ゼロの使い魔 虚無の騎士   作:へタレイヴン

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土くれ編最終話 騎士と主と舞踏会

学院長室

 

「みなの無事の姿を見る事が出来て、本当に安心したぞい。よくぞ戻ってきてくれた」

「えぇ、まったくです。本当に良かった」

 

院長室に入ると、オスマンが柔らかな笑みを浮かべ、傍らに立っているコルベールも安堵の表情を浮かべていた。

しかし、ルイズは少しだけ微妙な表情をしながら、フーケを取り逃がした事と赤い瞳の宝玉が無くなった事を2人に告げる。

 

 

「学院長、申し訳ありません。太陽の書は取り戻したのですが、フーケを取り逃がし……赤い瞳の宝玉も砕けてしまいました」

「なんと、そうであったか。いや、もしかするとあの宝玉は、砕けた方が良かったのかもしれん。太陽の書だけでも、戻ってきたのじゃ。それで良しとしよう」

 

ほんの少しだけ、眼を細めて考えるオスマンは、宝玉を失ったというショックよりも安堵の方が大きい。

それを見て、タバサは彼が宝玉の性質を正しく理解していたのだと分かったが、口には何も出さない。誰しも、聞かれたくないことがあるのだから

ルイズは、少なからず怒られると思ったようだが、盗賊から秘宝を取り戻し、怪我もせずに戻ってきた大事な生徒達である彼女達を怒る理由など少しも無い。

 

 

 

「フーケの事も後日、正式に王宮に報告するとしよう。コルベール君、詳細を纏めておいてくれるかの?」

「はい、わかりました。少々、時間がかかりますので、私はここで失礼します。3人とも、貴女達の活躍は、私の誇りです。本当に良く頑張りましたね」

 

コルベールは、にこやかな表情でルイズ達を褒めると、小さく頭を下げて学院長室から出て行った。

それと入れ替わりに、馬を返し終えたプレイヤーが、入ってくるとオスマンは、彼にも優しげな声を掛ける。

 

「おお、騎士殿。よくぞ、生徒達を守ってくださったな。改めて、礼を言いますぞ」

「当然のことをしたまでだ、だとよ。まぁ、相棒にとっちゃ、朝飯前だろうさ」

 

小さく頭を下げるプレイヤーと、その背中でカチカチと鍔を鳴らしてデルフは彼の言葉を代弁している。

 

「ほっほっほ。流石は歴戦の騎士殿じゃのう。うむ、君の様な騎士だけ居れば、王宮も少しはマシになるんじゃろうて」

「こんな化け物騎士がホイホイいたら、しゃれになんねぇぞ、じいさん。……あん?後で、毒脂塗ってやるって?ごめんさいすいませんでしたおれがどくどくなっちゃいます」

 

少しだけ調子に乗っているデルフに、毒脂をちらつかせて、脅しを掛けてみる。

すると、デルフが心なしかブルブルと増える出したので、効果ありと判断し、そのまま放って置いて、プレイヤーはタバサが持っている太陽の書に視線を向ける。

その視線に気がつき、オスマンも目を細めてタバサを見つめ、ほう……となにやら納得したような顔をした。

 

「なるほど。ミスタバサは太陽の信徒の証を、もっておったのか。ふむ、ならばその書は君に譲ろうではないか」

「良いのですか、学院長?」

「うむ、わしは既に充分すぎるほど、書の内容を理解しておる。ならば、新たな後身に託すのが、わしの役目じゃろうて」

 

ほっほっほと笑うオスマンに、タバサは深々と頭を下げる。プレイヤーも、よかったなと言葉を送りつつ、頭の片隅で、オスマンの太陽の戦士の契約を結んでいるのかと考えていた。

確かに、この老人の持つソウルと火の大きさは、常人より遥かに多い。見た目以上の長い年月を生き、今でも優れたメイジなのだと言う事は分かる。

ルイズとキュルケも、小声でタバサによかったねと声を掛けている辺り、3人の仲は、随分と良くなっているのだろう。

 

「さて、この場はここでお開きにするとしよう。盗賊騒ぎで忘れておるじゃろうが、今日の夜は『フリッグの舞踏会』があるからのう」

「そうだったわ!!忘れてた!!ああん、ドレスとか今から選ばないと!!」

「ほっほっほ。ミスタバサだけにご褒美はずるいからの。ドレスや宝石にかかった費用はわしが負担しよう。せめてもの、君たちへのご褒美じゃて」

「良いんですか!?」

「うむ、今夜の主役は君達じゃ。存分に着飾ってくるとよかろう。さぁ、行きなさい」

 

