とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある二人は禁書目録

 6月7日。朝7時40分。

 

 私は軍覇、火織、ステイルと第七学区のとある道で人を待っていた。

 

 『人払い(Opila)』の魔術は張ってないから、登校中の学生たちの視線が気になるんだよ。

 

「本当に奴がくるのかい?」

「とりあえず電話はしたからね。あんな朝早く電話しちゃったのは申し訳なかったけど」

 

 モーニングコールみたいなものだと思ってもらえればありがたいんだけどね。

 

「来たみたいだね」

 

 走ってきたツンツン頭の男は、道の端に並んでいるコスプレ不審者集団を見て、何とも言えない顔をする。

 

「やあ、待ってたよ。かみじょうとうま」

「あ、ああ。どうしたんだ? っていうか、インデックス……でいいんだよな?」

「うん」

 

 まあ、いつもと違う格好だしね。

 

 私が着ていたのは白のミニワンピ。まあ、一瞬わからないのも無理はないかな?

 

「っていうか、テメエはなんでインデックスといるんだ!? まさか……」

「ああ、別にとうまの心配するようなことは起こってないから安心して。ステイル達とはいろいろあって和解したんだよ」

 

 一瞬ステイルが動きかけたけど、私が右手を横に出して止める。

 

「とはいえ、ステイルがとうまを攻撃して、殺そうとした事実があるから、警戒するのもわかるんだよ」

「……すまなかった」

 

 ステイルが頭を下げる。

 

 ふむ、まあそうするように促したとはいえ、ステイルが頭を下げるとは思ってなかったからちょっと驚いたかも。

 

「どういうことだ? 簡単に頭を下げるような奴には見えなかったけど」

「この子を救うには君の協力が必要らしい。そのためなら頭くらい下げるさ」

 

 ありがたいんだよ。軍覇が何やら頷いている。

 

「まあ、命を狙われたのを簡単に許せるものでもないだろうし、一発までならなぐってOKかも」

「なッ!?」

「いや、構わねえよ」

「まあ、そう言ってくれると思ってたんだよ」

 

 許さなかったら殴らせていたかって言われていたら、それも違うけどね。今から、やらなきゃいけないことがあるこの状況で、ステイルにダメージを受けてもらうわけにもいかないし。

 

 全部終わってからだったら殴らせたけどね。

 

「で、俺は何をすればいい?」

「壊してもらいたいものがあるんだよ」

 

 私達にはできないこと。

 

 差し出したのは白い修道服。

 

「これは……。大事な物なんじゃなかったのか?」

「そうだね。でも、壊さざるを得ない事情があるんだよ」

「……わかった」

 

 上条当麻が右手で『歩く教会』に触れる。

 

「……」

「……アレ?」

 

 『歩く教会』は壊れずに残っている。

 

 そのことに驚いたのか当麻は疑問の声をあげ、火織は不審そうにそれを見ている。

 

 そこから一拍おいて、私の手の中で『歩く教会』はフード部分も服部分も同時にバラバラになる。

 

「うん。成功だね」

「まさか、これほどとは……」

 

 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を知らなかった火織と、効果は知っていたけどどれだけの力かを考えていなかったステイルが驚く。

 

 原作でも、『歩く教会』に当麻が触ってから消えるまでにこんなラグがあった。これはやっぱり『歩く教会』の圧倒的な魔力と防御力のせいなんだろうね。

 

「ありがとう、とうま」

「やってから言うのもなんだけど、本当にいいのか?」

「うん。……説明したいのはやまやまだけど、今は時間がないからね」

 

 『歩く教会』が破壊されたということは私が完全に無防備になったということ。

 

 こんな状況で襲撃なんてされたらたまった物じゃないからね。

 

「全部終わったら、改めて報告に行くんだよ」

「なんか、俺にやれることはないのか?」

「残念だけどないね。……いや、あると言えばあるけど、あんまりおすすめしないかも」

 

 うーん。正直、あれだけ突っぱねておいて、こうやって力を貸してもらいに来ただけで恥知らずもいいところなのに、これ以上はちょっと。

 

「前回俺の協力を断ったのは俺の右手(・・)がお前の『歩く教会』を破壊しないため、だったよな? もう『歩く教会』ってやつは壊れた。それなら、俺がお前に協力しない理由もないんじゃないか?」

