戦う定め   作:もやしメンタル

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これからほのぼの系を書いていきます。


17話《サプライズのサプライズ》

「どうもエイナさん」

「あ、キリト君。今日はどんな無茶苦茶をやったのかなぁ〜」

 

ダンジョンから帰ってきて、一人ギルドに向かった俺に冗談で言うエイナに、キリトは苦笑いするしかなかった。

 

やることも済ませ、最後に「情報は知って損はない!」というアスナの教えで、ロビーにある巨大掲示板に足を運んだ。

なんだか今日はいつもより人が群がっている気がする。

なんとか爪先立ちして頑張って覗き、俺はその意味が理解した。

 

「ふぐっ⁉︎」

 

”ベル・クラネル Lv3 進出”。

 

話には聞いていたが、驚くべき成長速度だ。

ボーッとしてたらヤバイかも…。

と弟子であるベルに危機感を持つキリトだったが。すぐに微笑んだ。

 

「やったな、ベル…」

 

そう呟き、ギルドを後にするのだった。

 

 

* * *

 

 

「今日はベル君のLv3になったお祝いだ!盛大にやるぞー!よしっ!他のファミリアも招待してみるか!」

「じゃあ自分は、ケーキを作ります」

「あっ、命様!私もお手伝いしますっ!」

「リリは飾り付けをっ。ヴェルフ様、手伝ってください」

「おうよ!」

 

ヘスティアファミリアは今、ベルのお祝いに向け騒がしくなっていた。当の本人はというと、何かと理由をつけて外に出て行ってもらっている。そう、これはいわゆる、サプライズというやつだ。

 

Lvが上がったとわかったのは2日前、騒動の事でギルドに説明が必要だったり、Lvの報告やらでバタバタしてしまったが、やっと落ち着いたのだ。もちろんプレゼントも昨日選んでおいたのだ。

ヘスティアは宣言通り、みんなを呼ぶため外に出たのだった。

 

 

* * * 

 

 

「うーん」

 

アスナは自分の部屋の中、椅子に座りながら唸っていた。そして呟く。

 

「やっぱり隠さないでみんな呼んで祝うべきだよねー…、キリト君の誕生日」

 

今までバタバタしてしまっている中、この日が来てしまっていた。勿論アスナは覚えているがなかなかにやる機会が作れない。

やっぱりヘルメス様に相談してみようとドアを開けると、ちょうど目当ての神に呼ばれた。

 

「えぇっ!?ベル君Lv上がったんですか!?」

 

話では聞いてたけど、すごい成長速度だ。

私ももっと頑張らないとなー…。

 

「そこでだ!ヘルメス達にもお祝いに来てほしくてねっ。どうだい?」

 

その話を聞いて私はヘルメス様を見た。目配せで伝える。ヘルメス様は肩をすぼめた後頷いてくれた。

このやり取りを不思議そうに見ているヘスティアにアスナは切り出した。

 

「あの、ヘスティア様っ!」

 

 

* * *

 

 

「リリに頼まれたのって、ここのジャガ丸君だよね…」

 

ベルは今、なぜかいつもより遠くの店へジャガ丸君を買いに行っていた。

何でも場所ごとに特有の味があるんだとか。

 

「どこも一緒だと思うんだけどなぁ…」

 

言われた分を持って帰ろうとすると、視界に見覚えのある黒が見えた。早朝にも見た色だ。

 

「キリトー‼︎」

 

そう言って走っていくと、少年が振り返った。

 

「お、ベル。Lv上がったんだってな。ギルドで見たぞ」

「う、うん。おかげさまで…」

「?、それってジャガ丸君だよな。なんでここで?」

「あー、リリがこっちのが食べたいって」

 

そう言って話しながら、僕らは並んで歩いた。すると思い出した事があった。

 

「そういえば、前に借りた本返してなかったよね」

「え?あー、別にまだいいけど」

「いや悪いよ。せっかくだし来てくれない?」

 

以前、春姫さんに本を見せてあげたくて、僕がキリトにお願いしたのだ。最近頑張ってくれているからと。

という事で、二人でファミリアに行く事になった。

 

 

* * *

 

 

「はぁ、はぁ…。キリト君どこに行ったの?」

 

ヘスティアに承諾にてもらったアスナは、キリトを探して町中を走り回っていた。ちっともいないのでダンジョンに入ってしまったのではないかと青ざめる。すると、そんなアスナを見たジャガ丸君の店員のおばさんが話しかけてきた。

 

「どうしたの?アスナちゃん」

「え?あ、あのっ!キリト君見ませんでしたか?」

「キリトちゃん?あー、そういえば。白髪の子と歩いていたわよ」

「えぇっ!?」

 

まさかの奇跡に驚く。最近驚いてばっかだな……などと考えていたが。こうしてはいられないと、おばさんにお礼を言い、すぐにヘスティアファミリアに走って行った。

 

 

* * *

 

 

ヘスティアに「これからベル君とキリト君のお祝いをするからミアハ達も是非来てくれっ、それじゃっ!」と一気に誘われた、【ミアハ・ファミリア】の一同は【ヘスティア・ファミリア】に向かっていた。

