とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある決闘の内臓潰し

「ふむ……黒妻綿流か」

 

 私と浜面仕上は食事をした後、第七学区の武装無能力者集団(スキルアウト)の本拠地で、駒場利徳と戻ってきていた半蔵と話していた。

 

 理由はもちろん、さっき郭ちゃんに聞いた情報を利徳に伝えるためだね。

 

「久しぶりに聞く名だ……」

「知っているのか? リーダー?」

 

 仕上がどこかで聞いたことがあるような台詞を言う。

 

「ああ……直接会ったことはないがな」

「2年前、ビッグスパイダーとか言うそれなりに有名なスキルアウトがあってな黒妻はそこをまとめてた。浜面やインデックスは知らなくてもおかしくはないけどな」

「どういうこと?」

「奴は2年前から行方不明でな……。まさか捕まっていたとは思わなかったが」

 

 やっぱり聞いたことがない。そんなに有名人なら私は原作知識で知ってそうな物なんだけどね。

 

「で、どうするの?」

「どういうことだ? インデックス」

「その黒妻綿流を引き入れるのか、それとも放っとくのか、だよ。今の今までアンチスキルに捕まってたっていた

ってことは、かなり衰えてるんじゃないかな?」

「いや、郭ちゃん曰く模範囚らしいし、以外と鍛えているかもしれねえぞ?」

「しあげ。模範囚だからこそ、捕まっている間に喧嘩もしてないだろうし、実戦勘は鈍ってると思うんだよ」

 

 でも有名な人なら引き入れるだけでもメンバーを増やせるだろうし、利徳が実行しているスキルアウト統一に近づけるとは思うけどね。

 

「まあ、引き入れるのは確定だな。黒妻がまとめていたスキルアウト、ビッグスパイダーは猛者揃い。簡単にはいかねえだろうけどな」

 

 

 

 

 その後、私と利徳は横須賀を呼び出して、黒妻綿流捜索に乗り出した。

 

「とは言ったもののどうするのかな? この広い学園都市で、たった一人を探すのは至難のわざだよ?」

「おいおい、インデックス。何のためにこの内臓潰しの横須賀サマが来てやったと思ってるんだ?」

「なんでだ……?」

 

 利徳が聞き返す。

 

「おい! お前らまさか何も考えずに俺を呼んだのか!?」

「うん」

 

 それを聞いてギャグ漫画のようにずっこける横須賀。アレって痛くないのかな?

 

「はあ……。なにを隠そうこの俺はな。黒妻綿流とは何度か喧嘩したことがある」

「何戦何勝?」

「……8戦1勝」

 

 それは……。なんというか相当な猛者だね。

 

「とにかく! あいつの行きそうなところは、一つだけ心当たりがある」

「……それはどこだ」

「ほらあそこだ」

 

 ムサシノ牛乳の直売所?

 

「黒妻綿流といえばムサシノ牛乳だ。あいつは喧嘩する前にいつもあれを飲んでいる。喧嘩の時のすさまじい強さを見てムサシノ牛乳にドーピング効果でもあるのかと思ったほどだ」

「で、どうするの? 待ち伏せするのかな?」

「そうなるな」

 

 このまま、取引現場の情報を得た張り込み警察よろしく待ち伏せるのはいいけど、今はまだ三月。建物の陰に隠れているのはまだ少し寒いんじゃないかな?

 

 ふむ。

 

「ちょっと、直売所の中でなんか買ってくるね。あったかいカフェオレ的なのが売っているかも」

「俺も、行こうか?」

「いや、二人は待ってて」

 

 身体が大きい二人は目立つからね。

 

 

 お店の中に入ると先客が一人。皮ジャンの男が中にあるベンチに座って牛乳を飲んでいた。

 

 ってあれ?

 

「思いだした」

 

 この人は……まさか。

 

「黒妻、綿流」

「ああん? なんだ、お前俺のことを知ってんのか?」

 

 そうだ、この人は黒妻綿流。アニメの『超電磁砲』に出てた人だ。

 

 どうして忘れていたんだろう? あんな私好みのエピソードを忘れるはずがないのに。『絶対能力(レベル6)進化(シフト)』計画の始まる時期について忘れていたこととなにか関係があるのかな? 私は『禁書目録』の新約7巻までしか持っていなかったはず(・・)で、『超電磁砲』のマンガは一巻も持っていなかったけどアニメ一期は全部みたはず(・・)。なによりこの記憶が間違っているとも思えないんだよ。

 

 とはいえ、こんなことについて今考えても仕方がないし、目の前のことに集中するんだよ。

 

