とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す   作:たくヲ

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とある根性と喧嘩戦士

 あの後、魔術師の襲撃もなく大覇星祭は終わった。できるだけ大通りを通り続けたのが良かったのか、私が襲撃されたのを知ったイギリス清教が私を狙う魔術師を倒してくれたのかは知らないけどね。

 

 まあ、大覇星祭の間は魔力の痕跡がいくつもあったから、多分後の方が正解だけど。

 

 大覇星祭終了からだいたい一ヶ月くらいたったけど、何も事件は起こらなかった。やっぱり平和が一番なんだよ。

 

 で、時間ができたから、適当に実験をやってたわけなんだけど……神様特典の『魔術や魔法の知識を見ることで解析、追加していく能力』っていうのはやっぱり創作物に対しても作用するらしいね。

 

 学園都市にある魔術や魔法が登場する漫画を読んでみたり、アニメ『超機動少女カナミン(マジカルパワードカナミン)』を見てみたりしたら、いろんな魔術を解析できたからね。

 

 でも、ライトノベルを読んだ時にはほとんど解析できなかった。ほとんどっていうのは挿絵になっている所だけは解析できたってことなんだけど。

 

 私が思うに、『魔術や魔法の知識を見ることで解析、追加していく能力』自体で解析できるのは、この『とある魔術の禁書目録の世界』の物だけではないってことかな。神様はありがたいことに、どんな世界に行ってもこの能力を使えるようにしてくれたらしいね。

 

 でも、この世界の魔術以外は方式が違いすぎて使いづらそうかも。別の世界の魔術を使おうと思ったら、まずこの世界の魔力の質から別の世界の物に近づけないといけないからね。

 

 そんな手間をかけるくらいならこの世界の魔術をそのまんま振るった方が効率はいい。戦闘中にはできる限り無駄は省いた方がよさそうだしね。

 

 他にも一つだけ試していることはあるけど……あんまり思いだしたくはないかな?正直やっててきついし。

 

 

「それにしても何にもないわねぇ」

「そうだね」

 

 隣を歩く食蜂操祈に話しかけられる。

 

 今、私たちは第七学区の大通りを目的も持たずに。

 

 操祈は未だに、私にどうやったら能力が効くのかを調べている。そのせいで、私に能力を使おうとして失敗したところに私がおしおき(・・・・)するという謎の流れが出来上がってるんだよ。

 

 それでも、寮から私を追い出そうとしないあたり、少しくらいは親しんでくれているってことなのかな。

 

 第七学区を歩く私と操祈。その後ろについてくるのは操祈の派閥のメンバーだね。

 

 派閥っていうのは、常盤台中学校の生徒たちが同じ目的を持つ生徒を集めて作るグループのことらしい。名門常盤台中学の派閥は活動内容によっては社会にまで影響を及ぼすとか。

 

 操祈が率いている派閥は一年生が率いているにも関わらずその中でも最大級の物らしいね。まあ、目的は教えてもらってないんだけど。

 

「女王とあの方は一体どういう関係なんでしょう」

「さあ? 小学生のころのご学友という話でしたが……」

「それにしてはちょっとよそよそしいですわ。友人というのはもう少し話すような……」

 

 後ろから派閥の子同士が話してるのが聞こえる。どうやら、さっきの操祈が彼女たちに説明のために放った「小学生の時の友達」っていう言葉を鵜呑みにしてるわけではないみたいだね。

 

 操祈はあんまり気にしていないようだけど、私としてはもっと操祈と仲良くなりたいんだよ。

 それに私の存在を怪しまれると困ることもあるだろうし。

 

「ということで……みさき」

「? どうしたのかしらぁ?」

「そこに学園都市でも五本の指に入るほどおいしく安いシュークリームを作るカフェがあるんだよ」

「……そうねぇ。行ってみようかしらぁ?」

 

 

 

 

 

 学園都市のカフェはだいたい大きい。なぜなら、住民の8割が学生であり、その学生たちは複数人で店に入るからだね。その中でも比較的安い店は金欠の学生たちがわずかな金を持って入り浸る場所になりがちなんだよ。

 

 つまり、値段が安く、なおかつ学園都市のテレビにも取り上げられるこの店には、派閥の女の子たちも座れるだけの席がきちんとあったってことなんだけどね。

 

 私の前に置いてあったはずのシュークリームはすでに跡形もなく消え失せている。とってもおいしかったんだよ。

 

