戦う定め   作:もやしメンタル

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32話《歩みゆく道》

「機嫌はなおった?アルゴノゥト君っ」

「す、すみませんでした…」

「いいよいいよ、むしろ突っ込むっていう行動を選んだキリト君にはもっと言いたいことがあるくらいだから」

「す、すみませんでした…」

ティオナさんの声掛けに僕が謝ると、アスナさんがキリトを横目で見つめる。その言葉に今度はキリトが謝った。

「こんなことになったのは僕のせいですし、キリトは悪くないですよっ」

「魔法を使えば問題なかったと思いますが」

「ギクッ」

僕の言葉にアスフィさんもアスナさん同様キリトに視線を送る。その指摘にキリトは大きく肩を揺らした。

いくら大切な人にだけとはいえ、魔法を使うことを決心したとしても、やっぱりこの力には頼りたくないと、朝の稽古の時に言っていたことがあった。そのために自分は戦ってきたのだと。もしまたキリトが魔法を使う時が来るならそれはきっと、あの時のようなオラリオ全体の敵が現れたとき。だから本当は、キリトが魔法を使わないほうがいいのかもしれない。僕はそのキリトの言葉を聞いた時思った。きっとアスナさん達も、それはわかっているのだと思った。それにいまのキリトには、もう一つのとっておきがあるのだから。

すると、フィンさんが両手を叩いた。

「それじゃあ、また行こうか。どうやらこの事態は僕達の考えてた以上のことのようだからね。原因を突き止めたい」

「了解です!団長!」

「確かにこの数は半端じゃないですね」

ティオネさんが元気よく返事をし、アスフィさんが口を開いた。これに助かったキリトはホッと息をつく。

「キリトく〜ん?」

「わ、わかったっよ。無茶しないって」

それぞれも頷き、僕らはまた二四階層へ向かうのだった。

 

 

 

 

「そういえば、ニールさんってLvはどのくらいなんですか?」

歩いている中、今まで思っていた疑問を尋ねた。ふわりとした髪がなびきながら、ニールさんが振り返る。

「Lvはクラネルさんと同じ3ですよ」

「そうなんですか…ん?でもキリトはどうしてこんなにLvが高いんだ?」

再び生じた疑問を、今度は隣のキリトに尋ねる。僕の質問にキリトは「あはは…」とから笑いして答えた。

「ああ、俺がファミリアに入ったのとニールが入ったのとでは時期が違う、から…?」

「あの事件は三年前でしたが、私はそれから一年後に」

「…、ちなみに俺は次の日だった…」

「えっ!?早いねっ?」

「ああ…、それがな…」

キリトが苦笑いをしていると、代わりに隣のアスナさんが答えた。

「ヘルメス様が、キリト君が気絶してる間にもう恩恵を授けちゃったの」

「えぇっ!?」

そんな理不尽な…っ!!という感想を抱きながら仰け反る。意識がないうちに恩恵を授けるなんて初めて聞くんですけど…。流石はヘルメス様…。はや一日目から苦労したことを知り空笑いしかできなかった。

「それよりも、僕が気になるのはLvの上がる速さが信じがたいことだな」

「確かにたった三年でキリトはLv7だものね」

「キリトよりかは正常だけど、二年でLv3もすごいよね」

「俺よりかは正常ってなんだよティオナっ!?」

アイズさんと、「私、必要ですか?」と言うアスフィさんにモンスターは任せ、フィンさんたちも入って来た。

「ラウスの一族に関係してるのかな?」

アスナさんの呟きに、フィンさんが頷く。

「断定はできないけど、それが適切かもね」

「確かに普通では考えられないことですね」

「それを君が言う?…」

「へっ?」

僕の言葉にティオネさんが呆れたように返され、他の人たちからも視線を向けられた。

「そういえばアルゴノゥト君もだねっ!」

「三人の共通点…?」

「子供なところ」

「「「誰が子供(だ)(ですか)!!」」」

即答だったアレシアさんに、僕たちは同時に叫ぶのだった。

「【剣姫】!あなた少し私に押し付けてませんかっ!?」

「……」

ずっとモンスターを倒してくれているアイズさんも、さっきから真剣に考えているように見える。戦いよりも聞き耳を立てることに神経を使っているかのようだった…。

 