「うん。有名人だからね」

「おいおい、あれから2年たったってのにまだ覚えてるやつがいんのか?」

 

 二人を待たせるのも悪いから何か買っていかないと。

 

 幸いバイトのお金もあるしね。

 

「ちょっと注文してくるまで待ってもらっていいかな?」

「まあ、せっかく俺を知ってるやつに会えたんだ。いいぜ」

 

 うん黒妻にも同意をもらったし、行こうか。仮に逃げても張り込んでる二人が何とかするだろうし。

 

「ということでおばさん。なんか温かい物ないかな?」

「特製カフェオレなんてどうだい?」

「じゃあそれ三つ」

「はいよ」

 

 すぐに実物が出てくるよくわからない容器に入ったカフェオレが三つでてくる。私が持てそうにないのを見越してか、袋に入れてくれた。

 

 なお学園都市の袋はただのビニール袋ではなく環境に配慮したものらしい。

 

「待たせてごめんね。じゃあ表にでようか?」

「俺の名前知ってるって聞いた時からわかってたけど、やっぱりか」

「外には私の友達が二人いるんだよ。まあ、不意打ちとかはしないから安心してね」

 

 

 外に出ると利徳と横須賀が飛び出してきた。

 

「お前は黒妻!!」

「女を人質にとるとは……!」

「ストップ!」

 

 なにやら勘違いしているようなので止めておかないとね。

 

「とりあえず二人はこれでも飲んで落ち着いてね」

 

 さっき買った謎容器に入ったあったかいカフェオレを二人に投げ渡す。

 

「さて、三人ともあっちの河川敷まで行こうか?」

 

 

 

 

 以前、利徳と横須賀が喧嘩した第七学区の河川敷まできたんだよ。

 

 ここまで、ほぼ無言。ピリピリとした雰囲気だった。

 

 なお、カフェオレはここに来るまでに全部飲みきってしまったんだよ。

 

 私の視界の中では横須賀と黒妻が対峙している。もはや伝統ともいえる一対一の決闘をするからだね。

 

 この決闘で横須賀が負けたら私たちはもう黒妻とその周囲に関わらない。もし横須賀が勝てば黒妻は利徳の仲間になる。ということで二人とも利徳を含めれば三人とも同意した。

 

 ルールとしては武器なしのタイマン。

 

 こういう場合は一応リーダーである利徳が決闘をするべきなんだろうけど、横須賀の要望でこうなったんだよ。

 

 横須賀曰く「駒場が行くまでもない。それに俺は奴への借りを返す」だそうだ。

 

「黒妻。 俺の顔を忘れたとは言わせんぞ」

「誰だ?」

「ふっ。一度倒した者の名は覚えてはいないか」

 

 前にあった時から最低2年過ぎてるはずだし仕方がないと言えば仕方がないけどね。

 

「なら、もう一度だけ名乗ろう。俺は内臓潰しの横須賀。2年前の借りを返させてもらうぞ」

 

 そう言って横須賀が構える。それを見てか薄く笑って黒妻が構えた。

 

 

 最初に動いたのは横須賀。

 

 両腕を顔の前に構え、前傾姿勢で黒妻に向かって突っ込んでいく。

 

 その巨体に見合わない高速の突進。

 

 その勢いを維持したまま右拳でのボディブローを狙う。

 

「ッ!」

 

 黒妻は右拳のさらに外側、横須賀の右側に攻撃を避けつつ右拳を振るっていた。

 

 カウンターで横須賀の顔面に拳が衝突する。

 

 でも

 

「そんなもんか?」

 

 横須賀は全くひるまず、その場で回転するように左拳を振るう。

 

 横須賀の肝臓打ち(リバーブロー)が黒妻の右脇腹に突き刺さる。

 

 黒妻の身体が宙に浮き、大きく吹き飛ばされる。

 

 流石だね。

 

 2か月前の時点で横須賀は軍覇のすごいパーンチを12発まで受けられるだけの体力を持っていたからこそ、黒妻のカウンターを耐えられたのかも。もちろん横須賀もノーダメージとはいかないかったみたいだけどね。

 

 黒妻が右脇腹を抑えながら立ち上がる。

 

「まだ、立てるか」

「もうちっと、気合い入れて、かかってこねえと、俺は倒せねえぞ!!」

 

 黒妻が横須賀に突っ込んでいく。

 

 横須賀はその場で両拳を顔の前で構え、突っ込んでくる黒妻を見据える。

 

 黒妻はそのまま殴りかかる。狙いはボディ。

 

 両拳のガードのない横須賀のボディに右のストレートを叩きつけようとする。

 

 その右拳が届くよりも先に、黒妻の顔面に横須賀の右(ジャブ)が突き刺さる。

 