「む」

 

 してやられたかも。

 

 まさか、前回当麻の協力を断った理由を覚えているとは思ってなかったんだよ。

 

「……命の危険があるけど大丈夫?」

「ああ、こちとら不幸はあらかた経験済みだ。今更命の危険なんざ」

「学校は?」

「うぐっ!? ……学校がなんだ! 人を見くびってんじゃねえ!」

 

 ちょっと考えたね。

 

「へっ。おもしれーなオマエ」

「ぐんは?」

「ここまでの根性を見せられちゃあ断るわけにはいかねえな」

 

 ふむ、まあ軍覇が言うならいい、のかな?

 

 あと軍覇も今日は学校に行けないけどいいのかな?

 

 軍覇いわく『友達の命と学業。根性あるやつがどっちを選ぶかなんてかなんて考えるまでもねえだろ?』ってことらしいけど。

 

「わかった。改めてとうま、私に力を貸してほしいんだよ」

「! おう」

 

 

 

 

 

 

 私は白い部屋にいた。

 

 カーテンは閉められ、部屋の壁、天井、床を埋め尽くすようにステイルのルーンのコピー用紙が貼られている。

 

 私の他には火織とステイル。軍覇と当麻にはこの建物の外に行ってもらっているんだよ。

 

 私はすでに服を着替えて緑色の手術衣を着ていた。その胸元を開いて言う。

 

 ステイルから受け取った最後のコピー用紙を私の胸に張りつける。

 

「さて、下準備はこれで終わり」

 

 部屋のベッドに座り、手術衣の胸元を戻しながら言う。

 

「流れは全部覚えてくれたよね?」

「ええ、問題はありません」

「ならすぐにお願いするんだよ」

 

 ベッドに横になり目を閉じる。

 

 ステイルが詠唱をすると、この部屋の空気ががらりと変わる。この建物(・・・・)だけじゃなく、学園都市内のいたるところから、魔力の反応が発生しているはず。

 

 これはこの場所を他の魔術師に特定されないための魔術。学園都市のいたるところに特別なルーンを貼り付けておいたことによる効果なんだよ。

 

 火織が私の横に七天七刀を置く。

 

「神裂、始めるぞ」

「ええ、問題ありません」

 

 魔術の儀式が始まった。

 

 私は身動きは取れない。いかんせんぶっつけ本番の魔術だからミスをさせないためにも、あまり刺激をしたくないんだよ。

 

 使っている魔術は封印。その中でも、対魔術師用の封印だね。

 

 古今東西の神話や物語における魔術師の中には魔術師の力を奪う逸話がある。例えばアーサー王伝説のマーリンあたりはその例の一つだね。まあ、あれは正確には力を奪うというより閉じ込めるかもしれないけど、行動できないという意味では間違ってはいないんだよ。

 

 魔術師に対する封印といっても、魔術の道具を奪ったり、幽閉したり、とさまざまだけど、これが持っている意味、目的は単純。魔術師に魔術を使えなくする、というもの。

 

 魔術師に魔術を使えなくするための方法として、一番手っ取り早い方法は、精製した魔力を魔術という形に移行させるのを阻害すること。

 

 今使っているのは、火織が集めてきた魔力を魔術という形にすることを封印する古今東西の魔術の情報と、『自動書記(ヨハネのペン)』に引っかからないイギリス清教式記憶消去魔術を参考にして、術式を組んだハイブリット魔術。

 

 天草式十字凄教の女教皇だった火織の複数の神話を融合させて魔術を造り使用してきた実力。天才魔術師であるステイルのルーン。こういった要素があったからこそ作れた術式だった。

 

「……終わりましたよ。インデックス」

「ん。ありがとうね」

 

 火織の声に起き上がる。

 

「今更、注意する必要はないだろうけど、君に貼っているルーンが剥がれれば君にかかっている封印は解ける。気を付けてもらいたいね」

「うん。ありがとう、ステイル」

 

 私達は部屋の外に出る。

 

 しばらく歩いてカエルのシールが張られた名札のある部屋まで行ってそこに入る。

 

「おや? もう、準備とか言うのは終わったのかい?」

「うん。大体終わったんだよ」

「ならよかった。じゃあ、すぐにでも始めようかね?」

 

