とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある深夜の魔術会議

「わかった?」

「さっぱりわからん」

 

 まあ、そうなるよね。

 

 軍覇に魔術について、火織とステイルについて、そして私の所属について説明したけど、やはり理解はできていないみたいだね。

 

 念のため私の頭にある『十万三千冊の魔導書の知識』については言わなかったんだよ。正直、ここまで説明しちゃったら今更隠す意味もあまりないかも、とは思うけどね。

 

「要するに、あの二人は学園都市の超能力とは別の力を使っているってことだね」

「で、オマエはあの二人に追われている、ってわけだな」

「その認識で問題はないね。一応、火織……女剣士の方とは和解したから今の所注意する必要はないんだよ」

 

 火織は私の感情をぶつけて説得できたけど、ステイルに対しては私の感情をぶつけても説得はできないかも。

 

 ステイルは私を攻撃する方法が(インデックス)の苦しみを和らげる唯一の方法だと思っているはずだし、原作でも上条当麻によるぎりぎりの説得でどうにかってところだったからね。私では力不足なんだよ。

 

「ぐんは」

「なんだ?」

「とりあえず、今日のことは他の人に言ったりはしないでね。こんな問題にできれば関わらせたくないし、さっきも言ったけどあなたにも関わらせたくなかったんだよ。……もう手遅れだけどね」

 

 学園都市の統括理事長アレイスター=クロウリーは停空回線(アンダーライン)というナノサイズ機械を学園都市中にばらまいて情報を集めているっていうし、この会話も聞かれているだろうね。

 

 軍覇が魔術について詳しく知らないままであれば、この後も普通の生活に戻れた可能性は高い。でも、ここまで知ってしまえば、あとはアレイスター次第ってところかな?

 

 アレイスターが最強の原石(天然能力者)の軍覇を貴重な存在と見るかどうか。おそらく、アレイスターのプランには必要のない存在だろうから難しいんだよ。それに何らかの計画に組み込む際のイレギュラーさは上条当麻を上回りかねないから、学園都市から切り捨てられる可能性も高いかも。

 

 仮に軍覇が学園都市から逃げられたとしても、学園都市の恩恵を受けられなくなると、天然能力者を欲しがる学園都市の敵対科学組織から狙われることになるだろうね。

 

 軍覇がそういう未来を予測して私に手を貸してくれたとは思えないけどね。私が助かったらその時にはそれ相応のお礼をしないといけないかも。アフターケアは大切なんだよ。

 

「おいおい、まだそんなこと……」

「だけど、私は助けてくれるとなったら遠慮しないんだよ。全力であなたを頼る。その代わりあなたが困った時はあなたを全力で助けるんだよ。だから、今はよろしくお願いするんだよ」

「おう、任せとけ!」

 

 

 

 

 

 深夜1時。

 

 私は常盤台中学女子寮の前で一人待っていた。

 

 軍覇には襲撃には気を付けるようにと忠告をして帰ってもらったんだよ。軍覇がいる状態だと火織は戦闘モードに入っちゃう可能性があるからね。

 

「よく来たね。かおり」

 

 ステイルは連れてきてないみたいで、助かったんだよ。……まあ連れてきていたらいたで、問題はなかったけどね。

 

「インデックス。いったい、何の用があったのですか?」

「ちょっと気になることがあってね。おそらく当事者である火織に聞かなきゃわからないって思ったから。ちょっと聞かせてもらうね」

「いいですよ」

「いきなり話し始めるのもなんだから前置きから入るね。まず、私がこの町に入ったのは魔術結社やあなたたちの攻撃から逃れるためだったんだけどね。時間ができたから図書館とかで、調べ物をしたりしたこともあるんだよ」

 

 学園都市では拍子抜けなほどに時間ができたからね。

 

「私は去年の8月から記憶喪失だったから脳関係の本はけっこう読んだんだよ」

「そう、ですか」

「で、実際のところはどうなのかな? かおり。私の記憶を消したのはたぶんあなたたちだと思うけど、どうしてその方法をとらざるを得なかったのかな?」

 

