雁夜おじさんに憑依してしまった大学生   作:幼馴染み最強伝説

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気づいたらお気に入りが3,000件突破………思わず、寝ぼけてるのかと勘違いしました。

皆さん、至らぬ点ばかりの作品ですが、読んでくださっている方、ありがとうございます。

某野球アプリのイベントやGOのリセマラやらで執筆が遅れましたが、駆け足で頑張っていきたいと思います。タマモキャット欲しいー!

現在extraしてますけど、執筆中に終わるかどうか………このままニャル子が混じったようなキャス孤で頑張っていきましょうか。

後、自分、Twitterやってますので、感想などで聞きづらいことなどがございましたら、そちらでお伺いいたします。アカウント名は『のほほん@怠惰系男子』です。くれぐれも悪戯などはしないようにお願いします。本当に勘弁してください。


月に変わってお仕置きよ?

アーチャーのマスター、遠坂時臣は考える。

 

先日の倉庫街でのサーヴァントの決闘。

 

ライダーの挑発に応じた自らのサーヴァント。英雄王ギルガメッシュの行動は王としてのプライドから、ああいった行動に出るのは理解できた。まさか同じ目線に立たれただけで我を忘れそうになる程ブチ切れるとまでは想定していなかった。

 

だが、時臣はその程度のことで頭を悩めているわけではない。

 

もちろん、ギルガメッシュが圧倒的物量の宝具を晒すことはあまり好ましくはない。聖杯戦争が始まって数日、他の勢力の実力も知れぬうちにこちらが手の内を晒す事だけ

避けたかった。

 

けれど、それ以上に問題なのは間桐雁夜の言動とそのサーヴァントであった。

 

(まさか殆どのマスターが揃っている中で王の真名を口にするとは………ましてや、あのサーヴァント。ライダーのマスターの勘違いでない限り、あのサーヴァントは英雄王よりも強いということになる)

 

初めはあの場において、マスターだけで姿を晒すなどという愚行を犯した雁夜に対して、侮蔑と嘲笑を隠し得なかった時臣だが、そこでアーチャーの真名をあっさりとバラしてしまったことに度肝を抜かれていた。

 

バレる要素はほぼなかった。

 

矛を交えれば、何れは看破される可能性もあるが、それも殆ど闘わぬ内から見抜かれ、そして他のマスターがいる中で告げられ、ギルガメッシュもそれを肯定した。時臣にとっては最悪の事態である。

 

そしてギルガメッシュの攻撃から雁夜を助けたそのサーヴァント。

 

ウェイバーの言っていた全てのパラメーターがMAXという常軌を逸した能力を誇るサーヴァント。

 

間違いなく、最強のサーヴァントを呼び寄せたと確信をしていた時臣もその時は優雅さの欠片もない程に驚きの声を上げ、原作とは違った位置からその状況を監視していたアサシンと視覚、聴覚を共有していた綺礼もその報告の声には明らかに動揺が感じ取れていた。

 

そんなド級のサーヴァントと無策に、感情に任せて闘うなど死にに行くようなものだ。そう判断した時臣は令呪を使用し、ギルガメッシュを撤退させた。

 

当然ながら、令呪で強制的に撤退させられたギルガメッシュはかなりキレていたものの、二、三日経った今は既に怒りを鎮め、ソファーの上でワインを片手にくつろいでいた。

 

(令呪は残り二画。どちらも使用すればあのサーヴァントを倒す事は可能かもしれない。だが、そうすれば確実に英雄王との関係を維持出来なくなる。なんとしてでも、令呪一画以内にあのサーヴァントを倒す方法を考えなければ…………いや、他にも方法はあるか)

 

緒戦にして、小さな流星群を降らせるというおおよそ既存の宝具を超えた神秘を見せたサーヴァントに時臣はどうしたものかと頭を悩ませたが、すぐに別の方法に思い至る。

 

(いくらサーヴァントが強くとも、間桐雁夜は魔導から逃げ出した落伍者。一年で魔術師になった急造だ。ならばマスターさえ打倒してしまえば、あのサーヴァントもすぐに消えるだろう)

 

表面上(・・・)、間桐雁夜は魔導から逃げ出し、聖杯戦争に参加するためだけに一年間で鍛え上げられた急造のなんちゃって魔術師として、他陣営にも知れ渡っている。

 

所詮はサーヴァントが強いだけで、マスターは穴。その気になればいつでもやれる。

 

弱点がこうもはっきりしているのなら、悩むのはサーヴァントをいかにして引き離すか。それだけだった。

 