 

 

 

 手術室。

 

 私は点滴をうたれて手術台にいた。

 

 私は手術台の横のカエルのお医者さん(・・・・・・・・)に言う。

 

「ああ、とりあえず胸に貼ってあるコピー用紙ははがさないようにお願いするんだよ」

「ふむ、それはどうしてだい?」

宗教上の都合(・・・・・・)、かな?」

 

 手術中に剥がれて封印が解けたら大変だからね。

 

「あと、極力コピー用紙は濡らさないように」

「随分と注文の多い患者だね?」

「できない、かな」

「もちろんできるとも。患者にとって必要なことはなんだってやる。それが僕の仕事でね?」

 

 うん。ありがたいけど、微妙に警戒してしまうね。嘘を言ってはいないのはわかるけど。

 

 

 私が考えていた計画。それは私の口内にある魔法陣、というか刻印を消してしまうという単純なものだった。

 

 私を縛っていた『首輪』の魔術。これを打ち消さないと私は記憶を消さなくてはいけなくなってしまう。

 

 でも、原作の当麻がとった方法をとってしまうと、『首輪』その物は消せるけど、体に刻まれた刻印は消せないんだよ。

 

 なら、口内の刻印を直接消してしまえばいい。でも、口内の刻印に触れるということは『自動書記(ヨハネのペン)』の発動を意味する。

 

 ならどうするか? その答えは簡単で、刻印に魔力を送らなければいい。それならば『自動書記(ヨハネのペン)』は発動できないし、刻印に触れても問題はなくなるからね。

 

 問題は刻印を完全に消すことができる人間を探さなくてはならないことだったんだけどね。カエルのお医者さんと知り合えていたから助かったかも。医術はさっぱりだからわからないけど、カエルのお医者さんは外科医だろうし専門外だとは思うけどね。腕は確かだったし、この人しか頼れる人がいなかったともいえるね。

 

 

 まあ、今更考えていてもしょうがないんだよ。もう、ここまで来たらまな板の鯉みたいなものだし。じたばたしてもどうしようもない。

 

「じゃあ、よろしくお願いするんだよ」

 

 点滴に麻酔が入る。

 

 意識が薄れていく。

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ暗な世界に私はいた。

 

 上も下も解らないような真っ暗の中に、一人の女の子が一糸まとわぬ姿で座っている。

 

 銀髪。碧眼。控えめな胸。それは私が誰よりも知っている姿。

 

禁書目録(インデックス)?」

 

 思わず私の身体を見た。私自信も服を着ていない。でも、いつもと違う。具体的には胸のサイズがちょっと大きい。

 

 私がインデックスになる前の身体に戻っている。

 

「初めまして、だよね?」

「あなたは……?」

「私の名前はね、インデックスっていうんだよ?」

 

 知っている。私が10か月も過ごしたその顔を忘れるわけもない。

 

「あなたとは一度話しておきたかったんだけど、全然そんな機会がなかったからね」

「どういうこと?」

「私は正確にはインデックスの魂なんだよ。服を着ていないのはそのせいだね」

「大丈夫ですか?」

「む。私の頭のことを言っているのなら、ちょっと失礼かも」

 

 思わず敬語で聞き返すと、ふてくされたようにインデックスが言う。

 

 でも、冷静に考えるとおかしなことでもないのかもしれない。そもそも、神様に転生させられるなんて体験をしているし、その結果が魂だけ憑依みたいな感じだった。それに私が魂になっているのなら私が服を着ておらずインデックスになる前の姿になっているのも納得がいく。

 

「でも、おかしい。私が魂になってあなたの魂に会えているなら、それは死んだってことになる」

「それについては大丈夫。ここはあなたの中だから」

「私の?」

「正確には今の禁書目録(インデックス)の中というのが正解かな?」

 

 つまり、全身麻酔によって意識が飛んだことで、(インデックス)の体の中にある私の魂の状態に意識が映ったっていうこと、かな?

 

 つまり、気絶さえすればいつでもここに来れた、と?

 

 いや、でもそれなら、なんで私の中にインデックスの魂があったのかがわからない。

 

「まさか……」

「うん。あなたの思っている通りなんだよ。私はずっとあなたの中にいた」

 

 つまり、私はずっとインデックスの身体を奪って操っていたということ?