「インデックスさん。あなたはこの後どうするのかしらぁ?」

「どうするって?」

「今のところは常盤台の寮の中の人達を私の改竄力で何とかしているけど、いつ私が気まぐれに力を使うかはわからないわよぉ?」

 

 シュークリームをかじってから操祈は言う。

 

「改竄していた記憶を戻さずにいられるか自信がないから、出て行った方がいいってこと?」

「そうよぉ」

 

 ……てっきり否定されるかと思った言葉を肯定されてちょっと驚いたんだよ。

 

 それにしても、どうしようか。常盤台の女子寮を出てもいくあてなんて……電話番号を教えてもらってる婚后光子の所しかないんだよ。

 

 でも、光子の住んでいる寮がお嬢様学校である常盤台中学の女子寮ほど安全なわけがないだろうし、そもそも泊めてもらえるかどうかわからないからね。

 

「……うん、出ていかないよ」

「……どうして?」

「出て行っても行くあてがないし、なにより私はみさきのことを信じてるからね」

「……」

 

 疑いの目を向けてくる操祈。それにしても、操祈ってかわいいよね。もっといろんな顔が見たいんだよ。

 

 というわけで今までの会話より少し大きい声で……。

 

「信じてるというか、愛してると言ってもいいんだよ」

「あ、愛!?」

 

 空気が凍りつく。

 

 周りの席に座っていた操祈の派閥に所属する女の子たちの視線が私と操祈に突き刺さる。

 

「……じょ、女王? 私たちは先に帰りますわ」

「ちょ、ちょっと!? 誤解よぉ!」

 

 派閥の子たちの中でも中心にいるっぽい縦ロールの子が女王、すなわち操祈に問いかけ、操祈は顔を真っ赤にして否定しようとする。

 

「ああ、ありがとう。頑張るよ」

「ええ、どうぞごゆっくり。頑張ってくださいね!応援してますわ!」

 

 両手を胸の前でグッっと握りながら縦ロールの子は言う。

 

「頑張るってなによぉ!?」

 

 操祈は恥ずかしさが頂点に達したのかさらに顔を赤くしながら、いつも下げている高そうなバックからリモコンを取り出しながら言った。

 

 操祈の能力が発動し、会計に向かおうとした派閥の子たちが元の席に戻っていく。

 

「あ、アナタたちはシュークリーム10個早食い対決にレッツ・チャレンジ」

「流石にシュークリーム早食い10個は酷いんじゃないかな? 太るよ?」

「い、いいのよぉ! 早とちりの罰!」

 

 真っ赤な顔のまま頬をふくらまして、恨めし気にこちらを見る操祈。

 

 眼福。今ほど『歩く教会』に感謝した日はないかもしれないんだよ。

 

 

 

 

 

 操祈は用事があるらしく、カフェを出たタイミングで別れた。

 

 つまり暇なんだよ。

 

 っと、あれは……。

 

「おーい、りとくー」

「……? ああ、お前か。インデックス」

 

 第七学区の武装能力者集団(スキルアウト)を束ねている大男、駒場利徳と出会ったんだよ。

 

 あの一件以来、利徳とは偶然会った時に話すくらいのことはしてたからね。割とすんなりと会話できる。

 

「何か用か……?」

「用って程のこともないんだけどね。暇なんだよ」

「……俺のような人間に話しかけるのは辞めた方がいい」

 

 ふむ、今日はよく人に心配される日かも。

 

「利徳はやさしいね。まあ、もともと私は立場はやばいからあなたと話しても問題ないと思うんだよ」

「……だが」

「いちゃついてんじゃねえぞ!」

 

 ? 怒鳴り声に振り向くと5人ほどのガラの悪い少年がこちらを睨んでいる。

 

「だが、俺も他の学区のスキルアウトからは狙われる身。……あまりかかわると」

「こうなるんだね」

 

 なるほど。確かに少し面倒くさい状況だね。

 

「てめえが第七学区をまとめてるっつー駒場利徳だな?」

「うちのリーダーがてめえを連れてこいって言ってんだよ! おとなしくついてこい」

 

 む、やっぱり不良同士の抗争みたいなものなんだろうね。

 

「……断る」

「ッ! 面倒くせえな。お前らやっちまえ!」

 

 私をかばうように前に立ちふさがる利徳に鉄パイプ装備の不良少年が殴り掛かる。

 

 振り下ろされた鉄パイプを避けた利徳はそのまま相手の不良少年を殴る。と物理的に不良少年が宙に浮き五メートルほど吹っ飛ばされた。

 

 と思って見てたら、私の後ろから首に手を回された。どうやら私は首筋にナイフかなんかを当ててられてるらしい。

 

「……!? インデックス!」

「おっと、そこまでだ。この女の命が惜しければ俺らに従いな!」

 

 私を拘束している男(真後ろだから顔は見えないけど)は小者っぽい台詞を吐く。

 

「……卑怯な」

「褒め言葉だな」

 

 っていうか大通りでこんなことやってたら警備員(アンチスキル)がくるんじゃないかな?

