島風の唄   作:月日星夜(木端妖精)

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遅れた。



第五十三話 戦艦水鬼

 第一波……文字通りの脅威が、俺達を襲った。

 巨腕の異形が、体に見合った大きな拳を人外の膂力(りょりょく)によって海面に叩き付ける事で生まれた津波。

 発生地の近くにいた俺達は、上昇する波の初めの方にぶつかりそうになって、それぞれ跳び上がって避けた。もたついていたリベッチオも、俺が腰に腕を回して強引に持ち上げた。これくらいのサポートなら訳ない。

 足下を風が吹き抜けていく。

 波を越え、着水する音が複数。ジャンプした時より落ちる時の時間の方が短かったのは、気のせいじゃない。出始めとはいえ津波みたいなものだ。引き込まれた海水のために水位が下がり、透明な水の向こうに灰色の海底が見えていた。

 そしてそれは、それだけ波が成長する事を示していた。

 海の唸り声が後ろから聞こえてくる。通常浜に向かうにつれ弱まっていくはずの波が、おそらくは逆に大きくなっていってるのだろう。提督達は無事でいられるだろうか。

 

「なんて、心配してる暇はないか!」

「っ?」

 

 リベッチオを支えるようにしながら空を見上げる。掟破りの全体攻撃の後は、航空戦が待っている。ただしこっちは無防備だ。密集していれば最悪、全員仲良く轟沈なんて事もあり得る。ここは浅いが、大破して沈んでも戻れるかも、なんて甘い考えは捨てておこう。航空魚雷でばらばらにされでもしたら、泳いで戻るなんて選択肢もなく沈む羽目になるだろうから。

 このまま手をこまねいて見ているつもりはない。そう思ったのは俺だけでないらしく、荒潮か満潮か、散開しようと動く気配があった。

 だが、俺は動かない。腕の中には、混乱しているのか酷く震えているリベッチオがいるし、朝潮は、俺の隣から離れようとしなかった。彼女に限って足が竦んでいる、なんて訳ではないだろう。横目で見やれば、朝潮は真剣な目で、迫り来る艦載機の群れを注視していた。

 

『何やってんの、変身して!』

「――どこに?」

 

 胸の中とも頭の中ともつかない場所で島風の声が響く。咄嗟に言い返すと、朝潮とリベッチオが俺を見た気がした。

 群れの先頭が戦艦水鬼達の頭上を越える。もういつ魚雷を投下してきてもおかしくない。機銃の掃射でも、俺達はやられてしまうだろう。たとえ俺一人でも、ああも密集した状態から撃たれれば、どう転ぶかわからない。

 返信だかなんだかわかんないけど、それをやってる暇はない。そもそも俺は妖精暗号通信のやり方ってのをいまいちわかってないんだし。

 

『改二になってって言ってるの!』

 

 ――きた!

 けたたましい銃撃音が何十も重なり、びかびか光った銃口から鉄の(つぶて)が飛来する。まだ動けない様子のリベッチオを胸に抱き、苦しげな声を無視して回避行動に移る。……って、無理、やっぱ無理だこれ!

 右足を滑らせようとして、前方の波が粉々に砕かれるのを見て避けるのは無理だと判断した。だから、足の位置を入れ替え、リベッチオを庇うように体の向きを変え、横に移動。朝潮も守ろうと動いた。

 完全に庇うのは無理だろう。だが一部分だけなら、この背中で受け止められるはずだ。

 抱え込んだ頭が動こうとするのを押さえ、衝撃に備えて目をつぶる。まぶたが落ちる刹那に、苦い顔をした朝潮が、身を屈めて俺の傍へ寄って来た。

 

「――――!」

 

 なんて言えば良いのだろう。

 たくさんの弾丸が俺に当たった。

 布を巻き込み、肉にめり込むような生々しい感覚があったような気がしたし、髪を巻き込み、首を穿つ痛みがあったような気もした。

 体感では数十秒くらい。その間、踏ん張った体はずっと衝撃に揺さぶられ、鋭く突き刺さる衝撃はきんきんと脳に響いた。

 まぶたの裏の暗闇が何度も白んで、だけど、全てが過ぎ去っても、俺は、普通に目を開く事ができた。

 艦載機の遠退いて行く音。両腕で頭を庇う朝潮の姿。それから、呆けて俺の胸に頬と両手を当てているリベッチオを順繰りに認識して、最後に、少しでも体を動かすと体中軋んで痛むのがわかった。

 

『今! 今がチャンスだよ!』

 

 我慢すれば動けないほどではない。だがそれも、胸中から発される島風の声に我慢できなくなって、一度大きく息を吐いた。

 

『速く速く!』

 

 ああもう、うるさい!