もっとも、雁夜は魔術師ではなく、魔法使いであるのだが、当然ながら誰もそれを知らない。知る由も無い。

 

「英雄王。一つお尋ねしたいことがあります」

 

「くだらぬ問いを投げかけるというのであれば、即刻首を刎ねるぞ」

 

ギルガメッシュはグラスを揺らしながら、なんでもないようにそう言うが、その言葉に嘘偽りはない。

 

ギルガメッシュはアーチャーとして今回の聖杯戦争で現界したわけだが、彼の目的は自らの財であろう聖杯を他のサーヴァントに盗まれるのを阻止するという異例の理由から呼び出されており、マスターに依存してまで現界しておこうなどと考えてはいない。気に入らなければ、マスターであろうとその場で断罪するのだ。

 

「間桐雁夜の事です。王はあの男を見て、『面白い』と。そう仰られました。それはどういった意味合いなのですか?」

 

時臣が気になっていたのはこれもある。

 

急造の魔術師風情が英雄王に気に入られる理由を持ち合わせているはずなどない。寧ろ、醜悪だとして嫌悪を示される方が正しいとさえ思っていた。

 

サーヴァントが原因なのか?

 

そうも考えたものの、それならばサーヴァントへ向けて何かしら問いを投げかけるはずだ。ならば何故マスターに?と。時臣は考えていた。

 

それに対してギルガメッシュはグラスに入ったワインを眺めながら言葉を紡いだ。

 

「『アレ』は異常だ。貴様らでは到達する事のない極地にいる。異質。いや、魔術師である貴様達には異端といった方が正しいか」

 

「と言われますと?」

 

「天上天下において真の王は我のみであるように、奴のような存在は奴以外にあり得ない。人の身でありながら、奴は人の身では到達する事のできない境地にいる。矛盾しているが、それ故に異常なのだ」

 

愉快そうに嗤うギルガメッシュだが、時臣は心中穏やかではない。

 

今のギルガメッシュの発言が正しければ、間桐雁夜は急造の魔術師ではない。それ以上の存在ということになる。

 

(何れにしろ。遅かれ早かれ、聖杯を求めるのであれば間桐雁夜とは相見えることになる。その時にわかるだろう。あの男の正体が……)

 

(神霊と……そして神の恩恵を受ける人間。くだらぬ茶番に呼び出されたと思ったが、なかなかどうして面白い。あの者達だけは我手ずから裁きを下すとしよう)

 

思惑は違えど、この瞬間、アーチャー陣営の目的が一致した。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まぁ、取り次ぎはごゆるりと。私も気長に待たせていただくつもりなので、それなりの準備して参りましたからね。何、他愛のない児戯ですよ』

 

倉庫街での戦闘から数日経った日。

 

アインツベルン城には十数人の子を引き連れたキャスターの姿があった。

 

魚のように飛び出た不気味な目をギョロつかせ、子供達を見渡す。

 

子ども達は暗示をかけられているのか、虚空を見つめ、虚ろな表情をしていたが、キャスターが指を鳴らすと同時に正気を取り戻したかのように辺りを見渡す。

 

『さぁさぁ、坊や達。鬼ごっこを始めますよ。ルールは簡単です。この私から逃げ切れば良いのです。さもなくば……』

 

キャスターの手が一番近くにいた少年の頭に乗せられる。

 

魔術師のクラスで現界しているとはいえ、サーヴァントの身であるキャスターーーージル・ド・レェの腕は筋肉質で子どもの頭程度であれば容易に握り潰す事が容易である事が見て取れた。

 

その瞬間、セイバーの未来予知にも等しい直感スキルが最悪の未来を想像させる。

 

脳漿をぶち撒け、血飛沫を辺りに飛び散らせるその光景を。

 

セイバーはマスターである切嗣の判断やアイリスフィールの言葉を待たずして、キャスターの元へと向かおうとする。

 

(今からでも一人くらいは助けられるはずだーーッ!)