 それを聞いて少し火織は黙る。理由自体は知っているけど、これを聞いておかないとつじつまが合わないからね。それに、私の知っている展開とは違う可能性もあるし。

 

「……インデックス。あなたの持つ完全記憶能力は見た物を忘れることなく記憶できる体質のことというのはわかっていますね」

「うん」

「あなたの脳は見た者全てを忘れることができない。さらにあなたは十万三千冊の魔導書の中身を一字一句余すことなくを記憶してしまった。」

「その通りだね」

「そのために、人間の覚えられる記憶の容量100%の内、貴方の脳の85%は十万三千冊の魔導書によって占められてしまった。さらに、貴方が一年で見たものが15%。これによってあなたの脳は一年周期で記憶を消さなくてはパンクしてしまいます。だから私たちは」

「なるほど」

 

 それじゃ一つ聞かないといけないことがあるんだよ。

 

「えーと、火織。足し算はできる?」

「……インデックス。馬鹿にしているんですか?」

「1年で15%。じゃあ2年なら?」

「……30%ですね」

「そうだね。じゃあ、3年で45%。面倒だから飛ばすけど、6年で90%。1年は12か月だから、4か月で5%ってことになるね?」

「インデックス? いったい何を言いたいんですか?」

「つまり完全記憶能力の人の寿命は6年と8か月ってことになるわけだけど。……私が魔導書の知識を覚えて、魔術と関わったのは何歳だったのかな?」

「! ……まさか」

「そもそも、完全記憶能力の研究自体は学園都市の外でも行われていたようだけど。脳がパンクして死ぬという事例は私が見た資料の中じゃ見つからなかったんだよ。ましてや完全記憶能力者が酷く短命だなんてこともない。嘘だって思うのであれば私の監視が終わり次第学園都市外の図書館を探してみて」

 

 うん。なんか絶望的というかなんというか。そんな顔だね。

 

 私は『歩く教会』の中の肩掛けバックから紙の束を取り出す。

 

「念のため資料はプリントアウトしてもらったんだよ。とりあえずあなたが持っていてね」

「え、あ、はい。でも、貴方は記憶を消す時あんなに苦しんで……」

「そう、そこなんだよ。あなたたちが私の記憶を消したと推測した時、私には疑問だった。どうして、あなたたちが記憶を消すことに疑問を持たなかったのか? 調べれば分かる完全記憶能力を調べることなく、私を追いかけて攻撃をするのか? ってね。だとすれば、記憶を消さなくてはならない切羽詰まった何かがあったとしか私には考えられなかった」

 

 もうちょっと頭が良ければ思いつくかもしれないけど、事情を知っている私にはそれ以外思いつかなかったんだよ。

 

「じゃあ、なんで完全記憶能力によって記憶し過ぎて苦しむなんていう事態になるはずもないのに、前の禁書目録()はそこまでの苦しみを味わったのかな?」

 

 火織は答えない。

 

 

「とりあえず、何も言わずにこれを見てほしいんだよ」

 

 私は火織に近づいて口を大きく開け、とってきたライトで口内を照らす。

 

「?」

「ほいほほほーほほほ?」

「……!? これは!?」

 

 どうやら、わかったみたいだね? 

 

 私は口を閉じてライトを消す。

 

「私には魔術がかけられている」

 

 私が火織に見せたのは口内にある魔法陣。

 

「そん、な。……いえ、そんなことがあるわけがない。第一あなたは『歩く教会』を着ている! 外部からの魔力供給はできないはずです!」

「そうだね。確かに外部からの魔力供給は不可能なんだよ。でも内部からなら?」

「え?」 

「かけられている。っていう言い方には語弊があったね。厳密には私は自分自身に魔術を使い続けているんだよ」

 

 おそらく禁書目録(インデックス)自身が原作で口内の魔法陣に気づいていなかったのは、自分は魔術を使えないっていう誤った知識と思い込みのせいだろうね。

 

