戦う定め   作:もやしメンタル

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31話《師弟・兄弟》

その後も僕たちは難なくモンスターを倒し、そう時間は掛からずに二四階層に到達した。

ここからは広いダンジョン内、班ごとに分かれ探索をすることとなっていた。現在のメンバーはベルとアレシアと【ヘルメス・ファミリア】のキリト、アスナ、アスフィ、後は今日来ている【ロキ・ファミリア】のフィン、アイズ、ティオナ、ティオネ。そして途中から加わったニールだ。

それぞれが今まで以上に緊張感を持ち、辺りは静まり返っていた。さすがの空気感に僕も顔を引き締めた。

「来る…」

そうキリトが呟いた。

その言葉に一同が前を見据えると、地面の揺れる音が。この音は…モンスターのものだ。

「情報通りね」

ティオネがそう言い身構えた。

何でもこの二四階層の強化種たちは集団化してきているらしい。それもあって、このようにパーティを組んで言うなればクエストをしているのだ。

フィンは右手の親指の腹を、ぺろっと一舐めした。

「どうやら、まだ来そうだね」

呟きとほぼ同時。正面及び左右の壁面全てに、亀裂が走った。

「!!」

それぞれが顔色を激変させる。

今更間違えるはずがない。モンスターが迷宮より産まれ落ちる前触れ。

しかも大規模。ルーム全体からモンスターが出現することは明らかだ。

『怪物の宴』。

壁面を突き破ったモンスター達が一気に誕生した。

「アイズ、ティオナ、キリト!ニールさんを守りつつ敵を駆逐しろ!残りは強化種以外を!前からの捉えきれなかったものは仕留めろ!ニールさんは詠唱を開始!」

この事態を見越していたかのようにフィンが命令を下す。

その指示に全員が一斉に地を蹴る。ニールさん詠唱を開始した。

「いっくよーッ!」

掛け声とともに、ティオナが獲物を振り上げる。目を疑うほどの大きさと質量を誇る、大双刃。

特注の獲物を両手で軽々と取り回しながら疾走し、瞠目するモンスター目掛け振り抜いた。

「えいさあーっ!」

大切断。

力任せの一撃がモンスターの胴体を叩っ切り、吹き飛ばす。

残った死骸には目もくれず、あたかもその本能に突き動かされるように、アマゾネスの少女は次なる獲物へと飛びかかった。

「あの馬鹿っ、苦労するのはこっちじゃないっ!」

完全に前だけを見て飛び出す妹に、ティオネは悪態をつきながらモンスターを倒して行った。

「はぁあああっ!」

ベルも左右から迫るモンスターをニールを守るように倒してゆく。素早い動きを使った剣技、両手に握った二本の短刀でモンスターを切り裂いていく。

「ーっ!」

次に相まったモンスターに目を見開いた。

他とはスピードが違うっ!?

前から抜けてきたモンスターの、明らかに他とは違うLvの動きを見せる攻撃に、ベルは短刀で防いだ。

「ーぐっ!」

攻撃も違う、威力が強いっ!

ここで強化種の怖さを実感する…けどっ。

「はぁああああっ!!」

『ー!?』

倒せないほどじゃない!

相手のスピードを凌駕し背後に回ったベルは、知識を頼りに相手の魔石目掛けて短刀を切り払った。

「詠唱、完了しましたっ!」

「全員回避っ!」

フィンの指示にそれぞれが再び地を蹴る。それと同時にニールの口から紡がれた。

「【プロクス・リヒト】!!」

辺りが一気に光り輝き、その光をまとった炎が解き放たれた。

一瞬、まさに光速でモンスターを炎上させた。

「そのまま突っ込むぞっ!」

攻撃が終わる瞬間、残りのモンスターを一気に相殺した。

 

* * *

 

