ゼロの使い魔 虚無の騎士   作:へタレイヴン

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--アナスタシア--待たせたな--
あ--ソラール--様--
さぁ--行こう--もうそこに居る必要はない--俺の太陽が--闇を払ってくれた--
--あの人が火を注いでくれたのですね--ですが--私は穢れ--
--はっはっは--そんな事はない--例えどんな姿だろうと--俺は貴女を愛している--
ソラール様--はい-私も--心からお慕いしております--
ほら--俺の手につかまるんだ--
ありがとうございます--これからどちらに--
そうだな--まずは我が友が愛した者達に--伝えねばなるまい--我が友の偉業を--


2羽 メイドと微熱と騎士。

トリステイン魔法学院--女子寮のルイズの部屋--

 

そこでは、部屋の主のルイズはベットに座り、使い魔--そう言う身分らしい--のプレイヤーが床に座って何やら話をしている。

空には、大きな双月の光が、窓から淡く差し込んでいた。どうやら、常識やら説明やらを行っていたらしい。

まぁ、説明と言っても、ルイズが話して、プレイヤーがフムフムと相槌を打っているだけであるが。

 

「とりあえず、常識と地理はこんな物ね。けど、本当に何処の騎士なのよ。地理とか知らないなんてね。」

 

大体分かったと、プレイヤーが大きくうなづくのを見て、ルイズはふうと小さく息を吐く。

相手が喋れないとなると、コミュニケーションをとるのが結構大変のようだ。幸い、理解したら頷いてくれるし、分からなかったら首を傾げてはくれる。

 

「それじゃ、次に使い魔が何をするのかって事を教えるわね。」

「…?」

「はいはい、そんなに首を傾げないの。…えっと、使い魔の役割は三つあるのよ。」

 

再び首を傾げるプレイヤーに、苦笑を浮かべつつ、ルイズは姿勢を正して威厳を示そうとする。…見た目が可憐な少女なので、威厳などカケラも無いが。

 

「一つは視覚や聴覚の共有ね。あんたが聞いたこと、見たことが私に伝わるし、逆もあるのよ。」

「?……??」

「う~ん、けど、何も感じないわね。…はぁぁ~あ、せめてあんたの考えくらい分かれば、会話しやすいんだけどね。」

 

人の使い魔ということで、リンクが途切れているのか共有している感覚はまったくない。

プレイヤーも、どうしたものかと考えているが、その内なんとかなるだろうと、楽観的に考えることにした。

 

「そうね、あんたの言うとおり、その内何とかなるでしょう。」

「…?」

「え?今、あんたがその内なんとか…って、言ってないわよね?」

 

何故かルイズがプレイヤーの考えたことを口にしているのか、2人してキョトンとした表情になってしまった。

少しして、仮説を立てたプレイヤーが、頭にある事を思い浮かべてルイズに念を送ってみる。

 

「太陽万歳!!…って、なによこれ。いきなり頭に浮かんできたんだけど。」

 

おそらく、自分の考えている事が、伝わっているのではないかと再び念を送ると、ルイズは眼を丸くしてそうかもしれない、と小さく呟く。

視界や聴覚の共有は出来ていないが、これならば少しは会話しやすくなっただろう。

 

「召喚者と使い魔の契約が関係してるのかしら。けど、これで話しやすくはなったわね。」

 

コクコクと頷くプレイヤーに、ルイズも笑みを浮かべる。出会って数時間だが、こうして見ると無邪気な子供の様で、結構かわいいかもしれない。見た目は自分より大きいが。

次の説明は?と念を送ってくる彼に、ルイズも慌てて姿勢を正して説明を続ける。

 

「次は調合や実験の時の材料集めよ。…あぁ、具体的な材料ね。そうね、硫黄や苔とかね。私が取りに行けない様な所の材料を取ってくるのが役割よ」

 

なるほどと頷きつつ、材料といえば自分は鉱石程度だったなぁ。とプレイヤーは思い出していた。

巨人の鍛冶屋が光る楔石を仕入れてくれるまで、五本足の貝相手に死闘を繰り広げていた事をあった。友の太陽戦士と一緒にやっていた頃が懐かしい。

 

「な、なんだか材料集めで苦労した事があるみたいね。」

 