キュルケが眼を輝かせ、部屋から出て行くのを笑いながら見るオスマン。

ルイズやタバサも多少、慌てながら一礼して出て行くが、プレイヤーだけはその場に留まり動こうとしない。

 

「プレイヤー、どうしたの?ほら、行くわよ?」

 

出て行こうとしないプレイヤーにルイズが声を掛けるが返って来たのは、先に行っててくれというもの。

 

「ほっほっほ。どうやら、騎士殿は少しだけ話があるようじゃな。うむ、ワシも少しばかり聞きたい事があるからのぉ。丁度良い機会じゃて」

「え、ですが……わ、ちょ……こら、プレイヤー!!背中を押すんじゃないの!ちょ、タバサも腕を引っ張らないでよ!」

「お父様の邪魔しちゃ駄目。それに、はやくドレス選びに行かないと時間がない」

 

なにやらルイズが言う前に、雰囲気を察したタバサがグイグイと彼女の手を引っ張って強制的に退出させる。

その後姿を、微笑ましいなと言った様子で見送りながら、扉が閉じるのを確認するとプレイヤーはオスマンと向き合った。

 

「ふむ、さて、騎士殿よ。話をする前に、少しだけ確認したいことがある。よろしいかな?」

 

確認とは何のことだ?と首を傾げるプレイヤーだが、オスマンは徐に立ち上がり構えを取る。その姿は正に一軍の将に相応しい圧力を持ち、プレイヤーもそれに負けぬように構えていた。

世界が揺れるような圧力と圧力のぶつかり合い。その時、オスマンが眼を見開き、動いた。

 

「太陽万歳!!」

 

ババ!!と音を立てて、オスマンとプレイヤーは同時に太陽賛美のポーズを取り合う。……ただ、2人の男性が無言でYのポーズをしている姿は、シュールを通り越して……笑うしかない。

10秒ほどお互いのポーズを凝視した後、プレイヤーとオスマンはガッ!と音が出る様な熱い握手を交わす。

 

 

「うむ、やはり貴方は我が友の太陽であり、偉大なる火を継いだ者であったか」

 

オスマンは自身の机の引き出したから、太陽のメダルを取り出して懐かしむように机の上に置くと、プレイヤーの事を見つめる。

 

「なぜ、知って居るのか、と言う眼をしておるな。なに、随分と古い話じゃよ。あいつは本当に爽やかな奴じゃったよ、太陽の戦士、ソラールは」

「相棒、ソラールって何者だ?……太陽の戦士であり、太陽馬鹿?……そんで、タバサの嬢ちゃんのご先祖様だぁ!?」

「ほほ、ミスタバサがあやつの子孫であったか。これは実に愉快じゃな」

 

実に楽しそうにオスマンは声を出して笑っている。そして、一頻り笑い終えると、こほんと咳払いをして姿勢を正した。

 

「そうか。ソラールが言うには、召喚された者は時間の概念を無視するらしいからの。きっと遠い昔に、あやつの血筋がここにきたのか」

「……なんつうか、相棒ってすげぇ所の住人だったんだな。いや、歴戦……と言うか、ありえねぇ位戦ってたのは分かってたけどよ」

「ほっほ。偉大なる太陽の火を持つ騎士殿だからの。おっと、聞きいたことは太陽の書についてじゃろう。察しの通り、ソラールから託されたものじゃよ。

偉大なる太陽の戦士達を広げてくれ、とな。だが、その素質があるものは中々に現れなかったのでな。宝物庫に保管しておいたんじゃ」

「それじゃ、あの瞳の宝玉とどうなんだ。相棒が言うには、かなり危険な道具らしいじゃねぇか」

「あれは古い地下から発見されたものじゃ。持つ者に不幸を呼ぶと言われた曰く付の物でな。厄介払いと言う事で、ワシの所に回ってきたんじゃよ」

 

持つ者に不幸を呼ぶ赤い瞳の宝玉、改めて赤い瞳のオーブ。恐らくだが、持ち主はあの黒霊に悉く殺され、人間性を吸い取られたのだろう。

ならば、今回砕いてしまってよかったのだと、改めて認識してプレイヤーは胸をなでおろす。

しかし、まさかここでソラールの事を聞くとは思っていなかったので、驚きも大きい。

 