 

「そこのお前ら! 根性が足りてねえぞ!」

 

 ってこの声は!

 

「誰だ!」

 

 白い学ランに、日の丸から赤い太線が外に放たれているようなどこかで問題視されそうなデザインのTシャツ。白い鉢巻。

 

「俺はレベル5の削板軍覇だ! たった一人相手に大勢で向かうだけじゃなく、人質までとるとは根性が足りてねえぞ!」

 

 学園都市のレベル5の一人、削板軍覇。電話番号教えてもらってから一度も会えてなかったけど、こんなところで再開するなんて、思わなかったんだよ。

 

 っていうか一人相手?

 

「二人相手の間違いなんじゃないかな?」

 

 左手で首筋にあてられたナイフを持つ手首を掴む。私は掴んだままで足を少し曲げて反動をつけ、そこから足を伸ばし全力で地面を蹴った。

 

「恐怖、舌噛みヘッドバット!!」

 

 鈍い音が響く。

 

 すぐに振り向くとナイフをすぐ近くに落とし、下あごを抑えて地面を転がる小男がいた。この様子だと、うまくこの人の下顎に頭頂部をぶつけられたみたいだね。

 

 安全確保のため、ナイフを蹴って遠くに滑らせる。

 

「ッ! てめえ!」

 

 バットを持って不良少年の一人が走って来る。私は両足で地面を蹴り、バットを振り上げた不良少年に向け禁書目録(インデックス)跳躍両足蹴り(ドロップキック)を放つ。

 

 振り下ろされたバットが私に直撃するのと全く同時に禁書目録(インデックス)跳躍両足蹴り(ドロップキック)が不良少年の胸板に叩き込まれる。

 

 カウンターでまともに受けたせいか、後ろに倒れ込むバットを持つ不良少年。 跳躍両足蹴り(ドロップキック)を放ったせいで真下に落ちる私。

 

 まあ、『歩く教会』効果で私にダメージは全くないんだけどね。

 

 すぐに立ち上がって、仰向けのバット持ち不良少年に向かって倒れ込む。

 

禁書目録(インデックス)肘打ち落とし(エルボードロップ)!!」

 

 腹に落とした肘打ちに転がり悶えるバット持ち不良少年。気絶してくれたら割と楽なんだけどね。

 

「……」

「……」

 

 ふと見てみると、手早く不良少年の一人を殴り倒していた駒場利徳と、最後の一人に根性を叩き込んだ削板軍覇。

 

 二人が驚いたような表情をして私を見ているけど、どうしてかな。バットを思い切り喰らったはずなのに平然としてるから? それとも、いきなり技名を叫んだからかな?

 

 私はとりあえず二人の方に小走りで近づく。

 

「ぐんは! 久しぶり。助かったんだよ」

「……俺からも礼を言おう。助かった」

「ああ、俺はあんな根性無しが許せねえだけだからな。二人とも礼はいらねえよ」

 

 それにしても、軍覇は私のこと覚えてるのかな? あったのは一回だけだったから忘れてるかも。

 

「それにしてもお前。あの人数相手に一人でやりあおうとするとはなかなか根性あるな」

「そういうお前も、この野次馬の中こんな不良とコスプレシスターを助けに飛び込んでくるとはな……。まだ能力者の根性も捨てたものではないようだな」

 

 どうやら一瞬、10秒にも満たないほどの共闘の中で利徳と軍覇の間に友情が生まれたらしいんだよ。なんかまたちょっと私が空気化している気がするけど気にしない方がいいかも。

 

「ふん。流石は駒場利徳。やはり部下たちでは倒せんか」

 

 新たな声。振り向くとそこには利徳に勝るとも劣らない巨漢が立っていた。

 

「……何者だ」

「俺は内臓潰しの横須賀。駒場利徳、貴様に素手での決闘を申し込む」

 

 な、内臓潰しの横須賀!? あの原作では『内臓潰し』と名乗ったにもかかわらず『モツ鍋』『モツ鍋』呼ばれていてまったく活躍できなかったスキルアウト!?