 改二になれって言うけど、そんな余裕はない! 後ろには戦艦水鬼が待ち構えてるし、前には艦載機がいる。この状況で限界までスピードを出すなんて、不可能に近い。いくら俺が速くなったと言っても、艦載機の飛行速度の方が速い。追いつかれて機銃を撃たれたら、速度を出すなんて言ってられなくなる。その提案は、現実的じゃないよ。

 

『必要なのは限界を超えたと思えるスピードの中に突入する事だよ。風を感じて。それできっと、なれるから』

 

 風を……。

 足下を通り抜ける涼しい風が、熱を持った体から少しだけ体温を奪っていった。

 ……ああ、そう。そうか。そういう方法も、あるんだね。

 

『わかった? なら』

「うん。跳ぶよ。――朝潮!」

 

 艦載機が戻って来ようとしている。顔を上げ、俺の肩越しに背後を見ていた朝潮に声をかけ、リベッチオを任せる。

 朝潮に肩に手を置かれて引き寄せられるリベッチオは、きょとんとして、朝潮を見上げた。さっきの銃弾の雨を無事に乗り切ったのが信じられないのだろうか、かなり気が抜けているように見える。喝を入れるのは、朝潮に任せよう。

 

 素早く後退する。離れる俺を空色の瞳に映した朝潮は、間を置かず、俺の背後へ目をやった。俺の代わりに戦艦水鬼の動向を見ようとしているのだとわかって、だからもう、後ろを気にするのはやめた。

 三歩目。後方へ出した左足と右足を並べ、膝を曲げて力を溜める。波が体を押し上げた、瞬間、俺は空へと跳び上がった。

 体を丸め、空中で一回転。遠心力を得た後は、海面へ向けて急降下キックの体勢に移行する。

 『跳び蹴りをかます』、その意識のためか、俺は、自分の体がぐんと引っ張られるみたいに加速したように感じた。実際はどうかわからない。視界に映る一面の青は円状に広がって、風と共に迫った。

 

 海を突き破ると、気泡が全身を包み込んだ。ボコボコとくぐもった音が上へと遠退いていき、意識も肉体も、白い世界に突入した。

 ミルクに包まれたみたいに数瞬体の動きが鈍って、落ちる向きが変わる。

 正面。

 これではもう、落ちるとは言えない。浮かんで、進んでいた。

 

『キュー』

 

 左右と下に、連装砲ちゃん達が泳いできた。宇宙遊泳みたいにくるくる回転するのは気持ち良さそうで、戦闘の最中だというのに、笑みが零れた。

 

「連装砲ちゃん、一緒に行くよ!」

『キュー!』

 

 自分の言葉を合図に意識を切り替え、前を見据える。連ちゃんがプッと口から端末を放り、俺の左腕にがっちりと装着されると、さっそく眼前に薄い光の画面が出現した。改造画面。

 連装砲ちゃん×3を資材として消費し、自分自身を改造する。人差し指でボタンをタッチすれば、濃紺の競泳水着が光の粒子となって風に溶け、流れていった。代わりに纏わる、いつもの制服。頭の上にはうさみみカチューシャ。連装砲ちゃん達が光の線となって分解され、肩や背にくっつく。両肩の砲。背中を覆う銀のフレーム。スカートのゴム周りを覆う細く黒い、ゴム製のベルト。バックル部分の表面に『Ⅱ』の刻印が焼き付く。ブースターユニットから噴き出した桜色の炎は、火の粉のように絶えずエネルギーの残滓を零す。

 装備欄の四個目が砕かれ、黒い穴が出現すれば、改造完了。画面上にでかでかとシマカゼ改二の姿が映し出された。前と立ち絵が違っているけど、些細な変化だった。

 

『今のうち!』

「わかってるよ!」

 

 装備選択画面を開き、全てのスロットに10cm連装高角砲を突っ込み、画面をスライドさせて視界外に押しやる。

 体の進む向きが変わった。

 風の流れもまた変わる。

 下から上へ吹き抜ける風に水滴が混じり、潮の匂いが乗り始め、そうと認識した時には、足裏に硬い水面の感触があった。

 水を跳ね飛ばし、着水する。

 

「――お待たせ!」

 

 立ち上がると同時、両手を広げて10cm連装高角砲を二つ出現させる。形は従来の台形だが、底面に朝潮型の主砲と同じようなグリップが取り付けられていた。投げ渡した二つのうちの片方を受け取った朝潮は、それを見て操作に問題なしと判断したのか、右手に装着するなり反転し、さっそく迫り来る艦載機へと砲撃を開始した。一撃放つと、二機の異形が爆ぜて、黒煙を吐き出しながら落ちていく。正確無比の砲弾が一秒に一回飛んでいく。打つたびに揺れ動く体は、明らかに無茶をしているが、そうでもしないと間に合わないと判断しているのだろう。

 

「リベ!」

 

 両腕で砲を抱えて、朝潮が撃つ先を見上げていたリベッチオに声をかけつつ、横を駆け抜ける。他に言葉をかける暇はなかったけど、彼女は察してくれたらしい。朝潮の横にぴったりついて、砲を持った腕を持ち上げようとしているのが視界の端に見えた。戦えるか心配だったけど、不要だったみたいだね。

 俺が向かう先は、最初に外側へ逃れた満潮と荒潮の下だ。

 彼女達は散開を選んだために被害は軽微のようで、だが、俺達に近付く事も、戦艦水鬼に立ち向かう事も、その横を通って陸に戻り、連絡をしに行こうとする事もできず、艦載機と戦艦水鬼達に注意しながらも、立ち尽くしていた。

 その二人へ、連装砲を投げ渡す。二人同時にキャッチして、二人同時に俺を見て、目を丸くするのも同じタイミング。場違いなコミカルさ。

 というか、この姿、そう驚くほどの変化はないと思うんだけど……。あ、水着から制服に変わってるからびっくりしたのかな?

