ゼロの使い魔 虚無の騎士   作:へタレイヴン

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王女と盾







トリステイン城

その中に存在する一つの庭園。色とりどりの花が咲き誇るこの場所を、城の人々は花の庭園と呼んでいた。
中央に位置する噴水の傍に佇む一人の女性。いや、少女と言っても良いのだろう。
可憐な笑顔を映し出すべき顔には、憂いの表情を浮かべ、水面を眺めている。
彼女の名はアンリエッタ・ド・トリステイン。その名で分かる通り、トリステイン王国の王女である。
その彼女の心は、この庭園の花々とは真逆。まるで曇り空の用に暗い色をしていた。

「……お父様……ウェールズ様」

思い出すのは二人の男性の姿。病で死去した偉大なる父と、彼女の想い人。
父が死に、このつらいときに、ウェールズが傍にいてほしかった。しかし、想い人たるウェールズも傍にいることが出来ない理由がある。
ウェールズ・テューダー。アンエッタの従兄弟にして、アルビオン王国の皇太子だ。そして、相思相愛の仲。
その人が傍にいてくれた…と何度思ったことだろう。
貴族派、またはレコン・キスタと呼ばれる一派が起こした反乱。そのため、アルビオン王国は現在内乱状態であるのだ。それを放っておいて傍に来てほしいとは、流石に言えない。
父の死。想い人の国の現状を思えば、彼女の心境も理解できよう。
水面を眺め、ため息をこぼすアンリエッタに一人の男性が近づいていく。
暗い銀色の鎧を身にまとった美丈夫だ。

「姫様。政務の時間にございます」
「あ、もうそんな時間なのね。今いきます」
「本日の予定は商人組合の視察。その後直営農場の視察になっております」
「今日は外に出ることが多いのですね。少し楽しみです」
「最近、悩み事を抱えている姫様の為に、マザリーニ様が調整してくれたようです。感謝せねばなりませぬな
「ええ、そうね。マザリーニにも……貴方にも感謝していますヴェルスタッド」
「姫様……否、アンリエッタ。どんなことがあっても君を守ろう。だから、つらいときは頼ると良い」
「ありがとう……ヴェル兄様……」

そう言ってアンリエッタは美丈夫の背中にそっと抱き着く。彼女にとって兄のような存在。トリステイン王国にとっては、まさに守護者。貴族でありながら、魔法に一切頼らず、己が四肢のみで戦う騎士。しかし、その実力は古今無双。その姿から国民から絶大な人気を誇っている。

名門貴族・ヴィンランド家当主であり、唯一無二の称号【王盾】を関する騎士。

暗銀の鎧を身にまとい、巨槌【ブラムド】を振るう騎士。その名を王盾ヴェルスタッド・ヴィンランド。












暗銀の鎧とブラムド装備したヴェルスタッドさんとか強すぎでは。
この人が仲間にいるという安心感。アンリエッタじゃなくても頼ります。
トリステイン強化計画はっじまるよー。

現在

ルイズの使い魔・火の英雄プレイヤー
タバサ・太陽の戦士
ヴェルスタッド参戦。ヴィンランド家の模様。




騎士と聖女と巨人の物語
1話


森の村

 

「はやく村長の屋敷に避難するんだ!!」

「あなた!!あなたもはやく逃げて!!」

「俺のことはいいから、二人ではやくいけ!!」

 

そう言って自分の妻と娘を逃がしながら、男性は目の前の異形をにらみつける。

顔の部分に巨大な穴が開いた灰色の巨人。海の果てからこの国に攻めてきた存在であり、すべてをなぎ倒す暴力の権化。

身体が恐怖で震え、ガチガチと歯がなる。勝てるわけがない。逃げ出したいと心が叫びだす。しかし、逃げ出せない、ここで自分が逃げれば妻や娘を巻き添えにしてしまう。

それだけではなく、村長の屋敷に逃げ込んだ村の人々も……少しでも時間を稼ぐために、男性はクワを構える。

 

ボォォォォォォ!!

