プロ雀士、日常の記録   作:Lounge

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2.同窓会のような飲み会 その2

「それじゃ、乾杯しましょうか!」

 久が音頭をとって、皆で乾杯する。

 今日集まった面子は12人。残念ながらプロでないメンバーは都合がつかなかったそうだ。今日私たちは休みとはいえ世の中は平日、サラリーマンが身を削って働く普通の日である。長野から出てこれないのも仕方ない。

「しかし、改めて見てもすごいメンツが揃ったわね。オールスターよこれ」

 参加者を眺めて久が言う。

「日本シリーズ出場チームのメンバーばかりですからね、エース級がたくさん」

 返すのは福路美穂子。すでに酔っているのか瞳がうるんでいる。まだ乾杯して一杯飲んだかどうかというところだが、どうやら彼女は酒に弱いらしい。

「にしても、この4チームだけに選手が集中しているというのも不思議な話だよな。なにか理由はあるのか?」

 ゆみはふと頭に浮かんだ疑問を口にしてみる。

「確かに、地元でプロになるからって理由じゃ長野出身者が全員佐久にいなきゃおかしいものね。私はチームとの相性で選んだけど」

 と久が返す。彼女は入団テストを受けてプロ入りしたクチなので、好みで決めたということらしい。

「相性か…相性なあ…。そういう選び方もあったのか」

 菫が話に入ってきた。

「弘世さんはなぜ横浜に?」

 ゆみが聞くと、

「菫でいいわよ」

「なんで久が言うんだ。まあ私は進学でみなさんより遅れてプロ入りの機会が来たので…その時の成績と勢い、あとホームの場所で決めましたね」

 なるほど。確かに4年目の成績は関東では横浜がダントツの勢いだった。逆に恵比寿は建て直しの時期だったのではなかったか。

「ま、でも私が入団してから恵比寿酷かったからね。プロでも悪待ちやんなきゃなんないのかって2部落ちしたときに思ったわよ。菫は横浜でよかったんじゃないの?メンバー一番やりやすいでしょ」

「まあ、やかましい後輩も手のかかる同期もいないしな。厄介すぎる先輩はいるが」

「三尋木さんはね…なに考えてるのかわからないから…ゆみはなんで佐久だったの?」

 突然久が話を振ってきた。ゆみはどう答えようかとしばし考える。

「うーん…はっきり言ってプロになれると思ってなかったからあまり調べてなかったし、佐久からスカウトもらったときに実力を鑑みてプロ入りするならここだろう、って思ったからだな」

「でも照がチームメイトになって実力もブレイクスルーを起こした結果、佐久があんなに強くなっちゃった、みたいな?」

 久はニヤニヤしている。

「いや、私がというよりは多分モモがブレイクスルーを起こしたんじゃないか?魔境NAGANOで立ち回りができる程度には」

 実際、いまモモと打つと7割方負けるようになった。ゆみは密かに焦りを感じていたりする。

「でも、加治木さんも強くなってると思います。私が大将オーダーのときはほとんど負けますし」

 とゆみをフォローする美穂子に、

「美穂子は横浜に入った理由ある?」

 久が尋ねた。

「私は三尋木さんから誘われたので…あと、一度長野を出てみたいと思ったんです」

「あー、長野を出たいねぇ…それもあるわね。じゃあ逆に東京から長野に戻った人はどうして佐久だったのかしら?」

 久の問いかけに、ゆみは左を見る。

「ほへ?」

 質問の相手は持ち込んだおかしをモリモリ貪っていた。

「照。店で持ち込んだおかしを食べるな」

 菫が咎めると、

「店の人に許可はもらった」

「マジか」

「で、佐久に入った理由だっけ?」

「ええ」

「理由はいくつかある」

 照はおかしを食べるのをやめ、珍しく真面目な顔をした。

「まず、佐久が長野のチームであること。最後のインハイ、個人戦の決勝で咲と当たったときにね、結果がどうあれ一度長野に帰ってきてほしいって頼まれたんだ。で、決勝で私は咲に負けたでしょ?だから、私個人のけじめとして長野に戻ろうと決めたというのが一つ」

 ここで一旦言葉を切って、照はゆみを見た。

「もう一つには、佐久からスカウトが来なかったことがあるんだよね。自分で言うのもなんだけど、私は咲に負けるまで無敵のチャンピオンやってたわけだ。当然どのプロチームもスカウト送ってくるだろうなって思ってたの。そしたら佐久だけスカウト寄越さない。他のチームからは電話めっちゃかかってくるのに、佐久からだけは音沙汰がない」

 それでこっちから連絡してみたの、と照は続けた。

「そしたら佐久の担当の人は、『うちはスカウト枠をもう確保しましたので、残りは入団テストからですね』って言うじゃない。面白い、じゃあ入団テスト受けて佐久に入ろうじゃない、ってなった」

 まあでも、一番の理由は咲との約束だよ。照はそう締めて、グラスのワインをすっと飲み干した。

 

「それで佐久に入ったのはいいけど、せっかく一緒に住みだしたのに咲はすぐ結婚して家出ちゃったんだよね…今は私と父さんの二人暮らし」

「本当、咲が須賀くんと結婚するって連絡してきたときはびっくりしたわよ。アラサーの私たち差し置いて一人抜け駆けしちゃうんだもの」

 照のぼやきに久が同調する。同じく未婚のゆみも

「しかし、結婚したくても相手が見つからないんだよな…」

 と頷くが、

「そういうものなのか?私にはよくわからんが」

「そりゃ小さい頃から許嫁がいる菫にはわからないでしょうよ…」

 お嬢様な菫には理解できないらしい。

「良い相手を見つけるにはまず自分を磨かないと!久も加治木さんも宮永さんも、まずは言動に気を使うところからですよ!」

「勘弁してよ美穂子…」

 

 プロ達の夜は更けてゆく。

 




つづく。文章めちゃくちゃだ…

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