「すごいじゃんニール!」

モンスターを全滅させた後、ティオナはニールに走り寄った。

「本当に助かっちゃったよー、ありがとうニールさん」

アスナも歩み寄り、笑顔で手を差し出す。その手を握り返しながらニールは口を開いた。

「私など、まだまだです。それと、どうか気さくにニールとお呼びください」

「うーんでもなぁ、じゃあニールちゃんでっ」

「ちゃ…っ!?」

和やかになる中、他も全員集合した。

「アレシアさん、大丈夫でしたか?」

「暑い、アイス食べたい」

「そ、それはダンジョンを出てからにしましょう…」

真顔で告げるアレシアさんに僕は苦笑いする。最後に来たキリトはエリュシデータを鞘に収めながら歩いてきた。

「あれ?キリト、もう一本は使わなかったの?」

「ん?ああ、これはとっておきなんでね」

「ふ〜ん、こんなんじゃぬるいってことか〜」

「流石はキリト君だね〜」

「そ、そうはいってないだろ…っ」

「じゃあ、どういう意味なのかしら?」

「う…っ」

「まったく羨ましい限りですね」

「うぐ…っ!」

キリトの言葉にティオナさんとアスナさんがニヤニヤとし、キリトをからかう。返した言葉もティオネさんとアスフィさんにことごとく断ち切られてしまった。

ウムム…と言葉を詰まらせるキリトに苦笑いしていると、ふとニールさんが目にはいった。

キリトたちを見つめる瞳は、優しく微笑んでいる。

「どうかしたんですか?」

僕が尋ねると、「え?」とニールさんはこちらに顔を向け、理解すると、すぐに前を向いた。

「何だか懐かしくて…」

「懐かしい…?」

「はい。昔もお見かけした時は、よくあのようなやり取りをなされていました。私はそんな姿を見つめていることがとても好きで…」

そこまで言ったニールさんはハッと我に帰ったのか、顔を赤くしこちらにバッと顔を向けた。

「別に変な意味ではありませんよっ!?ただ…その…アルマティア様の笑顔を見つめていると暖かくなるものですから…って!違うんですっ!!」

一生懸命否定しようとするニールさんが面白く、笑いがこみ上げてしまう。そんな僕に気づいたニールさんは少女ながらにどこか幼さの残る可愛らしい顔をさらに赤らめた。

ニールさんはたまに性格が急変する時があるんだよなぁ、などと考えながら、キリトと同じようにウムム〜っと苦悩するニールさんを見つめた。

「ニール」

そんな中名前を呼ばれ、ニールさんは肩を揺らす。呼んだキリトはニールさんの頭に手を乗せ笑った。

「随分魔力が上がったなぁ、たいしたもんだ」

「い、いえっ!そ、そんなことは…っ!アルマティア様なら全滅させられておりましたっ!」

「う…っ!か、買いかぶりすぎだ…」

「そんなことありませんっ!!」

瞳を泳がせるキリトにニールさんは抗議した。

「確かにキリトもやってくれると助かるのですがね」

「その顔やめてくれアスフィ…」

冷たくキリトを見るアスフィさんに汗を流しているキリトに、すぐにニールさんが詰め寄る。

そんな二人の光景はどこか兄弟のようで、僕は思ったことがあった。

「ニールさんって、幾つなんですか?」

僕の質問に動きを止めたキリト達はこちらに顔を向けた。

「15ですが」

「ということは…」

「はい、アルマティア様より1つ年下です」

「へぇ〜っそうなんだ!」

「同い年くらいかと思ってたな〜」

その言葉にティオナさんが声をあげる。アスナさんが苦笑いし、ティオネさんが「私も」と頷いた。

アタフタした時のニールさんから感じたことはこういうことかと一人納得した僕にキリト達は首を傾げた。

「じゃあ、もうそろそろ進もうか。またモンスターが来そうだしね」

フィンさんの言葉にみんなが頷き、再び歩き出すのだった。

「あ、ちなみにアレシアさんは幾つですか?」

「ベルって変態」

「なんでですかっ!?」

さらに謎が深まるアレシアさんだった…。

 

* * *

 

