時系列は関係なし。
実はフレンダ研究所は高知県の南へだいぶ行ったところにある離島の研究施設――――というのは裏設定なので本編とはそう関係ありませんが、フレンダとゴーヤの住む研究所はそんな感じの所にあります。
大きさはご想像に任せますが、島民がいくらかいる感じです。小学校も存在します。というか小中併合の雛○沢みたいなイメージです。つまり人口もそれくらい。
では、フレンダ研究所のゆるゆるだるだる回です。
研究所、午後三時過ぎ。
「おなかすいたー。ゴーヤ、なにかあるー?」
「今ホットケーキ焼いてあげてるでち。イスに座って待ってて」
「はーい」
十分後。
「まだー?」
「わかったからちょっと待つでち。ほら…………はい、どうぞ」
「やった。ありがとうゴーヤ。おいしそう」
「熱いから気を付けて食べるんだよぉ」
「わかってるって」
「お好みで生クリームも付けていいよ。はい」
「お、おいしそう」ゴクリッ
実食。
「フーフー……ング……ハフッハフッ!
「だから言ったでち。ほら牛乳」
「
「もう、せっかちだよぉ。急いだって無くなるわけじゃないんだから、落ち着いて食べればいいのに」
「ング……ング…………ぷは! だって熱々を食べるのが美味しいんだからな!」
「わかるけど火傷しちゃだめだよ。よくフーフーして」
「大丈夫だいじょうぶ。熱いの食べてれば口の中がなれてくるから」
「それもう手遅れでち」
○
「フーフー……モグモグ…………ゴックン」
「で? ここ最近研究室に閉じこもってるけど、何作ってるでち?」
「追尾撮影装置だよ」
「追尾撮影装置……? 何に使うのぉ」
「お姉ちゃんの観察」
「フレンダちゃん知ってる? 盗撮って犯罪なんだよ?」
「や、やだなぁ……あの、あ、あれだよあれ。お姉ちゃんの艦隊の調子とか観察して、今の現場ってどんな装備が必要なのかなぁっていうリサーチだよ!」
「しょっぱな欲望が駄々漏れだったから説得力皆無でち」
「う……でもね? もう五年だよ? 五年も直接会ってないんだよ?」
「だからって偵察機飛ばして盗撮するなんて許される事じゃないでち」
「誰も盗撮なんてしない」
「じゃあ観察?」
「そう観察」
「だれの?」
「お姉ちゃん」
「だめじゃん」
「しまった」
○
「で、何で急にそんな事しようと思ったでち?」
「別に急ってわけじゃないんだけどね」
「どゆこと」
「一年ぐらい前だったかな。
「うん」
「あれね、本当はお姉ちゃんの艦隊を常に追いかけられるようにって思って作った追尾装置の基礎研究だったんだよ」
「え? じゃあもしかして……」
「もともとは偵察機にしてお姉ち――――艦隊を見守るために作ってた」
「いまお姉ちゃんって言ったでち」
「気のせい気のせい。それで、一年前は設計概念を本部に預けちゃってたから、一から組み直して今度は海だけじゃなくどこからでも撮れるように、小型のヘリみたいにしたってわけ。UAVとかって言うのかな」
「より細かいネルソン提督の動向を探れるわけだね」
「そうそう。お風呂とか寝室とかトイレとか」
「通報するでち」
「しまった」
○
「でもね、自動で盗撮出来るように作ってた設計案が、いつの間にか輸送船になってるのはさすがに私も驚いた」
「ツッコむべきか今考えてるでち」
「何を?」
「いや、べつにぃ」
「でね。今作ってるのはすごいんだよ」
「人類に貢献できそう?」
「というより私の生活に貢献できそう」
「どの部分の生活かは聞かないでち」
「? なんのこと」
「わかってないなら別にぃ」
「…………? まぁいっか。それでね、ほんとに小型化が成功してるから、手のひらサイズの撮影機が出来たんだよ」
「手のひらサイズ!? じゃあ建物の中も飛ばせるって事!?」
「そうそう。で、バレたら意味がないから完全無音の光学迷彩付き。飛行音どころか姿すら見えないから、どこでも撮れる」
「この人に技術力を与えた人類を恨むでち」
「なにが?」
「ぜんぶでち。――――それ、なにかもっと公共の場で役立てる道具には出来ないのぉ?」
「公共……あれかな、ネットで売りさばいて社会経済に貢献するとか」
「売った先で大問題になるからダメでち」
○
(なんとかして完成を阻止しないと、ネルソン提督の私生活が危険でち)
「でもアレなんだよねぇ。まだ問題がちょこっと残ってて」
「問題?」
「うん。撮った映像をリアルタイムで見られないんだよ。だから飛ばしたあと戻ってこさせて、撮ったものを確認するから、メモリが大容量じゃないと欲しい映像も撮れないかもしれない。その場で取捨選択してメモリを節約できないんだ」
「そうまでして私生活を撮る理由って一体なんなんでち…………」
「知りたいと思わない? おね――――艦隊の動きとか普段の生活とか」
「艦娘の生活ならゴーヤがいるよぉ。十分でしょ?」
「全然足りない。駆逐艦とか戦艦とか、もっともっといろんな人達のデータも集めたい」
「〝も〟って辺りに悪意を感じるでち」ボソボソ
「なにか?」
「なんでもないよぉ」
――――○――――
お昼のおやつタイムが過ぎ、夕日が沈むまで研究室で作業をして、ゴーヤと一緒に晩ご飯を食べて、私は只今入浴中だ。
「ふぅー……きもちいい」
艦娘用、というよりゴーヤ用に作られたドッグは、それほど広いわけではない。
一般家庭用の浴室、浴槽と大きさは変わらない。一人用だな。
そこに私もお世話になっている。もとよりこの研究所には風呂がここしか用意されてない。私が使うことも兼ねているのだろう。
風呂は落ち着く。研究の名案がふと浮かぶこともある。
チャプチャプと紫色の水面をすくっては、そっと自分の肩に掛ける。いくらか掛けると飽きたので、洗面器ですくって頭からバサァー。
今日はラベンダーの香りがする入浴剤が入っている。先に済ませたゴーヤが使ったらしい。
お肌にもいいタイプで、あと腰痛とか疲労回復にも効くらしい。疲労以外正直どうでも良いけど。
「にしても、どうやってリアルタイムで送信しようか」
行き詰まったな。送信する手段がないわけじゃないけど、それをするとステルス性が消える。お姉ちゃんの普段の様子が撮りたいのに、カメラを意識させてしまっては意味がない。まぁどんなお姉ちゃんが撮れても最高なんだけど。
うぅ~ん、こまったなぁ。
「…………また明日考えようか」
自動追尾の設計理論は完成した。一年前のアレは艦娘しか追えなかったが、今回のはもっとうまくいった。
何でも認識できるから、何でもロックオンできる。あとはどんな物に積み込むかで、追尾性能も変わってくる。
「…………」
あれ?
「――――あれあれ?」
これ誘導ミサイル作れるんじゃないか?