とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

24 / 38
とある魔術と幻想殺し

 上条当麻の元に向かう途中にあった監視カメラは止まっていた。

 

 おそらく、魔術サイドからのスパイである土御門元春あたりが裏で動いているのかも。

 

 ステイルに監視カメラを止める技術はないだろうし、監視カメラに魔術が撮られて、一般の警備員に見られるのもまずいだろうからね。

 

 監視カメラは人払いが効かないおかげで魔術師を撒くためには有効な手段だったんだけど、その方法が使いづらくなっちゃったのは残念なんだよ。

 

 私はすぐに爆発の場所まで辿り着いた。やっぱり店の目の前だった。

 

 そこではちょうど上条当麻がステイルの炎剣を右手で打ち消した所だった。

 

 ちょうど私がいるのはステイルの斜め後方だね。爆発の場所を見てうまく回り込めたかも。

 

「い、きなり、なにしやがるんだ! テメェ!」

「……『人払い』の中にアレ以外の人間がいたからヤツの同類かと思って攻撃してみたが、その認識で間違いなかってたようだね」

 

 ステイルは炎剣を再び出現させ、上条当麻の言葉を無視して喋る。ヤツってのは軍覇のことかな?

 

「ヤツの力は僕の魔術を強引に弾き飛ばしていたが、君は僕の魔術を打ち消しているってところか。まったく学園都市(この街)には君たちみたいな化け物しかいないのかい?」

 

 ステイルも随分と余裕だね。やっぱり、同じくほとんどの魔術が効かない軍覇に会っていたからかな?

 

「……魔、術? なにを……」

「? ……ああ、アレから聞いていないのか。僕の攻撃を避けなかったからてっきり知っているのかと思ってたけど。……まあ、知らないならそれでいい」

 

 うんとりあえず機会をうかがうべきかな。今出て行っても仕方がないし、迂闊に動くと上条当麻に『歩く教会』を破壊されかねないんだよ。

 

「インデックスは……なるほど。アレは相当君が心配らしい。じゃあ、ここで君を痛めつければそのうち出てくるかな?」

「ッ!」

 

 うん。前から思ってたけど、ステイルって喧嘩っ早いよね。

 

「一応ここは最低限の敬意を表して我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)と名乗らせてもらうよ。君も大概に油断のならない奴みたいだからね。」

「……?」

「魔法名、といってもわからないだろうね。まあ、君にもわかりやすくいうなら……殺し名かな?」

 

 ステイルは右手で炎剣を横薙ぎに振るう。

 

「ッ!」

 

 上条当麻の右手に触れて炎剣は消し飛んだ。でも、その時にはすでにステイルは次の魔術の詠唱に入っている。

 

世界を構築する五大元素の一つ(MTWOTFFTO)偉大なる始まりの炎よ(IIGOIIOF)

それは生命を育む恵みの光にして(IIBOL)邪悪を罰する裁きの光なり(AIIAOE)

それは穏やかな幸福を満たすと同時(IIMH)冷たき闇を滅する凍える不幸なり(AIIBOD)

その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)!!」

 

 その詠唱で現れたのは炎の巨人。『魔女狩りの王(イノケンティウス)』。ルーンの刻印が刻まれている範囲であればステイルの魔力が尽きない限り何度でもよみがえる魔術。

 

 『魔女狩りの王(イノケンティウス)』が巨大な炎の十字架を上条当麻に振り下ろす。

 

 上条当麻は右手で十字架をを受け止めたけど、今度は打ち消されない。

 

「なッ!?」

灰は灰に(Ash To Ash)

 

 さらにそこに追撃するために、ステイルは詠唱を始めた。

 

 私はその詠唱と同時に走り出す。

 

塵は塵に(DustToDust)

 

 ステイルの両手に炎剣が出現する。

 

 本来なら、こんなことをするつもりはなかったんだよ。何しろ、これは火織の準備ができてからするつもりだったからね。

 

 でも、流石に魔術を知らない一般人に手を出すのを黙って見過ごすわけにはいかないんだよ。

 

 私はそのままステイルに背中から抱きついた。

 

「なっ!?」

 

 ステイルが声を上げる。

 

 そして私は

 

爆散せよ(BTF)!」

 

 『強制詠唱(スペルインターセプト)』でステイルの炎剣を爆破する。

 

「ッ!?」

 

 予想していなかった爆発にステイルの2メートルもある身体が一瞬宙に浮いた。

 

禁書目録(インデックス)反り投げ(スープレックス)!!」

 

 私はその爆発の勢いを利用し、ステイルを真後ろにブリッジをするような形で投げる。

 

「ッ!」

「ぐ、はッ!?」

 

 それでもステイルの巨体を投げきるには勢いとパワーが足りなかった。ブリッジの状態まで行けずに投げの態勢が崩れ、自分の身体ごとステイルを背中から固い床にに叩きつける。

 

 これじゃあ『禁書目録(インデックス)後方投げ(バックドロップ)』かも。ここまで完全に技を失敗すると流石に悔しいんだよ。

 

 それでも、背中から床に叩きつけられたステイルは結構なダメージを受けているみたいだね。

 

 同じく背中を打ち付けた私は『歩く教会』のおかげでノーダメージなんだよ。

 

「インデックス!!」

 

 上条当麻がこっちに向かって叫ぶのが見える。

 

 『魔女狩りの王(イノケンティウス)』はさっきまでいた場所から消えていたんだよ。そしてその代わりに『魔女狩りの王(イノケンティウス)』がいた床に大きな穴が空いている。

