とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある寮内の瞬間攻防

 私達は河川敷まで移動していた。

 

 あの後、警備員(アンチスキル)が見回りにきたからね。

 

 念のため、火織に魔術を使ってもらって周囲の停空回線(アンダーライン)を一掃してもらった。今までの話した内容はアレイスターに聞かれても問題はなかったけど、この話はアレイスターに聞かれない方がよさそうだからね。

 

「なるほど。たしかにそれならあなたは記憶を消さなくて済みます」

 

 私の話した考えを火織は肯定する。

 

「ですが……これを成功させるには学園都市の人間の力を借りなくてはいけません」

「なにか問題があるのかな?」

「……正直な話。私は学園都市の人間を信用できません」

 

 まあ、そうだね。本人に確認も取れてないし。

 

「信用のできない人間にあなたの身を預けるわけにはいかない。それに、この街の科学者があなたを実験動物にする可能性だってあります」

「……」

「そもそも、私とステイルは貴方がこの町にいること自体をあまり良い事と考えていません。この街は科学サイド()の本拠地。そんなところにあなたを置いていきたくはない」

 

 確かに、火織の言い分ももっともだね。

 

「……私は、この街にずっと住んでいたんだよ。今の私はこの街の外にいた時間よりこの街にいた時間の方が長い。それだけいたら、信じられる相手くらいわかるんだよ。それに今の私が生き残る(記憶を残す)ためにはこの方法が一番確実」

「ですが……」

「それに、もしそんな危ない状況になったら、かおりが助けてくれるんでしょ?」

「……そんなこと当たり前です!」

「なら、何も問題ないね」

 

 あえて言うならアレイスターっていう問題はあるけど、あまり考えたくないかも。

 

 一応この会話は聞かれていないはず、とはいっても学園都市の統括理事長だし何らかの科学技術で見ている可能性も残ってる。

 

魔術で聞いている可能性もあるけど、この場には聖人と禁書目録がいるんだから流石に気づく。いくらアレイスターが優れた魔術師であったとしても、私たちに気が付かれないように発動するのは難しいんだよ。魔力やテレズマを使わずに魔術を発動できるなら無理だけど。

 

「それに、学園都市の人を頼ることになるのはもっと後のことなんだよ。その状況まで辿り着けるかはかおり、あなたにかかってるんだよ」

「インデックス……」

「私もできることをしておくんだよ。だからよろしくね」

 

 そういえば聞き忘れていたことがあるんだよ。

 

「ステイルは私とかおりが友達になったことは知ってるのかな?」

「いえ、ステイルにはまだ言ってません」

「できれば他の人たちにはこのこと……私と友達になったことは秘密にしてほしいんだよ」

「……なぜですか?」

「仲間が多いことに越したことはないけど、この計画を知る人は最小限に抑えたいんだよ。私にこんな魔術を使わせた最大主教(アークビショップ)の耳にこの計画が入ったら間違いなく止められるだろうし」

 

 最悪のパターンは協力者がその組織のトップに粛清されること。だからこそ、協力者は相当な実力者になってもらうしかないんだよ。

 

 ステイルに教えたいのはやまやまだけど、それも難しいね。ステイルは決して弱くはないけど、イギリス清教トップ相手に立ち回れるほどではないからね。教えるとしたらぎりぎりになるんだよ。

 

「それに協力してもらえるように説得するのは私がやるべきことだからね。そもそも、これは私の我儘だから」

 

 この世界的には禁書目録(インデックス)が今回も記憶を消されることを繰り返した方が安全だろうし、不幸になる人も結果として少なくなるからね。

 

 それでも、記憶消去は嫌だから最後まで抵抗するけどね。

 

「それじゃ、かおり。任せたんだよ」

「ええ、まかせてください」

 

 

 

 

 

 私は火織と別れて常盤台中学女子寮まで戻ってきたんだよ。

 

 別れたと言っても、今の時間インデックスの見張りをするのは火織らしいから、いったん別れた火織が遠距離から見ていたはずなんだけどね。

 

 それでも心配だという火織とは、寮の部屋に戻ったら外に向かってライトを用いた合図を送るように約束をしておいたんだよ。まあ、今日だけの話だけどね。

 

 さて、とりあえずオートロックの玄関から寮内に。

 

「随分と遅かったようだな」

「!?」

 

 後ろから声。

 

 私は全速力で振り返る。そこにはメガネの女性。

 

「寮監さんだね?」

 

 参ったんだよ。 

 

「一応お前はVIP待遇ということになっているようだが、寮で寝泊まりしている以上この寮則には従ってもらわねばならん。お前に影響される生徒がでても困る。つまり、わかるな?」

 

 VIP待遇については初耳なんだよ。おそらく操祈がそうやって洗脳したんだろうね。VIP待遇にしてくれたところに操祈の優しさを、私に攻撃できないようにしていないことに操祈が反撃しようとした痕跡を感じるんだよ。

 

 おそらく、私がすぐに寮の門限を破るような人間だと思ってたみたいだね。門限破りは今日が初めてなんだよ。一方通行の時は病院で一夜明かしたし。

 

 一声かけてくれたのは初犯だからなのと、

 

「ごめんなさい」

「許すと思うか?」

「思わないんだよ」

 

 カツカツと歩いてくる寮監さん。

 

 さて、『歩く教会』に関節技? が効くのかは気になるけど。おとなしく倒されるのも性に合わない。それにほぼないと思うけど、気絶中に学園都市の部隊に攻撃される可能性もある。

 