 

巨人の咆哮が大気を震わせる。覚悟を決めておきながら、それだけで動けなくなる。

巨人が手に持った石の棍棒を振り上げる。誰か助けてくれ。声にならない叫び声。

その声が聞こえたわけではない。だが、男性にはその声が届いたのかと思うタイミングで巨大な弓が巨人の胸を貫く。

 

ズドンと音を立てて巨人の胸を矢が貫く。二発目、頭を突き刺さる。

何事だ、と男性が振り返った瞬間、銀色の影が黒い大斧を振り上げて巨人に斬りかかった。

 

 

 

「本当に助かりました……まさか、あの巨人を倒すとは」

「いえ、気にしないでください。私達も少し困ってましたから」

 

頭を深々と下げる老人、村長にエレオノールは気にしなくても言いと答えつつ、頭の中では様々な情報が飛び交っている。

 

(海の果てから攻めてきた巨人。村人はトリステイン王国を知らない。しかも、ヴァリエール家の領地にいたはずなのに、こんな村はまったく知らないし…ドラングレイグ王国なんて存在しないはず。……まったくここはどこなのかしらね。思い当たるのはあの霧。異界と通じていたと考えるしかない)

 

かつて、火の英雄も世界を跨いで旅をしていたこともあったらしい。特に霧に関してのエピソードは事欠かない。ならば、それを自分たちが経験しているということになるのだろうか。

 

「おじょ……聖女様。村の人々が全員馬車に乗り込みました。我々も行きましょう」

 

そう言って、彼女の護衛隊長、アスノは報告する。その後ろには村の子供たちが続いており、みなエレオノールを囲んで騒ぎ始めた。

 

「せいじょさまー、わたしたちとのりましょ!」

「ずるいー、ぼくもせいじょさまとのりたい!!」

「こりゃ!!聖女様を困らせるでない!!や、本当申し訳ない。みな聖女様を見るのは初めてで……」

 

騒ぐ子供たちを叱りながら、村長はまた頭を下げる。なぜ、エレオノールが聖女と呼ばれているのか。理由は簡単だ。デーモンに襲われ、プレイヤーが用意した服を着ているからだ。

その服は聖女の上衣と聖女のスカート。プレイヤーのいたところでは、聖女の正装であったが、ここでもそうなのだろう。そしてエレオノール自身、ヴァリエール家の令嬢。

高貴な雰囲気を身にまとっているので、村人たちは彼女が聖女だと認識しているのだろう。

最初こそ、戸惑った彼女たちだが、現状がわからない以上下手なことを言えないと判断し、異国から巡礼に来た聖女と、その一行ということにしようとアスノが提案し、今に至る。

 

「いえ、かまいませんわ。ほら、みんな馬車に乗りって安全なところにいきましょう」

「あんぜなんところー?」

「きょじんがこないところなんてあるの?」

「大丈夫よ。いまから国の砦に避難するの。そこなら、怖いことなんてないわ」

 

不安そうにする子供たちの頭を優しく撫でるエレオノールの姿はまさに聖女そのもの。

その姿にアスノも笑みを浮かべつつ、外に控えている部下たちに指示をだし、村人たちを乗せた馬車を出発させる。

村長の屋敷から出て、エレオノールは一人の男性の背中を見つめる。銀色の鎧と、黒い大斧。黒騎士の大斧を肩に担いだ騎士。プレイヤーだ。彼の視線の先には、先ほどまで屋敷の門を破壊しようとしていた巨人の亡骸。それも優に十を超えている。みな、頭を切り飛ばされたり、身体を両断されたりして、転がっている。村にいち早く駆けつけたプレイヤーが、大斧で大立ち回りを演じ、すべて仕留めたのだ。

 

「しかし驚きました。まさかあの巨人どもを簡単に倒すとは……いやはや、流石は聖女様の騎士様ですじゃ」

「え……ええ、私の自慢の騎士ですから……。プレイヤー、そろそろ出発するわ」

 

本来は妹の使い魔なのだが……現状は護衛だし、自分の騎士で良いかと考えつつエレオノールはプレイヤーを呼び寄せる。

用意された馬車にエレオノールと子供達。そしてプレイヤーが乗り込むと御者席に座っていたオストが鞭を入れ馬車を進め始めた。

 

子ども達と戯れるエレオノールを視界に収めつつ、プレイヤーは色々と考え始めた。

まず間違いなく、あの霧が原因でこの地に迷い込んだのであろう。色の無い濃霧は空間をゆがめる。かつて自分が旅してきた地で何度も見てきたし、体験してきた。重なり、離れていく様々な世界線。今回もその一つなのだろう。ならば、何か目的を達成すれば帰れるはず。