 

 おそらく巨大な十字架をなんとか上条当麻が受け流して、流された十字架が地面に直撃して穴を空け、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』はその穴から地下階に落ちたんだろうね。

 

 『魔女狩りの王(イノケンティウス)』は強力な魔術だけど空を飛ぶことはできないはずだし。

 

 『魔女狩りの王(イノケンティウス)』は穴から再びこの階に上がろうとしているのか、巨大な腕が穴から飛び出してくる。

 

 私は上条当麻の近くまでかけよる。

 

「大丈夫?」

「なんとかな」

「『魔女狩りの王(あれ)』とまともに戦うのは時間の無駄だからね。さっさと逃げるんだよ」

 

 

 

 

 デパートの外は平日の昼過ぎってこともあってほとんど人はいなかったんだよ。

 

 いるのは授業の終わりが早かった、小学生くらいだね。

 

 しばらく走って公園に入り、ベンチに座る。

 

「ふう……、とりあえず撒いたかな?」

 

 ステイルはルーンを使った陣地を作ってた戦う魔術師だからね。配置時間を考えれば問題はないかも。

 

「おい、インデックス。さっきのあいつはなんなんだよ?」

 

 上条当麻が聞いてくる。

 

 困ったんだよ。上条当麻を巻き込むつもりはなかったんだけど、結局巻き込んでしまった。

 

「……学園都市の能力者の知り合い、なんて説明じゃ納得しないよね? 個人的にはそれで納得してもらえると助かるんだけど」

「ああ。お前がどんな事情があるかは知らねえし、さっきの奴が言ってた『魔術』なんてのも知らねえよ。でも、説明してくれさえすれば、力になれるかもしれない」

「それは無理なんだよ」

 

 私はすぐにそう返答する。

 

「気持ちは嬉しいんだけどね。今日出会ったばかりのあなたを本格的に巻き込むにはこの問題は大きすぎる」

「お前はあんな初対面で何も言わずに攻撃してくるような奴に狙われてるんだろ? あんな奴に追われてる女の子を見捨てられるわけないだろ」

 

 仕方がない。気は進まないけど、少し説得の方向性を変えようかな。

 

「……はあ。正直に言うとね。協力自体をしてほしくないんだよ。さっきも言ったけど私のこの修道服は異能の力でできているんだよ。その異能の力は言うならば『法王級の(絶対的な)防御力』。私がステイル(あいつ)に攻撃できたのはこれの防御力があってこそなんだよ」

 

 あんまり言いたくはないんだけど言わないといけないね。

 

「あなたの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』はおそらくこの修道服を破壊できる数少ない力の一つ。そんな力の持ち主といっしょにいるのはリスクが高すぎるんだよ」

「そんなもん俺がお前に触らなければ……」

「できると思う?」

 

 これは上条当麻の不幸とかカミジョー属性(ラッキースケベ)だとかそういう問題じゃないんだよ。

 

「例えば私が石に躓いて転びそうになった時に、あなたは思わず右手を伸ばしてしまうことがないって言い切れる? 私の後ろを歩いていたあなたが前に向かって転んで、私の身体のどこかに右手が当たったりしたら? どんな些細なことであっても、私の修道服はあなたの右手が触れただけで破壊されてしまうんだよ」

 

 『歩く教会』は命の危機から身を守るための最大の保険。それを破壊されるのと上条当麻の協力。どちらがいいかと言われれば異能以外も対処できる『歩く教会』の方がいいんだよ。

 

 それに、上条当麻と一緒にいると、その右手の動きに注意を向け続けなくてはならないからね。なんというかすごく疲れるんだよ。

 

「今この場であなたが今日起こったことを全て忘れて(・・・・・)私から離れれば、まだあなたは日常に戻れるんだよ。逆に私が今ここであなたに全てを話してしまえば、あなたは一生こっちの世界(・・・・・・)から逃れられない。そして私はあなたの右手でこの修道服を破壊されるリスクを負うことになる。……どっちがいいかなんてすぐにわかるよね?」

 

 もう、これは一種の警告であり、拒絶なんだよ。ここでなにも聞かない方が上条当麻にも私にもメリットが大きく、聞いてしまった方がデメリットが大きくなるから、関わらないでっていう拒絶。

 

 メリットデメリットで付き合う友達を決めるのは好きじゃないんだけどね。でも、ここでメリットデメリットを引き合いに出さないと、私の頭じゃ説得の言葉は思いつかない。

 

「……本当に大丈夫なんだな?」

「うん。今のところはね」

 

 上条当麻はポケットから携帯を取り出して、上条当麻で登録された電話番号を私に見せながら言う。

 

「わかった。でも、俺の電話番号だけでも覚えといてくれ。俺が力になれることがあるかもしれねえし」

 

 ……私は忘れてって言ったんだけどね。まあ、せっかくの好意だから受け取っておこうかな。

 

「わかったんだよ。ありがとう」

「つーか、このままじゃ覚えられないよな? ノートでも破ってそこに書いておけばいいのか?」

「いや大丈夫だよ。もう覚えたから」

 

 そこで、上条当麻は目を丸くして言う。

 

「まさか、今のだけで覚えたのか? どんな記憶力だよ」

「まあ、記憶力には自信があるからね。……ありすぎて困るくらいには」




 たくヲです。

 天秤にかける回であり、技失敗回。

 なんか、最後の方の上条さんの台詞が傍から見ると新手のナンパみたいに見えそうな感じに……。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。