とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある実験と複製少女

 女の子の死体を目撃して生まれた少しの吐き気を抑えソレを見る。

 

 その死体が着ているのは常盤台中学の制服。常盤台の女子寮に居候している私にとってはもう見慣れた制服は血で真っ赤に染まっている。赤くないところの方が珍しいほどに。

 

 死体には頭部と右腕がなかった。だからこの死体が誰なのか特定はできそうにないかも。

 

 けれど、

 

「……なんで忘れてたんだろう」

 

 おそらく、この女の子は……。

 

「回収地点に一般人を発見しました、とミサカは驚愕します」

 

 後ろから声。

 

 振り向くとそこには

 

「こういう場合はどうすればよいのでしょうか、とミサカは他の個体に確認を行います」

「やはり口封じを行うのが適切では? とミサカは気の進まない提案します」

「ですが、この場で見たことを外で言いふらしたところで信じる人は皆無でしょう、とミサカは自信ありげに断言します」

「それならば早く回収作業を始めるべきでしょう、とミサカは本来の目的を口にします」

 

 常盤台中学校の制服を着た、学園都市第三位の超能力者(レベル5)御坂美琴と全く同じ顔の女の子たちが立っていた。

 

「あなた達は……御坂美琴の妹達(シスターズ)かな?」

「知っているのですか? とミサカは発見した人物に対しての認識を改めます」

 

 どうやら彼女達は、学園都市第三位の超能力者(レベル5)御坂美琴の軍用クローン妹達(シスターズ)で間違いないらしいね。

 

 おそらく彼女たちは今、私が学園都市に入った初日に出会ったあの超能力者、一方通行(アクセラレータ)の実験に関わっているはずだ。

 

 私の原作知識にもある、『絶対能力(レベル6)進化(シフト)』計画。学園都市製のスーパーコンピューターである『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』による予測演算によって導き出された、『学園都市第一位の超能力者一方通行(アクセラレータ)を、既存の能力者たちを凌駕する絶対能力者(レベル6)にする実験』のことなんだよ。

 

 『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』による予測演算によると、『一方通行(アクセラレータ)超能力者(レベル5)御坂美琴を特定条件下で128回殺害する』という方法をとる必要があるらしい。

 

 もちろん御坂美琴を用意することはできないので、そのかわりとして、『2万人の御坂美琴の軍用クローン(シスターズ)を、一方通行(アクセラレータ)に特定条件下で殺させる』ことで、絶対能力者(レベル6)を生み出すという実験。

 

 妹達(シスターズ)の一人が口を開いた。

 

「念のため符丁の確認をとります、とミサカは返答を待たずに実行します。ZXC741ASD852QWE963、とミサカは試験官気分を味わいます」

 

 もちろん私が符丁とやらを知っているわけもないんだよ。

 

 他の妹達(シスターズ)が会話を引き継ぎ喋り出す。

 

「なるほど、貴方は実験の直接的な関係者ではないようですね、とミサカは一人納得します」

「勘違いさせちゃってごめんね。ところで、その子は何番目のミサカなのかな?」

 

 とりあえず妹達(シスターズ)の死体をについて聞いてみることにするんだよ。幸い、彼女たちには、実験の関係者ではないものの実験について知ってる闇にかかわる人間、みたいな認識になっているみたいだしね。

 

「そんなことを知ってどうするのですか? とミサカはあなたに率直な疑問を投げかけます」

「うーん。特に理由があるわけじゃないんだけどね。ただ私が知りたいって思っただけだもん」

「……そうですか、とミサカは無理やり自分を納得させます」

「あのミサカは検体番号(シリアルナンバー)6022号です、とミサカは答えます」

 

 私と話していない妹達(シスターズ)がミサカ6022号の死体を大きな寝袋に入れていく。

 

「じゃあ、6023号はここにいるのかな?」

「6023号はこのミサカです、とミサカは自身を指差します」

 

 死体の入った袋を肩に担いだミサカがこっちを見て言う。

 