微妙に大変だったと言う念が伝わってきたので、ルイズもとりあえず労いの言葉をかけて見たが…プレイヤーはズーンと沈んだように見える。

あれは本当に苦労した。巨人の鍛冶屋が仕入れてくれなければ、更に苦労していたのだろう。持っている数々の武具の強化には、光る楔石は欠かせなかった。

 

「ほら、最後の説明だから、聞きなさいよ。それで次が一番重要なこと。使い魔は契約者、つまり主を危険から護るのが役割なの。」

 

それならば自身あるぞ。と胸を叩くプレイヤーに、ルイズも少し嬉しそうに笑顔を浮かべる。確かに、巨大な大斧を軽々と扱える怪力だし、鎧も着込んだ騎士だ。

メイジには勝てないまでも、そこら辺の盗賊程度には負けないだろう。と言うのがルイズの認識だ。まぁ、彼が戦ってきた相手を知らないのだから、強さも分からなくて仕方が無いだろう。

 

「…けど、その斧と盾。…部屋に入れたけど、結構邪魔よね。」

 

壁に立てかけてある黒騎士の大斧とアルトリウスの盾を見ながら、ルイズは大きくため息をこぼした。どちらも立派な物だが、如何せん大きすぎる。

何より、大斧は刃がむき出して、結構危ない。何処に仕舞えないかとルイズが思案している目の前で、プレイヤーは徐に立ち上がって、斧と盾に触れる。

そうすると、2つとも光の粒子--ソウル--に変換されて、彼の身体に吸収されていった。それには、ルイズも眼を真ん丸くして驚いている。

 

「えぇぇ!?ちょ、あんた今何をしたのよ!?」

 

ベッドから転げ落ちそうになるルイズに、落ち着けと念を送り座りなおさせると、プレイヤーは簡単に説明をすることにした。

自分の居た所では、武器や道具をソウルに変えて、自分の魂に刻み込むことが出来る術が存在した。魂に余裕があれば、幾らでも仕舞うことが出来るし、何時でも取り出すことが出来るので、それを会得する者も多く、自分もその一人だったと。

 

「へぇ~。随分と便利な魔法…で良いのかしら?…あ、魔法とも違うのね。ふ~ん。…それじゃ、この本も仕舞えるの?」

 

ルイズが渡してきた一冊の本を手に乗せて、プレイヤーはソウルに変換して仕舞って見せると、直ぐに取り出してルイズに手渡した。

 

「けど、魂に刻み込むって、結構凄い事だと思うけど。本当にあんたって何処の国の騎士よ?…騎士だけど遊歴の身?…遊歴って、つまり修行の旅って事よね?」

 

プレイヤーも、まさか別世界から来ましたとも言えないので、適当に答えをはぐらかせることにした。

ある意味で遊歴には変わりないし、何処にも属してない旅人だったので嘘は言っていない。と思いたい。

後はする事はないのかと言うプレイヤーの問いかけに、ルイズもそうね…と考える素振りを見せて、先ほどの話題を終わらせる。

 

「後は、そうね…。掃除や洗濯だけど、出来る?…え、男に下着とかを洗わせるのは女性として、どうなのかって?…う、うるさいわね!!良いわよ、シエスタに頼むから!!」

 

掃除は出来るが、洗濯となると少し勝手が違ってくる。プレイヤーがジトっとした眼でルイズを見るが、彼女はふん!!と言って顔を背けてしまった。

まぁ、いまさら女性の下着でどうこう慌てるプレイヤーでは無いのだが。聖女のそういう姿も見たし、混沌の娘達なんか裸だった。

…いまさらだが、友である太陽の戦士は、祭祀場の火守女と幸せに暮らしているだろうか。

亡国の王子は異端の魔女と恋に落ちたし、暗き銀色の騎士も真摯な聖女と共に静かに暮らしていたはずだ。

別れる前に、亡国の王子と魔女の子供を高い高いしたのは良い思い出。

そんな事を考えていると、ルイズがふぁぁと、小さく欠伸をして眠たそうにしていた。結構、夜遅くになってしまったようだ。

そろそろ寝たほうが良いとプレイヤーが伝えると、ルイズもそうねと頷き、イソイソと服を脱ぎ始め、白い肌が露になっていく。

兜の下でプレイヤーはため息をこぼしつつ、真後ろを向きながら、念を送ってみた。

 

「え?着替えるなら言ってくれ?…なによ、あんたに見られてもなんとも思わないわよ。」

「……。」

「ちょっと、なんでそっぽ向きながら呆れてるのよ!!」

 

