Infinite Stratos 学園都市最強は蒼空を翔る   作:パラベラム弾

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五話

セシリアが一方通行の言葉に反論しかけるのと、彼女の目が驚愕に見開かれるのはほとんど同時だった。

 

ラファールを纏い自然体で宙に浮かんでいた一方通行。その姿がなんの前触れもなく消失したのだ。

 

勿論本当に消えたわけではないのはわかっている。学園の訓練機にそんな武装は搭載されていないし、ISのハイパーセンサーはしっかりと一方通行の居場所を伝えてくれている。

 

しかし―――

 

(速、すぎますわッ!!)

 

瞬時にスラスターを全開にさせその場から飛び退く。一瞬前まで彼女がいた空間を、弾丸の嵐が薙ぎ払った。シールドエネルギーが削られることはなかったものの、あまりの速度に驚愕せざるを得ない。

 

距離は十分に取っていたはずだったのだが、難なく詰められるどころか背後まで取られるなど一体誰が予想できようか。第二世代ISの、しかも訓練機でここまでの速度が出せるものなのか。

 

しかしセシリアとてイギリス代表候補生。何時までも呆けているような無様な姿は見せなかった。ビットを展開し、取り囲むようにして逃げ道を潰しにかかる。

 

「お行きなさい!」

 

ビットに包囲され、身動きがとれなくなったところをスターライトmkⅢでトドメ。セシリアが最もよく使う戦闘パターンだった。

 

対して一方通行は、ビットを見ても反応一つ示さない。

 

恐らく容易く切り抜けられると考えているだろう。だが、甘い。セシリアは口許を緩ませた。

 

如何なISのハイパーセンサーがあるとは言え、常時他方向からのレーザー射撃を掻い潜ることは不可能だ。最初こそ気合いで避けられるかもしれないが、いずれは集中力が切れて被弾する。

 

しかも、四つのうち一つは必ず死角に回り込むようになっているのだ。

 

その場から動かず、高速で接近してくるビットを眺めている一方通行。その手には、先程セシリアへ攻撃する際に使用したラファールの標準装備(デフォルト)であるアサルトライフル『FAMAS ISM』が握られている。フランス製アサルトライフルFAMASをIS装備専用に改装したブルパップ式のアサルトライフルである。

 

ブルパップの利点は、通常トリガーより前にマガジンがあるのに対してトリガーよりも後ろにマガジンがあるため、銃身が短くなり小回りが効き取り回しも楽になること。

 

更に、元々速射性能の高いFAMASはIS装備に転換されてもその速射性能は維持されている。そして、絶え間なく放たれる弾丸は強力の一言につきる。.44マグナムをフルオートに改装したものを思い浮かべてもらえば分かりやすいだろう。

 

第二世代の武装ながら、その安定した性能と高い火力で操縦者たちから好評を得る銃だ。

 

現在、目に見える範囲で一方通行が手にしている武装はそれだけ。勿論拡張領域に量子変換して武装を積んでいるだろうが、セシリアにとってはそれが余裕の表れだと感じられた。

 

(いつまでその冷静な顔をしていられるか……見させてもらいますわ!)

 

一方通行の周囲を囲うビットが、セシリアの命令によって射撃を開始した。僅かに時間差を儲け、所々に必中の一撃を混ぜての弾幕は濃密の一言だった。

 

しかし―――彼には当たらない。

 

頭を狙えば首を傾けるだけで直撃を避け、死角に回り込ませればまるでそれが見えているかのように射線から外れる。全方位から絶え間なく放たれる銃撃を必要最低限の動きで避けていく。

 

そして、次第に焦り始めるセシリアは冷静さを失っていき―――自ら攻撃手段を失う羽目となってしまった。

 

「―――あっ!?」

 

思わず口から声が漏れた。

 

一機のビットから一方通行へと放たれた一発が、彼の死角に配置させていたビットを掠め、センサー類を根こそぎ使い物にならなくしたのだ。操縦者からの命令が届かなければ、ビットは動かない。これで、彼を囲うビットは三機。

 

彼女は自分の失態を悔やむより先に、それを遥かに上回る驚愕に襲われていた。

 

(ま、さか……今のを狙ってやった(・・・・・・・・・)と言うのですか……ッ!?)

