそれは駄目なんだよ!」

「自分の素性を探られるのはそんなにキライかしらぁ? 私に隠し事しようなんて十年は早いんだゾ☆」

 

 操祈にペースを握られたのは初めてなんだよ。

 

「あなたが心配だから言っているんだよ。一応重要な情報だからね」

「……わかったわよぉ。あなたが出て行ってから消すから安心しなさい」

 

 絶対ウソなんだよ。

 

「面倒なことは適当にこっちが何とかしておくからぁ。あなたはさっさとこの街の外に出ちゃいなさい」

「うん。ありがとうね」

 

 好意を無駄にするのも嫌だしね。

 

「じゃあ、お礼にあなたに贈り物なんだよ」

 

 私はケータイストラップを手渡す。

 

「これ何よぉ?」

「お守りかな?」

 

 小さな布でできた神社風のお守り。もちろん魔術関連だけど、天使の力(テレズマ)を利用しているから魔力がほとんど漏れない少し変わった仕組みのものだね。、天使の力(テレズマ)は西洋の概念だけど、神道と結びつけることで地脈関連とつながりやすくしている。

 

「この街でこんなものを渡すのはあなたくらいでしょうねぇ」

「いらないのかな?」

「ありがたく貰っておくわぁ」

 

 まあ、これは昨日軍覇にも渡したんだけど。

 

 そろそろ行かないとね。

 

「とりあえず、あなたの部屋は一年くらいなら開けさせておくわぁ。いつでも戻ってきなさい」

「……うん、ありがとう。それじゃあね」

 

 

 

 

 

 私は学園都市の第七学区の路地裏に入っていく。

 

 後ろからは火織とステイルがついてくる。

 

「こんなところに行くのですか?」

「うん。あなたたちももとはるあたりの報告で聞いてなかったかな?」

「不良のグループに助けられたっていうアレか。気に入らないが、僕は当時動けなかったからね。感謝はしているさ」

 

 不良神父が不良を気に入らないっていうのはどうなんだろうね。同族嫌悪かな? 

 

 操祈が時間稼ぎしてくれてるし、急ぎたいのはやまやまだけどここにあいさつしないのはなんか違う気がするし、一応来たんだよ。どうせ学園都市から出るための出入り口に行くためには通る場所だったしね。

 

 そんな中一つのドアの前まで辿り着いた。

 

「それじゃ、あなたたちはここで待っていて」

「……私もお礼くらいはしておきたかったのですが」

「うーん。難しいかな? 知らない人を連れてきて警戒させるのもあれだし」

 

 何より刀持っているし。

 

 

 私が入ると巨大な男が巨大なソファに座ってテーブルに向かい何やら飲んでいる。

 

「……インデックスか」

「りとく。未成年が昼間から酒を飲むのは感心しないかも」

「……これはサイダーだ。流石に昼間から酒を飲むほど堕ちてはおらんよ」

 

 私は利徳の向かいに座る。

 

 利徳は横に手を伸ばし適当なグラスを掴み、そこにサイダーを注いで私に渡す。。

 

「ん、ありがとう」

 

 私はグラスを貰って、利徳が持っているグラスと合わせ飲む。

 

 ……確かに、サイダーだ。

 

「それで今回はどうした……? 以前、言っていた問題は片付いたのか?」

「当時の問題はあらかた片付いたんだよ。まあ別の問題が発生しちゃったんだけどね」

「そうか……お前も大変だな」

 

 お前『も』?