 

「使って!」

「……ありがたく使わせてもらうわよ!」

「出どころはどこかしらねぇ」

 

 砲を手に持つ二人の下までは行かず、水面を擦って体の向きを変え、朝潮達の下へとって返す。艦載機の群れは、仲間が撃墜され続けているというのに、朝潮達の頭上を素通りして遠くの空へ向かって行っている最中だった。

 あの向きだと、雷撃でも機銃でも戦艦水鬼やヲ級に当たる可能性があったから何もできなかったのか? というか、ヲ級とかずっと動きを見せないが、なんのつもりなんだろう。

 そもそも奴ら、水の中から出てきたけど、ここから海底まで三メートルもなさそうなのに、戦艦水鬼はどうやって飛び出してきたんだ? 土の中に潜ってたとでも言うのだろうか。

 

「朝潮、大丈夫?」

「はい、おかげさまで!」

 

 遠退いて行く艦載機の後部を数機、連続で落とした朝潮が、俺の声に頷いた。俺は武器を渡しただけだ。この働きは全て彼女の功績。少し分けて欲しい。

 空へ砲を向けていたリベッチオも、俺が近付いていくと、硬い表情を少しだけ和らげて、腕を下ろした。頬を伝う汗に、どれだけ彼女が緊張しているかが窺えた。

 砲口から黒煙を(のぼ)らせる朝潮に対して、リベッチオの砲は熱を持っているようには見えず、おそらく一発も放てなかったんだろうとわかった。過度の緊張のせいだろう。初戦であの数の艦載機と、水鬼なんていう化け物を目にしてしまったのだから、それも仕方ない。むしろ砲を構えられるだけ上等である。

 孤島で目覚めたばかりの頃の俺が、武器もなしにあれらに出遭ったら泣く自信があるね。そこら辺、やっぱり人間と艦娘は違うんだろうな。いや、リベッチオ自身の強さもあるのだろう。怖くても投げ出さないとか、そういう。

 だが恐怖というのは強敵だ。今の彼女が損傷を負えば、轟沈せずともトラウマになってしまうかもしれない。艦娘だって人間と似た精神性を持っている。過酷な状況に置かれれば参る事だってあるだろう。

 だから、俺は、できる限り損害を出さず、あの戦艦水鬼らを倒さなければならない。

 朝潮を傷つけさせないために。リベッチオをこれ以上怖がらせないために。そして、提督や、みんなを守るために。

 幸い――。

 

『――!』

 

 巨腕の異形の傍が盛り上がり、爆発した。たぶん、潜水艦の雷撃。伊19の仕業だろう。衝撃に揺らぐ巨体から戦艦水鬼が投げ出され、海面に下り立った。

 味方の艦載機が列をなして飛んできて、航空魚雷を投下していく。あれが本体だろう女性型の戦艦水鬼に直撃すれば、大ダメージを与えられるだろうが、異形が腕を伸ばし、手の平を盾として戦艦水鬼の前にかざす事で防いだ。ついでに双頭が吠え、体に備え付けられた砲を放ち、帰投しようとする艦攻や、敵艦載機に向かっていく艦戦を撃ち落とそうとする。

 

「距離、速度、良ぉし!」

「気合い! 入れて! いきます!」

 

 それを阻むのは、比叡と霧島だ。声を響かせ、遠距離からの砲撃で巨腕の異形の行動を阻害する。数発の砲弾は、半分以上異形に直撃したのに、奴は多少よろめいて呻くだけで、堪えた様子はなかった。

 航行しながら砲撃して当てるのも凄いが、それをくらってぴんぴんしてるのも凄いな。あんまり間に入りたくないが……あいつをやっつけるのは一番優先してやるべき事だろう。現状、艦載機を放ち切って棒立ちになっているヲ級は放っておいても問題ない。

 ……前に戦った時は、奴らも杖で積極的に近接戦闘を挑んできていたような気がしたのだが……今回の奴らは、なぜあんなにも動かないのだろうか。

 

(確か、対空強いのは機銃だよね?)

『さあ?』

 

 画面に手を当て、横へスライドさせる。装備した25mm三連装機銃を敵艦載機へと向ける。龍驤の艦戦の邪魔をしないよう、それらが辿り着く前に少しでも落としておきたい。だから、数撃ちゃ当たるを念頭に、機銃を選択した。右腕に乗せた機銃は軽く、細い三つの砲身はどこか頼りない。しかしあまり大きくない敵艦載機を撃ち落とすには十分だろう。

 何も言わず、旋回して向かってくる黒い群れに、機銃を掃射する。左から右へ。片手で押さえた腕を薙ぐように振るい、全弾撃ち尽くすようにと、内部にいるだろう妖精さんに伝える。

 あっ、今一番端っこの奴に掠った! やった! 当たったぁ!