 

キャスターに対する激情に心を燃やしながらも、子ども達に自身が到着するまで逃げ延びてくれと祈る。

 

悠長にしている暇はないと扉に手をかけた時だったーーーー。

 

『ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁぁ!』

 

『ぶべらっ⁉︎』

 

制止の声と共にキャスターの顔面にライダーキックが放たれ、キャスターは錐揉み回転で木々を巻き込みながら、数メートル先へと吹っ飛んだ。

 

キャスターの手に掴まれていた子どもはあまり強い力で掴まれていなかった為か、共に吹き飛ばされる事はなく、いきなり空から降ってきた狐の耳を生やした女性に視線が釘付けになっていた。

 

『世の為、人の為。そしてご主人様からの命により、悪の権化を倒しに参上!ていうか、あんなのがキャスターなんて聖杯が許しても、私が許しません!』

 

ビシッとポーズを決めて、サーヴァントはそう宣言した。

 

その光景に誰もが呆気に取られた。

 

セイバーやアイリスフィールはそうだが、表情の変化の乏しい舞弥でさえ、驚愕に染まっており、切嗣に至っては組み立てていたキャリコを危うく落としかけた。

 

「キリツグ。これは一体ーーー」

 

「………わからない。ただ一つ言えるのは、おそらくこの場にはマスターである間桐雁夜が来ている可能性が高い。ということだ」

 

先の倉庫街での死闘。

 

途中で乱入してきて、あの場を強制的に終了させたサーヴァントとそのマスター。

 

あの場にいた全マスター、全サーヴァントがタマモの実力に対して、逃げの一手を選んだ。

 

見せつけるかのように降らせた彗星による絨毯爆撃にも近い行いに切嗣は久しく忘れていた確固たる命の危機を感じながら、自身の体内時間を加減速する魔術、固有時制御を駆使し、文字通り、命からがら切り抜けた。

 

(彗星を降らせる英霊なんて聞いたこともないーーーが、マスターさえ倒してしまえば、どれだけサーヴァントが強くとも、勝機はある。ましてや、能力が高いのなら、魔力消費も尋常じゃないはず。マトモに闘える魔力すら残っているか怪しいところだ)

 

サーヴァントにもよるが、圧倒的ステータスを誇るサーヴァントによる行動は当然ながら其れ相応の魔力を要求される。それがケイネスや時臣のような優れた魔術師であるならば、サーヴァント共々闘うことの出来る余力がある可能性もあったが、雁夜は急造の魔術師であるとの情報だった。

 

であるならば、サーヴァントを闘わせるのがやっとで抵抗に費やせる魔力も体力も残っていないはずだ。

 

切嗣はそう考えた。それが間桐雁夜の術中に嵌っているとも知らずに。

 

「セイバー。キャスターをあのサーヴァントと共に打倒した後、その場で足止めをしてくれ。その間に僕がマスターを叩く」

 

「わかりました、キリツグ。くれぐれもお気をつけて」

 

セイバーはスーツ姿から鎧姿へと刹那のうちに服装を変化させるとすぐさまキャスターとサーヴァントのいる戦場へと向かう。

 

その最中でふとある事に気付いた。

 

(そういえば、さっきキリツグは私と普通に話してましたね)

 

見た目は平静さを取り繕っていても、混乱を極める戦場にいる切嗣もまた、サーヴァントを無視するという行為を素で忘れてしまう程にテンパっていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いやー、よく飛んで行きましたね)

 

キャスターを蹴り飛ばし、劇的とも言える登場を果たしたタマモはキャスターの吹っ飛んでいった方向を眺めていた。

 

未だキャスターが起き上がって、向かってくる気配はない。

 

かといって、逃げたわけでも、死んだわけでもないのは空気中に漂う緊張感と狂気がそれを物語っている。

 

それ故にタマモは構えることはしないまでも、周囲には気を配っている。

 

(それにしても、まさかご主人様の読み通りなんて………本当に何者なんですか………マスター)

 

タマモがここにいるのは当然ながら、偶然ではない。

 

ほんの数時間前の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よし。アインツベルン城に行くぞ』

 

『と、唐突ですね……あれですか?早い所聖杯戦争を終わらせて、新婚旅行に行きたいとか⁉︎』

 

『いや、まあ違うんだけどな。今夜、アインツベルン城でどうにも気持ちの良くない事が起きそうだ。だから、早い内に刈り取っておく。…………やっぱ子どもが死ぬのは見過ごせないよな』

 

『まあ、悪い芽は早めに摘んでおくに越したことはありませんけど……………具体的にはどうするおつもりで?前の時のように彗星でも降らせますか?』

 

『戦争屋にも掃除屋にもなるつもりはないから、今回はしないよ。それに彼処には二つ用がある。だからタマモ。お前には正義の味方でもやってもらいたい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(途中で別れましたけど、もう一つの用事って………「お、ヲヲヲヲノレェェェェェ‼︎」うへぇ……)

 

「神聖な儀式を邪魔しおってェェェェ‼︎獣の分際でェェェェ!異界の化け物達に全身を引き裂かれて狂い悶え死ぬがいい!」

 