 

「いいだろう。受けて立つ……」

「ふっ。そうこなくてはな」

 

 うん。正直、直前に刺客の不良少年を送り込んでる時点であまり格好着かない台詞になってるよね。まあ、べつにいいけど。

 

 とはいえ、ここで決闘されると流石に警備員(アンチスキル)が来そうだね。

 

「というわけで、ちょっとストップ!」

「なんだ? インデックス」

「ここじゃ他の人達に迷惑だし、警備員(アンチスキル)がいつ来てもおかしくないから、場所を移した方がいいと思うんだよ」

 

 

 

 

 というわけでオリアナと別れた河原まで移動し決闘が始まったんだよ。

 

 私の横には「この二人の根性を見届けたい」とついてきた削板軍覇。そしてその横にはさっき返り討ちにした横須賀の部下5人が正座している。

 

 初めに動いたのは横須賀。両腕を顔前に構え、地面を蹴り利徳との距離を一気に詰める。

 

 対して利徳は顔面に対しての攻撃を警戒してか、バックステップしつつ顔を中心に両手で防御を固める。

 

 でも、横須賀の接近速度の方が速いね。

 

 横須賀の左拳が利徳の腹に向かう。でも、バックステップで横須賀から離れていくからダメージは普通に殴られた時より低くなるはず。

 

「ッぐぅ!?」

 

 離れていく相手に放ったとは思えない音が炸裂し、利徳の表情が苦痛を示すものに変わる。

 

 まさか、あの基本無表情の利徳の顔をゆがませる肝臓打ち(リバーブロー)……なるほどだから『内臓潰し』なんて名乗ってるのかな。

 

 とはいえ、一撃でやられるほど利徳も弱くない。

 

 利徳はバックステップしていた動きを急停止しつつ、カウンター気味の回し蹴りを放つ。

 

 それを両腕を盾のように構えて受け止めようとする横須賀。でも、利徳の蹴りをまともに受け止めてしまった横須賀は真横に8メートルくらい吹っ飛ばされる。

 

 今度は逆に距離を詰める利徳。それに対し迎え撃つように横須賀が拳を放つ。

 

 その拳を避け、お返しとばかりにボディブローを放つ利徳。

 

 それをカウンターで決まったボディブローに苦悶の表情を浮かべる横須賀。

 

 そこに利徳が放つ顔面狙いの正面蹴り(フロントハイキック)。でも、それは顔前に構えた両腕に防がれる。

 

 そして……!

 

 

 

 

 

 

 結局、二人の決闘の決着はつかなかった。

 

 利徳の拳が側頭部に決まったのと同時に、横須賀の肝臓打ち(リバーブロー)が入り、両者とも同時に倒れてしまったからだ。

 

「いい勝負だった。この俺相手ににここまで張り合えた奴は能力者にもいなかったぞ」

「……それは光栄だな。だが次にやる時は負けん」

 

 倒れたままの二人はやけにすっきりとした表情で、すっかり赤く染まった空を仰いでいる。

 

「いい根性を見せてもらった」

「……根性か」

 

 恐るべきは根性。この状況や、今日一日で起こったことも今なら根性が原因だって言い切れるかも。

 

「駒場に横須賀。お前らにはいい根性を見せてもらった。俺のおごりでなんか食いに行こうぜ」

 

 そして、空気を読まず……いや、これはむしろ読んでいると言ってもいいんのかもしれないけど、決闘後の二人を食事に誘う軍覇。

 

 さて、私はお邪魔だろうしクールに立ち去ろうかな。

 

「おい、インデックスどこに行くつもりだ?」

「へ?」

「お前も食いに行こうぜ。お前がいなかったらこんな根性を見ることはできなかっただろうからな」

 

 ふむ、それなら行こうかな。

 

 でも私を食事に誘うということがどう言うことなのか解ってて行ってるのかな。

 

「でも、どこに行くのかな?」

「そうだな……モツ鍋でも食いに行くか」

「モツ鍋か、大好物だ」

「俺も嫌いではないな……」




 たくヲです。

 喧嘩回。

 わかってた人もいると思いますがこの作品のインデックスの戦闘法はプロレス系です。

 そして、横須賀の戦闘法はオリジナルです。

 これからも『とある主要人物に憑依して最強の魔術師を目指す』をよろしくお願いします。

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