 なるほど、つまり次の実験はこの子が……。

 

「聞きたいことはそれだけですか? とミサカは問いかけます」

「うん。時間を取らせてごめんね」

 

 私の言葉を聞いた妹達(シスターズ)は私に背を向け、去っていく。

 

 彼女達の後ろ姿を見ながら、私は懐から単語帳を取り出し、その中の1ページを口で咥えて金属のリングからちぎりとった。

 

 

 

 大通りを歩きながら私は考える。

 

 終わったことに後悔しても始まらないとはいっても、原作の知識で実験を知ってた私が実験を止めに動けてなかったっていうのはすごく辛い。その間、自分のことだけ考えて平和を享受し続けてたのも、追い打ちかも。

 

 こんな、私にできるのは、今からでも実験を止めることだけ。

 

 別に私が動かなくても夏休みに主人公である上条当麻あたりが実験を止めてくれるだろうけど……あんなかわいい女の子たちが死ぬのを黙って見過ごしたくもないしね。

 

 問題はどうやって止めるか、だね。

 

 そもそも、原作でこの実験を止めるための手段はいくつか提示されていた。

 

 一つ目。学園都市最強の超能力者である一方通行(アクセラレータ)を学園都市最弱の無能力者(レベル0)が打倒し、これによって科学者たちに一方通行(アクセラレータ)は実は弱かったんだと思わせること。

 

 二つ目。そもそも、この実験は『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』による予測演算が前提条件にある。これを逆手にとって、別の演算データである『御坂美琴は一方通行(アクセラレータ)に185手で敗れる』というデータを御坂美琴が1手で敗れることで、覆すこと。

 

 三つ目、研究の柱である一方通行(アクセラレータ)がこの世からいなくなること。

 

 実は意外と多いように思えるけど、三つとも私がこなすことはできないんだよ。

 

 一つ目に関しては一方通行(アクセラレータ)を倒せる無能力者(レベル0)を今の私が知らないから。利徳や横須賀は強いんだけど一方通行(アクセラレータ)超能力(ベクトル変換)による守りを突破できないしね。

 

 二つ目は御坂美琴がまだ『絶対能力(レベル6)進化(シフト)』の計画について何も知らないから無理。それに私は意図的に御坂美琴との接触を避けてるから彼女と話したことがないんだよ。そんな私からこのことを伝えても彼女がわざわざ死ににいく理由がないし、何より信じない可能性の方が高いかも。

 

 三つ目は一つ目に似ていて一方通行(アクセラレータ)を倒せる人を私が見つけられない以上、やっぱり無理。原作では文字通りベクトルの違う魔術攻撃を使えば一方通行(アクセラレータ)超能力(ベクトル変換)を貫通できることが証明されているけど、強力な魔術攻撃じゃないと一方通行(アクセラレータ)にダメージを与えられないっていう問題点もあるから難しい。私の使える魔術は、対魔術師専用の『強制詠唱(スペルインターセプト)』と『魔滅の声(シェオールフィア)』。そしてオリアナから貰った単語帳による『速記原典(ショートハンド)』。そして『歩く教会』。これだけで一方通行(アクセラレータ)を倒すのは難しいかも。

 

 唯一可能性があるのは、(インデックス)に仕掛けられているはずのの魔術、『自動書記(ヨハネのペン)』が発動して私の魔術使用が解禁された状態になること。だけど、これが発動するということは私が瀕死の重傷を負ってる時だったはずだから却下。

 

 というか、一方通行(アクセラレータ)を殺すという時点で三つ目は却下かも。一方通行(アクセラレータ)は学園都市統括理事会理事長の計画に必要な存在だったはずだし、そんなことをしたら私は完全に学園都市と敵対した状態になるはずだからね。

 

 とはいっても手はないわけじゃないかも。三つ目の作戦に限りなく近い、平和的な解決法が一つあるんだよ。

 

 と、時間的にそろそろ行った方がいいかも。




 たくヲです。

 平和から一変回。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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