そして、その目的はおそらく……あの巨人に関係すること。見た目と同じく、強大な力と、それなりの知性を持つあの巨人たち。正直、戦うのが楽しみで仕方がない。純粋な力と力の勝負。巨人の暴力と自分の持つ純粋な力。どちらが上かと考えるだけで、心が燃え滾る。

 

ありとあらゆる敵を葬ってきた火の英雄の心が、ソウルが、火が燃え滾る。

それはすなわち……巨人たちにとって強大な敵が現れたことを意味していた。

 

 

森の砦

 

かつては立派な防壁を備えた砦だったのだろう。しかし、今や無残に壁の一部は砕かれ、廃材でその穴をふさぎ、周囲には朽ちた兵士、幾多の武器が突き刺さった巨人の亡骸が転がっていた。その光景を少し吐きそうになるエレオノールだが、それ気が付いたプレイヤーが大丈夫といった様子で、背中をさする。

 

「……ありがとう。あなた、本当に色々と察してくれるわね」

 

若干、頬を赤くしながら、エレオノールはプレイヤーを見つめる。吊り橋効果と言えなくもないだろうが、いままでの人生でこれほど強く惹かれた人がいただろうか。このまま自分の騎士になってくれたら……と考え始めるが、馬車が止まったことにより考えが中断される

降りると、村長が口ひげを蓄えた甲冑姿の男性と話をしていた。その風格に、プレイヤーがほう……と興味を示す。明らかに歴戦の勇士。強者の風格を持ち、ソウルと火も強力な力を感じる。砦の主にして、歴戦の戦士なのだろう。

村長との話を終えたのか、男性が近づいてくると片膝をつきエレオノールに頭を垂れる。

 

「遥か遠き異国の聖女よ。此度は我らが臣民を御救い頂き感謝につきませぬ。吾輩はこの砦の守護長、ドラモンド。よろしければ、聖女様のお名前をお聞かせ願えぬでしょうか」

「騎士ドラモンド、頭を上げなさい。私はエレオノール。トリステインと言う国より、この地に巡礼にやってきました。村人達のことなら、気になさらずに。あれを見たら誰だって助けるでしょう」

「その深き慈悲に感謝を。しかし、トリステイン……聞いたこともない国ですな。いや、申し訳ない。吾輩、この砦に詰めておりまして世情には疎いものでして」

「気にしていませんわ。小国ですし、戦時中ならば致し方のないこと」

 

申し我なさそうにするドラモンドに、エレオノールは気にしていないと告げる。小国と言ったが本来トリステインは大国と言ってもいい。それを知らないとなると、ますます異界の可能性が大きくなってきた。

 

「そう戦時中。あの忌まわしき巨人と戦いを繰り広げておりましてな……。ほかの砦も陥落し、前線の砦はここを残すのみとなってしまいました」

「撤退……もしくは、王都からの援軍は?」

「撤退すれば、巨人たちは更に内地まで進撃するでしょう。さすれば、無辜の民が犠牲になる。それは我々にはできませぬ。援軍に関しても、使者を出しておりますが……また日にちがかかるでしょうな」

「そうなると籠城ということですわね。見た限り、砦内に川がありますから、水は大丈夫でしょうが、食料はどうなのです?」

「食料に関しては、先ほど避難してきた者達の村に、兵団を派遣し調達してきます。村人たちは後方の村に移送し、そこで新たな生活を送るように手筈を整えます。や、聖女様は随分と戦の知識が深いご様子。このドラモンド、感服いたしました」

「父と母が色々と教えてくれたものですから」

 

戦においてもっとも重要なのは食料と水である。腹が減っては戦は出来ぬと言うように、まずは空腹を満たさねばどうにもならないのだ。砦内部には川もあるので、水の心配もないようなので、エレオノールは安堵する。そして、再び思考の海に潜る。

籠城するならば防壁が大切である。しかし、その防壁が見るも無残に砕けている。

……それならば修復し、強固にすればいいのではないだろうか。その術が自分たちにはあるのだから。

 

「騎士ドラモンド。よろしければ、私たちにもお手伝いさせていただけませんか」

「はっ!?や、確かにいくらでも人ではほしいですが、あなたは聖女様ですぞ!?そんな高貴なお方が、このような前線にいることもありますまい!!今すぐに、国元に帰られたほうが」

「このままではあなたや、この砦の兵士達も力尽きてしまう。そうなれば、巨人たちにより更なる被害が出るでしょう。それを聖女として見過ごすことはできません」

 

強い意志が籠った瞳でエレオノールはドラモンドを見つめる。名ばかりの聖女だが……彼女は誇り高きヴァリエール家の娘。異界とはいえ、無辜の民を、必死で戦う兵士を見捨てることなんてできないのだ。

意志を感じ取ったドラモンドは深々と頭を下げ、周囲にいた兵士たちに大声を出す。

 

「聞いたか、みなのもの!!我らには麗しの聖女様がついておる!!この戦、かならずや勝利し、生きて帰ろうではないか!!」

 

おおぉぉ!!!!