 ぐらついた敵艦載機に、内心声を上げて喜ぶ。俺だってここ一番では当てるもんね!

 ……なんて。

 

「…………朝潮、機銃使える?」

「ええ、大丈夫です」

「じゃ、これあげる」

 

 機体をぐらつかせただけで、大した損害もなかったらしく元気に飛んでくる艦載機を見ていたら、凄く虚しくなってしまったので、機銃は朝潮に進呈する事にした。インスタントの妖精さんに怒られそうな所業だけど、こればかりは自分の才能の無さを恥じるしかない。俺に使われない方が幸せだと思うよ。

 

「全砲門、fire!」

「てーとくを、お守りします!」

 

 比叡と霧島に続き、追ってやって来た金剛と榛名も、走りながら砲撃した。空へ浮かんだ黒い粒が、みるみるうちに大きくなって、ヲ級の片方を貫いた。残りは全て巨腕の異形に当たった。戦艦水鬼に当たりそうな物があったからか、その巨体で庇ったのだ。

 そこまでして、ようやく奴の背から煙が噴き上がり始める。小破……中破……艦娘みたいにわかりやすくないから、どのくらいのダメージを負っているのかがわからない。俺のカンドロイドが敵の耐久値を表示できたら良かったんだけど……そこまで便利にはならないか。

 改二状態の端末は異次元収納機能付きの物質精製機能付きで超高性能だし、これ以上は贅沢にしかならない。

 

『オオ――……』

 

 沈みゆくヲ級を見ていたもう一体のヲ級が、慟哭するように声を発した。だがそれだけだ。やはり動こうとしていない。巨腕の異形が行動を起こすたびに起こる波に翻弄され、よろめいたりしているだけ。

 動かないんなら、倒すけど良いよね。

 

「朝潮、リベを守ってあげて」

「はい! 任せてください!」

 

 顔だけで振り向き、一つ頼み事をする。朝潮は一も二もなく頷いてくれたが、リベッチオは不安げに瞳を揺らして、ウサギ、と呟いた。

 それで、俺って本当に懐かれてたんだな、と実感した。ならここは何か、安心させるような事言っとかないとね。

 

「大丈夫だよ。あんな奴ら、ぜんっぜん怖くなんかないって、シマカゼが教えてあげる!」

「……うん。buona(ブォナ) vittoria(ヴィットーリア)……ウサギー」

 

 明るい調子の声に、胸元でのサムズアップをすれば、リベッチオも控え目に同じ仕草を返してくれた。強張った顔に笑顔が浮かぶ。でも、()()で喋られても、ちょっとよくわかんないよ。

 朝潮もまた、俺に見せるように親指を立てた。彼女相手には、結構頻繁にやっていた仕草だったから、返しも慣れたものだ。

 前へ向き直る。哨戒に当たっていた六人のうち、比叡、霧島、龍驤が荒潮と満潮をサポートするように艦載機の相手をしている。金剛と榛名は戦艦水鬼の相手だ。互いに砲撃しあっているが、先程と違って当たらない。巨腕の異形が手に戦艦水鬼を乗せ、動き回っているからだ。比較的近くに俺達がいるために、撃つタイミングが限られているのも原因の一つなのだろう。それでいて異形は自由に砲撃するから、金剛達も回避に意識を割かれているらしい。

 海が激しく波立ち、波紋が俺達の足元まで伝ってきている。

 

『オオ――!』

「ん?」

 

 ヲ級が頭部の異形から追加の艦載機を放ったのは、俺が眼前に装備選択画面を出した時だった。ちょちょ、ちょっとあんた、それさっき出し尽くしたんじゃなかったの!?

 

「来ます……!」

「う、ううー、やるよぉ!」

 

 心の内のツッコミは相手に届く事はなく、十機ほどの艦載機がこちらへ向かってきた。あの数なら、朝潮があっという間に撃ち落としてくれるだろう。でも、距離が近い。半分もやっつけない内に奴らの攻撃の範囲に入ってしまう。リベッチオが奮起しているみたいだけど、彼女の手で落とせるかどうか。俺がノーコンでなければ全部やるんだけど。

 

『代わって』

 

 再び機銃で応戦すべきか、隙を晒す覚悟でジャンプキックをぶちかますかと悩みつつ、装備スロットの一番上に25mm三連装機銃をセットした時、島風がそう言った。

 『かわれ』……どういう意味だ?