 他人が見ても『歩く教会』の魔力に紛れて、その魔術に気が付くことはない。『歩く教会』が破壊されたとしても、『歩く教会』の魔力の残滓としか思わないかも。

 

「私の魔力はおそらく全てこの魔術の維持に使われている。私が魔術を使えないのはこれせいだろうね」

「ですが、そんなこと一体誰が!」

「私の記憶を消すようにあなたに命令をしたのは誰だった?」

「……最大主教(アークビショップ)! あのクソ女は余計なことを。イギリスに戻ったらただじゃ」

「かおり。口調」

 

 火織は私の言葉に反応をして、顔を赤くして姿勢を正す。

 

「し、失礼しました。つい」

「いやいいんだよ。でも、せっかく友達になれたんだから私の前では素の状態でもいいんだよ?」

「あ、い、いえ。あれはけっして素とかそういうものでは」

「いや、いいよ、いいよ。別に自分を偽ったりしなくても。私は口調なんて気にしないし。口が悪い系の女の子もそれはそれで需要はあるからね」

「な、何の話ですか!?」

 

 話が完全に脱線してるね。

 

 私は右手を『歩く教会』の中に引っ込めて中の肩掛けバックからデジタルカメラを取り出す。

 

「はい、これ」

「え?」

「それで、私の口の中の魔法陣を撮って欲しいんだよ」

 

 私はもう一度口を大きく開いて、口内をライトで照らしながら言う。

 

「え、ええ。わかりました」

「ひはひほへはひ」

「なに言ってるのかわかりませんよ!?」

 

 口を開いたまま言ってるから仕方ないね。

 

 ぱしゃりと音を立てて写真がとられた。

 

 まあ、一枚でもいいかな? できればもう一枚欲しいけど。

 

「ありがとう。これでやっと自分で確認できるんだよ」

「今まで確認してなかったんですか?」

「自分一人だと手が足りないし、学園都市の人に魔術を見せるのもあまりよくないからね」

 

 実際に一度試してみたけど、フラッシュが眩しすぎたのか魔法陣がほとんど見えなかったんだよ。

 

 カメラを受け取り画像を見る。私の『魔術や魔法の知識を見ることで解析、追加していく能力』によって解析は完了した。

 

 魔法陣の実物を見なくても能力が発動するのは、漫画やアニメを見た時に発動したことで証明されているからね。

 

「なるほどね」

「なにかわかりましたか」

「やっぱり、これは私の魔力を使って発動する魔術のようだね。いざという時に自分の身体を自動で動かす『自動書記(ヨハネのペン)』と、私自身の身体に魔術的な不可をかける術式。こっちは照合不可だから術式名はわからないんだよ。ご丁寧にイギリス清教の十字架を持つ者以外の『脳に干渉する魔術』に対しては『自動書記(ヨハネのペン)』で迎撃する術式まであるね。私をイギリス清教に縛るための魔術。ここは『首輪』と名付けるべきかな」

 

 実際にこの術式名は『首輪』というらしいけど、いつまでもこの魔術だの、あの魔術だの、口内の魔法陣だのって口に出すのは面倒だからね。

 

「ならこの魔法陣を消すことさえできれば、もう記憶を消す必要はなくなる、というわけですね?」

「消すことさえできれば、ね。問題は『首輪』に使われているのは私の魔力であるってこと。下手に消そうとすれば『自動書記(ヨハネのペン)』によって自動で迎撃される。『自動書記(ヨハネのペン)』が発動してしまえば、一時的とはいえ十万三千冊の知識を私の魔力でフル活用して戦う魔神の誕生だから、あまり焦らない方がいいかも」

「なら……どうすればいいんですか」

「安心して」

 

 原作で上条当麻の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を使って『首輪』を破壊していた。でも、あれは記憶消去のリミット直前で切羽詰まっていたから起こした行動だったからね。

 

 今回は違う。

 

 今回はまだ時間はたっぷりある。

 

「私にいい考えがあるんだよ」




 たくヲです。

 魔術師同士の会議回。

 タイムリミットまで、約四か月半。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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