 

レーザーが放たれた直後、確かに彼は僅かに体を捻っていた。背面後方に位置する別のビットは、死角に入り込むためにそちらへと追従する。そして―――必要最低限の挙動でかわされた一撃は、死角に潜んでいたビットを自らの手で墜としたのだ。

 

ありえない

 

そんなことができるはずはない

 

不可能だ

 

何かの偶然だ

 

そんな言葉が頭の中を埋め尽くす。

 

成功する確率など、1の前に0を何個並べたらいいのかわからないくらいのものだというのに。もしかしたら、1という数字がないのかもしれないというのに。

 

その刹那の思考は―――致命的な隙となる。

 

一瞬だけ弾幕が止んだその瞬間、爆音と共に一方通行の姿が再び掻き消えた。エネルギーを圧縮し、それを再び排出することによって一気に加速する技術―――瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 

別段珍しい技ではなく、寧ろ代表候補生レベルならば使えて当たり前の技能なのだが、使いどころによっては決定力となるのがこの瞬時加速だ。

 

セシリアも直ぐ様反応し、精密な狙いもそこそこにスターライトmkⅢのトリガーを連続で引き絞る。

 

瞬時加速は、移動時に一直線にしか進めないという弱点がある。よって、直線的にこちらへと向かってくれば攻撃を当てるチャンスとなる。それはセシリアもわかっているので、正確さよりも手数を選んだのだ。

 

だが、ここで彼女を更に驚愕させる光景が視界に飛び込んできた。

 

初撃として放ったレーザーは、間違いなく直撃のコースだった。瞬時加速を行っている以上回避も儘ならない。直撃を確信していたからこそ―――多角的な機動で全ての射撃を完璧に掻い潜った一方通行を見て思考が止まった。

 

 

 

 

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)

 

 

 

 

複数のスラスターを擁する機体でしか行えないこの技術は、文字通り瞬時加速を一つ一つのスラスターごとで連続して行うという高等テクニックだ。

 

だが、個別連続瞬時加速は瞬時加速に比べてかなりの難易度を誇る。直線軌道で加速するだけでも国家代表レベルの技術を持たねば出来ない。しかも、それも乗り慣れた専用機あってのことだ。

 

一方通行が乗っているラファールに附属しているウィングスラスターの数は四機。

 

理論上不可能ではないが、フィッティングもパーソナライズもしていない状態の訓練機で成功させるなど最早笑うしかないレベルだ。しかも、それを別々の方向に向けて行うなど常軌を逸している。

 

今更ながらに、セシリアは戦慄した。

 

もしかしたら、自分はとんでもない相手に喧嘩を吹っ掛けてしまったのではないかと。

 

ドガガガガガガガッ!!

 

炸薬が爆ぜる鈍い音が連続して響く。咄嗟に体を捻り、全弾直撃という最悪の事態だけは回避したものの、シールドエネルギーが3割強持っていかれてしまった。

 

(ですが―――好機ですわ!)

 

なんとか体勢を立て直し、スターライトmkⅢを構える。

 

今の斉射で、FAMAS ISMの残弾数が0になったことをセンサーが知らせてくれている。そして、エネルギーライフルとは違い実弾銃ゆえの弱点―――リロードがある。その一瞬を狙い、流れを切って仕切り直す。

 

8メートルという至近距離。狙いを付けるまでもなく、セシリアなら腰だめ射撃でも当てられる距離だ。

 

 

 

だが―――目の前の白は、その反撃すら許さない。

 

 

 

セシリアが直撃を免れたと見るや、瞬時加速を発動。そのままの速度で蹴りをぶち込んだ。

 

金属と金属が擦れる嫌な音が響き、ブルー・ティアーズが弾き飛ばされる。シールドエネルギーは半分を切り、ダメージレベルが中に引き上げられた。更に、蹴りを受け止めた右腕の装甲に罅が入り、腕部が露出している。

