プロ雀士、日常の記録   作:Lounge

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瑞原はやり・ハートビーツ大宮選手兼任監督
43才、既婚。一子あり。本姓は白築。
保有タイトルに永世2冠(西・北)、永世大四喜位がある。
幼少期より麻雀の腕とともにローカルアイドルとしての知名度も高かった。麻雀の強豪で芸能活動が可能であった朝酌女子高に進学、1年時からレギュラーとしてインターハイ地方大会3連覇。3年時にはインターハイ全国大会で決勝進出、土浦女子との死闘の末準優勝。
プロスカウトを断って日本最高の学府とされる神泉大理科1類に進学。一方で芸能活動も本格化し、春日井真深より牌のおねえさんを引き継いで二代目を襲名。さらに、アマチュアにもかかわらずタイトル戦に出場、南浦聡より北冠を奪取するなど多方面に渡って活躍する。なお、この北冠は今に至るまで一度も陥落していない。
大学を卒業するにあたり、大学院に進学し研究を続けるか、芸能活動を続けるかの選択を迫られ、芸能活動を選択。このとき、アイドル生命には限りがあることから、所属事務所であるハートビーツプロを母体にプロ麻雀チーム・ハートビーツ大宮を設立し、自ら選手と監督、GMを兼任する。ハートビーツ大宮は翌年M1ジ・リーグへの昇格を果たし、2年後にはリーグ優勝、日本一となった。
32才の時、結婚と牌のおねえさん引退を発表。大宮所属の原村和が三代目を襲名した。33才で長女を出産。育児が影響し東・南冠陥落。永世4冠を逃した。


3.瑞原はやり(大宮)

大宮、手堅く一勝 (2026.11.16)

 

日本シリーズ第一戦、ジ首位の大宮は監督瑞原が自ら先鋒としてナ首位横浜の先鋒三尋木と直接対決。叩き合いが予想されたが、大阪の園城寺を巻き込み三つ巴となった。先鋒が喰われた恵比寿は次峰に大星を投入し、横浜が脱落。大宮は中堅に渋谷を送り、横浜を飛ばして勝ち星を収めた。大宮の瑞原兼任監督は「恵比寿が怖い」と一言。先鋒の失点を次峰だけで倍返しした恵比寿に警戒する様子を見せた。一方、ダンラスで中堅飛びとなった横浜の篠宮監督は「まあこういう日もある。麻雀に重要なのはつまるところ運だ」と淡々とコメントしたが、インタビュー後ロッカールームに大きな音と監督らしき怒鳴り声が響いていた。(スポーツ報知)

 

順位 チーム 得点 得失点差

1位 ハートビーツ大宮 1850 +850

2位 恵比寿エンジェルバズーカ 1440 +440

3位 大阪ドミーネーターズ 820 -180

4位 横浜ロードスターズ -110 -1110

 

 

 

「We're Heartbeats!」

マイク片手に観客に呼び掛けると、

『大宮ーーーーーー!!!!!』

観客から大きなレスポンスが返ってくる。このチームもファンが増えたものだ、と瑞原はやりは感慨深いものを感じていた。

 

大学を卒業するとき、大学院に進まずに麻雀と芸能の道を取ったのは、ひとつには真深さんから受け継いだ牌のおねえさんの立場をそう簡単に手放して良いものかと考えたからだ。真深さんが15年もの間一人で切り開き、培ってきた牌のおねえさんという肩書きの重みはたった4年ぽっちで投げていいものでは決してなかったし、なにより小さい頃からの夢だったその立場は、4年努めた程度で満足できるものではなかったのだ。だからこそ私は、研究者として最高の環境たる神泉大の誘いを蹴って芸能活動へと傾いた。

 

プロ麻雀チームを立ち上げたのは、自身の活動をより確固たるものとするためだった。牌のおねえさんの役割は、主に子どもに麻雀の楽しさを教えることである。けれども麻雀の楽しさを語るためには、相応の実力が必要だ。大学卒業時点ですでに大四喜位に就きフリーランスプロとなっていた私は確かにその時点では教える立場にあってよい実力を持っていたが、今後いつタイトル陥落するかはわからないのである。しかし、一度スカウトを蹴った私をどのチームもおいそれと獲りにはこなかった。そこで、私は事務所の社長に直訴して麻雀チームを立ち上げたのだった。

 

事務所の名にちなんで、チーム名はハートビーツ大宮。完全なプロチームを目指し、つてを辿って幾人かのプロに移籍してもらうことができた。社長との約束のため、所属プロは全員ハートビーツプロにも所属し、年棒はそこから支払われた。これは今も同じである。

 

こうして私はプロ雀士としての安定性を手に入れたが、チームが弱くては自身の評価も下がる。これを避けるために私たちは必死で練習し作戦を考え、対戦相手を分析して勝利を重ねた。結果、チーム結成1年目にしてM1ジ・リーグへの昇格を決めた。この年のメンバーは、移籍や引退でバラバラになった今でもよく飲む仲間である。

 

今や大宮はジ首位常連の常勝軍団となった。初めは応援席に私のファンクラブ会員がいる程度だったファンも増え、試合のチケットはプレミアがつくと聞く。私が牌のおねえさんを引退し、結婚して子どもを産んでもついてきてくれるファンはきっと、もう私だけのファンではなく、“ハートビーツ大宮のファン“なのだろう。

 

「はやりーん!」

私を呼ぶファンたちの声に大きく手を振って応える。

「みんな、今日は応援ありがとー!みんなのおかげで日本シリーズでも勝ち星一番乗りだよ☆連勝目指して明日も応援よろしくねー!」

ファンに心から感謝。大宮コールを背に、私は観客席を後にする。耕介さんと娘の真智が待つ家に帰り、しばし翼を休めるために。




【追記・4/6】設定上無理が生じたので、はやりの保持タイトルを変更しました。

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