泣き始め、抱きつくこと約10分。
やっと落ち着いたベルは、今自分がとんでもないことをしていることに気がついたのだった。
「すすすすす、すみませんっ!」
とっさに離れ何度も高速で頭を下げる。
今までフリーズしていた少年は、少し遅れて指で頬をかきながら困ったように口を開いた。
「い、いやいや。無事みたいでよかったよ。じゃあ…俺はこれで…」
と言って背を向けて歩いて行ってしまった……と思ったら、何故だか此方へ引き返してくる。
「……もう大丈夫だとは思うけど、このまま放置ってのも悪いかもだし…もし、もう帰るんだったら…一緒に行かないか?」
予想外の提案に、ポカンと見つめながらも僕は考える。
この少年は、まず間違いなく自分よりもLvは上だ。それもかなりの差があるだろう。
そんな僕は間違いなくお荷物だ。また迷惑をかけるのは申し訳ないとは思う。
でも、ついさっきあんな目にあった後だとやっぱりその提案は素敵なもので…。
「よ、よろしくお願いしますっ」
僕は、彼のお言葉に甘えることにしたのだった。
* * *
正直自分がしていることを、不思議に思っていた。
いつもなら、すぐにでもサヨナラだったはずだ。
なのに今自分は、白髪の少年と二人一緒に帰っている。
このまま黙っているのもと思い、対人スキルなんてろくにない俺は何を話せばいいのかと頭をフル回転させた。
「あ、あのっ。遅くなってしまいましたが、ありがとうございました!僕、ベル・クラネルと言います!」
俺が会話の糸口を必死で探していると、唐突に頭を下げる少年、改めベルに声をかけられ我に返る。
「いやいや。俺は君…ベルがいることは知らなくて、ただ単純にミノタウロスを倒しただけだから…そんな礼なんていらないよ。俺はキリトだ。まーよろしく…」
「もっとマシに喋れねーのかよ!」と自分に失望ながらも、俺たちはほんの少しの間だけパーティを組んだのだった。
出てきたモンスターを自分はあくまでサポートに回り、ベルがメインで倒していく。
「た、倒せた…っ!?」
今までは倒せなかったモンスターだったのだろうか、コボルトの群れを倒すと、プルプルと震えながら感激していた。
そんな様子を眺めてただ純粋に、ベルはおもいっきり【冒険】というものをして、楽しんでさえいるんだなと思った。
そう。自分にはできなかった、そんな冒険を…。
「キリトさん?」
不意に名前を呼ばれ、過去の記憶が蘇ろうとするが振り払う。
「スマンスマン。駆け出しにしては中々のものだと思って、感心してたんだ」
「そ、そんなこと…!僕なんてまだまだですよ!」
あわあわと動揺するベルを見ていると自然に笑みがこぼれた。見た目以上に幼そうに見えるのはこの性格のせいだろう。
だが見た感じだと、歳は近いのかな?
ベルがまだモジモジしている中、俺は口を開いた。
「なぁ、ベルって幾つだ?」
「えっ?14ですけど。えっと、あの、キリトさんは…?」
「15だ。そんなに離れてないし、普通にタメ口で喋ってくれればいいよ」
「で、でも…っ」
「いいから、いいから」
ベルは迷いながらも、やがて「わ、わかった、そうするよ」と、少し照れくさそうだったが、承諾してくれるようだ。
別に嫌ってことはないが、同じ男同士、堅苦しいのもどうかと思ったので、少しホッとする。
そんなことをしている間に出口が見えた。
そこで、今のやりとりって意味あったのか?と思ってしまうが無視する。
そんなこんなで無事ダンジョンから出ることができたのだった。
もしキリトとベルが会って、喋ったらというのは
正直むずかったです。(うまくいったかは別として)
今度からは、別のキャラも出していきたいです!