 

兵士たちは、拳を天に突き上げて、声を上げる。包帯を巻いた兵士も、砕けた盾を持つ兵士も、折れた剣を持つ兵士も、みなすべて勝利を信じて声を上げる。

その姿に、アスノと部下の騎士達の心は震わせ共に戦うことを誓い、二人のメイジは同じように杖を天にかかげ、持ちうる全ての魔法を使うこと約束し、オストは持っていた弓を握り、眼に闘志を燃やし、プレイヤーは……その顔に笑みを浮かべる。

 

 

まずは防壁の修繕の為に、エレオノールとメイジ達は土の魔法で壁を作り、強固な固定化をしかけていく。

一緒に作業にあたっていた兵士達は、驚いたようにしながらも、異国の魔術なのだと納得している。

 

「あの砕けた壁が元通りに…あんたらすごいな。おかげで、巨人の襲撃に耐えれるよ!」

「お役に立てたようで。強固な固定化もかけたから、簡単には壊れないくらい丈夫になってるはずだ」

「は―、本当、異国の地はすごいんだな。聖女様と言い、あんたらと言い、すごい人ばかりだな」

 

しきりに感心する兵士に、そうでもないといった様子でメイジは笑みを浮かべる。

 

「では、次の場所にむかおう。……くぉ、なかなか重い資材だな……」

「無理するなって。俺がもってくから、あんたは壁の修理の為に魔力ためといてくれ」

 

重い資材を持ち上げ、プルプルと震えるメイジの姿に、兵士は苦笑しつつその資材を受け取ると、ほかの壁の修復に向かう。

 

 

「爆薬を設置して、爆破して巨人を仕留めたらどうだ?火矢でなら、いけるだろう」

「考えたんだが、なかなか正確に射る使い手がいなくてな」

「それでしたら、自分にまかせてください。弓に関しては自身があります」

 

砦内部の一室では、アスノ・オストがほかの兵士達と作戦会議を開いていた。

地図上に兵士や、火薬樽を設置したり、バリスタの位置も考えながら、案を出す。

 

「爆薬の起爆はオストに任せるか。そこを突破してきた巨人たちにバリスタの掃射後、接近戦を挑むしかないか」

「わかってると思うが、奴らの攻撃にあたったら死ぬからな……防具なんて意味ないもんだと思ったほうがいい」

「なら、いっそのこと裸で戦うか?当たらなきゃどうということはないんだろう」

「はっ、そりゃ良い!!だが、かなり間抜けな戦場になっちまうし、俺はごめんだな」

「ちがいねぇな!!」

 

そう言って、兵士とアスノ達は笑いあう。それは悲壮ではなく、生き抜くと決めた力強い笑いであった。

 

 

 

「包帯を取り換えるから、腕を出して」

「せ、聖女様、そんなことしなくても……」

「人手が足りないのだから、気にしないで」

 

エレオノールも何もしないわけではなく、負傷者の手当てをして回っていた。

まさか聖女が手当てをしてくれるとは思ってもいなかった若い兵士は戸惑いながらも、腕を出す。

そこにエレオノールはプレイヤーから貰った三日月草を煎じた薬を塗り、きれいな包帯をゆっくりと巻いていく。

 

「はい。これで大丈夫ね。無理に動かさなければすぐに良くなるわ」

「あ、ありがとうございます!!」

 

若い兵士は照れて赤くなった顔を見られないように、バッと勢いよく頭を下げる。

それを見ていたほかの負傷者達はその若い兵士をからかう様にしてまくしたてた。

 

「おいおーい。こいつ照れてるぜー」

「確かに聖女様はお綺麗だからなー。こりゃ、人目惚れしたかな?」

「ちょ、なにをいってるんですか!」

 

