突然現れたのは削板軍覇。
軍覇は私の目の前に、ステイルの炎を防ぐように落ちてきたんだよ。
どうやって三千度の炎を防いだのかとか、どうして『
「おい、インデックス大丈夫か?」
「……うん、けがはないんだよ」
さて、この状況をどうしようかな。
突然の乱入者を前にして、ステイルは警戒を強めているし、神裂も再び七閃を使えるように構えてしまったんだよ。
これじゃあ、説得どころの騒ぎじゃないね。
「そっちの赤髪神父を任せてもいいかな」
ステイルに聞こえないくらいの声で言う。聖人の神裂には聞こえているかもしれないけど仕方ないんだよ。
「お前は?」
「あっちの女の人をどうにかするんだよ」
ステイル達の方を向いたまま聞き返してきた軍覇にこたえる。
「……君が何者かは知らないけど、どいてくれると助かるかな」
ステイルが言う。
「見た所、君は学園都市の人間だろう? これは
「部外者?」
軍覇の周りの空気がわかりやすく変わる。
「そいつは聞き捨てならねえな」
薄く赤や青といった色が付いた空気が軍覇に集まっていくように見えるんだよ。
「確かに部外者を巻き込まないってのは根性がある言葉だ。確かにオマエらが何者かなんて俺は知らねえし、インデックスにどういう問題があるかなんてのも知らねえ」
……これはちょっとまずいんじゃないかな?
「だけどな、俺はインデックスの友達だ。その友達に集団で暴力を振るうような奴もそれを見逃すようなことをするのも、根性無し以下だ」
その言葉はうれしいけどこの流れは……。
「だからオマエらに見せてやる。助けを求める友達のために命を賭けられる、本当に根性のってヤツを!!」
その瞬間、私の身体は宙に浮いていた。
回転しながらわずかに見えたのは、カラフルな爆発。
ドカッっと建物の屋上に落ちた私は周りを見渡す。右の方、すぐ近くからカラフルな煙が立ち上っているということはすぐ路地のすぐ横の建物に落下したので間違いはないね。
軍覇は私の『歩く教会』の正体はともかく、それの持つ圧倒的な防御力を知っていた。
それを知っていて私を逃がすために爆発を起こしたんだろうね。
「……でも、そう簡単にはいかないよね」
建物の下から高く跳び上がった影がチラリと視界に映る。
身体能力が高い神裂火織が私を追いかけてきたって所かな。
今回は、これからのためにも二人のためにもここで友達に戻る……いや、友達になるのが理想だった。
別にそれをあきらめたわけじゃない。でも私の命を狙ったことに変わりはないし、ちょうどいいタイミングだしケジメはつけないとね。
空を見上げて神裂の落下位置をある程度予測し、一歩踏み出す。異様に高く跳んでいるのは吹っ飛ばされた私を探す意図もあったんだろうね。
狙うのは着地の瞬間。
「
「インデッぐ!?」
私は着地した瞬間の神裂の腹部に、頭から低い姿勢で体当たりした。
着地した瞬間にぶつかったためか、簡単に後ろによろける。
神裂の後頭部に脇を通して背中から右手を回し頭を守りつつ、左腕を使って神裂の右腕を封じるように抱きしめ、そのまま押し倒した。
「ぐぅッ!! 」
背中を屋上の床に叩きつけられて神裂がうめく。
流石にこの程度じゃ意識は奪えないよね。
後方から爆発音。
軍覇がステイルの足止めをしてくれているんだろうね。
なら私は私のやるべきことをやらないといけないんだよ。
「……かおり」
私はそのまま神裂に話しかける。
『歩く教会』の防御力で抑えているから神裂の右腕は使えない。
「……い、インデックス。あなたは、まさか本当に私たちのことを……」
……困ったことにこの状態じゃ神裂の顔が見れないから、ちょっと上にずれないとね。何のせいで見えないのかは言わないけど。
「残念だけど、覚えてはいないんだよ」
身体をずらしながら私は正直にそう答える。
「ん……そう、ですか」
「私は何も覚えていないんだよ。イギリスでどんなふうに暮していたのかも、いつ私がイギリス清教のシスターになったのかも、
そのことを私は覚えてないし知らない。知っているのは……持っているのは知識だけなんだよ。
「でもね。あなたたちが昔友達だったことは知ってたし、私を襲うときに心を痛めていることは最初に……
「……」
「あなたたちが私を狙うのも。私が日本にいたのも。全部、私が何も覚えていないのが原因なんだよね?」
神裂火織は何も言わない。
「私はあなたたちのことを覚えていない。だから、あなたたちの友達だった禁書目録はもういないんだよ」
「……ッ!」
「だからね」
私は火織の顔を見て、笑っていう。
「今の私と友達になって欲しいんだよ」
いつの間にか音は消えていた。静かになった屋上で私は目の前の火織を見る。
その顔は少し歪んで見える。
「……駄目、です」
火織の口から出たのはそんな言葉。
「私は、あなたを攻撃したんです……。 そんな私が今更友達になる資格なんて……」
