っここからは、お楽しみにということで!
あれから、あの一人の少年と出会ってからどれだけたっただろうか。
あの頃から僕はだいぶ成長したと思うし、もうお金がなくて奢れないなんて言わない……と思いマス…。
* * *
それは、僕が神様とパーティに出ることになった時のこと。
たくさんのファミリアが集まっていて、僕は隠しきれない緊張に身を縮こまらせていた。
「むっ、ベル君!こっちのスシというのもなかなかいけるぜっ!これもお持ち帰りだっ!!」
そう言って高速で食べ物を詰め込んでいるのは、そう……我らが神様デス…。
「あの、神様…いいんですかそんなことして…」
「何を言っているんだベル君!!これは戦いだ!遠慮なんてしてはいけない時があるんだ!そうやって、強者は生き残っていくんだ!」
「いいこと言ってるように思えて実は全然答えになってないですよ神様!?」
「コソコソと貧乏くさいことやっとると思ったら、なんやどこぞのドチビやないか」
その声を聞いた途端に、神様は今までに見たことがないくらいの嫌な顔をした…と思うのは僕の勘違いだろうか?
「何故いるんだ、君は…!」
「理由がなきゃ来ちゃあかんのか?そんなこと聞くなんて無粋っちゅうもんや。はぁ、マジで空気読めてへんよ、このドチビ」
「なんだとぺったんこ!!」
「ぺ…!?なんやとこのドチビ!!」
会って早々に喧嘩を始めてしまった二人に慌てる僕。
そして、ヴァレンシュタインさん。
「ヴァレンシュタインさんっ!?」
そう、そこには僕の恩人であり、目標であり、想い人であるアイズ・ヴァレンシュタインさん本人が居た。
驚く僕を首を傾げて見つめてくる。そんな姿にさらに心拍数が上がる。逃げてしまおうとしている体を必死に抑え、このままではいけないと思ったので頑張ってみる。
「あ、あのっ!この前は本当にありがとうございましゅた!!」
噛んだーーーーーっ!!!!
心の中で絶叫し、物凄い失態にメンタルが潰れそうになる。
だがヴァレンシュタインさんは気にしていたいのか、はたまた気がつかなかったのか「いいよ、別に」と、特に変わった様子はなかったのでホッとする。
ヴァレンシュタインさんは、純白のドレスで腰にはリボンが結ばれた可愛らしいものに、髪の毛を一部を後ろでまとめて縛っている。
正直メチャクチャかわいい…!
「あ、あのっ!」
「?」
「と、とっても綺麗ですね!!」
顔を真っ赤にしながらも、なんとか言えた僕の言葉にヴァレンシュタインさんは僅かに目を見開いた。
「…ありがとう、君も似合ってる」
そう笑顔で言われまたもや心拍数が上がってしまう。
もうパニックの一歩手前だが、なんとか気を取り直して僕は彼女に向き直った。
「あの、挨拶が遅れちゃって…!僕、ベル・クラネルです!」
「…そっか、ベルって言うんだ」
「? あの、ヴァレンシュタインさん?」
「……アイズ」
「はっ?」
「アイズ、でいいよ」
名前の呼び方を指摘されていると気づいた僕は、一瞬仰け反りかけた。
「みんな私のことそう呼ぶから。…それとも、嫌、だった?」
「え、ええっとっ!?………嫌、じゃないです」
断れる筈がない、と。
少し沈み気味になったこの人の声を聞いて、僕は口元を手で覆いながら思った。
そして僕は今、ここに来て良かったと心から思ったのだった。
そうしていると不意に神様二人が喧嘩していることを思い出す。
案の定まだ言い争っている二人を止めようとアタフタしていると、不意に飄々とした男神様の声が聞こえてきた。
「やあ。久しいな、ロキ、ヘスティア」
全員が振り返るとそこには、目を弓のようにしてニコニコと笑っている整った、世に言う美男子がいた。