「それにしても、さっきのモンスター、なんだか変だったよね?」

「ああ、強弱がバラバラだったな」

歩きながら言ったアスナさんにキリトが答え、周りも頷く。

「スピード速いやつとかちょっと面倒だったな〜」

「あんたが乱暴に振り回すからよ」

ティオナさんの感想にティオネさんが溜息をつく。

そんな中ずっと考え込んでいたフィンさんは口を開いた。

「それと、あのモンスター達、情報通り魔力には反応していたけど共食いはしようともしなかったのが気になるね」

そこまで言ったフィンさんは表情を変えた。それを全員が悟る中、フィンさんは親指を舐める。

「また来るようだね」

そうして起こり出した地響き、それの音は前方からのモンスターの群れだった。

「また群れっ!?」

「偶然とは思えませんね」

そうしてまたそれぞれが身構える。

「さっきの通りやりたいんだけど、ニールさんは大丈夫かい?」

「はい、いけます」

そうして、腰から杖を取り出したニールさんを見て、フィンさんは頷く。

「それじゃあ、さっきの通りーかかれ!」

連続での『怪物の宴』目掛け、僕たちは走り出した。

 

 

「フッ!」

『グギャアッ!?』

疾走し、一瞬で間合いを詰めたキリトはエリュシデータを振り抜く。起動も読めないような速度でモンスターを切り裂いた。

「アレシアさんっ!大丈夫ですか!?」

「うん」

僕は今、アレシアさんと戦っている。

襲いかかってくるモンスターを、僕は切り裂き、アレシアさんは右手から炎を吹き出した。

しかしその中にもいた…

「速い…っ!」

今まで以上のスピードのモンスターはアレシアさんの炎を避け突っ込んだ。

「アレシアさん!!」

一気に間合いを詰めたモンスターはそのままアレシアさんに攻撃を…

『グギャアッ!!』

くらった…。

「へっ?」

僕は目が点になる。そう、アレシアさんはモンスターに…

 

回し蹴りを叩き込んでいた。

 

すっ飛んだモンスターはすさまじい音を立てて壁にめり込んだ。

流石の、怪物力デス…

僕は、親指を真顔で立てるアレシアさんに顔が引きつるのだった。

 

* * *

 

「もうすぐね…」

ガラス張りの部屋で、美しく微笑む一人の女神。その瞳はどうしようもなく愛おしい存在を眺めるように細められた。そしてその唇がつぶやく。

「楽しみね」、と。

 

 

 

 

 

 

 

「もぅ疲れたーーっ!!」

その言葉に誰も返すものはいない。それ程にもう僕らはヘトヘトだ。

「何回やればいいのよ」

「『怪物の宴』ってそんなに頻繁だったっけ…?」

ティオネさんの悪態に続いてアスナさんも項垂れる。

「とんだことに巻き込まれたものです…」

これにはアスフィさんも溜息をついた。

これまでにもう5回起きた『怪物の宴』にうんざりしていた。そしてまた…

「…今回のは大変そうだね」

みんなが表情険しくさせる、そして前方からやってきたのは…

「大型モンスター!?」

三Mはいくという、モンスター達が…そして今回も

「群れ、だな…」

僕たちを捉えたモンスター達は、襲いかかってきた。

 

* * *

 

「くーっ!」

今回のモンスターは、今までとはLvが違った。ニールさんも詠唱することができない状況で、手に握るのは杖ではなく剣だ。

キリトやアイズさん達は次々と倒していくが、僕は一体相手取るのがやっとの状況。新たに襲いかかってきたモンスターの攻撃に押し込まれていた。そんな僕に御構い無しにと、巨大な体は迫ってくる。このままでは勝てないという気持ちが膨れ上がる。再び襲いかかってきたモンスターに、僕は右手を突き出した。

「…!ベルっ!待て!」

「【ファイヤボルト】!!」

キリトが魔力に気づき、声をあげたが僕はそれよりも早く炎を解き放っていた。

そして瞬間に思い出す。”強化種は魔力に反応する”…っ!