「資格なんかいらないんだよ」
私は確かに火織たちに攻撃された。
それでも、彼女たちが
「友達に資格なんていらないし、必要ない。確かにあなたたちは私を攻撃したけど、それを言ったら私だってあなたに攻撃をしたんだよ」
私はこの町に来て敵対していた人達が友達になる姿を見てきた。殺そうとした相手を今度は助けるために
今から思えば自分もそうなりたい、っていう憧れがあったのかも。
「過去に何があったのかなんてわからない。今の私はあなたと友達になりたいだけなんだよ。あなたは私をどうしたいの?」
「私は……あなたと、もう一度」
火織は震えた声で言った。
「……インデックス。……あなたはこんなことをした私と、もう一度友達になってくれますか?」
「もちろんなんだよ」
後ろの方から何かが落ちてきたようなズドンという音。
首だけで後ろを確認すると、そこには軍覇と気絶してその肩に担がれたステイルがいたんだよ。
流石の天才魔術師ステイル=マグヌスも学園都市のレベル5の中でも屈指の実力者である軍覇には勝てなかったっぽいね。
「終わったのか?」
「うーん。終わったというか、始まったというか微妙な所だね」
「なんだそりゃ?」
火織は軍覇が来た時点でもう泣き止んでいて、普通に立って、何かを考えている。
「おい、そこのオマエ! こいつはどうするんだ?」
軍覇は肩に担いだステイルを地面におろしながら言う。
「……私が連れて帰ります」
火織がそう言ってステイルに近づく。
「おいおい、コイツは結構重いぞ? 少なくとも女子供に持てるようなもんじゃねえだろ」
「いえ、無用な心配です」
火織がステイルを軽々と肩に担ぐ。
「ああ、そうだ」
なんか、火織がいったん離れる感じだから、一つ言わなきゃならないんだよ。
私が火織に近づくと、火織は私に合わせてかちょっとかがむ。
私は火織の耳に口を近づけ一言。
「今夜12時、学園都市第七学区の常盤台中学女子寮前で待ってるんだよ」
そう囁く。
「じゃ、かおり。またね」
「! ……ええ、また会いましょう」
そう言うと火織は建物の屋上から屋上へと飛び移りながら行ってしまった。
「あのジャンプ力。あの女もすげえ根性だな」
「怪我してない?」
「問題ねぇよ」
「それならよかったんだよ」
困ったんだよ。なんとか火織と友達になれたのはいいけど、軍覇を巻き込んでしまった。
それに、禁書目録狙いではなかったとはいえ、一方通行も魔術の問題に巻き込んじゃったし。冷静に考えれば、スキルアウトのみんなも巻き込んでるし。
スキルアウトのみんなは魔術関連のことを全く聞いてこないから、まだ大丈夫だとは思うけど……。
「ぐんは」
「なんだ?」
「巻き込んじゃってごめんね。そして、助けてくれてありがとう」
「こっちが勝手に巻き込まれただけだ。気にすんな」
同じく一方通行も魔術については知らないから、ある程度は大丈夫……だと思う。
「ここまで巻き込んでおいて、こんなことを言うのもあれなんだけど。ぐんはには
スキルアウトのみんなはあれから魔術師関連に巻き込まれた様子はなかった。原作の上条当麻みたいに
でも、一方通行や、削板軍覇は学園都市《科学サイド》の柱ともいえる
特に今回軍覇が関わったのはイギリス清教の『
「この問題に関わるとぐんはの身が危なくなるかもしれないんだよ。この問題はこの学園都市とその敵に深くかかわるものだからね。最悪、学園都市のそのものを敵に回す可能性だってある。だから、私はもうあなたとは合わない方がいいかも」
「おいインデックス」
「なに? いてっ!?」
上から殴られた。
「この俺が友達を見捨てるような根性無しだとでも思ったのか?
「まあ、そう言うと思ってたんだよ」
軍覇だからね。
「確かにあなたは強いし大抵の相手には勝てるかもしれない。あなたが協力してくれるなら心強いし、この問題もどうにかなるかもしれない。それでも、私はあなたのことが心配なんだよ」
ステイルが倒せたとしてもその後ろにいる『
「わかってねえな、インデックス」
「どういうこと?」
「心配だの、身の危険だの言ってるが、結局そんなもんは根性でどうにかなる」
「根性……」
「それに本当に根性のあるやつってのは、絶対に友達を見捨てたりしねえ。オマエを見捨てたら俺は俺自身が根性無しだって認めることになる。結局、お前を助けるかどうかってのは俺の問題なんだよ」
うすうす感じてはいたけど、軍覇を説得するのに私じゃ力不足みたいだね。
「……うん。それなら、仕方がない、ね」
たくヲです。
着地硬直時狙いは基本、回。
最近、投稿する場所を間違える気がします……。お騒がせして申し訳ございません。
これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。