僕らはヘルメス様の提案によって、馬車に乗り【ヘルメス・ファミリア】に向かっていた。
「なんでこんなことになってんだよ…」
「なんかゴメン、キリト」
パーティに来たはずがこんなことになるなんて、嘆きたくもなるだろう。ガックリと頭をさげるキリトに僕は苦笑いを浮かべた。
「それにしても、今回は随分帰りが早いじゃないかヘルメス。何か用でもあるのかい?」
「いやーちょっとな。それにベル君に興味があってね。会えて嬉しいよ」
「ぼ、僕ですか?」
「ヘルメスゥ?分かっているだろうけど。ボ・ク・のベル君に手を出したらただじゃ済まないからな!」
「お、おい親友、顔が怖いぞ」
「プッハァッ!」
「ロキ、いつの間にお酒…」
「まーまー、堅いことはええやろアイズたん!」
「は、はははは…随分と賑やかだな…」
馬車の中での騒がしい光景にキリトが顔を引きつらせる。
それに比例して僕も「あはは…」と汗を流すのだった。
「おっ、見えてきたぞ、みんな降りる準備をしてくれ」
そんな中、ヘルメス様がそう言い帽子をかぶりなおす。僕は外を見てみると、二階建ての建物が見えてきた。
* * *
建物は新しくはないようだ。でも、広い庭は手入れが行き届いている。建物は白を基調としていて、その壁に伝っているツタの葉は、建物をまさに”森の家”のようなメルヘンな雰囲気にさせている。
これまたメルヘンチックなレンガ造りの門を通り、建物の中に入ると…
「え、これどういう状況なの…?」
と、一人の少女がポカンと立っていた。
彼女は現れた僕らを前に、そのブラウンの双眸を見開いている。
「ロキ様、アイズ。一体どうしたの?」
「よーアスナたん、おひさー!」
「お久しぶりです。それに、えーっと…」
「あ、僕はベル・クラネルと言いますっ」
「ボクはヘスティアだ」
「初めまして。私はここのファミリアの副団長のアスナです」
そう言って少女、改めアスナさんは僕らにペコッと頭を下げた。
美しい栗色の髪の毛に透き通る様な白い肌。
エルフにも引けを取らないようなその美貌に、僕はつい見惚れてしまう。
それに気付いた神様に思いっ切り太腿をつねられ、僕は「いたい!」と情けない悲鳴を上げるのだった。
そんな中、アスナさんのもとに近付いたキリトが事情を説明しようとする。
黒を基調としたキリトに、赤と白を基調としたアスナさんの格好。
そうして身を寄せ合う2人の姿はなんだか妙にしっくりきて、無意識にお似合いだなぁなんて感想を抱いてしまった。
「相変わらずやな〜、お二人さん」
するとロキ様が心底楽しそうに割り込んだ。相変わらずって?と僕は首を傾げる。
「なんだい?キミたち付き合っているのかい?」
「「ブッッッ」」
神様の質問に同時にむせるキリトとアスナさん。
その一連の流れを見てやっと理解が追いついた僕は「えぇっ⁉︎」と驚愕の声を上げてしまった。
キリトにこんな綺麗な恋人さんがいたなんて…。今度アドバイスお願いしようかな…。
「よっし、ほんじゃ本題に戻らへんか?」
「そうだなー、俺の部屋は今ちょっと書類やらで散らかっていてね…。うん!それじゃあキリトの部屋で話そう!」
「えっ⁉︎ちょっ⁉︎なっ⁉︎」
「了解だ!行くぜキリト君!」
「す、少し待ってください‼︎」
そう言ってキリトは、目にも止まらぬ速さで二階へと駆け上がっていくのだった。
そんな彼の後を追い、僕らは歩みを進めていく。
「で、アスナたんっキリトとはどこまでやったんや〜?」
「な…っ!い、言いませんよそんなこと!」
「ほう、言えないような事までしたのかい?いいよなぁリア充は」
「そ、そんなんじゃありません!」
神様が何故か溜息をつきながら言うと、アスナさんは顔を赤くしてしまった。そんな中悪いとは思うが、僕も気になってしまったので聞いてみる。
「あの、アスナさんはキリトとはいつから知り合いなんですか?」
「ふぇ⁉︎あ、えーっと…2年、くらいかな」
やっぱりそのぐらいは必要だよなー……とか思ってしまう僕。
「で!告白はどっちからだい⁉︎」
何故か興味津々な神様に詰め寄られ、アスナさんは恥ずかしそうに「キ、キリト君、からです…」とボソボソと答えた。
すると神様はズーンと音が聞こえそうなほど落ち込み。「そうなったら、どれだけ幸せか…」と嘆いている。どういう意味だろう?
「で、でも!先に好きになったのは私で、は、初めは…凄く…ア、アタックとか…してました…」
プシューと音がしそうなほど顔を真っ赤にしたアスナさんは、そこまで必死に話しきった。すると途端に神様がその双眸を輝かせ始める。
「そうなのかい⁉︎そうか、そうだよな!やっぱりアタックは必要だ!ありがとうアスナ君!君こそが真の女神だよ‼︎」
アスナさんの手を握りブンブン振っている主神に、神様がそれを言ったらおしまいですよ……と僕は苦笑いをこぼす。
その間、どさくさに紛れて「ほんじゃあウチもアイズたんにアタックを〜」とアイズさんにセクハラをしようとしたロキ様に、アイズさんは困り顔でビンタを炸裂していた。
「おっと、着いたぞ」
そう言ってヘルメス様は一つのドアの前で立ち止まった。中からは、忙しない音が聞こえるがヘルメス様は関係なしに「入るぞキリト〜」とドアを開けた。
いつか、キリトとアスナのラブラブな話を書きたいです。