「うむ、あやつの事は後で語るとしよう。偉大なる火を持つ騎士殿よ。どうじゃねフリッグの舞踏会に参加してみては?」

「あ~、じいさん。通訳しなくても分かると思うが、こいつの顔を見てくれ。どうおもう?」

「すごく……嫌そうな顔じゃ。ううむ、君も宝物奪還の功労者なのだから、参加して欲しいんじゃが。勿論、服も用意するが……どうじゃね?」

 

オスマンの申し出はありがたいようだが、プレイヤーは心底嫌そうな表情をしてしまう。

パーティーなんて、出奔する前に参加した程度だし、そう言う煌びやかな所は、あまり得意ではなかったのだ。

しかし、流石に色々と用意されているようでは、断るのも気が引ける様だ。まぁ、見物くらいはしておくか……と言った様子でプレイヤーは首を縦に振る。

 

「頷いてくれて安心したぞい。それでは、別室にメイド達を待機させておる。存分に着せ替え人ぎょげふんげふん……服を選んでもらうがよろしかろう」

 

あれ、今こいつ着せ替え人形とか言わなかったか!?と慌てるプレイヤーを尻目に、オスマンは備え付けの鈴を鳴らしてメイド達を呼びよせる。

その後、シエスタを筆頭としたメイド達の着せ替え人形にされたり、逃げようとしてマルトー達コックに押さえつけられるプレイヤーなのであった。

 

 

 

 

 

アルヴィーズの食堂。

 

豪華な装飾と豪華な料理が並ぶダンスホール。多くの貴族の少年少女たちが音楽に合わせ踊り、又は話に花を咲かせている。

そんな中、一際視線を集めながら、壁際に佇む1人の男性。

ボサボサだった髪は、しっかりと梳かされよく分からない手入れ用の液体を塗られ、サラサラと靡き、キラキラと輝いているようにも見える。

白を基調とした服であり、銀細工で作られた胸当てを装着している。恐らくは儀礼用の物なんだろうな、と深々とため息を零して、男性――プレイヤー――はワインを口に運ぶ。

 

 

「あん、どうしたよ、相棒?……え、落ち着かないって?そりゃそうだ。んな様式美だけの服よりも、あの鎧姿の方が似合ってたぜ?」

 

壁に立てかけてあるデルフがカチカチと面白そうに声を出す。確かに、この儀礼用の服と胸当てよりも、着慣れたアルトリウスの鎧のほうがマシのようだ。

まぁ、仕方がないか……と考えていると、周りがなにやら騒がしい。なぜか分からないが、プレイヤーの周囲にドレス姿の女子生徒達が集まりだしていた。

 

「あの、騎士様!よろしかったら、私と踊ってくださいませんか!」

「わ、私と踊ってください、騎士様!」

「ちょっと、私が先に声を掛けたんだから、邪魔しないでよ!!」

 

どうやら、プレイヤーの事をダンスに誘いに来た女子生徒達の様だ。ギーシュのゴーレムだけでなく、フーケのゴーレムも打ち倒したと言う噂は、既に学院中に広がっていたのだろう。

なにより、他の男子生徒達よりも大人っぽく、無口――喋れないだけなのだが――なプレイヤーはミステリアスで魅力的に映るのだろう。

流石に、これはまずいと判断したプレイヤーは、女子生徒達が言い争っているうちに逃げる事にした。正直、ダンスも勘弁願いたいのだろう。

コソコソと気が付かれないように逃げると、一目散に中二階と言った作りになっているテラスまで退避すると、一息つく。

 

「おうおう、相棒。随分とモテるようだな。あん?もう疲れたって?おいおい、ゴーレム相手に戦ったおめぇが良く言うぜ」

 

はぁ……と深々とため息を零しながらプレイヤーは、夜空に輝く双月を見上げる。開け放たれた窓がふいてくる風が実に気持ちが良い。

しかし、改めて眼下のホールに視線を移すが、凄いものである。キラキラと光る金銀宝石の類、煌びやかな服で見ていて眼がチカチカするほどだ。

ふっと視線を移すとタバサとキュルケがダンスホールに入ってきた。

キュルケは胸元が開いた真紅のドレスを、タバサは黒いシンプルなドレスを身に着けている。

案の定、キュルケは男子生徒達に囲まれ、笑いながら談笑を始め、タバサにも数人の男子生徒が近寄っていくが本人は興味が無いのか殆ど無視していた。

すると、テラスに居たプレイヤーに気が付いたのか、タバサは少しだけ嬉しそうな表情をして駆け寄ってきた。

キュルケもプレイヤーに気が付いたようだが、囲まれて身動きが取れないので小さく手を振っているので、彼も小さく手を振り替えしておく。

 