 

「心配しなくてもいいんだよ。私は気にしてないから」

 

 インデックスはちょっと顔を赤くして言う。

 

「でもオリアナやみさきたちとのことはちょっと気になったかも」

 

 ……見られていた。顔を赤くしたインデックスはかわいいけど、これは自画自賛になるんだろうか?

 

 でも、私のインデックスとしての行動を知っているってことは、ここから私の行動は全部見えるってことになる。

 

 インデックスからは私の行動を知ることはできるけど、私はインデックスが外を見ていることは知ることはできない。それはあまりにも……。

 

「でも、それならなんで(インデックス)の身体の中に、あなたの魂が残っていたの?」

 

 憑依したのならインデックスの魂を回収するはずだし、神様がそんなミスをするとは思えない。転生ならそもそも、インデックスの魂があるはずがない。

 

「私はあなたのいう神様が本物の神様だとは思えないし、よくわからないけど」

 

 宗教上の理由で、かな?

 

「あなたの魂は禁書目録(インデックス)の身体に確かに憑依してきたんだよ。それで、私の魂が禁書目録(インデックス)の身体に残っていたということは」

「ということは?」

「あなたの考えているように私の魂を回収し忘れたか、禁書目録(インデックス)の記憶消去を魂の消失と誤認してしまったか、禁書目録(インデックス)の身体に私の魂が残っていた方が面白そうって考えたか、それともあなたの言う『首輪』の魔術が私の魂を体に縛り付けていたか、だね」

 

 まさか、とは思う。正直、ここが私の中って言うのもまだ半信半疑だしね。

 

「むう。やっぱり私の言うこと信じてないね」

「まあ、ね。神様がその力を見せてくれたみたいに、あなたの魂が(インデックス)の中にいたっていうのを証明してくれれば信じられるんだけど」

 

 私の言葉に少し考えるようにしたインデックスはすぐに口を開く。

 

「あなたの考えていること」

「私が考えていること?」

「そう、あなたの考えは私に似てきていたんだよ」

 

 そう言われてみればそんな気もする。今や転生前の思考と、禁書目録(インデックス)になってからの思考は全然違ったような。

 

 そう、最初は上条当麻に頼るつもりで学園都市に入ろうとしていたのに、いつのまにか上条当麻をできるだけ巻き込まないようにっていう考えに変わっていた。

 

「それにあなたが忘れている記憶。全部私が持っているからね」

「!?」

 

 ちょっとシャレにならないことを聞いてしまった。

 

「あなたが禁書目録(インデックス)の身体に憑依した時に、私の方に記憶の一部が流れ込んできたんだよ。一つの身体に二つの魂を入れた影響かも」

「戻す方法はないの?」

「たぶん、もうすぐ戻るから安心してもいいよ」

 

 うーん。困った顔が見たくなっちゃったからいじわるしてみたけど、思っていたより真面目に答えられちゃったね。

 

「! やっぱり私をからかっていたんだね!」

 

 さっきから思っていたけど、ナチュラルに思考を読まれている気がする。

 

「それはそうと、さっきなんて言ってたっけ?」

「話をそらそうとしても駄目なんだよ!」

「えーと、『首輪』の魔術が私の魂を体に縛り付けていた、ってどういうこと?」

 

 説明を求められて、インデックスは少し真面目な顔になった。

 

「そのまんまの意味なんだよ。『首輪』の魔術が(インデックス)の身体に施されていたせいで私の魂は身体に縛られていたっていうこと。そのせいで、あなたの言う神様も私の身体を回収できなかったっていうことだね」

 

 確かに、その通りかもしれない。でも、あの神様がどうにもできない魔術がこの世界にあるのだろうか?

 

 魔神クラスのものならともかく、イギリス清教の魔術師レベルが考案したはずの魔術にあの神様がそこまで手こずるとは思えない。

 

 つまりは

 

禁書目録(インデックス)の身体に私の魂が残っていた方が面白そうって考えたのと、それともあなたの言う『首輪』の魔術が私の魂を体に縛り付けていたの二つが原因?」

「かもしれないね。身体に魂を縛っていた『首輪』の魔術。そこから私の魂を回収するってことは首輪を破壊するってことだもん」

 

 つまり、『首輪』をつけたままの禁書目録(インデックス)に憑依させ、十万三千冊の魔術を私自身は使えないようにするつもりだったってこと? ……神の与えた試練とでも言うつもりだったのかな?