 なにより、部屋に戻って外に合図を送らないと、何かあると思った火織が寮に突撃しそうで怖い。いくらなんでも名門である常盤台中学の学生寮に聖人が突撃するのはあまりにもまずいからね。そうなったら科学と魔術の戦争が起こりかねないんだよ。

 

 こんな時間まで起きていてくれた寮監さんには悪いんだけどね。

 

 寮監さんが私に高速で両手を伸ばす。

 

 それを全力で屈みむことで躱し、両手で脚を掴む。

 

禁書目録(インデックス)双手刈(ダブルレッグ)!」

 

 そのまま両手で両脚を刈って寮監さんを後ろに倒す。

 

 双手刈はあまり派手じゃないから、好きではないけど仕方ないんだよ。まあ、寮監さんレベルの相手じゃないと使えない技だしね。

 

 起き上がろうとする寮監さんに跳びかかり両腕を『歩く教会』の防御力を利用して両手で押さえる。

 

「っく!」

 

 寮監さんは私に頭突きで反撃してくる。

 

 私の頭と寮監さんの頭が激突。しかし『歩く教会』のおかげで私にダメージはないんだよ。

 

禁書目録(インデックス)頭突き(ヘッドバッド)!」

 

 お返しの頭突き(ヘッドバッド)

 

 後ろに床がない分振りかぶることができたから、寮監さんの頭突きより威力は上のそれが寮監さんの頭に直撃する。

 

「っ!?」

「禁書目録《インデックス》!」

 

 寮監さんの腰の横の地面についていた膝を浮かせる。

 

 寮監さんの腕を封じたまま両足で地面を蹴って下半身を浮かす。

 

「変則両膝落とし(ダブルニー)!!」

 

 寮監さんのお腹に膝を落とす。というより正座を落とす。

 

「が、はっ!?」

 

 ……よし、なんとか意識を飛ばせたみたいだね。

 

 耐久力はあんまりなかったみたいで助かったんだよ。

 

 

 

 

 私はその後部屋の窓から外にライトを使って合図を送ってから、気を失った寮監さんの所に戻った。

 

 とりあえず気絶した寮監さんを肩に担いで、寮内にある寮監さんの部屋まで歩く。

 

 持ち上げるまでは一苦労だけど、肩に担ぐことさえできれば歩くことは簡単だった。

 

 少し説明しておくと『歩く教会』はさまざまな状況に対応できるけど重いものを持ち上げるのには向いていないんだよ。

 『歩く教会』の防御力で重さは感じないけどそれ自体の重さを消しているわけじゃないからね。抱きついたりして押さえつける力は強いけど、巨大な物を受け止めたりすることにはむいてないし、迫ってくる壁をおしとどめたりもできない。自動車が突っ込んで来たら吹っ飛ばされるし、ベルトコンベアの流れには逆らえない。ダメージは全部消せるんだけどね。

 

 つまりは自分よりも小さいものから少し大きいくらい相手であれば聖人であっても押さえつけられるけど、自分より大きすぎる物や高速移動するものなんかには弱いんだよ。

 

 これはまだ推測だけど超能力者(レベル5)の第四位である麦野沈利や、第二位垣根帝督あたりは、『歩く教会』にとっては天敵だろうね。

 

 麦野は押さえつけても能力『原子崩し(メルトダウナー)』で吹っ飛ばされるだろうし、能力上近づくことすら困難だから無理。

 

 垣根は能力『未元物質(ダークマター)』空を飛んでいるせいで押さえつけるところまでいけない上に、押さえつけられたとしても『未元物質(ダークマター)』ですぐに引きはがせる。それどころか『未元物質(ダークマター)』がこの世に存在しない物質である以上、『歩く教会』を貫通する可能性すらあり得るもんね。

 

 ちなみに一方通行に関しては勝つことは不可能だね。実験の時は魔術攻撃で『反射』を貫通させてひるませてから、何かを考えさせる前に全力で説得して戦いを続けさせなかったから助かっただけ。実際にあの後続けていれば『歩く教会』を破壊されていた可能性もある。

 

「さて、どうしようかな?」

 

 とりあえず、部屋に置いてあったベッドに寝かせたけど……。

 

 気絶したっていうのは本来かなりマズイ状態のはずなんだよね。あっちから手を出してくる不良ならともかく、今回は100%私が悪いからね。

 

「ん?」

 

 寮監さんの顔を覗きこんだ私の頭に手がそえられる。

 

 ふむ。なるほど、どうやら起きていたようだね。

 

 本来の動きのキレもないし、意識が戻った瞬間に目の前に私がいたから無意識に攻撃したのかな?

 

 寮監さんの両手首を掴んで頭の上で固定して、呼びかける。

 

「もしもし、寮監さん。気分はどう?」

「……最悪だな」

「まあ、ほぼ無意識とはいっても攻撃できるくらいだし、問題はなさそうかな?」

 

 うーん。それじゃあ、最低限の償いってことで朝まで面倒は見ないといけないかも。

 

「寮監さんは寝てていいんだよ。あとのことは私に任せて」

「おい、この手はなんだ?」

 

 『歩く教会』の防御力を利用して寮監さんの両手首を抑えている左手のことかな?

 

「だって、こうしないと攻撃してくるでしょ?」

「……」

「今日は私が悪かったのは私だから。こんな状態で言うのもなんだけど、もう一度だけ謝らせてもらうんだよ。ごめんなさい。お詫びとしてとりあえず朝まで看病? するんだよ。気絶したわけだし、せめて朝まで安静にするべきかも」

 

 まあ、気絶させた本人が言う台詞じゃないけどね。




 たくヲです。

 相談と一瞬の攻防。

 作中の憑依インデックスは双手刈はあまり好きじゃない様子ですが、私は結構好きな技です。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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