「お父様、どうですか?」

 

駆け寄ってくるなり、タバサはプレイヤーの前でクルリと一回りしてドレス姿の感想を聞いてきた。

小柄な彼女には黒くてシンプルな形のドレスは本当に似合っており、胸元には彼女の髪色と同じ青い宝石が輝いていた。

プレイヤーはタバサの全身を一通りながめ、小さく笑って、とても似合っていると答えながら頭を優しく撫でる。

ん~と、彼女も眼を細めて嬉しそうなしながらプレイヤーの腰にギュッと抱きついた。あまり人が回りに居ないと言う事もあって、甘えん坊モード全開のようだ。

 

「ほらほら、相棒、タバサの嬢ちゃん、まずは乾杯でもしな。そこのテーブルに、ワイングラスもあるしよ」

「デルフ、たまには良い事言う。私が持ってきますので、お父様は待っててください」

 

テーブルにおいてあったワイングラスを持つと、2人は笑みを浮かべながら、ワイングラスを近づけあう。

ワイングラス同士が触れ合い、「チン」と耳に良い音を立てる

 

「楽しんでいますか?……え、ダンスに誘われて大変だった……ですか?」

 

一瞬、きょとんとしたタバサだったが、改めてプレイヤーの姿を見れば納得できる。

逆に、踊らないのか?と聞かれたタバサは、ふるふると首を横に振り、今度はプレイヤーの左腕に抱きついた。

 

「お父様以外と踊りたくありません。キュルケは、沢山申し込まれているようですが」

 

困った娘だなと苦笑を浮かべながら、並んでキュルケのほうに視線を向ける。囲んでいる男子の数は更に増え、よく見ると所々で困ったように笑っている。

恐らくダンスの誘いを受けているのだろうと考えつつ、ふむ……とプレイヤーは、タバサに眼を向けた。

 

「はい……え、一曲踊らないか……ですか?あ、その……はい、ぜひお願いします」

 

ほんの少し戸惑いを見せたタバサだが、最後には嬉しそうな頷いてプレイヤーの手を取る。

ホールに下りて、注目を集める2人だが、無視して曲にあわせて踊り始めた。ゆっくりと、だが華麗にステップを踏みリズムに合わせて踊る姿は、本当に優雅なものだ。

長いようで短い曲が終わり、2人はそれぞれ礼をすると先ほどのテラスに戻ってきた。

戻ってくる途中で、タバサは男子生徒達にダンスを申し込まれていたようだが、全てキッパリと断ってしまったらしい。

それには、流石のプレイヤーも苦笑を隠せなかった。このままで、嫁に行けそうにもないな……と頭の片隅で考えている辺り、彼も彼で親ばかなのかもしれない。

再びテラスでのんびりとするかと思った矢先に、ダンスホールの扉が開き衛士が声を上げた。

 

「ヴァリエール公爵息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢ご到着!!!」

 

そして衛士がその場を避け頭を下げる。そして白いドレスに身を包んだルイズが姿を現した。

長い桃色がかった髪をバレッタにまとめ、純白のパーティドレスに身を包んでいる彼女の姿は可憐にして優雅、そんな言葉が似合いそうであり、多くの男子生徒達が息を呑む。

ゼロと馬鹿にしてきた少女がここまで綺麗になるとは思わなかったのだろう。まぁ、それ以前に決闘騒ぎの対応など、何処か大人っぽくなってきていたルイズの魅力に気が付き始めていた男子生徒達は、これで完全に彼女に恋心を抱いただろう。我先にと、ダンスを申し込んでくる男子生徒達に、流石のルイズも焦っている。

やれやれ、と言った様子でプレイヤーは、ワイングラスを置くと彼女の元に向かうことにした。

 

「はい、私はここに居ますので。……ええ、大丈夫です、お父様」

 

ほんの少しだけ寂しそうにするタバサの頭をポンポンと撫でながら、プレイヤーは主の下に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「ルイズ……いや、ミス・ヴァリエール!!僕と踊ってくれませんか?」