* * *

 

「それで、これからどうするのですか?団長」

「ああ、ちょっと気付いたことがあってね」

「流石は団長!」

尋ねたティオネさんが感嘆の声をあげた。それに苦笑いするフィンさんにティオナさんが尋ねる。

「で、気づいたって何を?」

「向かってくる方向、だな」

「その通りだよキリト」

先に答えたキリトにフィンさんが頷く。そのやり取りの傍で同じく頷いたアスフィさんとアスナさんが口を開いた。

「確かにモンスターが向かってくる方向は思えば全て同じですね」

「じゃあ、モンスター達の逆を行けば、何かわかるかもしれないってことね」

「ほんじゃま、行ってみますか」

そうして僕たちは再びニ四階層に向かった。

 

* * *

 

『ギェアアアッ!!』

「せぁあああっ!!」

モンスターの奇声とアスナの叫び声が重なる。飛びかかったモンスターにアスナは目にも留まらぬ速さでフェンサーを相手へズレなく正確に叩き込んだ。大きく後ろへ傾くモンスターに、左足を前に踏み込み、右手のフェンサーをグッと後ろでため、「ラストッ!」という声と同時にモンスターへ突き出した。言葉通り最後のモンスターが魔石を失い灰と化した。

「アスナの正確さには勝てる気がしないわね…」

ティオネがその戦いぶりにそう呟く。それを聞き、関係のないくせに「えっへん」と俺は胸を張った。我が彼女ながらとても守ってあげる必要のない逞しさだな…。傍ではそう感じながら、俺はエリュシデータを左右に払い鞘に収めた。

奥へと進むにつれ、モンスターと出会う頻度も上がってきていることはみんなが感じていた。目的地は近いのかもしれない。

そう思っていると、前方に広い空間が見えてきた。

「あそこかなっ?」

ティオナがそう言って走り出そうとしたその時。

「げっ!またーっ!?」

大型級の『怪物の宴』が現れた。

それぞれが身構えると、それをフィンが制した。

「アイズ」

フィンの一言にアイズはこくりと頷く。そしてくるりと俺を見つめた。

「キリト、手伝って」

「えっ?手伝うって何…」

言い終わる前にアイズがいきなり飛び蹴りの格好で突っ込んでくる。

「えっ!?ちょっ!?タンマ!!」というの虚しく、止まらない。俺は瞬間的に剣を抜き、アイズの蹴りを受け止めた。

「そのままでいて」

「へっ?」

聞こえたアイズの声に素っ頓狂な声を上げるが、瞬間に嫌な予感が頭をよぎる。

「ま、まさかアイズさん…っ?」

 

「リル・ラファーガ」

 

瞬間、まさかの必殺技で一気に剣にかかる圧が増す。俺は「ぐぬぉおおっ!?」と悲鳴をあげながら踏ん張り

「行ってこいやーっ!!」

あらん限りの力で俺を踏み台とするアイズを押し飛ばし、さらにその威力をあげた。

神速で『怪物の宴』に光の矢が突っ込む。次の瞬間には、

 

『ーーーっっ!?』

一気にモンスターを吹き飛ばしていた。

「む、無茶苦茶だ…」

ゼェゼェ言う俺の近くから、ベルの呟く声が聞こえたのだった。

ベル、お前の目指すもんはバケモンだぞ…。てかそれ以前にムチャクチャだぞ!?