 

「どちらにせよ憑依っていうなら神様が嘘をついていたってことになるわけだけど」

 

 神様は私に転生させると言っていた。なのに憑依したってことは私を騙してたっていうことになる。

 

「もしかしたら、私の中にあなたの魂を入れた後に記憶消去をされることで、『首輪』が縛っていたものが私の魂からあなたの魂に切り替わって簡単に回収できると思っていたのかもしれないかも。結果的には『首輪』の魔術は私とあなた両方を縛る形になってしまったのかもしれないね」

 

 私の魔術解析能力の意外な弱点かもしれない。魔術を見ても術式や仕組みがわかるだけで、それが誰を対象にした魔術なのか、魔術の使用者がだれであるかまではわからない。例えるなら、野菜を食べてその野菜がどんな品種なのかがわかる人間でも、それを食べている他の人間(対象者)はわからないし、誰が育てたのかはわからないようなものかな?

 

「おかげで、私はこうして以前の記憶を持ったままなわけんだよ」

「まさか、記憶があるの?」

「うん。あなたが憑依してくる前の一年分だけだけどね。それ以前記憶はないんだよ」

 

 どうやら、私は絶妙なタイミングで憑依させられたらしい。

 

「あれ?」

 

 インデックスの姿が一瞬だけ、歪んだように見えた。

 

「……そろそろお別れ、みたいだね」

「お別れ、って……」

「私は『首輪』によって禁書目録(インデックス)の身体に縛られていた、って予想したけど。その通りだったみたい。『首輪』の魔術の刻印が完全に消滅すれば、私を禁書目録(インデックス)としての、身体に縛り付けるモノがなくなるから」

 

 インデックスの身体が歪むたびに、彼女の言葉が途切れる。

 

「私の魂は禁書目録(インデックス)の身体の中に、は留まれなくなる。だからお別れ」

 

 インデックスは笑ってそう言った。

 

「ごめん」

「? どうして謝るのかな?」

「私が転生しなければ、憑依しなければ、あなたはこんなことにならないで済んだ。インデックスのままでいられたのに」

「ううん。大丈夫。あなたは気にしないでくれていいんだよ。憑依されなければ記憶も消えていたわけだしね」

 

 そして、インデックスはちょっと悲しそうな顔をした。

 

「それよりも、謝らなきゃいけないのは私の方なんだよ。私の抱えている全部を背負わせちゃったからね」

「……」

「それに、お礼をしなきゃね。ステイルやかおり達を救ってくれてありがとう」

「どうして、そんな」

「私だけじゃ絶対にあの二人が助けられないこともわかっちゃったもん」

 

 それは、私の原作知識も見てしまっていたってこと。私が忘れた知識も含めて。

 

「さよならの前に、お願い聞いてくれる?」

「どんなことを」

「できることなら、今のあなたが忘れている人達も助けてあげてほしい。アウレオルスやあいさ、オルソラ。私を他にもたくさんの人がいたはずなんだよ」

 

 アウレオルス=イザード、 姫神秋沙、オルソラ=アクィナス。消えていた記憶が戻ってくる。それだけじゃない。さまざまなエピソード、知識が私の頭の中にうかんでくる。

 

「うん。わかった。任せて」

「よかった。……私の魂が身体から出て行けば禁書目録(インデックス)は完全にあなたになる。あとは自由にしてくれてもいいんだよ」

 

 インデックスが消えていく。

 

「じゃあね。これまで、ありがとうね、インデックス」

 

 もう消えるという寸前に彼女はそう言った。

 

 私は消えかけた彼女に言う。

 

「ありがとう。短い時間だったけど楽しかったんだよ、インデックス」




 たくヲです。

 憑依回。

 全身麻酔はインデックス自身が希望した結果です。現実の手術でもこういう場合に全身麻酔は行われるのかはわかりません。喉の奥に入れ墨をした人の入れ墨を消す手術とかの前例を知らないので。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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