その後はというと、戦況は圧倒的に有利で、モンスターの全滅は時間の問題だった。
気がかりである、このモンスターの暴走の原因は、これからきっと話し合うのだろう。
冒険者が一人、また一人と解散していく。
僕もキリト達と再会しようと思った時。
トントンっと後ろから突かれた。
僕が後ろを振り返ると、アイズさんが立っていた。
「ア、アイズさん!?」
僕の顔が一気に赤くなった。
「ベルもいたんだね。お疲れ様」
「アイズさんも、お疲れ様でしゅたっ!」
噛んだーーーーーっっ!!!
この光景にはデジャブを感じるのであった…。
「おーい、アイズー!あっ、アルゴノゥト君もいる!」
「え!?本当です!ベル様ー!」
すると向こうから、リリとヴェルフ、それに【ロキ・ファミリア】の皆さんが歩いてきた。
「テメェ、トマト野郎!なんでアイズと一緒にいるんだよ‼︎」
「す、すいませぇん⁉︎」
「止めなよベート!ゴメンねー、無視していいから」
「何だとブス‼︎」
「なんか、狼が兔を襲ってるようだな」
「リリもそう思いました」
そうして騒いでいると後ろから「おー、なんか勢揃いだな…」と声が聞こえた。僕たちが振り返ると、キリトとアスナさん、それにアスフィさんが立っていた。
「やぁ、キリト。あって早々悪いけど君の意見を聞かせてくれないか」
「意見?」
フィンさんの言葉に僕が疑問を持つと、今度はリヴェリアさんが答えてくれた。
「この現象の原因だ」
その言葉に僕達の雰囲気が変わる。そしてそんな中、キリトが口を開いた。
「多分これは、自然な事じゃない。誰かが人口的に…」
その時、キリトの動きが止まった。
「? キリ…」
アスナさんがキリトに呼びかけようとした。その時。
目の前にいきなりエルフの女性が現れた。
「「「「ーっ!?」」」」
それぞれが驚愕に目を見開く中、女性は両手を前に突き出し、
そして叫んだ。
「【ルーテシア】!」
すると、目の前が光に包まれ見えなくなる。
そしてやっと見えたと思うとそこは、ただただ荒地が広がる場所だった。
「やられたっ‼︎」
キリトの言葉に僕は正気に戻る。
アイズさん達はもうすでに、戦闘態勢に入っている。
「べ、ベル君じゃないか!?」
その声に僕は固まった。なんとそこには、神様とヘルメス様、それにロキ様がいた。わけがわからなくなっていると、今度は前方が明るくなった。
瞬間、計3人の人物が現れた。
両端にいるのは冒険者だろう。それもかなりのやり手だということはベルにも分かった。
真ん中にいるのは神様だ。黒髪の短髪の、美しさの中にどこか強面のある神様は、次にはニッと口を釣り上げた。
「久しぶりだな〜キリトぉ」
『ーっ!?』
神の言葉に、みんなが一斉にキリトを見る。当のキリトは顔を真っ青にしていた。
「相変わらずのやり方だなグラル」
するとすぐに、ヘルメス様が前に出る。
珍しく表紙の険しいヘリメス様に、男神改めてグラル様は、ヘリメス様を見るなり笑みを消し顔を歪めた。
「黙れ、お前こそまだキリトにくっつきやがって」
「そっちこそ、諦めの悪い事この上ないな」
【ヘルメス・ファミリア】は今のこの状況を理解しているようだ。それぞれ深刻そうな表情している。しかし彼ら以外は話についていけていない。
その時、金髪の少年が前に出た。
「【ヘルメス・ファミリア】以外の皆様、申し訳ありません。先程の転送魔法は広範囲に影響してしまうので、巻き込んでしまったようです。今すぐお返しします」
「そうだな。俺はただ、キリトが欲しいだけだからなァ」
その瞬間、空気が変わる。
今度は僕も理解できた。みんな改めて身構える。
理由はどうであれ、相手の狙いはキリトだ。
「引いてくれないか…。キリト、わかってるだろうなァ?また”あの時のようにして欲しいなら”話は別だが?」
「…っ」
キリトの体が小さく震える。
「聞くなよキリトっ」
「キリトいけません!」
「さぁ、どうする?」
「お、俺は…っ」
その声は震え、とても弱々しいものだった。
「大丈夫だよ」
「ーっ!」
その時、キリトの隣にいたアスナさんがキリトの手を包み込んだ。
「震えなくても大丈夫、怖くない。だって私がキリト君を守るから」
「ーっ!!」
その後キリトは俯き、そして、顔を上げた。
そしてその目はいつものまっすぐな漆黒の瞳だった。
「行くつもりはありません。帰ってください」
「ーっ!」
キリトの返答にグラルは目を見開く。そひて…
「残念だな……キリト!!」
グラル様が叫ぶと同時に団員2人が突っ込んできた。
するとその瞬間、キリトの体が光り、そして叫んだ
「【アースラ】!」
「なっ!?」
僕らはその魔法に目の前が光に包まれた。
* * *
目を開けるとそこは森の中のようだ。そこには、あの人達はいなかった。
みんなの目が少女になったキリトに向く。
「…あのさ、これって転送魔法だよね?」
僕の質問に女の子になったキリトは頷く、するとティオナさんが前に出た。
「じゃあ、そのままオラリオまでとんじゃえば良かったじゃん」
「詠唱なしの魔法だったから、とべる範囲が狭かったんだ…」
「もっと強力なのはないのかい?」
神様の質問にキリトは俯く。
「これ以上強力なのは知らないんだ…」
今度はフィンさんがリヴェリアさんに尋ねた。
「リヴェリアはどうだい?」
「すまない。そもそも転送魔法なんてもの、そうあるものではない。先ほどの女もだが、到底真似できない」
「あくまで時間稼ぎってことかよ」
ヴェルフの言葉を最後に会話が途切れる。キリトはずっときつく唇を噛んだまま俯いていた。
「訳が分からねぇ‼︎」
瞬間、ベートさんが叫びキリトの胸ぐらをつかんだ。
「キリト君っ!」
「ちょっと、ベート‼︎」
「うるせぇ!おいキリトッ、ちゃんと説明しろ!どうなってやがる‼︎」
未だ俯き続けるキリトに顔を近づけながらベートさんが叫ぶ。
その時、トンっとベートさんの腕にヘルメス様が手を乗せた。
「事情は俺が話す。いいか?」
「…っち」
そんな男神の言葉に、やがてベートさんはキリトから手を離した。
ヘリメス様に促され、僕らは座りこむ。気がつくと辺りは暗くなっていた。
煙を避けて火は付けず、アスフィさんが持っていた魔石で少し明るくする。
キリトは体を元の姿に戻してから座る。その様子はやはり弱り切っているのうだった。隣に座ったアスナさんが心配そうに手を重ねる。
「これは、キリトの過去から話す必要があるんだ。いいか?」
ヘルメス様の言葉にみんなが頷く。それを見てヘルメス様も頷き、話し始めた。
次回はまるまるっと、過去話です。