「何かあったアイズーっ!?」

みんながアイズを追って走り出す。その中ティオナが大声でアイズを呼んだ。「馬鹿ティオナっ、モンスターがまた来るじゃないの!」と隣のティオネがその妹を黙らせる中、出た空間には…

「なっ!?」

「嘘ーっ!?」

巨大な植物モンスター。十Mはありそうなその体は地面に埋まっている。花を咲かせているが、その中央には鋭い歯が剥き出す口が大きく開いている。そしてその緑の茎のような体からはモンスターが次々に出てきていた。

「モンスターを生んでるのっ!?」

「ありえません…モンスターが生まれるのはダンジョンからでしかないはず…っ」

アスナの言葉にニールは呆然としながら、信じられないというように言った。

「どうやらこれは、【フレイヤ・ファミリア】が”起こした”というより、”誘導した”という方が正しいかもね…」

この光景にフィンは汗を流しながら呟いく。

確かに、今回のことにはまずな違いなく【フレイヤ・ファミリア】が関係している。でもいくらなんでもここまでできるはずがない。この規模のモンスターを調教だなんて全く聞いたことがない。とすると、【フレイヤ・ファミリア】はこの存在を知り、利用している。ということになるだろう。

「あんなに多く強化種がいたのに、やっと合点がつきました…」

アスフィが前方のモンスターを睨みつけながら口を開いた。

「でもこれじゃあ、あの原因を倒すどころじゃないですよ…っ?」

 

* * *

 

「一体どうすれば…」

そう僕が言った直後

「みんなはあのモンスターに専念してくれ」

「えっ?」

そう言い鞘から《エリュシデータ》、そして《ダークリパルサー》を抜剣したキリトは前に踏み出した。

初めて見るキリトの二刀流。その後ろ姿は何故だかとてもしっくりとくる。そう思っているとクスッとアスナさんが微笑んだ。

「?、どうしたんですか?」

「オラリオに来る前までは、キリト君、【二刀流のキリト】って呼ばれてたんだ」

「なるほど、どうりでしっくり…」

瞬間、キリトが地面を蹴った。三十Mはあったモンスターとの距離を一気に詰める。

「はぁああああああっ!!」

ズバァァァンッ!!という音が響き渡るほどの威力を持った攻撃は、その場にいたモンスターを一気に二十体以上相殺した。モンスターの悲鳴が搔き消える。一振りで一気に数を減らしたキリトはこちらを振り返った。その瞬間フィンさんが走り出す。

「全員で原因のモンスターをやる!ここはキリトに任せよう!」

その言葉を言い切る前にアイズさんたちが疾走する。僕とニールさんとアスナさんは、一度キリトを見てから後を追った。

そう、みんなキリトを信じてる。認めてる。だからこそ前に進むっ。

瞬間、キリトの姿が光り出す。そしてその姿は少女のものになっていた。すると同時に、僕たちへ襲いかかって来たモンスターがキリトの方へ向かっていく。おそらく魔力に反応しているんだ。膨大な魔力を求めて周りのモンスターはこちらに全く反応を示さなくなった。

「いっくよーッ!」

叫んだティオナさんは掛け声と同時にスピードを上げる。そして勢いよく跳び上がった。

「えいさーっ!」

大切断

植物モンスターの茎を深々と大双刃《ウルガ》で切り飛ばした。モンスターの悲鳴が響き渡る。

それと同時に金色が走った。

悶えるモンスター目掛け突っ込んだアイズは、左腰にグッと獲物をため、瞬間

振り抜いた

神速の右上に振り抜く攻撃は、さらにモンスターの茎を切り裂く。そして間を空けずに、後ろから現れたアスナとアスフィ。

アスナが右手のフェンサーを右肩の上で構え。

「せぁあああっ!!」

連射

光速で何発もの突きをモンスターに与えてゆく。アスフィは腰から外したビンを放り投げると、瞬間

大爆発を起こした。

『ギュルァアアッ!?』

苦しんではいるものの、決定的なダメージを与えられない。倒れない茎はものすごく硬い。ティオナが落ちながら「いった〜っ!?」と手を揺らした。

そしてすぐにフィン、その後ろからティオネが飛び出す。

「このままじゃラチがあかない!相手の魔石のありかを探す!見つけたらそこを一気に破壊しろ!」

「ラジャー!!」

フィンの指示に返事をしたティオネは一刀の湾短刀を抜き、地を蹴る。一瞬で間合いを詰めると高速でモンスターへ攻撃し始めた。何箇所も斬りつけるティオネにモンスターは触覚を向けた。一斉発射された触覚はティオネに迫り、次にはー