 

以降ここに攻撃を受ければ、絶対防御が発動してしまいシールドエネルギーが大きく減少する。

 

だが、まだ負けたわけではない。

 

吹き飛ばされた勢いを利用し、距離を取る。マガジンを交換している一方通行は、その後ろに浮遊するビットに気付いていない。好機と踏んだセシリアは、迷わずに射撃を命じた。

 

 

 

 

 

そして―――そこから後の光景は、彼女が一生忘れることのない敗北として脳裏に焼き付くこととなった。

 

 

 

 

 

装填を終え、リロードハンドルを引いて初弾をチャンバーに送り込んだ一方通行。

 

刹那、FAMAS ISMを提げていた右手が閃いた。

 

三発の銃声がセシリアの耳に届くのと、残っていた三機のビットが爆散するのが目に入るのは同時だった。

 

「な、ぁ―――!?」

 

あまりの光景に、言葉すらも上手く出てこない。

 

それほど大きいとは言えないビット。しかも射角に入るために高速で動いているそれの、機関部だけを的確に撃ち抜いて破壊。だが、真に驚愕すべきはそこではない。

 

セミオート射撃を行っている最中、彼は一度もセシリアから目線を外してはいなかった。あくまでISのハイパーセンサーからの位置情報のみで空間を把握し、見事にワンショットワンキルを敢行したのだ。

 

―――無目視射撃(ブラインドファイア)

 

IS操縦技術の一つとして数えられているのは聞いたことがあった。

 

だが、成功したという話はついぞ聞かない。難しすぎるのだ。個別連続瞬時加速とは比にならないほどに。

 

弾速、弾道、空気抵抗、目標の速度、大きさ、位置、気圧、湿度、気温―――その他幾つもの要因を完璧に踏まえた上で、射手の技術がものを言う神業。

 

こうして目の当たりにしてみると、まるで現実味のない映画を見ているような気分になる。

 

スターライトmkⅢを構えて呆然とするセシリア。その隙さえも、一方通行は見逃さない。肩越しに後ろへ向けていたFAMAS ISMを正面に向け様一発射撃。

 

音を置き去りにした鋼の弾丸は、狙い過たずスターライトmkⅢの銃口に吸い込まれ―――内部から爆散させた。

 

その衝撃で左腕部の装甲が丸ごと消し飛び、シールドエネルギーが大幅に削られる。エネルギーの残りは34。弾丸を数発喰らえば終わりだ。

 

(っ、せめて一撃だけでも!)

 

最後の武装である近接用ショートブレード『インターセプター』を展開、瞬時加速を敢行。一気に距離を詰め、腰だめに構えた刃を胸に突き立てるように放つ。

 

そんなセシリアの最後の足掻きは、瞬時加速で難なく回避され―――

 

(まだ、ですわ!)

 

正真正銘、最後の装備。

 

BT兵器『ブルー・ティアーズ』、その内訳はレーザービットが四機。そして、ミサイルビットが二機。今の今まで隠していたそのミサイル二機は―――役目を果たすことなく散ることとなる。

 

まるで、初めからそこにあることがわかっていたかのように、スカート状の装甲と一体化させていたビットにそれぞれ一発ずつ着弾。推進材タンク部分を貫通してその機能を停止させた。

 

(ああ、わたくしは―――)

 

そして、弾丸と装甲が擦れた結果、火花が散り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――負けましたのね)

 

 

 

 

 

 

試合開始より一分六秒。

 

凄まじい轟音と爆炎の中、ブルー・ティアーズはシールドエネルギーを0にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者―――鈴科透夜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合―――と呼べるのかすら怪しい。

 

更衣室で一人ベンチに腰掛けるセシリアは、先程の試合を思い返していた。

 

国家代表候補生である自分が、文字通り手も足も出なかった。勝って強さを証明するどころか、シールドエネルギーを1すらも削れない文字通りの完敗だったのだ。

 

自らの攻撃はまるで当たらない。かと思えば、あちらはろくな無駄弾も出さず的確に命中させてくる。加えて今のセシリアでは到底不可能な技術を会得しており、底が窺い知れない。