そして、その後ろには…。
「え、キリト!?」
「ベル!?」
そう、あの少年、キリトの姿があった──。
* * *
「キリトも来てたんだ!また会えるなんて嬉しいよ!」
「何カ月ぶりかだな」
するとキリトの隣にいる男神様がこちらに顔を向け「なにキリト、ヘスティアのところと知り合いだったの?」と笑いながらキリトの首に腕を回した。
──瞬間、キリトの肘鉄が男神様の脇腹に命中した。
「グフォ…ッ!!」と奇妙な声をあげてノックダウンする男神様。
その光景に唖然とする僕らをよそに神様達は笑い転げる。
「イヒヒヒヒッ!相変わらずやなキリト、マジ最高っ!」
「あははははっ!ど、ドンマイだぜヘルメス!」
「ひ、酷いぞキリト!なんだっていうんだ!」
「隙あらば絡んでくる癖どうにかして下さい」
ジトッと睨まれなすすべなくなった、神様の言うからしてヘルメス様という男神様。
こういう神様と子の関係もあるんだ……なんて考えていると、神様が何かを思い出したように声を上げた。
「君があのキリト君かい!?」
そう言いグイッと、神様はキリトに詰め寄る。
キリトは一歩後ずさりし、動揺しながらも「は、はい」と答えた。
その次には、神様はキリトの片手を両手で握りこむ。
「やっぱり!君かい?!ベル君を助けてくれたというのはっ!ほんっとうにありがとう!!お礼にジャガ丸君をご馳走するよ!」
「え、あ…どうも?」
「ん?なんや、そんなことあったんかいな。流石はドチビ、世話がやけるなぁ」
「ずっと前の話だ!もうそんなことになんかなるもんかっ!」
「どうだかな〜」
話に入っていったロキ様と今度はキリトを挟んでゴングが鳴ってしまった……と思ったが、途端神様は何かに気付いたように首を傾げた。
「ん?ちょっと待てよ。なんで君がキリト君を知っているんだ?」
「は?そりゃあ、キリトにはよく遠征の時に一緒に来てもらうんや。なっ、アイズたん!」
「うん、キリトすごく強いから」
アイズさんがすごく強いっていうほどって……。やっぱりキリトって凄い人なんだな。
「あの、キリトのレベルって…」
「そうやった!その事で聞きたい事があるんやったわ!ほらお二人さん、心当たりないなんて言わさへんで〜」
「「ギクッ」」
僕が口にした疑問に割って入ったロキ様が、笑ってるけど目は全然笑ってない顔で何故か汗まみれの二人、ヘルメス様とキリトに詰め寄った。
「なー、前々から思っとったんやけど。キリトの公開されてるレベル、あれだいぶ前のやろ」
「は、はははは…なんのことか…」
「誤魔化せると思わんことやな」
「うぐ…」
キョロキョロと視線を彷徨わせるヘルメス様だったが、これ以上の誤魔化しは不可能だと察したようで、諦めるように大きな溜息をついた。
そして、もごもごとその整った口を動かし始める。
「実は、もう随分と報告していないんだ…」
「むっ。それってヘルメス、ルール違反ってやつじゃないのかい?」
「しっかり説明してもらう必要がありそうやな〜」
「「…………」」
ヘルメス様は、初めの飄々とした態度は何処へやら。キリトも「ダメだこりゃ」と溜め息をついている。
「…ここじゃなんだから俺のファミリアに来るといい。ここから近いしね。どうかな」
「他には聴かれとーないなんて、どういうこっちゃ」
「よしっ、ベル君!ボクらもいくぞっ!」
「えっ?は、はい!」
「なんやドチビ、ついてくるなや!」
「いいだろうっ、別に他人じゃないんだ」
「なんだろう、俺らの知らないところで話が進んでいるような…」
「よしっ、レッツゴーだ!ヘルメス!」
ヘルメスファミリアにキリトをブッコミました。
なかなか二人のやりとりはやりやすいです。