 

『運転を代わろう、って言ったらわかりやすい?』

(あ、なるほどね)

 

 島風は意識の交代を申し出ているみたいだ。体の主導権を渡せ、って。

 とりあえず画面を退かし、機銃を右手に出現させる。光の欠片が散って、右手に収まった鉄の塊は、やはり軽い。これは俺が改二になって、身体能力が大幅にアップしているからそう感じるだけなのだろうか。

 

(良いよ)

『おっけー。じゃ、交代ね』

 

 なんとかできるというなら、頼まない手はない。そもそも彼女の方が純正の艦娘な訳だし、俺よりずっと頼りに――。

 ぐるん、と視界が回転する。世界もさかしまに。

 俺の意識は、心の奥の海の中に沈んだ。

 

「頼りになるってほど、島風の練度は高くないけどね」

 

 ふわっと髪がなびくのに目を細め、こないだぶりの外の世界を体全体で感じる。

 そういう訳で、ここからは島風の出番。

 といっても、私はそう長い事活動できないから、とりあえず上のうっといのをやっつけたら、観戦に戻る予定。

 

「ほっ、と」

 

 右手に持った機銃のグリップを握り直し、空へ向ける。ちょうど、あいつらも私達めがけて銃弾を放とうとしているところだった。

 意識を集中させる。ぐんと空気が歪んで、伸びる感覚。世界の動くスピードが落ちていく。

 きっと雨が降っていれば、一粒一粒が球状なんだって理解できるくらい、動体視力も良くなっているだろう。体の動きは通常だけどね。

 でも、ここまで速くなれるなんて、生まれた時は考えもしなかったな。

 そもそも私はそこまで速さを求めてはいない。だってもともと誰より速かったし、走るのが気持ち良いから、走り続けようとしていただけ。

 最初の一歩を踏み出す前に戦艦レ級に撃沈された訳だけど。

 おっとと、集中、集中。これやると、ただでさえ疲れやすいのに、余計な事考えてたらすぐ限界がきちゃう。

 

 照準を合わせる。まずは飛んできた銃弾に、それから、銃弾を放った航空機へ。トリガーを引いてダンダンダンと緩やかな発砲音を聞きながら、一つ二つと落としていく。

 はたから見れば早業なんだろうな、と思うと、自然と笑顔になってしまって、ついでに体がぶるりと震えた。それってとっても気持ち良いかも。

 なんて考えてたら、照準が外れて数発外してしまった。ありゃ、これじゃ島風がシマカゼになったみたいだよ。私ならあんなの外しっこないのに。なんであの子は外すんだろう?

 キーンと耳鳴りがして、世界の速度が通常に戻る。上空を通り過ぎようとした残りの数機は、朝潮がほとんど全部落とした。あのリベって子もめちゃくちゃに撃って、なんとか当てたみたい。ひっくり返りそうになったのを、朝潮が支えた。

 

(はい、島風タイムは終了です)

『……え、なに? ごめん、ちょっとぼうっとしてた。もう一回言って?』

 

 すっごく疲れたから、シマカゼに呼びかけたら、調子っぱずれの高い声が返ってきた。

 ……このままずっと島風がこの体使っちゃおうかな、って一瞬思った。

 ああでも、あの海はあったかくて、気持ち良いから、ぼうっとしてしまうのもわかる。

 眠ろうと思ったらいくらでも眠れるしね。

 そんなだから、私もたくさん寝ちゃったんだ。

 思い出したら、猛烈に眠くなってきた……。

 エネルギーが足りない。表に出てる間に何か口に入れときたかったけど、また今度、機会があったら代わってもらおう。

 さあ、速く代わって代わって!

 おやすみ!

 

「ああ、うん。おやすみ……?」

 

 再び視界が反転して、明るい日の下に戻ってきた。

 あの海の中にいたのはごく短い時間のはずなのに、なぜか何時間もあそこにいた気がして、意識がはっきりするまで時間がかかってしまった。

 背後を窺えば、朝潮は俺を見ておらず戦況を見ていて、リベッチオはまだ空を警戒していた。

 俺が島風を内包し、入れ代わる事ができるのをすでに知っている朝潮と、入れ替わっても違和感を抱くほどに付き合いが長くないリベッチオだからこその反応かな。いや、朝潮の方はそれであっているだろうけど、リベッチオは緊張が酷いせいかもしれない。浅い呼吸に、敵のいない空に目を馳せるのは、ひとえに戦闘時の興奮と緊張のためだろう。戦いが終わらない限りは、下手に声をかけたりしない方が良い。

 それに俺は、リラックスさせてやる術を持ってない。唯一やれる事は、さっさと敵を倒して安心させてやる事だけだ。

 顔を前に戻す。激しく動き回る巨腕の異形と、その手に座る戦艦水鬼の姿を捉えつつ、装備選択画面を出して、ずっと画面をスクロールさせた先にある『木曾のサーベル』を選択、装備する。

 端末を巻きつけてある左腕を空へ突き出せば、呼応して、カンドロイドからサーベルが吐き出された。垂直に飛んだ剥き出しの剣が落ちてくるのを左腕で掴み取り、ぶぅんと振るう。鈍い銀色の刀身に光が這って、刃先が輝いた。手首を回して柄を投げ、右手に渡す。

 よし、準備完了!