辺りが解き放った炎で明るく照らされる中、一斉に周りが動きを止める。そして自分に向けられるのは、多くの魔力。

「しま…っ」

その存在を気づいた時にはもう遅く、四方からの攻撃が押し寄せた。避けられるわけもない、僕は両手を顔の前で覆った…その瞬間

「…!?キリトっ!?」

目の前に現れた少年は、攻撃の迫るギリギリで駆けつける。そして一瞬にして後方の迫り来る攻撃を薙ぎ払った。すさまじい爆発の音と光が辺りに広がる。しかし止められたのは半面のみ。残りの前方から押し寄せる攻撃にキリトは突っ込んだ。

「キリト君っ!?」

アスナさんの悲鳴が響く中、先ほどとはまた違った爆発が起こった。

僕は目を限界まで見開く。

爆風で吹き飛ばされそうな体に精一杯力を込め踏ん張る。そして次に見たものは…

少年の崩れ落ちる姿だった。

 

* * *

 

「キリトっ!キリトっ!!」

「キリト君っ!!」

残りのモンスターをアイズさん達が全滅させた。いくら強化種といえど、第1級冒険者とはLvが違う。手間取ったものの、それはモンスターの力を凌駕するものだった。

すぐに全員がキリトに駆け寄る。

モンスターの攻撃をあれほど浴びた体は、いくら第1級冒険者といえど、ただでは済まなかった。

皮膚は焼け焦げ、とても危険な状態だと告げる。閉じられた瞳は開けられる様子がまったくない。

「ひとまず上に行こう!ここじゃまたモンスターに襲われる!」

フィンさんの指示に全員頷き、僕はキリトを背負おうとしたが、「私のほうがいいでしょう」とアスフィさんが背負いあげた。確かに、アイズさん達はモンスターと戦ため入れずに考えると、アスフィさんが最も早く運べるのは明らかだった。

僕はお願いし、走り出すアイズさん達の後を追って地を蹴った。

 

* * *

 

「キ……ト……く…」

何か声が聞こえる。まるで遠くから聞こえてくるような声が響き渡る。徐々に覚醒してくる意識を、俺は無理やり目覚めさせた。

少しずつ開いて行った瞼の外から光が差し、目の前には…

「ーっ!!キリト君っ!!」

「フゴっ!?」

涙目で飛びついてきたアスナだった。

胸に顔を埋められ、金属に勢いよく衝突し、息ができずに激しく苦しむ。それにまったく気づかなかったアスナは「ああ、ごめんごめん」と俺から手を離し解放した。

「ープハッ!ゲホッ!ゲホッ!…し、死ぬかと思った…」

「本当だよー!心配したんだからっ!」

「いや今のでだからっ!」

目覚めて早々ツッコミを入れてしまったが、辺りを見渡す。周りには、アスナと同じく涙目のニールと、「あービックリしたー!」と言って後ろにドテーンと寝転がるティオナ。「まったくよ…」とその姉は項垂れていた。

上半身を起き上がらせると、他のみんなも揃っているようだ。

「もう大丈夫かい?キリト」

「ああ、おかげさんで」

尋ねてきたフィンに肯定すると。その隣にいたアイズは、「よかった…」と表情が乏しいながらも安堵の顔を浮かべた。

「ほんとに治ってる…」

目の前に歩み寄ってきたアレシアは俺の頬を引っ張り、ポーションに感嘆している。アレシアさん…少しは心配を…。

アスフィは何故だか息が上がっていた。

「どうしたんだアスフィ?」

「な…なんでも…ありません…」

きっと俺のせいだなとどこかで悟った俺は頭を下げた。

「なんかごめんな、俺のせいで…」

「キリトのせいなんかじゃないよっ!!」

俺が謝った瞬間、今まで押し黙って俯いていたベルが叫んだ。いきなりのことで目を丸める。

「べ、ベルさん怒ってらっしゃいます…?」

「怒ってない!!」

いや怒ってるだろとは決して言えないオーラを放つベルに俺は目を泳がせ、頬をかいた。

理由はなんとなく悟る。ベルのことだ、自分を庇って怪我をした俺が許せないのだろう。今も再び俯き拳を固く握りしめている。

完全に泣きそうになっている我が弟子に苦笑いしながら他のみんなを見た。俺の言おうとすることが分かったのだろうか。それぞれが立ち上がり、一度手を振ると、この場を後にした。