まぁ、彼もいまさら女性の裸でアタフタする事も無い。先ほども述べたが、混沌の娘たち、特に紅い方と白い方は全裸に近かったし、聖女のも見た…と言うか見せられたと言うか…。

とりあえず、彼女は何気に押しが強かったなぁ。と思いつつ、ルイズの着替えが終わるまで、プレイヤーは身動き一つ取らずに待っていた。

そのまま彼女が毛布に包まるが、ふっと自分は何処で寝るのか?と聞いてみる。

 

「床よ、ベッドは一つしかないし、騎士って言っても、あんたは私の使い魔だし。」

 

床って…と思いつつ、今までマトモな所で寝たことは無いプレイヤーにとって、安心して眠れるなら何処でも良かった。

ルイズのベッドの足元に寄りかかり、眼を閉じる。部屋の明かりが消されると同時に、彼の上にパサっと一枚の毛布が渡された。

見上げて、良いのか?と聞けば、

 

「使い魔に風邪引かせたなんて言われたくないからね。…ほら、そんな兜も取りなさい。…ここは安全だから。」

 

最後の方は優しい声のルイズに、ありがとうと伝えて兜を取ると、プレイヤーも柔らかな毛布に包まった。

 

「…ねぇ、プレイヤー。…これからよろしくね。おやすみなさい。」

 

彼女の素直な声を聞き、何だかんだと口で入っているが、自分の事を気にかけてくれるルイズは優しいな。と口元に笑みを浮かべ、こちらこそよろしく。おやすみと返し、プレイヤーも眼を閉じる。なんだか今日は良く眠れそうだ。

 

 

 

 

 

学院のメイド、シエスタの朝は早い。まだ少し薄暗い時間におき、昨夜のうちに回収した洗濯物を、一番に洗うのが彼女の最初の仕事だ。

うんしょ、うんしょ…と掛け声を出しながら、洗濯物の詰まった籠を持ち、洗い場に運んでいく。細身の彼女だが、こう言う仕事をしているのでそれなりの力はあるようだ。

しかし、それでも身長は小柄だ。うず高く詰まれた洗濯物で前が見えずに、誰かとぶつかってしまったらしい。

 

 

「きゃっ…。すすす、すいません!」

 

零れた洗濯物を拾うよりも、慌ててぶつかった人物に謝るシエスタだが、目の前の人物--騎士--を見て首を傾げる。

と言うか、頭の部分を物凄く凝視している。丸っこくて、頭頂部が尖っているその兜はまるで…。

 

「たまねぎ?…って、はわわわ、すいませんすいません!!ぶつかって置いて、そんな失礼なことを!!」

 

あたふたと慌てるシエスタに、たまねぎ頭--カタリナヘルム--の騎士は首を傾げつつも、散らばった洗濯物を集めて籠に回収する

 

「あ、すいません!私が落としたのに…。あの、もしかしてルイズ様が召喚した騎士様…ですか?」

「?」

 

なぜ知っているのだろうか?と思いつつ、たまねぎ頭の騎士--プレイヤー--はコクコクと頷くと、シエスタは笑顔を浮かべた。

 

「やっぱり!怪力の騎士を召喚したって、使用人の間でも噂になっていたんです。…って、あ、すいません、私ばかり喋って。」

 

気にしてないと首を横に振り、コルベールにしたように喉を指差して、首を横に振って喋れないことを伝える。

そうすると、再びシエスタが失礼な事を!!と頭を下げる--ペコペコ状態--になって中々話が進まない。

とりあえず、止めさせる為にプレイヤーは持っていた籠を少し揺らしてシエスタに見せてみた。

 

「うう、すいません。私って昔からおっちょこちょいで…。あ、それルイズ様のお洗濯物ですよね。もって行きますよ。

…あれ、騎士様。それは私の持ってきた籠なんですけど…?」

 

持って行くと言っても、シエスタの籠は満杯だし、結構重そうだ。

少し考える素振りを見せたプレイヤーだが、周りに散らばっていた洗濯物を回収して満杯になったシエスタの籠を自分で持ち、軽い方のルイズの籠を彼女に持たせることにした。

軽々と洗濯籠を持ち上げる彼に、シエスタは眼を丸くした後に、小さくペコリと頭を下げて、先導するように歩き始める。

 

「騎士様、水場はこちらですよ。…ふふ、ルイズ様と同じで、騎士様もお優しいですね。」

 