『ーーっ!?』

フィンの槍に阻まれていた。

一瞬でそこまで行き着いたフィンは素早い身のこなしでモンスターの体を登っていく。その相手に向かって触覚を伸ばすモンスターだったが、狙っていたかのようにかわされ、自身に突き刺さった。

『ギュルァアアアッ!?』

その攻撃を最後にして、フィン達は体から降りた。

「駄目か」

「クソっ、デカイ図体しやがって…っ」

フィンが呟く隣でティオネが苛立ちを見せた。相手は体が硬いし何より大きい。魔石を見つけるのは一苦労のようだ。

「クラネルさん」

 

* * *

 

「クラネルさん」

突然名前を呼ばれて振り返るとニールさんがまっすぐに僕を見つめていた。

「クラネルさん、力を貸していただきたいのですが」

「勿論です、何か策が?」

「はい、クラネルさんには先程使っていた魔法を始めに撃って欲しいのです」

「【ファイヤボルト】を?」

「はい。それにアレシアさんにも。おそらく相手は炎に弱いはずなので…。あとは自分でやります」

「わかりました」

「うん」

そう答え、前に踏み出す。僕とアレシアさんは右手を突き出した。

「【ファイヤボルト】!!」

二つの炎が吹き出し、モンスターに直撃する。くらった相手はニールさんの予想通り効果抜群だった。

 

 

そしてその瞬間、それと同時に、フィン達はモンスターに突撃した。ニールも走り出すがそれはモンスターに向かってではなく、そのモンスター周りを回るように走り始めた。そして、その唇で紡ぎ出す。

「【自身の誇りに誓いを表せ】」

《並行詠唱》

魔力のコントロールが強く要求され、オラリオでもできるものは、ほんの一部だという。

「【一族の誇りに誓いを貫け】」

それをヒューマンの少女がやってのける姿は、とても美しい。アイズ達の攻撃が再開し、モンスターと戦う中、ニールは歌い続ける。

その時、背後から魔力を感じ取ったモンスターが飛びかかってきた。それを軽い身のこなしでかわす。しかしニールはモンスターに目もくれなかった。理由は簡単。

 

信じているから

 

「フッ」

『グギャアアアッ!?」

瞬間現れたキリトによってモンスターが灰と化した。

「お前らの相手は俺だ」

そういったキリトとニールは、一度目線が合わさる。それぞれが同時に頷き、再び地を蹴った。

「ベル君っ」

「はいっ」

一度地面に降りると、一緒のタイミングで降りてきたアスナさんが声をかけてきた。

「ベル君は”アレ”をやって!その間は私達に任せていいから!」

「…っ!わかりましたっ」

すぐに悟るとアスナさんはまた走り出した。

僕もすぐに【英雄願望】を開始した。

 

* * *

 