怒りに目を剥き、キャスターは自身の宝具『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』を開く。

 

彼の友人。フランソワ・プレラーティーがイタリア語に訳したルルイエの異本とされるそれは、それ自体が魔力炉であり、本来正規の魔術師ではないキャスターをキャスターたらしめる魔道書である。

 

キャスターの悲鳴にも似た叫びによって、地面からは異形の触手が無数に現れる。

 

海魔と呼ばれるそれはサーヴァントと比較して、比較にならないほどに弱いものではあるものの、大軍宝具故に数十体にも及ぶ召喚が可能であり、また倒された海魔を糧に新たな海魔を召喚するために燃費は非常に良いと言え、これもまた非正規の魔術師である雨竜龍之介をマスターにもつキャスターにとっては都合が良かった。

 

『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーッ!』

 

怪音波のような、おおよそ言葉で言い表せないような奇声を発する海魔にタマモは表情を歪ませる。

 

醜い。あまりにも醜い。

 

悍ましい奇声は酷く耳障りだ。

 

今すぐにでもその音源を叩き潰すことは容易だ。

 

けれど、その高すぎる能力では暴力的な力を振るうだけで海魔の奇声に当てられて気を失ってしまった子どもも余波で死にかねない。

 

ただの物理行動ですらも今のタマモが行えば余波で多大なる影響を及ぼす。

 

それはタマモも重々承知の上で、雁夜もそれはわかっていた。

 

故に一撃目で仕留めるつもりだったのだが、思ったよりもキャスターがタフであったために現状へと至った。

 

もっとも、それすらも予想通りの展開なのだが。

 

押し寄せてきた海魔の一部が突如細切れになった。

 

「ーー先日ぶりだな。獣のサーヴァントよ」

 

海魔の一部を斬り払って現れたのはランサーだった。

 

ランサーの持つ二槍によって細切れになった海魔だが、間も無くして、すぐに新たな海魔が生まれ出る。

 

「久しぶりですねぇ、イケメンのーーーいえ、イケモンのランサーさん」

 

「い、イケモン?」

 

「はい。年齢階級立場を問わず女性を魅了するその貌!人妻魅了するなんて論外です!」

 

「いや、それは……なんというかな。この黒子か、或いは自分が女に生まれたことを……」

 

「じゃかあしい!この状況で言うのもあれですけど、貴方のように勝手に女性を魅了してしまう魔貌持ちは神が許しても、この私が許しません!貴方のような者にこそ、この一撃は相応しい!」

 

「ま、待て、獣のサーヴァントよ。今はキャスターの討伐が……」

 

「あー、あんなの瞬殺ですよ、瞬殺。片手があれば充分です」

 

俺のこの手が真っ赤に燃えると言わんばかりにタマモの脚に魔力が込められる。

 

その荒れ狂う程の膨大なオーラにランサーは背筋に嫌な汗をかいていた。

 

(こんなものの足止めを……俺は出来るのだろうか)

 

ランサーがここに来たのは元はと言えば、ケイネスが手負いのセイバーを討ち取り、そしてそのマスターを打倒するためにこの場に訪れようとしたのが、原因だった。

 

偶々、同じタイミングでアインツベルン城を襲撃してきたキャスターを屠り、セイバーとの決着を果たそうとしていたのだが、そこへ乱入してきたのは先日のおおよそサーヴァントの枠組みから外れ切ったサーヴァント。

 

マスターと共にこの場に訪れた瞬間をこれまた偶々見かけたランサーはそれをケイネスに報告すると、ケイネスはランサーにセイバーと共闘してでもタマモを足止めし、マスターを討ち取るまで持ち堪えろとそう命令した。

 

明らかにランサーが勝てるなどと微塵も思っていない発言だったが、生憎と討ち取ってみせるなどという勇ましい言葉をランサーは告げることは出来なかった。

 

矛を交えたとして、何分持ちこたえられるか、自然とそう考えていたが、実際に何故かよくわからない理由で敵意を向けられたランサーはそれすらもおこがましいと考えてしまうほどに実力差を痛感していた。

 

「……とはいえ」

 

「?」

 

「このまま貴方を去勢してたら、ご主人様に怒られちゃいます。今回の功績を交換条件にナデナデプリーズする予定があるので、この場は見逃してあげましょう。いっそ、まとめて倒しちゃう手もありますけど」

 

「……」

 

「それにそろそろ男装王のご到着です」

 

タマモの言葉と共に海魔の波の中に丸い風穴が空き、その中を金髪の甲冑を纏った騎士が駆け抜けてきた。


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