 

「ヲ級の相手は任せるよ!」

「はい!」

 

 打てば響くで、朝潮の返事を聞くと同時に駆け出す。

 艦載機を吐き出したきり、ふらつくのみのヲ級の横を通り抜けざまに剣を叩き込んでいけば、肉を裂く感触がダイレクトに手まで伝わってきた。

 うわ。

 うわー……。

 前に杖で貫いた時は、そこまででなかった生理的嫌悪感が湧き出してくるが、その時にはもう駆け抜けて、巨腕の異形の下へ向かっていた。

 あとは二人にお任せだ。俺は戦艦水鬼に集中させてもらうとしよう。

 

「覚悟っ!」

『――!?』

 

 金剛達との砲撃戦に夢中だった一体と一人は、海面を蹴って跳躍した俺の接近に気付かなかった。反応した異形が俺をはたき落そうとするより速く、立ち上がろうとしていた戦艦水鬼を思い切り斬りつけ、手の平から落ちるように力を込める。相手の装甲と俺の思惑が重なって、斬るというより殴るになった。

 サーベルを振り抜いた体勢のまま着水し、ブレーキを踏みつつ滑っていく。

 狙い通り、背後で重いものが落ちる音がした。安定した音。二本の足で着水したな。さっきの斬撃の手応えからして、さほどダメージは負っていなかったんだろう。だが、小破も中破も関係ない。異形の手の平の上という安全圏を失ったから、俺が離れれば金剛達が倒してくれる可能性も高い。だが彼女達には、しばらくこの巨腕の異形の相手をしてもらう事にしよう。倒してくれるに越した事はないが……夜までもつれ込む可能性も否めない。その前に俺が倒そう。まずは武器を持たない戦艦水鬼からだ!

 片足を軸に海面を滑って旋回し、立ち上がろうとしている戦艦水鬼に肩をぶつける。タックル。異形が戦艦水鬼ごと俺を止めようと伸ばしてきた手を、背部のブースターユニットを噴かせ、桜色の翅を輝かせる事で推進力を得、跳躍して跳び越した。そのまま離れた海まで戦艦水鬼をエスコートする。

 

『ハナセ!』

「っ!」

 

 戦艦級で水鬼。さすがの馬鹿力か、途中で引き剥がされて投げ飛ばされた。身を捻って体勢を整え、着水し、屈伸して衝撃を逃がす。俺の身長より高い位置まで上っていった水滴が降り注ぐ中で、戦艦水鬼の動きを観察する。

 奴は金剛達の砲撃に晒される異形の下に戻ろうとせず、怒り心頭といった様子で俺の方へ駆けて来た。

 屈んだ体勢のまま翅を繰って前へスライドしだす。この姿勢で移動するとは思わなかったのだろう、戦艦水鬼が足を止める。

 そこへ、背後から俺の横を通って走る金色のレールが――幻視――奴の逃げ場を封じた。走りに切り替え、線路の横を並走し、やがてその上に飛び移って、両足を広げて腰を落とし、滑り始める。勢いは増すばかりだった。

 D字の柄を両手で握り締め、顔の右で構える。刃先は天に。戦艦水鬼は引く様子を見せず、逆にスカートをはためかせて波を蹴った。

 振り上げられた拳と、振り切った刀は交わる事なく擦れ違っていく。

 頭のすぐ上を通った大きな拳。奴の体を叩き切ったサーベル。

 

「――っ!」

『フ、フフフ……ワタシガ、オワラセル』

 

 ビリビリと振動するサーベルの震えが、手まで伝わってきた。

 ただ突っ込んでいって斬るだけではまったくダメージを与えられない。素早く敵へ向き直り、牽制にと両肩の砲で砲撃する。

 一つも当たらない。戦艦水鬼の左右に着弾した弾が、大きな波をたてて沈んでいく。複雑に広がる波に足を取られた戦艦水鬼が膝をつくようにして体勢を崩す。

 今だ!

 横へサーベルを放り投げ、膝を曲げて力を溜め、一気に解放する。跳び上がった体が桜色の翅の推進力を糧に一定の高さまで押し上げられる。

 ジャンプキックの体勢。再び翅が噴き出し、一本の矢となって敵を貫いた。

 

『!!』

 

 背後で巻き起こる爆発に、屈んだ状態で踏ん張って吹き飛ばされないよう(こら)える。

 よし、倒せた! あいつ自体はそこまで硬くなかったから、これでいけたみたいだ。

 しかし戦艦水鬼を倒しても、巨腕の異形は健在だった。連装砲ちゃんと同じ自立稼働兵装なのだろうか。

 

『――!! ――――!!』

 

 主を失い、怒り狂って吠え散らす異形に砲弾が突き刺さっていく。どれも決定打にならない。怒って耐久値や装甲が上がる訳でもないだろうに!