「いや、ここは僕と踊ってください!!以前から、貴女の事を誘おうと思っていたんです!」

「いやいや、私と踊ってください!君とならば、素敵な夜を過ごせると思うんだよ!」

「あ、いや……ちょっと、通して欲しいのだけれど」

 

次々とよってくる男子生徒達に戸惑いながら、前に進もうとするルイズだが、人数が多くて中々思うように進めない。

何よりも、こう露骨に掌を返されては嫌になるのも当たり前だ。それに、彼女は男子生徒達と踊ろうとは考えていないし、探しているのはただ1人だけ。

すると突然、グイっと誰かがルイズの腕を引っ張り寄せてしまう。「あっ」と小さく悲鳴を上げながら、ルイズはポスっと誰かの胸の中に飛び込んでしまった。

慌てて顔をあげると、そこには捜していた人物、プレイヤーの笑顔があった。

 

「プレイヤー……!!え、えぇ、ありがとう。私は大丈夫よ」

 

探していたプレイヤーを見つけた事と、ここから開放されると言う2つの安堵がルイズの表情を和らげる。

まだ何か誘おうとしている男子生徒達をキッパリと無視しながら、プレイヤーはルイズの事を優しく輪の中から連れ出してくれた。

少し離れた壁際で、ふうと息をつくルイズに大丈夫か?と問いかけつつ、プレイヤーは周囲に眼を配り男子生徒達を近づけないようにしている。

 

「えぇ、貴方のお陰でね。はぁ、来たばかりなのに、少し疲れちゃったわね」

 

クスリと笑みを浮かべるルイズに、違いないなと言いながらプレイヤーは隣に並んで壁に背を預ける。

 

「ねぇ、プレイヤー……えっと、どうかな……わ、私のドレス姿」

 

ほんの少しモジモジとしながら、タバサと同じように感想を聞いてくるルイズに、笑みを浮かべつつプレイヤーは、とても似合っていて可愛いと返しておく。

実際に、似合っているし、元が可憐なルイズの事を更に可愛くさせている。これならば、放って置かれないだろうなとプレイヤーも納得していた。

可愛いと言われ、ルイズは顔を真っ赤にしながら、小さく「ありがとう」と返しながら、プレイヤーの手を握る。

 

「プレイヤー、ここってなにをする所だったかしら?」

 

ダンスホールだが?と返すプレイヤーに、ルイズはにっこりと笑顔を浮かべて、その場でドレスの両端を持って優雅に一礼すると、手を差し出してきた。

 

「なら、私と踊ってくださいませんか。騎士様」

 

流石にそう言われても、プレイヤーも断れずに、喜んでと答えながら、ルイズの手を取り踊り始める。

そうして踊っていると、気が付けば2人はホールの真ん中で、優雅にステップを刻んでいた。天窓から覗く月明かりが優しげに2人を照らす。

 

 

まわるまわる、優雅に踊る。

 

 

「本当に、貴方ってなんでも出来るわね。礼儀正しくて、強くて……呆れちゃう位優しくて」

 

そうだろうか?と首を傾げるプレイヤーに、そうよと答えてルイズはクスクスと笑みを零す。

 

 

まわるまわる。クルクルまわる。

 

 

「ねぇ、プレイヤー。何時も私の側に居てくれて、ありがとう。本当に貴方の事を召喚して、良かったと思っているのよ?」

 

いきなり、何を言うかと思えば……。自分は彼女の使い魔であり、支えるのが役割なんだろう?とプレイヤーは、さも当然だと言う様に答える。

 

「そっか。……ねぇ、プレイヤー。これからもずっと私の側に居てくれる?」

 

勿論、返って来た返事は当然だという物。

 

「……プレイヤー、ありがとう。これからも、よろしくね」

 

 

 

踊る踊る。くるくる踊る。まわるまわる月の下で優雅に踊る。

無限のソウルと偉大なる太陽の火を宿す騎士は、小さき虚無の光宿す少女とであった。

少女は頬を染め幸せそうに笑い、騎士は優しく太陽の暖かさで見守り続ける。

2人の旅路に、偉大なる太陽の導きがあらんことを……。

 

 

 

召喚~土くれ編、終了

 




これで召喚~土くれ編は終了です。
次回から、ルイズの里帰り編を書いてから、アルビオン編に行きます。
最近、白霊で召喚されない今日この頃。
う~ん、105とか107とはだと呼ばれにくいのだろうか。
そして、妄想力が枯渇してきました……ぞ(ガクッ

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