そうか?と首を傾げるプレイヤーに、シエスタはクスクスと笑みを漏らして、優しいですよ。と返して言葉を続ける。

 

「ルイズ様にはとても良くして頂いてるんです。他の方々と違って、私の事をメイドじゃなくて、シエスタって呼んでくれるんですよ。

…ですから、騎士様。どうかルイズ様の事、よろしくお願いしますね。」

 

こちらに向き合って、深々と頭を下げるシエスタに、任せろと意味を込めて、プレイヤーも胸を叩くのであった。

…たまねぎ頭--カタリナヘルム--なので何処か間抜けに見えるのは、ご愛嬌。

 

 

 

ルイズの部屋

 

 

 

洗濯物を終えて、ルイズの部屋に戻ってきたプレイヤーは、未だに眠っている彼女の肩を揺らす。

時間的に、他の生徒達が起き始めた様で、扉の外では挨拶の声や、動いている雰囲気が伝わってきているのだ。

起きる気配の無いルイズにため息をこぼしつつ、そろそろ起きろと直接頭に念を送ることにした。

 

「う、うにゅ~…。誰よ~。」

 

未だ眼をショボショボさせているルイズに、プレイヤーだと伝えながらシエスタに渡された水桶を差し出す。

先ほど、洗濯をしながら朝に弱いのでと言う話は、本当だったようだ。

 

「ぷれいや~?…かお、あらふ~。」

 

少し舌足らずの声を出しながらも、ルイズはパシャパシャと顔を洗い始める。

その仕草に笑みを浮かべながら、昨夜用意されていた着替えを彼女に手渡して、プレイヤーは視線を外し、窓から外を眺める。

そのまま、背筋を伸ばして両腕を適度に開きながら、真上に上げる。簡単に言えば、Yの形である。太陽賛美のポーズである。友である太陽の戦士と一緒に良くやったものだ。

ガサゴソと服を着替える音が終わる頃には、ルイズもすっかりと眼を覚ましているようだ。…妙なポーズのプレイヤーに、微妙な眼で見てきている。

 

「おはよう、プレイヤー。ところで、なによそのポーズ。…太陽賛美?私はやらないわよ!!」

 

一緒にやるか?と誘ってみたが、全力で拒否られた事にプレイヤーは、ガックリと肩を落とす。

その後、その頭は何よ、とか、兜ぐらい取りなさい!!とか言われたので、渋々カタリナヘルムを仕舞って、プレイヤーも素顔をさらす。

 

「…ふ~ん、綺麗な銀髪ね。え?故郷じゃ珍しくなかった?銀髪って寒い所だと多いのよね。…そっか、寒さとかは関係ないのね。」

 

無造作に伸ばされているプレイヤーの髪を一つ掴むと、ルイズは感触を楽しんでいた。やはり、ここでは珍しいようだが、プレイヤーにとってはルイズの髪色の方が珍しい。

まぁ、昨日見た限りでは、金髪やら水色やら赤やらカラフルな色があったので、ここでは珍しく無いのだろう。

 

「っと、そろそろ食堂に行かないとね。ご飯食べそびれちゃうわ。」

 

髪を触るのを止めて、ピョンとベッドから降りるルイズを視界に納めつつ、プレイヤーは武器を持った方が良いかと問いかけた。

一応は、自分は彼女の使い魔と言う立場だし、何時でも戦える様にしていた方が良いと言うのが彼の考えだ。

 

「学院内は危険とかは皆無だけど…そうね。あ、ただしあの大きな斧は駄目。刃がむき出しになっているし、大きすぎるわ。」

 

それもそうだと思い、プレイヤーは徐に北騎士の直剣を取り出し腰に下げて、紋章の盾も一緒に持つと、これで良いか?とルイズに問いかける。

その姿は、まさしく騎士そのものだ。その姿に眼を奪われながらも、ルイズは彼の全身を見て、問題ないと頷いた。

 

「うん、それなら鞘に入っているから大丈夫ね。」

 

一見、ふざけてる様にも見えたが、自分の事を護る事を優先的に考えてくれるプレイヤーの評価は、ルイズの中で結構高くなってきていた。

プレイヤーを伴って部屋から出ると、、隣の部屋からも女子生徒が出てくる。

大きく肌蹴た制服に、燃えるような赤毛に色気を醸し出す大きな胸。その少女を見た瞬間に、ルイズは嫌そうな顔をした。

 