するとそこにちょうど、ベルとキリトが歩いてきていた。

 

「おお。ベル、キリト、今日は私達も招待されているよ」

「「?、招待?」」

 

ヘスティアからは来てくれとだけ言われているミアハはサプライズと知らず話し始める。一方のベル達は訳がわからない。

 

「あの、招待って何のですか?」

「へ?」

 

ミアハはキョトンとするが、ナァーザ達は何となく直感し、やってしまったと溜息をついた。

 

「ちょーと、詳しい話を聞いていいですか〜?」

 

笑っているけど目は笑っていないキリトの問い詰めにミアハは汗が噴き出てくるのであった。

 

 

* * *

 

 

「なーるほど、お祝いねー」

「ていうか、キリト誕生日だったの!?」

「あ、ああ。16にな」

「へぇ〜、キリトあんたまだそのくらいだったの」

「もうすでに18くらいかと思ってた…」

「キリトの態度見てると以外と大人っぽく見えるのよねぇ〜」

「あはは…」

 

ナァーザ達の会話にベルは空笑いしか出せなかった。

そうしていると、【ヘスティア・ファミリア】が見えてきた。また汗をかき出すミアハにベルが「神様が言ってなかったんだからしょうがないですよっ」と慰める。対してキリトは驚かせようとしているみんなをいかに驚かせようかニヤニヤしていた。その顔をナァーザ達が見て苦笑いする。そうして門の前まで来た。なぜかキリトの顔がダンジョンさながらの顔になる。

 

「ここを開けたらきっとすぐ仕掛けてくるはずだ。顔を出すなよ。さっき窓際から此方を確認していた」

「……なんか変だよキリト」

「ここが勝負だ!よしベルっ、力を貸せ!」

「えっ!?ちょっ⁉︎わぁあああ‼︎」

「はうっ⁉︎ふ、服を…っ。はあぁぁ…」ボンッ

「カサンドラがショートしたー!」

 

〜数分後〜

 

「ううぅ…」

「よく似合っているぞベル」

「うん、さすがだ」

「笑ってやろうと思ったのに、ちゃんと着こなしてるわね…」

「俺の目に狂いはなかったっ!」

「か、かわいい…っ」

「何でこうなるの⁉︎」

 

いきなりキリトに服を脱がされたベルは、すっかり町娘に変身していた。そう、いわゆる女装である。

 

「これで入っていけば、みんな驚くぞ。大丈夫、バレないようにギリギリまで後ろに隠しとくから」

「そ、そういう問題じゃっー」

「なんだか面白そうっ!」

「ていうかそんな服どこから…」

「さすがLv7…」

「カサンドラさんそれ関係ないですからっ!」

 

そうしてベルはキリトに抵抗できる力もなく引きずられていくのだった。

 

 

* * *

 

 

「き、来ましたっ!キリト殿と…あれ?ミアハ様が一緒です。それにベル殿の姿が見えませんが…」

「なんだって⁉︎〜〜〜しょうがないっ、まずはキリト君だ!」

 

みんな一つずつのクラッカーを構え、ドアの前に待機する(アスフィは溜息をつき、春姫はおどおどしているが)。

ドアノブが傾き開けられていく。そしてキリトに向かって──

 

『へっ?』

 

打とうとしたが、そこにいるのは……少女だった。

 

「って違うから‼︎少年だから‼︎」

『べ、べ、ベル(君・様・殿)ーーっ⁉︎』

 

完全に騙された一同は、なんの違和感もなく女装をしてみせたベルに驚愕の声を上げる。

その叫び声は、オラリオ中に響き渡ったのだった。

 

 

* * *

 

 

「や、やばい…お腹痛い…ひひひっ」

「酷いよキリトっ‼︎」

 

うまくいきすぎて未だ爆笑しているキリトにベルは顔を真っ赤にし涙目になりながら訴えていた。ちなみにまだ服を変えさせてもらっていない。

 

「くそぅっ…!さすがはキリト君だ…っ。ていうか、ミアハっ!どういうことだい⁉︎」

「サ、サプライズなんてきいてなかったぞ⁉︎」

「へっ?」

「ヘスティア様〜っ?」

「か、神にも失敗はあるんだせ!」

「こんなことに失敗しないでくださいっ‼︎」

 

いつの間にか自分が責められている状況にヘスティアが汗をかくばんだった。

そんな中ヘルメスがこれ以上ないくらい楽しそうな顔をする。

 

「ベルちゃん。これからお茶でもどうだいっ?」

「か、からかわないでくださいっ!ていうか服返してよキリトっ‼︎」

「ひひひ…っ、悪かったって。はいっ」

「キリト君、本当に悪かったって思ってる?」

「え?そ、そりゃーもちろんだ」

「じゃあ、キリト君も着てみよっかっ!」

「なんでそうなるんだー‼︎てかなんで持ってるアスナ⁉︎」

 

気付けばお祝いという概念を忘れて。只々パーティーになっている光景に微笑むタケミカヅチであった。

 

「”であった”じゃないですよ!タケミカヅチ様もこっち来てください!」

「さぁ、さぁ」

「ふふふっ」

「おっ、押すな命、千草、春姫‼︎」

 

 

 


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