慌てたようにする若い兵士を見て、さらに年配の負傷者は騒ぎ立てる。

その光景をおかしそうに見ながら、エレオノールは城門の見張り台の上にいるプレイヤーを見つけた。銀色の鎧に太陽が反射し、とても幻想的な姿。

 

「あー、こりゃだめだな。聖女様、あの騎士にホの字だな」

「そ……そうなんですか……」

「落ち込むなって。若いんだから生きてりゃいい出会いがあるさ」

 

 

 

 

 

見張り台の上では、プレイヤーが森に監視の目を光らせていた。先ほどから、嫌な予感がしている。戦いが近づいている予感だ。

 

「貴公も感じ取ったか。そろそろ奴らがやってくるだろう」

 

同じように見張り台に上ってきたドラモンドが、目を細めて森の木々を注意深く観察する。

確かに、先ほどから木々が揺れてざわめきだしていた。

 

「村の者たちから聞いたぞ。攻めてきた巨人たちを薙ぎ払ったと。流石は聖女付きの騎士。実に武勇に優れているのだな」

 

ドラモンドも直感で感じ取っていた。このプレイヤーと呼ばれる騎士の圧倒的強さを。巨人に負けぬ力を持ち、縦横無尽に戦場を駆ける姿まで想像できるほど、彼の秘めたる物は大きい。

「聖女様や貴公らには感謝せねばなるまいな。お蔭で兵士の士気もあがり、砦も見違えるまでに復旧出来てきた。……これで、我々は戦える。あの巨人どもをこの地からたたき出すことが出来る」

 

不屈の闘志を宿したドラモンドに、プレイヤーもそうだなと言った様子でうなづく。

確かに巨人達は脅威だが……倒せない相手ではないのだ。

それに、プレイヤーには見えていた。この砦の至る所に書きしめされている白い文字を。

エレオノールだけでなく、ドラモンドも気が付いていない。この白い文字。

それが砦の至る所。特に城門の外にビッシリと書き込まれている。それが意味することを理解したプレイヤーは、その文字も注意深く眺める。

 

ボォォオ……

 

轟く雄叫び。激しく揺れ、なぎ倒される木々。ドラモンドとプレイヤーは眼を合わせ……頷いた。

 

「総員戦闘配備!!奴らがきたぞ、バリスタ用意!!」

 

ドラモンドが見張り台から身を乗り出しながら指示をだし、砦内部の広場が騒がしくなる。

兵士が武器を携え集まりだし、列を組み、出撃の準備を整えるのを見ながら、プレイヤーは見張り台から飛び降りて、門の外に着地し、先黒騎士の大斧をソウルから取り出して肩に担ぐ。そして、そのまま地面の白い文字【召喚サイン】に触れる。

重なり合う世界から、心強い白ファントム・または白レイスを呼び寄せたのだ。

視線の先には、森を抜けて現れた巨人の軍勢。

 

ボォォォォォォ!!!

 

巨人達が一斉に吠えて向かってくる。その咆哮を一身に受けながらも、プレイヤーも声なき咆哮を上げる。それは戦いの始まりを喜ぶ方向。戦い続ける喜びを得た咆哮。

そんな彼の両隣に白レイス達が現れた。

岩の様な甲冑と大盾、巨大な槌を携えた騎士と、ローブを身にまとい、結晶で包まれた杖と魔術を強化するナイフを持つ魔法使い。

二人は、軽くプレイヤーに頭を下げ、岩の騎士は自分の火をもやし、内なる大力を呼び起こし、魔法使いは杖を振るい、自分の周りに浮遊するソウルの矢を生み出す。

城門が開き、兜をかぶったドラモンドを先頭に、兵士たちが槍を、剣を構え、巨人達をにらみつける。

「いまこそ、我らの武勇を示すときぞ!!総員、突撃ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

おおぉぉぉおおおお!!!!!!!

 

巨人の咆哮に負けぬ声を上げて、兵士が、ドラモンドが、白レイスが、そしてプレイヤーが得物を振り上げて巨人達に立ち向かう。

岩の騎士の槌が巨人を叩き潰し、魔法使いの矢が、結晶の息吹が巨人を貫き、プレイヤーの大斧が巨人を両断する。

 

今ここに、騎士と聖女と巨人の物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




エレオノールの口調がかなりおかしい気がする今日のこの頃。
文才がなーい時間がたりなーい。

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