「あら、ルイズじゃない。おはよう。」

「………ふん、おはよう、キュルケ。」

 

少女--キュルケ--のにこやかな挨拶に対して、ルイズの挨拶は少しトゲトゲしている。

後ろで首を傾げつつもプレイヤーは、黙ってみている事にした。…まぁ、喋れないので何もいえないだけだが。

 

「なによ。そんな嫌そうな顔しなくても良いじゃない。お隣同士なんだからさ♪」

「うるさいわね。別に良いでしょ。本当に…どうして、あんたと隣同士なのよ」

 

体つきも、口調も色々と対照的な2人を眺めつつ、プレイヤーは面白そうに見ていた。

キュルケはからかい口調だが、彼女がルイズに友人としての好意を持っていることが分かる。ルイズの分かっているんだろうが、気恥ずかしくて素直になれないのだろう。

 

「あら?…へぇ、そっちが昨日召喚した騎士ね。…ふ~ん、結構良い男じゃないの。」

「ちょっと!人の使い魔を妙な目で見ないでよ!!」

「ふふん、妙とは失礼ね。ふふ、綺麗な色の髪ね~。私はキュルケって言うのよ。貴方の名前はなんていうのかしら?」

「ふん、聞いても無駄よ。プレイヤーは喋れないんだから。それに喋れても、あんたなんかに教えさせないし!!」

「あら、そうだったのね。ごめんなさい、失礼な事聞いて。けど、名前はプレイヤーって言うのね。」

 

自分で教えないと言っておきながら、口を滑らしてどうするとルイズを見るが、う、うるさいわね!!と噛み付きそうな勢いで反論してきた。

こちらは喋れないのだから、せめてもの礼儀として、優雅に一礼を返すと、キュルケは更に笑みを深くした。

 

「ふふ、ご丁寧にありがとう。まったく、ご主人様と違って、使い魔は礼儀正しいわね。」

「プレイヤー、こんな奴に礼なんかしなくても良いのよ!!」

 

がるると敵対心むき出しのルイズだが、キュルケに至っては、はいはいと笑いながら適当に流している。

こういう人にムキになっても無駄だと知っているが、プレイヤーは何も言わない。だって、この方が面白いし。

 

「きゅるるる」

「!?」

 

そんな事をしていると、鳴き声と共にキュルケの部屋から赤く巨大なトカゲが出てきた。

一瞬敵かと思い、プレイヤーはルイズを庇うようにして前に出た。それには、キュルケも驚いた顔をしている。

 

「ちょ、ちょっとプレイヤー。いきなりどうしたのよ?」

「あ、驚かせちゃったみたいね。その子は私の使い魔のフレイムよ。大人しい子だから安心して。」

 

訳が分からずに戸惑うルイズと、なぜプレイヤーが前に出たのか気がついていたキュルケは、安心させるようにトカゲ--サラマンダー--の頭を撫でてみせる。

敵ではないと聞いて、プレイヤーも構えを解いて、先ほどとは真逆に興味津々と言った様子でサラマンダーを見ていた。

 

「それって、まさかサラマンダー?」

「そうよ、きっと火竜山脈のサラマンダーね。どう凄いでしょ?この立派な尻尾の炎。微熱の私にはぴったりだわぁ。」

「ふ~ん。…でかいトカゲね。って、プレイヤー、あんたなにしてるのよ…。」

 

プレイヤーはいつの間にかしゃがんで、フレイムの喉元を撫でてあげていた。それが気持ち良いのか、フレイムも喉をゴロゴロとならしている。お前は猫か。

一瞬、こいつは…と思いながら、ルイズはプレイヤーの首元を掴むと、ズルズルと引きずっていく。

 

「ほら、さっさと食堂に行くわよ!!手なんか振ってるんじゃないの!!」

 

小柄な彼女に引きずられながら、キュルケ達に向かって手をぶんぶん振っている長身のプレイヤーの姿は、何処かシュールだ。

 

「ふ~ん。さっきフレイムを見て、あの子の前に出たわね。…ふふ、なんだ。ルイズも結構、良い騎士を召喚したんじゃないの。」

 

最初はボロボロの騎士を召喚して、やっていけるのかと心配していたが大丈夫のようだ。

曲がり角に消えていく、主従コンビを身ながら、キュルケはクスクスと笑みをこぼすのであった。

 

 

 

 

 

 

 


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