 

「何かあったの?」

「どうやら、俺たちと同じように複数のチームで徒党を組んでいるスキルアウトがいてな……。能力者と見れば迷わず襲うような奴らだ。そんなやつらを野放しにしておくわけにはいかんが……いかんせん情報が少なすぎる」

「大変みたいだね」

 

 魔神と言っても今の私はそこまで万能じゃないからね。実際の現場を見るまで特定はできない。

 

「でも、半蔵が動いてるんでしょ? ならすぐにわかると思うんだけど」

「最近組まれた組織らしくてな。……半蔵にもなかなか尻尾が掴めていないようだ」

 

 できれば被害が出る前に何とかしたいところだね。

 

「あくまで噂だが能力を使うやつが中心にいるという話だ」

「スキルアウトの中心に能力者?」

「精神を操るのか、脅して無理やり従わせているのかはわからんがな」

 

 一つだけ思い当たる節はある。『幻想御手(レベルアッパー)』。つい昨日、思いだした『知識』だ。

 

「意外と厄介かもしれないんだよ。できれば利徳も動いておいた方がいいかも」

「……なにか心当たりがあるのか?」

「あんまり聞かない方がいい方向に心当たりがあるんだよ」

「……そうか。だが、今日は俺は休日でな」

 

 休日?

 

「ここの所、俺も見回りをしていたのだがな。あいつらが『もういい加減休め』と言いだして仕方なくここに残っているわけだ」

 

 なんかスキルアウトが『警備員』みたいになってきてるんだよ。

 

「無理言ってごめんね」

「いや、そんなことはないが……」

「まあ、それならゆっくり休んでほしいんだよ」

 

 私も早いところ出て行った方がいいかもしれない。

 

「そうそう、報告だけしておくね。私は一度学園都市を出ないといけないんだよ」

「……なに?」

「さっき言った問題が学園都市の外に行かないと解決できないことだからね」

 

 主にイギリス清教関連だけど。

 

「そうか。……さびしくなるな」

「まあ、たぶんすぐに戻ってくると思うよ」

「……ならば、俺はお前が戻ってくる前にこの問題を解決しておこう」

 

 利徳が立ち上がろうとする。

 

「りとく。時には休みも大切なんだよ」

「……それはわかるが……」

「……どうしたの?」

「俺たちはもともと学校を休み続けているのだがな……」

 

 正直、忘れていた。

 

 それでも今の利徳たちはそのへんの学生よりも大変だとは思うけど……まあ、自業自得と言ってしまえばその通りなんだけど。

 

「それでも休んだ方がいいんだよ。休憩がなさ過ぎて倒れたら元も子もないし、よこすかたちも動いているだろうし」

「……それもそうだな」

 

 利徳は再びソファに座る。

 

「そうそう、さっき言った私の問題に関してなんだけど。ちょっとそれ関係で学園都市の上層部があなたたちに手を出してくるかもしれないんだよ」

「お前は一体何をしてきたんだ……? いや、答えなくてもいい。続けてくれ」

「うん。だから、あなたには忠告。何かの刺客や交渉人が来た時はできる限り信用しない方がいいんだよ。やばそうならとにかく逃げて」

 

 操祈や軍覇にはお守りとして渡したけど、ああいう礼装は基本的にある程度の実力がないと、つまり最低限学園都市の闇相手に立ち向かえる人に持っていてもらいたい。あの礼装を持たせたことで余計な問題に巻き込まれた場合のことを考慮するとその問題をある程度解決できないと困るからね。

 

 私はサイダーを全部飲んで立ち上がる。

 

「……もう行くのか?」

「うん。やらないといけないこともあるしね」

「そうか。……気を付けて行け」

「うん。りとくも気を付けてね」

 

 

 

「もういいのですか?」

 

 外に出ると火織が話しかけてきた。

 

「うん。私としてもできる限りの挨拶はしたからね」

 

 当麻には挨拶してもよくない気がする。引きとめられるか、後先考えずについてきそうだし。

 

 それに他のみんなに関しては裏で土御門元春にいろいろしてもらっているから、おおよそ問題はないはず。

 

「それに早く、かおりの仲間たちを探しに行かないとね」

「ありがとうございます」

「いいのいいの。友達だしね。……じゃ二人とも、学園都市を脱出しようか?」




 たくヲです。

 学園都市サラバ回。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。