みんなの心遣いに感謝し、立ち上がる。そして、まるでいじけてしまった弟に言うように名前を呼んだ。

「ベル」

名前を呼ばれたベルは顔を上げようとしない。そんなベルに再度苦笑いして、ゆっくりと歩み寄った。

 

* * *

 

「ベル」

名前を呼ばれる。けれど顔を上げる気にはなれなかった。いつもそうだ、僕はキリトに迷惑をかけている。あの時にもしキリトが死んでしまったら。僕はどうすればよかったのだろうか。歪む視界を唇を噛んで抑え込む。今感じているものは悔しさ以外の何物でもなかった。

その時、ジャキッ…と、鞘から剣を抜く音が響いた。

「え…っ?」

その音に顔を上げる。予想通り、剣を抜いたキリトはゆっくりと僕に歩み寄った。

そのまま剣を振りかざす。

「ちょっ、ま…っ」

突然の行動に慌てる僕を無視して、キリトは剣を、振り下ろした。

「ーっ!?」

高速で迫る剣、反応することすらできず僕は目を見開いた。瞬間。

『ギャァアアっ!?』

「…え?」

振り下ろされた剣は僕を超え、背後に迫っていたモンスターを引き裂いていた。

呆然とする僕の前でキリトは剣を肩に担ぐと溜息をついた。

「気づいてなかったろ」

「うぐ…っ!」

まさかの失態に言葉が詰まる。それを見たキリトは苦笑いした。

「ダンジョン内で取り乱さない、これ教えたよな?」

「……うん」

再び俯いた僕の頭にキリトは手を乗せた。

「ベル」

今度かけられた声はいつもより低い。この時は従わなければならないと、今までの経験から悟り、おずおずと顔を上げる。目があったキリトは案の定、真剣な表情で口を開いた。

「言っとくが、これでもお前の師であり、はたまたお兄さんでもあると思っているんだが?」

「お、お兄さんは言い過ぎでしょっ」

最後のの言葉にムッとすると、キリトはニシシっと笑った。

「そう言うなよ。だから俺はこれからもベルに世話を焼く気だぞっ?…それに」

口を閉じたキリトに首をかしげるとキリトは微笑んだ。

「それに、ベルは俺を救ってくれた。だから今度は俺が救ってあげたい」

「ーっ!?別に救ってなんか…っ」

「救ったさ、俺にとってはとても大きなものを」

そう言うキリトだが僕もムキになる。

「そうだとしても、明らかに救われてる回数の方が多いよっ!」

「いやいや、だってこの前も戦争遊戯の時に助けてくれたじゃん」

「あの時だってキリトに助けられたことがあったんだよっ!」

「えっ?なんもしてないけど」

「したの!」

なんだかこんな感じになることなんてキリトの前でぐらいかもな…なんて思いながら言い返してると、やがてキリトは何度目かの溜息をついた。

「わかった。だったら、ベル」

「うん?」

腰に手を当てるキリトに首をかしげると、キリトは無邪気に笑った。

「俺のことも助けてくれるか?」

「ーっ!?」

まさかのストレートな問いに何故だか顔が赤くなる。僕を見つめるキリトの目は逸らされることがない。そんな目を見ながら、僕は頷いた。

「…うん」

そんな日は来るのかと思ってしまうが、なんだか心が落ち着いて行った。気がつけば僕はキリトと一緒に笑っているのだった。

「じゃあ、約束ねっ!」

「ーっ!」

仕返しのように僕は小指を立てる。それを見たキリトは一度目を見開き、戸惑いを見せたが、やがて…

「…約束だ」

と小指を立てて僕と結ぶのだった。

 

 

 


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