 黒妻の足が止まる。ストレートを放った右腕は伸びきっていた。結果、右半身はノーガードになる。

 

 そこに、横須賀の肝臓打ち(リバーブロー)が再び突き刺さる。

 

 衝撃が黒妻の背中にまで走り抜けたような錯覚。バキバキという何かが折れる音。

 

「……勝負あり、だな」

 

 利徳がそう呟くのと黒妻が倒れるのはほぼ同じだったんだよ。

 

 さて、とりあえず病院に運ばないとね。

 

 

 

 

「ヤンチャをするのは若者の特権とはいえ、君たちはもう少し加減を知るべきだと思うね?」

「申し訳ないんだよ」

「「……」」

 

 私と利徳と横須賀は第七学区の病院でカエルのお医者さんに説教を受けていた。

 

「君たちの連れてきたあの少年。肋骨が何本か折れていたよ。命には問題はないけど、普通なら全治1、2か月って所だね?」

「普通の話が聞きたいわけじゃないんだよ。あなたの所でなら何日で退院できるのかな」

「三日、だね」

 

 ……流石は死んでさえいなければどんな人でも治せると評判の『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』だね。

 

「それならいいんだよ」

「そこの彼、横須賀くんだったね? 君もそうだけどもう少し体を大切にしたほうがいいね」

 

 顔に包帯を巻いた横須賀がうつむく。黒妻に殴られた時のダメージが効いてきたのか、腫れてきてしまったからついでに処置してもらったんだよ。

 

「君たちの気持ちも解らなくもないけど、能力がないならないでできることはいっぱいあるものだよ?」

「……耳が痛い話だな」

「まあ、そうかもしれないんだよ。でも、やっぱり誰かが動かなくちゃいけないことだってあるかも」

「というと?」

「学園都市の平和は結局、表面的なものってことだね。無能力者を見下して攻撃する能力者も多いし、能力者に逆恨みして攻撃する無能力者だっているんだよ。前者は私たちがどう頑張ってもなくならないし、それを知ったところで学園都市の上層部は何もしないだろうけどね」

 

 悲しいことだけどね。

 

「でも後者なら止められる。能力者を無差別に襲うような無能力者を止めることはきっと、無能力者にしかできないことなんだよ。それに」

 

 そこで私は一度言葉を止める。

 

「大人たちが動かないのなら子供が動くしかないんだよ」

「……君たちの決意は固いようだね」

 

 まじめな調子でカエルのお医者さんは言う。

 

「ならもう止めない。だけど、患者がいるときは生きているうちに連れてくるようにたのむよ。流石に死んだ人間までは治せないからね?」

「ありがとう」

 

 どうやら認めてくれたみたいなんだよ。まあこの人はこの町の悪いところをたくさん見てきたはずだし、それを止められなかった負い目みたいなのもわずかにあったのかも。能力者や無能力者による殺人もあっただろうし。

 

「じゃあ、二人は先に黒妻の方に行っていて。私はもう一つこのお医者さんと話があるから」

「……聞かれたくないことか?」

「そうだね」

「なら仕方ない。いくぞ駒場」

 

 二人が部屋から出て行ったのを確認してから再び話し始める。

 

「あの子たちはどうなっているのかな?」

「あの子たち、というのは『妹達(シスターズ)』のことで間違いないね?」

「そうなんだよ」

「まあ、経過は順調といったところだね。ある程度彼女たち一人一人にも変化が表れているようだね?」

 

 それならよかったんだよ。まあ、一人一人の変化くらいなら私も知ってるんだけど。けっこうお見舞いに来ているし。

 

「もうそろそろ外に出してもいいとは思うんだけどね? でも彼女たちのオリジナルには彼女たちの存在は知られていないんだろう? そんな状態で外に出して、オリジナルに会ってしまえば大変なことになるのは目に見えている。そのあたりも何とかしないといけないね」

「むう」

 

 確かに、原作と違ってこっちの御坂美琴は『妹達(シスターズ)』の存在を知らないはず。そんな状態で外に出しちゃったら、御坂美琴が『妹達(シスターズ)』を拒絶して酷いことになりそうなんだよ。

 

 そっちばっかりはデリケートな問題だからね。まさか、実験を原作より早く止めた弊害がこんなところででるとは思わなかったんだよ。

 

 とりあえず『一方通行(アクセラレータ)』ともこの問題について話し合わないといけないかも。




 たくヲです。

 決闘回。

 内臓潰しの横須賀の動きは某ボクシング漫画の主人公をイメージしてもらえればわかりやすいかもしれません。体の大きさはけた違いですが。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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