キリトは二本の剣を下げた。周りには無数の死体、そして大量の灰。【黒の剣士】キリトは何十ものモンスターを全滅させた。

「今はベル達のおかげでモンスターが生まれないみたいだな…」

そうして向こうを見つめると同時に体が光りだす。ずっと少女の姿だったキリトは、いつもの少年に戻った。

「さて、どうするか」

さっきのニールの表情といい、あの様子だと、自分の出番はないように思える。というより、今はみんなを信じてみたかった。

「【その誇りを一生に抱き】」

響き渡るニールの詠唱、並行詠唱なんてできたのかと、キリトは微笑む。

昔は泣いてばかりで、気弱で病弱だったニールが随分と見違えた。

それにベルだって日に日に強くなってきている。

みんな変わっていく。それぞれが色々なもののために、

誇りのために、目標のために、愛する者のために…

前へと進み続けている。

「【我は武器を取り戦う】!」

ニールが目を見開く、その魔力の増加にそれぞれが悟り回避した。次の瞬間。

「【ヴェロスド・メイス】!!」

無数の光の矢が解き放たれる。それ矢は走りながら放たれ、モンスターの体を隅々まで攻撃した。

本当に強くなったな…。

光を眺めながら再度思う。その光は煌めき、とても美しい。そんな中、鐘の音がダンジョンに鳴り響く。

「やってやれ、ベル」

 

* * *

 

「ありましたっ!中央から三M程右上ですっ!!」

ニールの叫び声と同時に少年は前へと踏み出す。

アイズ達もその少年に託した。

ーやってやれ、ベル

師であり、友の声が聞こえる。

少年は前を見据えた。

「うん」

瞬間走り出す。

それと同時に攻撃を受け傷を負いながらも、モンスターから触覚が飛ばされる。だがそれは

アイズ達によって阻まれた。

「やっちゃえアルゴノゥト君っ!!」

「任せたわよっ!」

ティオナさんとティオネさんに告げられ、みんなも頷く。

ニールは息を切らしながらもまっすぐに見据え。

キリトは微笑みながら見つめた。

ベルは力強く、右手を前に突き出した。

 

 

「【ファイヤボルト】!!!」

 

 

炎の稲妻はますっぐに、抜き出されている魔石を

 

 

撃ち抜いた。

 

 

『ギュルァアッー!?』

悲鳴をかき消す大爆発。

次の瞬間、モンスターは灰へとなり、崩れ落ちたのだった。

 

* * *

 

無事にクエストが終わり、それぞれがダンジョンから帰って行く。そんな中、キリトはニールと相対していた。

「では、私はこれで失礼いたします」

「ああ、今回は助かったよ。ありがとな」

「い、いえっ!わ、私などついてゆくのに必死でしたしっ!」

「そんなことないぞ。これからが楽しみだなっ」

そう言ってキリトは笑う。それに顔を赤くしたニールは、やがて俯き、そしてすぐに顔を上げると口を開いた。

「アルマティア様」

名前を呼ぶ声は真剣で表情も険しい。

「これからも、必ずアルマティア様には避けられないことがあるでしょう…。魔法を使わずにというそのお心構えには、私は何も言いませんし、むしろ尊敬もします…。ですが…決してご自分の境遇と目をそらさないでいただきたい…。図々しいことは承知の上です…」

ニールの声は震え、今にも泣き出しそうだった。自分じゃアルマティア様に何もしてあげられない。その不甲斐なさにニールは歯を食いしばった。すると目の前のキリトは、無邪気に笑った。

「成長したと思ったけど、やっぱり泣き虫は変わってないのかね」

「ーっ!?こ、これは…っ!」

すでに出そうになる涙を拭おうとした時、キリトがニールの頭に手を乗せた。

「なーっ!?」

何度されても同じ反応を見せてしまうが。それ以上は抵抗せず、されるがままになっていた。

そして、もう一度見たその顔は

さっきとは違う笑顔、優しい微笑となっていた。

「また、いつでも来てくれな、きっとみんなも楽しみにしてるだろうから」

 

 

いつも遠くて、眺めるだけの想い人が。気づけばこんなに近くにいる。

ずっと苦しんできた。何もかも失くし、戦いに明け暮れた。無力な自分は父に助けられ、見殺しにした自分は、こんなに…

 

 

幸せを感じていいのだろうか

 

 

堪えきれない涙が後から後から流れ落ちる。そんなニールの頭を、キリトは優しく撫で続けた。

やがて、目を腫らしながらも顔を上げ、

「はいっ!」

私は返すのだった。

 

 

 

 


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