戦う定め   作:もやしメンタル

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12話《事件》

その後はというと、戦況は圧倒的に有利で、モンスターの全滅は時間の問題だった。

気がかりである、このモンスターの暴走の原因は、これからきっと話し合うのだろう。

冒険者が一人、また一人と解散していく。

僕もキリト達と再会しようと思った時。

トントンっと後ろから突かれた。

僕が後ろを振り返ると、アイズさんが立っていた。

 

「ア、アイズさん!?」

 

僕の顔が一気に赤くなった。

 

「ベルもいたんだね。お疲れ様」

「アイズさんも、お疲れ様でしゅたっ!」

 

噛んだーーーーーっっ!!!

この光景にはデジャブを感じるのであった…。

 

「おーい、アイズー!あっ、アルゴノゥト君もいる!」

「え!?本当です!ベル様ー!」

 

すると向こうから、リリとヴェルフ、それに【ロキ・ファミリア】の皆さんが歩いてきた。

 

「テメェ、トマト野郎!なんでアイズと一緒にいるんだよ‼︎」

「す、すいませぇん⁉︎」

「止めなよベート!ゴメンねー、無視していいから」

「何だとブス‼︎」

「なんか、狼が兔を襲ってるようだな」

「リリもそう思いました」

 

そうして騒いでいると後ろから「おー、なんか勢揃いだな…」と声が聞こえた。僕たちが振り返ると、キリトとアスナさん、それにアスフィさんが立っていた。

 

「やぁ、キリト。あって早々悪いけど君の意見を聞かせてくれないか」

「意見?」

 

フィンさんの言葉に僕が疑問を持つと、今度はリヴェリアさんが答えてくれた。

 

「この現象の原因だ」

 

その言葉に僕達の雰囲気が変わる。そしてそんな中、キリトが口を開いた。

 

「多分これは、自然な事じゃない。誰かが人口的に…」

 

その時、キリトの動きが止まった。

 

「? キリ…」

 

アスナさんがキリトに呼びかけようとした。その時。

目の前にいきなりエルフの女性が現れた。

 

「「「「ーっ!?」」」」

 

それぞれが驚愕に目を見開く中、女性は両手を前に突き出し、

そして叫んだ。

 

「【ルーテシア】!」

 

すると、目の前が光に包まれ見えなくなる。

そしてやっと見えたと思うとそこは、ただただ荒地が広がる場所だった。

 

「やられたっ‼︎」

 

キリトの言葉に僕は正気に戻る。

アイズさん達はもうすでに、戦闘態勢に入っている。

 

「べ、ベル君じゃないか!?」

 

その声に僕は固まった。なんとそこには、神様とヘルメス様、それにロキ様がいた。わけがわからなくなっていると、今度は前方が明るくなった。

瞬間、計3人の人物が現れた。

両端にいるのは冒険者だろう。それもかなりのやり手だということはベルにも分かった。

真ん中にいるのは神様だ。黒髪の短髪の、美しさの中にどこか強面のある神様は、次にはニッと口を釣り上げた。

 

「久しぶりだな〜キリトぉ」

『ーっ!?』

 

神の言葉に、みんなが一斉にキリトを見る。当のキリトは顔を真っ青にしていた。

 

「相変わらずのやり方だなグラル」

 

するとすぐに、ヘルメス様が前に出る。

珍しく表紙の険しいヘリメス様に、男神改めてグラル様は、ヘリメス様を見るなり笑みを消し顔を歪めた。

 

「黙れ、お前こそまだキリトにくっつきやがって」

「そっちこそ、諦めの悪い事この上ないな」

 

【ヘルメス・ファミリア】は今のこの状況を理解しているようだ。それぞれ深刻そうな表情している。しかし彼ら以外は話についていけていない。

その時、金髪の少年が前に出た。

 

「【ヘルメス・ファミリア】以外の皆様、申し訳ありません。先程の転送魔法は広範囲に影響してしまうので、巻き込んでしまったようです。今すぐお返しします」

「そうだな。俺はただ、キリトが欲しいだけだからなァ」

 

その瞬間、空気が変わる。

今度は僕も理解できた。みんな改めて身構える。

理由はどうであれ、相手の狙いはキリトだ。

 

「引いてくれないか…。キリト、わかってるだろうなァ?また”あの時のようにして欲しいなら”話は別だが?」

「…っ」

 

キリトの体が小さく震える。

 

「聞くなよキリトっ」

「キリトいけません!」

「さぁ、どうする?」

「お、俺は…っ」

 

その声は震え、とても弱々しいものだった。

 

「大丈夫だよ」

「ーっ!」

 

その時、キリトの隣にいたアスナさんがキリトの手を包み込んだ。

 

「震えなくても大丈夫、怖くない。だって私がキリト君を守るから」

「ーっ!!」

 

その後キリトは俯き、そして、顔を上げた。

そしてその目はいつものまっすぐな漆黒の瞳だった。

 

「行くつもりはありません。帰ってください」

「ーっ!」

 

キリトの返答にグラルは目を見開く。そひて…

 

「残念だな……キリト!!」

 

グラル様が叫ぶと同時に団員2人が突っ込んできた。

するとその瞬間、キリトの体が光り、そして叫んだ

 

「【アースラ】!」

「なっ!?」

 

僕らはその魔法に目の前が光に包まれた。

 

 

* * *

 

 

目を開けるとそこは森の中のようだ。そこには、あの人達はいなかった。

みんなの目が少女になったキリトに向く。

 

「…あのさ、これって転送魔法だよね?」

 

僕の質問に女の子になったキリトは頷く、するとティオナさんが前に出た。

 

「じゃあ、そのままオラリオまでとんじゃえば良かったじゃん」

「詠唱なしの魔法だったから、とべる範囲が狭かったんだ…」

「もっと強力なのはないのかい?」

 

神様の質問にキリトは俯く。

 

「これ以上強力なのは知らないんだ…」

 

今度はフィンさんがリヴェリアさんに尋ねた。

 

「リヴェリアはどうだい?」

「すまない。そもそも転送魔法なんてもの、そうあるものではない。先ほどの女もだが、到底真似できない」

「あくまで時間稼ぎってことかよ」

 

ヴェルフの言葉を最後に会話が途切れる。キリトはずっときつく唇を噛んだまま俯いていた。

 

「訳が分からねぇ‼︎」

 

瞬間、ベートさんが叫びキリトの胸ぐらをつかんだ。

 

「キリト君っ!」

「ちょっと、ベート‼︎」

「うるせぇ!おいキリトッ、ちゃんと説明しろ!どうなってやがる‼︎」

 

未だ俯き続けるキリトに顔を近づけながらベートさんが叫ぶ。

その時、トンっとベートさんの腕にヘルメス様が手を乗せた。

 

「事情は俺が話す。いいか?」

「…っち」

 

そんな男神の言葉に、やがてベートさんはキリトから手を離した。

ヘリメス様に促され、僕らは座りこむ。気がつくと辺りは暗くなっていた。

煙を避けて火は付けず、アスフィさんが持っていた魔石で少し明るくする。

キリトは体を元の姿に戻してから座る。その様子はやはり弱り切っているのうだった。隣に座ったアスナさんが心配そうに手を重ねる。

 

「これは、キリトの過去から話す必要があるんだ。いいか?」

 

ヘルメス様の言葉にみんなが頷く。それを見てヘルメス様も頷き、話し始めた。

 

 

 




次回はまるまるっと、過去話です。

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