 

目を閉じ、最後の光景をゆっくりと思い出してみる。

 

インターセプターを構え、玉砕覚悟の突撃を行った時。

 

彼の赤い瞳は―――確かにセシリアを見ていた。

 

以前クラスで向けられた、あの無感情な瞳ではなかった。一方通行の赤い瞳と、セシリアの碧い瞳が一瞬ではあるものの交錯していた。

 

それが、彼女にとっては少しだけ嬉しかった。

 

勝ち負けについて今更どうこう言うつもりはない。変な言い訳もしないし、悔恨もない。単純に、あちらのほうが強かった。ただそれだけなのだから。

 

しかし、疑問に思うところもある。

 

織斑一夏がISを起動させてから、他にも動かせる男性はいないかと全世界で男性のIS適性検査が行われた。

 

なぜその時に公表されなかったのだろうか。検査を行わなかった? それとも結果を故意に隠していた?

 

聞くところによれば、全世界に公表したのはかの天災化学者篠ノ之束博士だというではないか。俗世と関わることを頑なに拒否しているらしい彼女がなぜ?

 

疑問は尽きない。

 

彼にISの適性があると公表されてから十日程しかたっていない。それなのに、IS操縦技術は起動時間が三〇〇時間を越えているセシリアと同格―――いや、間違いなく上回っている。

 

個別連続瞬時加速に加えて無目視射撃。天性の才能があったとしても、ISは起動時間がものを言うのだ。一体どこであんな高等技術を身に付けたのだろうか。

 

膝の上に置いた手をきゅっと握り締める。

 

彼は強い。セシリアなど足元にも及ばない程の遥か高みに座している。その強さは底知れず、ともすれば国家代表すら上回るのではなかろうか?

 

(鈴科、透夜……)

 

彼女が初めて敗北を喫した男の名前。初めて勝てないと思った男。初めて―――彼女が、興味を抱いた男。

 

彼のあの強さは本物だ。

 

いつだって勝利への確信と向上への欲求を抱き続けていたセシリアにとって、一方通行の圧倒的な強さが彼女の目標として立ちはだかるのにそう時間はかからなかった。

 

(知りたい―――)

 

彼のあの強さの理由を。

 

その裏にある、隠されたものを。

 

彼の秘密を。

 

彼のことを、もっと―――

 

「―――はっ!? わ、わたくしは何を考えていますの!?」

 

ぶんぶんと首を振って、生まれた思考を振り払う。

 

しかし、数秒経って頭に浮かぶのはあの白髪の青年。何者にも媚びない鋭い赤い瞳。それでいて、セシリアと対峙したときに見せたあの異常なまでの強さ。

 

彼のことを考えると、どうしようもなく胸に疼痛が走り、切なさが溢れる。嬉しいような辛いような、苦しいような、

 

(この感情は、一体―――)

 

「それは……恋ね」

 

「成る程……これが、恋というもの―――きゃあああああああああ!?」

 

ずざざざっ! と後退り、突如現れた闖入者から距離を取る。『恋慕』の文字入り扇子を広げ、にまにまと微笑む青髪の女性。―――言うまでもなく更識楯無である。

 

「あ、あなた一体何処から!? それよりも、わたくしが恋だなんて―――ではなく! 誰ですの!?」

 

「私? 私は……そうね、さしずめ恋の小悪魔ってところかしら?」

 

「……普通、恋のキューピッドではありませんの?」

 

「いいのよ、小悪魔で♪」

 

流れるような仕草でベンチに腰掛け、タイツに包まれた足を組む。女性のセシリアでさえ、思わず見とれてしまうような動きだった。

 

「それで、あなたのその感情だけど。さっきも言ったでしょう? それは『恋』よ」

 

「で、ですがわたくしは男になど……」

 

「意地張らないの。彼のことを考えると、胸が苦しいんでしょう? 切ないんでしょう? ドキドキするんでしょう? なら、それは恋よ」

 

楯無の言葉を受けて、もう一度頭の中で彼の姿を想像してみる。

 