 

『――――――!!』

 

 息を吸い込んだ異形が、天へと叫ぶ。あれは……夜を呼ぶ奇妙な技か。

 あれ、たぶん改二の俺なら使えるな。叫ぶのは恥ずかしいからやりたくないし、夜はあまり好きじゃないから使うつもりはないけど。

 雲が流れ、太陽が落ちていく。代わりに月が上り、星々が瞬く。

 夜がきた。

 急激な明度の変化に、高性能の体はすぐ順応し、遠く、闇の中で蠢く巨腕の異形を捉えた。

 

「わざわざ夜にしてもらったとこ悪いけど、速攻で終わらせるね」

 

 たとえどんなに強い奴でも、一対一なら対処に苦労は……そう、しない。今は一体多の状況で、夜は駆逐艦や潜水艦の時間だ。装備を自由に変更できるこちら側が有利。

 だが悠長に艤装を配っている時間はない。島風が表に出ている時と同じように、改二にも活動限界時間ってのがある。俺が参ってしまうまでの時間だ。

 だからとっとと片付ける。

 

 もう一度海面を蹴りつけ、高く跳び上がる。桜色の光が夜闇を切り裂いて、広がった。

 轟々と唸る風の中を急上昇していく。五メートル、十メートル、十五メートル。戦場の全てを見渡せるほどの高さに来てもなお、俺は空を目指して飛び続けた。

 燃料が消費されていく。体の中のどこかが熱くなって、痛む。星空だけを見上げていると、だんだん距離感が乱れていって、自分が今どれくらいの高度に達しているのかわからなかった。

 それだから、限界まで飛ぶ事にした。倒しきれなかった、なんて事にならないように。全力でキックを放てるように。

 ボシュン。音をたてて、翅が消える。自分の意思で消した。

 飛んでいるさなかに、奴がもし朝潮やみんなを傷つけたらと考えると、悠長に飛び続ける事ができなかったのだ。

 空は広く、視界を遮るものは何もない。生体フィールドに纏わる冷気と水気。どうやら俺は、薄い雲の上へ出ていたみたいだった。

 これくらいあれば、助走をつけるには十分だ。

 緩やかに上昇を続けていた体が重力に引っ張られて止まり、緩やかに落ちていく。行きよりスピードが速い。速度がどんどん上がっていく。頭と足の位置を入れ替えて翅を噴出させれば、さらなる加速だ。天から降る星のように、巨腕の異形の頭上へ迫る。

 

「おりゃーーっ!!」

『――!?』

 

風を切り裂いて伸ばした足が、巨腕の異形の頭にぶち当たる。砕き、弾いた頭を無視して、双頭の中心、両の首の付け根へヒールが食い込んでいく。

 一瞬だった。

 コンクリートを粉砕するみたいに、生体フィールドを纏った状態のまま海を叩き壊して、海底まで一直線に蹴り抜けた。

 割れた海の上で巨大な爆発が起こる。爆風が海水を押し退け、割れた海はさらに押し広げられた。落ちてきた鉄の破片を腕で払い、跳び上がって海上に戻る。戻ろうとする水の流れは強く、引き込まれてしまいそうだった。

 

「わ、わっ、たた!」

「おおっと!」

 

 乱れる波の上でバランスを取っていれば、うつ伏せの状態でリベッチオが流れてきた。両腕をばたつかせて止まろうとしているものの、上手くいっていない。

 翅を使って海面を移動し、彼女が割れ目に落ちてしまう前に背側の服を掴んで持ち上げた。ふげ、と変な声が聞こえた。

 

「申し訳ありません!」

 

 朝潮が滑ってくる。波の勢いもあってかなり速い。俺の前で止まろうとしたのだろうけど、いつものようにはいかずにバランスを崩しそうになっていたので、抱き止めた。至近でかち合った視線は、数秒の間、離れなかった。

 

「わぁ、夜が……!」

 

 手足をばたつかせて下りようとしていたリベッチオが、正常な時刻に戻った空を見上げて、感嘆の声を漏らす。これも初めて見る現象だったのか。……そういえば、奴らが夜を呼んだ時、他の地域はどうなっているのだろう? もし地球全土に影響を及ぼすのだとしたら、世界中に深海棲艦はいるのだから、引っ切り無しに夜にならないとおかしい。

 ……そういう考察は、帰ってお布団に潜り込んでからにしよう。

 今はただ、無事乗り切れた事を喜ぼう。

 改二状態を解けば、俺の体から投げ出された連装砲ちゃん達が明滅しながら海の上を転がり、いつも通りの愛らしい顔を見せた。強い波にころころ転がされてるのを見て、ちょっと解除するタイミング間違えたかな、と思った。

 

「なんだったんでしょう……」

「さあ? あいつらも海水浴がしたかったんじゃない?」

 

 リベッチオを立たせつつ、朝潮の疑問にてきとーに答える。

 ただ一つ言える事は、神隠しの霧はなくなったのに、突然強敵が現れる不可思議な現象はなくなっていなかったって事だけだ。

 

「朝潮、無事!?」

 

 満潮と荒潮が戻ってくる。その手にはすでに連装砲はなく、不安と焦りだけがある。荒潮は、相変わらず笑みを浮かべてるんだけど……。

 

「ヘーイ! 島風、やりましたネー!」

「あの力は、いったい……?」

 

 金剛四姉妹と龍驤も戻ってきた。改二の説明は……難しいから、提督に丸投げしよう。

 そうだ、提督は無事だろうか?