瞬間、先程よりも大きく心臓が跳ねた。ドクン、ドクンと自分でもわかるほどに脈打っている。同時に、胸の奥がじゅん、と痛む。

 

「わ……わたくしが、恋をしているというんですの……?」

 

「そうよ。恋をしたらね、自分の気持ちを隠したり、騙したりしちゃいけないの。そしたら相手には一生自分の気持ちは伝わらないから、余計に悲しくなるだけ。自分に素直になって、相手にアピールしなくちゃ」

 

顔を赤くしつつも、真摯に楯無の話を聞き続けるセシリア。やっぱり純粋な子って可愛いわねー、などと心中邪なことを考えつつも、楯無はやさしく微笑んだ。

 

「透夜くんはあんな感じでぶっきらぼうだから、勘違いしちゃうこともあるかもしれないけど、あれも全部相手を傷つけないためにやっていることなの。―――難しい道のりだとは思うけど、頑張ってね。おねーさん、応援してるから」

 

最後にウインクをすると、ベンチから立ち出口へと向かう楯無。セシリアは慌てて立ち上がり、その後ろ姿に深々と頭を下げた。

 

「ありがとうございました!」

 

顔を上げたとき既に楯無の姿は無かったが、がんばってねー、という声が聞こえた気がしたセシリアなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

クラス代表決定戦翌日、朝のSHR。

 

結局、昨日の試合は鈴科の圧勝で幕を閉じた。

 

セシリアを撃墜したあとフィッティングすら済んでいなかった俺を文字通り瞬殺し、その圧倒的強さは学園中が知ることとなったわけだが―――

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合にぼろ負けしたんですが、なんでクラス代表になってるんでしょうか?」

 

「それは―――」

 

「お前が弱いからだ、馬鹿者」

 

デデンデンデデン♪ デデンデンデデン♪

 

ッパァァァアンッ!!

 

「文句はないな?」

 

「はい」

 

怖い。千冬姉超怖い。何故脳内で流した某機械人間のテーマが聞こえたんだろうか。そして頭が超痛い。なんだろう、この人は俺の頭を叩くことを朝の日課としているんじゃないだろうか?

 

「お前にもわかりやすく説明してやる。クラス代表となった者は、再来週のクラス対抗戦に出場するのみならず、これから一年様々な場面でISを使う。そして、クラス代表候補三人の中で一番経験が足りないのはお前だ、織斑。それは昨日嫌というほど実感しただろう」

 

……千冬姉の言う通りだ。

 

俺はまだまだ弱い。弱すぎる。何も出来ずにやられるなんて、無様以外の何者でもない。

 

……いやそれにしても、鈴科のやつちょっと強すぎないか? なんかこう、隠しパラメーター的なものがあったり乱数調整的な何かをしてたりとか。そんなのチートやチーターや! ……やめよう、他の世界の電波を受信した気がする。

 

「とはいえ、お前ら三人も私からすれば同レベルだ。センスがあろうが代表候補生だろうがスタートは同じ。そのことを念頭に置いておけ」

 

千冬姉のその言葉に、後ろから何やらオーラを感じたのだが……振り向いた視線のその先には、いつものように肘をつく二人目と何故か頬を膨らませているイギリス代表候補生の姿があるだけだ。はて。

 

バシィンッ!

 

「私の目の前で余所見とはいい度胸だな、織斑」

 

「すみませんでした」

 

しまった。千冬姉の前でこんなことをするなんてライオンの前に生肉を放り出すような物だった。反省しよう。

 

「クラス代表は織斑一夏に決定。異存はないな。さて、それでは教科書二十四ページを開け―――」

 

こうして、クラス代表決定戦は慎ましやかに終わりを告げたのだった。

 

 

 

 




憐れ一夏、出番ほぼゼロ。
セシリア戦では少しやり過ぎた感もあるんですが……アクセラさんならこのくらい平然とやってのけるッ! そこに痺れ(ry
御指摘等あれば、お願い致します。


感想・評価を下さった方々、誠にありがとうございました。

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