 

 集まった俺達は、今回の戦艦水鬼の襲来をちゃんと提督に伝えるために、浜で待つ藤見奈提督の下へ帰還する運びとなった。

 

「ぼのたん、行けっ!」

「ぼのたん言うな! って、もう終わってるじゃないの!」

 

 その際、浜辺で騒ぎ立てる不審な男と曙の姿を見かけた。

 ……あ、あれ向こうの提督か。海棠とか言う人。海パンにシャツにサングラスに白い軍帽……ううん、不審者。

 

 

 今回の顛末を報告し、俺達は一度全員で集まって提督の言葉を待つ事となった。

 藤見奈提督は秘書艦を伴い、海棠提督と言葉を交わしている。今回のような深海棲艦の出現方法は過去にもあった事かを簡易的に確認したり、どう処理するかを話し合っていたようだ。

 やがて俺達の前に立った藤見奈提督が現れた敵の詳細を語った。近海に規格外の敵の出現。それだけならそう動揺は大きくならないだろうが、この間、その元凶だと思われていた戦艦レ級を撃破しているのだから、戸惑う艦娘は多かった。

 安心してほしい、と提督が言う。

 この場には、水鬼をも倒せる艦娘がいる。

 それが誰の事を指しているのかは、みんなわかっていた。

 きっとみんな、戦闘を苦い思いで見ていただろうから、最後に俺があのデカブツをやっつけたのも見られていたのだろう。

 列の前へ出るように言われて、移動した。そこで初めてシマカゼ改二が紹介されたのだ。

 大きな力を持つ俺と、みんなが協力して戦えば、負けは無し。そう締め括られた。

 ……海水浴が中止になるなどの話題は一言も出なかった。

 俺がいるから、海水浴は続行って……いやまあ、良いけどさ。中止にしない理由はいろいろとあるんだろうし。

 

 そんな訳で、俺達はまたゆったりとした時間をそれぞれで過ごし始めた。みんな、どこか警戒している様子でありながらも、ボール遊びや水遊びに興じている。

 俺と朝潮は、彼女の姉妹とリベッチオを連れて海の家に戻ってきた。

 飛び出す前と同じ席どり。あの時と違うのは、海棠提督と曙が店内にいて、片方がこっちを凝視してるくらいだ。

 MVP祝いだ、と鳳翔さんがクリームソーダを作ってくれたので、それを頂きつつ、朝潮と雑談する。

 途中、荒潮と満潮がリベッチオを伴って浜辺へ移動した。深海棲艦が現れなければ、砂遊びをする予定だったんだって。

 

「ウサギー! ウサギも、こっちにきて!」

 

 ツインテールを揺らして、手もぶんぶん振って俺を誘うリベッチオに、喉元過ぎればなんとやら、という言葉を思い出した。意味は違うだろうが、あれほど怯えを見せていたのに、敵を倒してしまうとすっかり元気になった。懐き度がアップした気もする。今度キック教えてね、なんて言われたけど……うーん、リベッチオにキックは似合わないだろう。

 

 不意に朝潮がくすくすと笑った。

 ……たぶん、リベッチオの言葉が、朝潮の言葉と同じだったからだろう。こっちに来て、って台詞。

 俺にとっては、最後に見た姉さんの言葉だから、あまり良い思いはしなかったが……俺を慕う子の無邪気な誘いを蹴るほどではない。

 

「行こっか」

「はい」

 

 短く言って朝潮を誘う。彼女は、満面の笑みを浮かべて、立ち上がった。

 

 ――あ。

 

 朝潮の笑顔、初めて見た、かも。

 

 姉さんに似た、ではなく、彼女の、ほんとの笑顔。

 どうしてそう感じたのかは自分でもわからない。

 だけど今、俺は、彼女に姉さんを重ねず、素のままの朝潮を見る事ができていた……そんな気がした。




TIPS
・艦艇斬り
剣撃必殺技。滑って行って斬るだけ。

・シューティング・クェーサー
高々度から落ちていき、その力を全て一撃の蹴りへと注ぎ込む
必殺キック。
戦艦水鬼すら一撃のもとに粉砕するが、当てるのは少し難しく、隙が大きい。

・シマカゼ改二(タイプ連装砲ちゃん)lv.55
耐久144 装甲156 火力156 雷装220 回避99
対空236 対潜120 索敵82 運40 
速力99.6ノット 燃料消費100 弾薬消費50
100mを1.5秒 加速時 100mを0.400秒

・海休暇
続行。二日目の哨戒任務にシマカゼがつくが、敵は現れなかった。

・夜を呼ぶ力
深海棲艦が持つ、解明されていない異能。
改二となったシマカゼも使用可能、らしい。

・木曾のサーベル
艦娘の艤装、および艦娘が装備している武器を
シマカゼ改二も装備する事ができる。

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